キリト「生還したら妹と弟がくっ付いてた」 作:ブロンズスモー
リーファとレコンはサラマンダー二人と戦っていた。だが、レコンの戦闘力は平均より大きく劣っていた。
「ギャア!」
情けない悲鳴をあげて、木に叩きつけられた。
「れ、レコン⁉︎」
「余所見すんな!」
「っぶな!」
レコンの方を見た直後、メイスが振り回され、後ろに反り身しながら、後ろに退がった。
このままでは、先にレコンが死ぬ。これじゃあ助けに来た意味がない。何とかしてカバーしないと。もう一度、レコンに逃げたふりをさせる?いや、それは無理だ。同じ手は二度は食わないと言っていた。
(レコンがやられる前に、あたしが相手を倒せば良いかな)
そう決めて、リーファはメイスの奴に突っ込んだ。
剣を振り上げ、顔を斬るように見せかけた。メイスを振り上げてガードしようとした隙を突いて、腕を斬った。
「ッ!」
斬った直後、相手に体当たりし、バランスを崩させて引き胴を打ちながら下がった。だが、その胴への攻撃を男は無理矢理手首を捻らせてガードし、リーファの腹に蹴りを入れた。
「っ⁉︎」
追撃して、メイスを横に振り回したが、リーファは何とかしゃがんで回避しながら退がって構え直した。
(あたしの動きが読まれてる……?あの体勢からガードするなんて、動きを読まれてるとしか……!早くしないと、レコンが………‼︎)
剣道というのは、焦れば焦るほど一本取れなくなる武道だ。リーファは攻めても攻めても決定打となる一撃を与えられずにガードされ続けた。
そして、
「ッラァ‼︎」
羽を生やして飛び上がりながら、サラマンダーの男は大剣が振り上げ、レコンの身体は宙に斬り上げられた。そのまま振り下ろし、レコンのHPは消え去った。
「リーファちゃーん!ごめーん!」
そのまま炎になってしまった。
「レコっ……‼︎」
言いかけたが、メイスが振り下ろされて、退がって回避した。そして、二人を相手に剣を構える。
(あたしの動きを読んでる相手が二人。この前とは状況が違う……まずいかもしれない………‼︎)
奥歯を噛み締めて、それでも諦めずに剣を構えてると、二人は襲いかかって来た。
その直後、リーファの前に誰かが二人降りて来た。男と女。初期装備ではなく、装備の揃ったシルフが二人だ。
「ッ⁉︎」
「うちの種族への手出しは、そこまでにしてもらおうか」
「お、お前は……⁉︎」
「シルフを狩るなら俺達の事くらい知ってるだろう?」
リーファは誰だか知らなかったが、サラマンダー達は知ってるようだ。剣を持ったまま動かなかった。
「………今なら逃がしてやるが、どうする?」
女性の方がそう言うと、サラマンダー達は武器を収めた。
「…………チッ、行くぞ」
「ああ」
そう言って、二人は飛び上がった。勝ち目はないし、五人で追いかけてるもう一人は確実に殺せる。
完全に一人取り残されてるリーファは、ポカンとしながら辺りを見回していた。女性の方は男性を見ると、レコンの炎の方を指差した。
男はレコンの炎に何か魔法のようなものをかけると、レコンは生き返った。
リーファは「そんなこともできるんだ……」と、思ったがとりあえずお礼を言った。
「あのっ、ありがとうございました……」
「いや、良い。同種族が襲われていれば、助けるのは当然だ」
「それで、あなたは……?」
「私はサクヤ。あっちはシグルドだ」
「あ、あたしはリーファです。あっちはレコン」
「それで、少し良いかな?」
「?」
何者だか分からないが、おそらくかなりやり手のプレイヤーなんだろう。ALO発売当初からやってるような。そんな人が、始めたばかりの自分に何の用なのか。
「私のパーティに入らないか?」
「……へっ?」
「君の動きは、剣道をリアルでやっているな?」
「っ!」
「初期装備であそこまで動けるということは、リアルでも大体同じように動けるということだ」
「…………」
リーファは目を逸らして答えた。別に隠すようなことでもないが、オンラインゲームではリアルのことは余りバラさない方がいいと聞いていたからだ。
「そういう人が一人は欲しいと思っていたんだ。無理なら引き下がるが」
サクヤに聞かれ、リーファは復活してもらっていたレコンを見た。めっちゃ縦に首を振っていた。どうやら、レコンも知ってるくらい有名な二人のようだ。
リーファは「うちのパーティと合同で良いなら」と答えようとした。が、そこで口が止まった。
(うちのパーティメンバー……?………あっ)
コイコイの事を思い出した。
「す、すみませんサクヤさん!」
「だ、だめか?」
「い、いえ、そう言うことじゃなくて。もう一人、あたしのパーティメンバーがいるんです!サラマンダーを五人相手にしています!返事はそれからでも良いですか⁉︎」
「へ?わ、わかった」
四人は飛んだ。
ー
少しひらけた場所。サラマンダーのうちの一人は、オークの攻撃を横に躱して回避しながら、カウンターで喉に突きを放って倒した。その直後、後ろのオークが襲いかかって来て、慌てて回避した。
「チックショウ‼︎なんつーとこに来ちまったんだよ‼︎」
ボヤきながらオークの追撃を回避して、またカウンター狙いで突きを放った直後、自分とオークの間に陰が入って来た。
その陰は片手剣を握る右手を速攻で動かし、自分とオークを叩き斬った。
「っ! て、テメェ……‼︎」
さらに、コイコイはズザッと着地しながら地面を蹴って、オークとサラマンダーにトドメを刺そうとした所、別のサラマンダーが大きな盾を持って自分の動きを止めた。
直後、背後からオークが棍棒を振り上げ、振り下ろして来た。コイコイは目の前の盾を蹴って、オークの股下に滑り込んで回避し、オークの一撃を盾に当てさせた。
オークの一撃を当てられた盾持ちは、オークを盾で押し倒すと、片手剣で目の前のオークを三回斬って倒した。
「ふぅ………!んっ?」
その倒したオークの後ろから、コイコイが突っ込んで来て、気の抜けたその一瞬を突いて、正面から斬り込み、片手剣を持つ手を斬り落とし、そのまま腹を左右に二回斬って倒した。
「キース‼︎」
さっき、一瞬斬られたサラマンダーが声を上げながら、目の前のオークを倒して、コイコイから距離を取った。
ようやく、一人減ったサラマンダー。さっきからずっとこの調子で乱戦である。当初は、サラマンダー達はオークを対処するのに三人、コイコイを集中して落とすのに二人付けていたのだが、コイコイが上手く捕まらないように動き回って、目の前の敵全員に小突いたりするので、作戦通り実行することが出来なくなっていた。
「野郎……‼︎ふざけやがって……‼︎」
「息つく間もなくて魔法の詠唱も出来やしねぇ」
「このままじゃ、あいつの思惑通りだぞ」
お喋りしながら、オークの相手をしていた。
その内の一人が、ピンと来たのか「待てよ」と呟いた。そして、ニヤリと微笑むと、一番近くの奴に言った。
「おい。奴がこんな危ないところに駆け込んだのは、乱戦にして俺たちの数の優位を減らすためだ」
「んな事は分かってる」
「なら、俺達はこんな所で奴に付き合う必要はないだろ」
「…………なるほど。でも、今日はあいつを倒すためにここに来たんだぞ」
「これ以上、ここでオークの群れをやりながらあいつ一人を仕留めるんじゃ、割に合わない。既にキースがやられたし、さっさと退却するべきだろ」
「…………わかった」
そう言うと、全員はひらけた場所から退散するため、出口に向かって走り出した。邪魔になるオークだけを仕留めて、さっさと出て行った。
その様子はコイコイの目にも映った。
(ま、普通そうなるよな)
サラマンダー達はコイコイを出待ちしようとした。だが、メッセージが入ってるのに気付いた。さっき別れた三人からだ。
「……おい、近くにサクヤとシグルドがいるってよ」
「マジか……。これ以上は無理だな」
「先帰ってるって。俺達も帰るか」
飛んでサラマンダー領に帰った。
(なんだ、あいつら帰ったのか?)
オークと戦いながら、コイコイは四人の背中を見上げた。コイコイもそれならここにいる必要はない。さっさとおさらばしようとした。
だが、こういう時にアクシデントは起こるもので。オーク達がなぜか急に退き始めた。
「…………?」
周りの様子がおかしいので、自分もさっさとそこから出ようとした。だが、それは出来なかった。
オークの中でも、一廻りデカイオークが現れた。棍棒ではなく斧を担いでいる。一言で言うと、レアボスの登場であった。
「…………マジか」
心の中で揺らいだ。倒すか、倒さないか。
しかし、野球とゲーム大好きのこのバカの振り子は速攻で傾いた。
(ぶっ殺す!)
突撃した。その直後、自分の目の前に男と女が降りて来た。さらに、その後にリーファとレコンも。
「?」
「これは……レアエネミーか?」
降りて来た女性プレイヤー、サクヤが聞いてきたが、コイコイはリーファを見て言った。
「………レアボスだよ、リーファ」
「なんであたしだけに言うの?ていうか、サラマンダーは?」
「どっか行った」
「はぁ?」
「ま、とにかく目の前の奴倒そう」
「う、うん」
全員でレアボスに襲い掛かった。
ー
サクヤ、シグルドを主体に戦い、リーファ、コイコイ、レコンはそのサポートに回っていた。あっさりとレアボスを倒したものの、レアドロップはなし。
五人はスイルベーンの街に戻り、喫茶店に入った。
「えーっと、こちら、サクヤさんとシグルドさん。さっき、あたしとレコンを助けてくれた人達だよ。で、これが弟のコイコイです」
「…………」
リーファは双方に紹介した。サクヤとシグルドは会釈し、コイコイはギューッとリーファにくっ付いている。
「………私達、彼に何かしたか?」
「気にしないで。ただのシスコンだから」
直後、リーファの脇腹にドスッと突きが入った。
「ふぁひょっ⁉︎」
「り、リーファ?」
「な、なんでもないです!」
キッとリーファはコイコイを睨んだが、コイコイは知らん顔。
「………で、どうする?先程の話だが……」
サクヤに聞かれて、リーファは頷いた。
「こちらこそ、お願いします。でも、コイコイとレコンも一緒でいいですか?」
「ああ、構わない」
サクヤが握手を求め、リーファはそれに応えた。