キリト「生還したら妹と弟がくっ付いてた」   作:ブロンズスモー

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剣道の用語を結構使ってるので、一応。
引き胴→相手の左腹を打ちながら退がる。
返し胴→相手の面を受けて、左の胴に打ちながら相手の右側に抜ける。
引き面→後ろに下がりながら面を打つ。
逆胴→相手の右腹を打ちながら退がる。



初戦闘

時間の流れというのは早いもので、一ヶ月後くらいにALOが発売され、それから更に二週間経った。その間、海斗はセカンドでレギュラーを取り近々、三年生最後の試合に出る事になった。

で、今は仮想世界の中。種族はお互いは二人ともシルフにする事にして、とりあえずシルフ領の一番デカイ建物で待ち合わせした。

 

「………遅いな」

 

海斗……コイコイは直葉を待っていた。すると、「あの……」と控えめに声を掛けられた。

 

「?」

 

「海斗?」

 

「………ああ、スグか」

 

…………いや、誰だお前。と、コイコイは思った。目の前にいるのは金髪美人のどう見ても高校生以上の女の子だ。中学生の姉ではない。けど、自分の名前を知ってる以上は、やはり自分の姉なんだろうなと理解するしかない。

 

「名前は?」

 

「リーファ。そっちは?」

 

「コイコイ」

 

「…………はっ?」

 

「俺もうずっと前からこの名前だよ。確か、花札が思いの外面白くて、そのノリで付けた」

 

「………あ、そう。そういえば、モンハンの時もそんな名前だったね……」

 

呆れる直葉を無視して、海斗は辺りを見回した。目の前に広がる風景、これが全部ゲームの世界なのだ。

 

「………これ、ゲームなんだよなぁ」

 

呟きながら、念のためシステム窓を見た。ログアウトのボタンはある。

 

「どう?」

 

「あるよ」

 

リーファはホッと一息ついた。

 

「でも、よく俺だって分かったな」

 

「そりゃそうだよ。コイコイ、リアルとほとんど変わらないもん」

 

「………………」

 

それって問題じゃないだろうか。まぁ、流石に他のプレイヤーに正体バレるってことないだろうけど。

コイコイは軽く伸びをすると、リーファに言った。

 

「じゃ、狩りに行こうか」

 

コイコイの一言で、二人はフィールドに出た。

とりあえず、森の中に入ってモンスターを探す。バリバリの初期装備の片手剣を背負い、左手には盾を持って歩いた。リーファは盾は持たずに、片手剣のみである。

コイコイはふと思い出した。

 

「そういえば、このゲームってPK推奨だったな」

 

「………PKって何?」

 

「プレイヤーを殺すって事。ほら、このゲームは基本はどれか一種族が世界樹の頂点を目指して参加しようぜってゲームでしょ」

 

「うん」

 

「それなら、自分達の勢力拡大と他種族の妨害が必要って事だよ」

 

「………もしかして、このゲームって思ったよりハード?」

 

「だろうな」

 

「……………」

 

そんな事を話してると、早速モンスターが現れた。オークが五体くらい。それが二人を睨んでいる。

 

「リーファ。戦える?」

 

「勿論!そのために出て来たんだから!」

 

「いや、そういう事じゃなくて。操作とか」

 

「え?あ、ああ。多分、平気」

 

「なら、左二匹任せた」

 

「分かった!」

 

リーファは先に飛び出し、オークの一番左を狙って走った。

リアルで剣道をやっているので、それに合わせて片手剣を両手で握って構えた。オークからの棍棒攻撃を横にいなし、引き胴を打つように斬り下がった。

だが、敵は2体いる。もう一体の攻撃が来て、避けながら後ろに下がった。

 

(そうだ、相手は一人じゃない。いつもの剣道をしてちゃ勝てない。どちらかというと、いつもやってるモンハンに近い動きをしないと……!)

 

構え直し、チラッとコイコイの方を見た。

コイコイはオークからの攻撃を、羽を生やして棒高跳びのように横に体を倒して跳び上がり、回転しながら回避しつつ、背中の片手剣を抜いてオークを斬ると、背中を踏み台にして飛び上がり、後ろから来ていたオークからの攻撃を回避した。

 

(慣れるの早過ぎでしょ⁉︎)

 

唖然とするリーファに構わず、オークから頭上三メートル程まで飛び上がると、両手をオーク三匹に向けた。

 

「エック・スキート・トゥトゥーグ・スマール・ストリーダ」

 

小さな無数の針がオーク3匹に降り注ぎ、その内の最初に斬ったオークを仕留めた。

 

(なんで初戦闘で魔法使いこなしてんの⁉︎うちの弟、本当になんなの⁉︎)

 

心の中でツッコンでると、いつの間にかオークが目の前まで迫っていた。

 

「やばっ……‼︎」

 

腰の剣に手を掛けたものの、攻撃も回避も間に合わないと思った直後、コイコイの方から盾が投げられ、オークの攻撃を弾いた。

その隙を逃さず、リーファは手を掛けた剣を抜いて、オークを斬りあげた。

 

「ふぅ……!」

 

続いて、二頭目のオークに斬りかかった。ゲームのモンスターなだけあって、攻撃して来た後の隙は大きい。その隙を逃さずに、リーファは攻撃した。

 

「終わったぁ……」

 

一方、コイコイは更に一体倒して、残り一体になったオークの攻撃を回避して、片手剣を逆手に持って、腹に突き刺した。それを横に掻っ捌いて倒した。

 

「ふぅ……」

 

「ねぇ、なんでそんな慣れてるの?」

 

「へ?だって、自分の身体じゃん。しかも、リアルと違って……いやリアルでもだけど、メチャクチャ運動神経の良い自分の身体」

 

「軽く自慢しなくていいから。でも、途中で羽生やしてたじゃん」

 

「あれ、言ってなかったっけ。このゲーム飛べるんだよ」

 

「聞いてないし」

 

「羽は普通に自分に羽が生えてたらってのを想像してみただけ」

 

「え、それ普通なの?ていうか、羽ってコントロールスティックみたいなのが必要なんじゃ……」

 

「無くても出来るよ。ネットの情報だと、最初はコントローラーあった方が良いらしいけど」

 

「………なるほど。ちなみに、さっきの魔法みたいなのは?」

 

「ああ。アレはネットに書いてあった呪文をそのまま言ってみただけ」

 

「…………前情報って大事だね」

 

「いや、ネタバレやめろって言ってんのに、一人バラした奴がいてさ。まぁ、バラしてくれたお陰で助かったんだけども」

 

「ふーん……あ、これ盾」

 

「あ、サンキュー」

 

自分の目の前の敵に投げられた盾を、リーファはコイコイに手渡した。

 

「で、どうする?」

 

「もう少し、この辺回ってても良いと思うんだけど……あまりシルフ領からは離れられないかな」

 

「あー。PK推奨なんだっけ?」

 

「そういうこと。とりあえず、今日はコントローラー無しで飛ぶ練習しよう」

 

「分かった」

 

二人は羽を生やして飛び上がった。

 

 

 

 

「おおー!こりゃいいねぇ!」

 

嬉しそうにリーファは空を飛び回った。その後にコイコイは続いた。

 

「…………」

 

二人して、目を輝かせながら空を自由に飛んだ。自分達は今、空を飛んでいる。感動していた。

 

「………お兄ちゃん達がハマるのも分かるなぁ……」

 

「ま、逆にカズは今、この世界に囚われてるんだけどな」

 

「…………」

 

「ま、ゲームは悪くない。茅場が悪いんだ」

 

そう、弟に慰めるように言われ、リーファはとりあえず考えないように空を飛び回った。

その直後、

 

「!危ない!」

 

下から火の玉が飛んで来て、後ろからリーファがコイコイを引っ張り、自分の元に抱き寄せた。

 

「っ!」

 

「ご、ごめん……!」

 

さらに、下から複数の火の玉が飛んで来て、リーファに抱かれたまま、盾で火の玉を弾いた。

 

「ふぅ……な、何?」

 

「攻撃は地上から……多分、プレイヤーの魔法だ」

 

「………ヤバいんじゃない?」

 

「ヤバいけど……あ、あの、」

 

「何?」

 

「いつまで抱っこしてんの?さすがに恥ずかしいんだけど……」

 

「い、いつまで抱っこされてんの⁉︎」

 

リーファは空中でコイコイを投げ捨てた。直後、コイコイに火の玉が飛んで来て、慌てて避けた。

 

「あっぶねぇな⁉︎」

 

「う、うるさい!それよりどうすんの⁉︎」

 

「退くに決まってんじゃん。こっちは初期装備二人だよ?」

 

「そ、そっか……!」

 

二人は飛んで逃げ出した。その後に下から魔法を撃っていたプレイヤーが追ってきた。サラマンダーが3人いる。

 

「お、追ってきたんですけど⁉︎」

 

「向こうも初期装備の所を見ると、初期装備のこっちを襲って経験値を稼ごうってとこじゃない?」

 

「言ってる場合⁉︎」

 

「とりあえず、逃げよう」

 

二人は飛んでシルフ領のスイルベーンまで飛んだ。飛ぶのに夢中でスイルベーンから随分と離れてしまっているのに、今気付いた。

後ろからの攻撃を回避しながらだと、いずれ追い付かれてしまう。近付けば近付く程、魔法の命中率が上がるのは当然だ。

魔法は魔力を使っている。追っ手の魔力が尽きるまで逃げ回るのも一手だが、向こうが魔力回復アイテムを所持していれば、それも厳しくなる。

魔法の撃ち合いも考えたが、呪文を覚えてないリーファは魔法を使えないので無理。

コイコイは作戦を決めると、リーファに声を掛けた。

 

「リーファ」

 

「何ー⁉︎」

 

「相槌だけで答えて。後ろの連中にバレる」

 

言われて、リーファは頷いた。後ろの敵にバレないように作戦を説明した。リーファが「OK」と手で合図したのを確認した直後、後ろからの魔法がコイコイの背中に直撃した。

 

「ぐぅっ……‼︎」

 

落下するコイコイをリーファは途中でキャッチして、一気に森の中に突っ込んだ。

 

「逃すな!」

 

「追うぞ!」

 

サラマンダー三人は森の中に入った。着地し、辺りを見回す。

 

「おい、いないぞ」

 

「せっかくのビギナーだ。逃す手はない」

 

「戦力差は一人分だけだ。逃げる方向はスイルベーンの方だ。そっちに向かえば良い」

 

そう決めて三人は剣を構えて森の中を走って、スイルベーンの方に走った。直後、左の木から陰が飛び出して来た。コイコイがバレエのように横に回りながら、一番左の男の剣を握る腕を脇に挟んで無力化しつつ、回転の勢いを利用して、真ん中の男の顔面に肘打ちを決めた。

 

「なっ………⁉︎」

 

「てめっ……!」

 

唯一安全だった一番右の奴が、コイコイに襲い掛かったが、別の木からリーファが飛び出して攻撃を防いだ。

脇に腕を挟まれた男は、剣を持ち替えてコイコイを刺そうとしたが、コイコイは羽を生やして飛び上がり、空中で脇から離した。落下したサラマンダーは途中で羽を生やして体勢を持ち直し、コイコイの後を追った。

地上のリーファは攻撃を受けた後、力を受け流して片手剣を男の頭に振り下ろした。

 

「くっ……‼︎」

 

男は引き身しながら回避しようとしたが、胸に剣を掠らせる。リーファは上手く立ち回って、地上のサラマンダー二人に囲まれないように剣を構えた。

 

「…………」

 

コイコイはいない。ついさっき始めた自分たちよりは、目の前の敵の方が長くやっているだろう。だが、剣を握った年数は自分の方が上だ。

 

(負けられない……。こっちから踏み込むより、向こうから攻撃させる)

 

すると、一人目がかかって来た。それを返し胴の要領で受けながら腹にカウンターを叩き込んだ。

 

「ッ‼︎」

 

試合なら完全に一本取っていたが、これはゲームだ。HPを減らさない限り死なない。もう一人の方が正面からきて、それもいなして、引き面を打ちながら下がった。

 

(これは剣道じゃない。人数は相手の方が上だし、何処かでフェイントを入れないと……!)

 

そう決めると、リーファは剣で突撃の構えを取ると、羽を生やした。

敵はそれにピクッと反応した。羽を生やしたという事は、飛んで空中から攻めて来る。どんな速度で突撃して来てもカウンターを決められるように構えを取った。

そして、リーファがスタートを切った直後、自分よりやや上に剣を振った。だが、リーファは羽を生やしたまま、地面スレスレを飛んで、サラマンダーの一人の腹に剣を突き刺し、横に斬り払った。

 

「っ⁉︎」

 

(もう一撃………‼︎)

 

斬った直後、邪魔されないように、斬った相手を中点に、もう一人の対角線に間合いを取った。そのまま渾身の逆胴で斬り下がり、一人を倒した。

 

「ッ‼︎」

 

一人死んで、ボッと赤紫の炎になった。

もう一人いるが、一対一ならこっちのモノだった。お互いに隙を伺うようにジリジリと構えて間合いを合わせると、向こうが斬りかかって来たのを相面に合わせて飛び、正面から斬った。

怯んだところに、もう一発、胴を打って倒した。赤紫の炎が増え、そこでようやくリーファはホッと息をついた。

 

「うわあ……二人掛かりに勝ったんだ……」

 

上から引き気味な声が聞こえた。コイコイがすぅ〜っと降りて来た。

 

「すごいでしょ?」

 

「すごいっつーか怖い」

 

「う、うるさいなぁ。そもそも、二人引き付けるって言って一人しか引き付けられなかったのはどこのどちら様でしたっけ?」

 

「悪かったよ……」

 

「一応聞くけど、勝ったの?」

 

「勝ったよ」

 

リーファは「ま、そりゃそうか」と呟いた。で、少し疲れたのか、ため息をつきながら言った。

 

「そろそろ戻る?なんか疲れちゃった」

 

「そうだね。スイルベーンまで飛ぼう」

 

「んっ」

 

二人は飛んで、スイルベーンに戻った。

 

 

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