東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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また載せるのに時間がかかってしまった。


10話・図書館へ行こう。

レミリアと魔理沙と別れた後、高橋とフランはあてもなく紅魔館を彷徨っていた。

「ねぇヨシノ」

「ん?」

「さっきのヨシノの能力ってどうやって手に入れたの?それとも生まれつき?」

「いきなりだな」

突然のフランの質問に高橋は考えた。

(さて、どう答えたものか・・・。別に適当に答えてもいいんだがあまり嘘は好きじゃないんだよなぁ)

高橋としては自分のこの力のことはあまり人に言い広めたい訳ではない。人に広まれば対策を練られる可能性も有るのだから(既に一人には言っているが)。

「後天的だよ。ガキの頃に色々あって手に入れたんだよ」

「ふうん。ヨシノって外の世界ではどんな仕事してたの?」

「そんなに俺に興味あるのか?」

「ええ。だって面白そうなんだもん」

「モテる男は辛いなぁ」

「それともう一つ聞きたいんだけど」

「・・・ツッコミがないって辛いなぁ」

ボケに対してツッコミが無いというのは予想以上に虚しいのだ。

「それで?もう一つ聞きたい事って?」

「今好きな人いる?」

「なんで急にそんな事聞くんだ?」

「レディにそんな事言わせる気?」

頬を赤らめて俯きながらフランが言った。

この瞬間、高橋の脳内で緊急会議が開かれた。

 

(これはまさかのフランからのアピールでは!?)

高橋Aが脳内で叫んだ。

(落ち着け俺!これはフランの悪ふざけの可能性が高い!今日会ったばかりの奴にそんなステキイベントが起こるはずないだろ!)

高橋Bが止めにかかる。

(だが世の中には一目惚れと言うものが存在すると聞く。それが今起きたとしても何ら不思議ではないのでは?)

すかさず高橋Cが割って入った。

(貴様正気か?お前は誰かに一目惚れされる様なツラしてんのか?いっぺん鏡見てから出直して来いや)

高橋Cの言葉に高橋Dが言った。

(では性格から好きになったと言うのはどうだろうか?短い時間とはいえ会話もしたんだ。その可能性はないか?)

高橋Eが聞いた。

(そんなので惚れられるくらいなら今まで彼女が出来なかったのはどう説明する気だ?)

高橋Fの言葉を最後に、その場の全員が黙った。

(こうなっては仕方ない。これが本当にフランのアプローチかそれとも単なる彼女のイタズラなのか、多数決を取りたいと思う。これがフランのアプローチと思う者は挙手を)

高橋Aが言うとAを含め、三人が手を挙げた。

(イタズラだと思う者、挙手を)

残りの三人が手を挙げた。

共に三対三、同数だ。

(これでは決まらんではないか!)

高橋Aが叫ぶと高橋Bがやれやれと言った感じで提案した。

(こうなったら仕方ない。ここは一つ、これで決めよう)

高橋Bの手には一枚のコインがあった。つまりはそう、コイントスだ。

(表ならgo、裏はstay。それでいいだろ?)

言い終わると同時に高橋Bがコインを打ち上げた。全員の視線が宙を舞うコインを追いかける。その結果 ─────

 

「そんなハニートラップは効かねぇよ」

約三秒の脳内会議の結果、高橋はなるべく平然を装って答えた。

「なんだ、つまんないの」

やはりと言うべきか、フランの悪ふざけだった様だ。

(ほらね!思った通りだ。所詮は子供のイタズラだな。大人としては少し引っかかってあげるべきだったかな?俺もまだまだだなぁ。・・・別に悔しくやんてねぇし)

気のせいだろうか、二つの目からなぜか水が流れていきそうに感じるのは。

「そう言う冗談は俺だけにしとけよ。他の奴に言ったら面倒ごとにでもなりかねん」

「強ち冗談でもないかもよ?」

「本当に好きになるぞ?」

「良いよ?」

「なんだこの会話」

高橋がそう言うとフランも笑った。

「あーあ、折角彼女が出来るチャンス逃したね」

「まだ続けんのかよ、この会話」

「いや?」

「面白いから良しとするよ」

「ならいいじゃない。このまま歩くだけも退屈だし」

「それもそうだな。・・・あ」

フランと適当な話をしていると高橋はあることを思い出した。

「どうしたの?」

「いや、悪いんだが、ちょっと行きたいところができた」

「どこへ行くの?」

「門番さんのとこ」

「吸血鬼に対して外に出ろって気は確か?」

「無理についてこなくてもいいんだぞ?」

「そしたら暇じゃない」

「日傘とかねぇの?」

「あるわよ?」

「なら使えよ。持っててやるから」

「あれどこにあったっけ?普段外に行かないし使わないからわかんないや」

「それならもういっそのこと捨てちまえ」

「嫌よ。いざっていう時に困るもの」

「そのいざって時が今なんじゃないですかねぇ?」

「なら探して来て」

「そういうのは咲夜さんにでも頼め。依頼なら聞くけどな」

「優しくないのね」

「生憎とろくでなしな人間なものでね」

「嫌いになっちゃうわよ?」

「そいつは困った、なら探してこよう」

流石の高橋も美少女に嫌われるのは御免だ。

(まぁ無理に今門番さんに会う必要もないんだけどな)

そう考えると不思議と後回しにしてもいいかと思うのは高橋の悪い癖だろうか。

「やっぱ今日はいいや。よく考えたら明日帰る時にでも済む話だ」

「そ。ならそうしましょ」

そう言って結局二人は館の中をまた歩き回ることにした。

 

 

それからしばらくして歩き回った後、夕食の為に再び全員が集まり、食事を楽しんでいた。

「この料理、どれも美味いな」

「勿論よ。なんせ咲夜の作る料理だもの」

えらく満足気にレミリアが言った。自分の従者が褒められたのだから主としても嬉しいのだろう。

「ところで早速で悪いのだけれど、外の話を聞かせてくれないかしら?」

「私も聞きたい」

「俺に答えられる範囲でいいならな」

「なら一つ目、普段どんな依頼が多いのかしら?」

「基本的にはいなくなったペットの捜索とか特定の人の身辺調査とか、言わば雑用に近いことがほとんどだな。あまり話しても面白いもんじゃないけどな」

「何か事件に巻き込まれるとかなかったの?殺人事件の解決とかその犯人探しとか」

レミリアに続いてフランも聞いてきた。

「フラン、それは便利屋の仕事じゃなくて探偵の仕事だ。またの名を死神とも言う」

「死神・・・」

「でもやってることはどっちも大して変わらないんだな」

隣の魔理沙が言う。

(まぁ全く無かったと言えば嘘になるんだけどな)

内心で嘘は言ってないからいいかと高橋は割り切った。

「なら今までで一番印象に残った仕事は?」

今度は魔理沙が聞いてきた。

「今までで、ねぇ・・・。とあるお偉いさんのフリをした事かな」

「え?何でさね?」

「決まってんだろ。身代わりだよ」

その言葉を聞いた途端、全員の顔色が変わった。大方の予想は容易いだろうから無理もないことではあるが。

「そのお偉いさんがある奴等から命を狙われててな、そいつらを誘い出してとっ捕まえる為に俺を替え玉にしたんだよ。皮肉な話でそのお偉いさんと俺の顔がよく似てたからな」

「よくそんな仕事引き受けたわね」

「俺だって最初は嫌だったさ。流石に死ぬのはまだ勘弁したいからな。だがちょいとばかり断れない状況になってな」

「どうして?」

「そればっかりは黙秘するよ。俺にも言いたくないことはあるからな」

「え〜、そんな〜」

「止しなさいフラン。無理に聞くだなんてレディのする事じゃないわよ」

「はーい」

レミリアの言葉に渋々と言った感じでフランが答えた。レミリアの方を見ると意味ありげに笑っていた。高橋の言いたくない理由を察したのだろうか?

そうして食事が終わるまでの間、高橋は三人からの質問責めに言える範囲で次々に答えていった。

 

 

そしてしばらくして解散となり、それぞれが部屋に入った頃、高橋も用意された客室で休んでいた。

「流石に疲れたな。頭使って身体動かして、飯は美味かったけど」

そんな独り言を言いながらベッドの上でゴロゴロしていると左手に激痛が走った。

「っつう。そういや、怪我してんの忘れてたわ。多少はマシになったけどこれはやっぱ一度見てもらったほうがいいかな。大袈裟かもしれんがなんかあったら怖いし」

明日魔理沙にでも聞こうかと思った時、ドアの方からノックの音が聞こえた。

「愛乃、起きてるか?」

魔理沙の声だった。とりあえず高橋は扉を開けて魔理沙を中へと入れた。

「魔理沙?なんだこんな時間に。夜這いにってわけじゃねぇよな?」

「なんでこの魔理沙様がお前の寝込みを襲うんさね」

「魔理沙が俺に惚れたから?」

「疑問形で言ったらもうダメだろ」

ご尤もな事を言われて高橋は黙った。

「で?要件は?」

「寝れないんだ。相手してくれ」

「帰れ。そして寝ろ」

「なんだよ。素っ気ないな」

「眠いし左手が痛いしでご機嫌斜めなんだよ」

「なら明日早速医者に見てもらうといいさ。その魔理沙様が連れて行ってやるからな」

言い終わると魔理沙は帽子を脱いでその場に座った。意地でも帰る気はないらしい。

「そうか。それはありがとう。なら明日に備えて早く寝よう。おやすみ」

「おいおい、女の子をそんな扱いしていいのか?寝れなくて困ってるんだ。明日連れて行く代わりに寝れるまで相手してくれよ」

えらくしつこく言ってくる魔理沙に高橋は諦めた。

「わかったよ。何をする?」

「トランプをしよう。持ってきたんだ」

そう言って魔理沙はポケットからトランプを出した。

「えらく準備がいいな」

「もっと褒めていいぞ。ポーカーでいいか?」

「お好きにどうぞ」

高橋が言うと魔理沙はカードをシャッフルした後にカードを配った。

(何でこうも俺に付いて回るのか。俺に惚れてるか、俺を監視してるかの二択かな。極端な話だが・・・)

無論、魔理沙の言うように寝れないから暇つぶしの相手にされている可能性もゼロではないが、それ以外に思いつくことはなかった。

(監視する理由としては魔理沙かもしくは他の奴がまだ俺を完全に信用していない為、俺が何をするかを見張ってるってところかな。となればそれを疑っているのは魔理沙以外なら誰だ?出会った人数も多くないから選択肢は少ない)

魔理沙を除くとして、高橋を疑う者がいるとしたらその数は当然絞られる。

八雲 紫。いや、これはあり得ない。何故彼に依頼した当人が彼を疑う必要がある。彼女の話では以前から高橋の事は調査済みのはずだ。ならばそんな必要はどこにも無い。

博麗 霊夢。可能性はある。出会ったばかりの頃よりは自然に接しているが、紫から依頼されていると言うのは高橋が言っただけで紫から説明があったわけでは無いのだ。心の何処かで疑いの心があってもおかしくは無い。

「愛乃、チェンジするか?」

「あー、二枚チェンジだ」

言って高橋は手札を二枚入れ替えた。

伊吹 萃香。まぁここは疑わなくてもいいだろう。嘘が得意なようにも思えない。

射命丸 文。彼女の場合は新聞の記事を書く為のネタを引き出そうとしてる可能性の方が高い。その為に魔理沙に協力を頼んだとしたら辻褄は合うようにも思える。

あと残るは今日会った紅魔館のみんなだが、ここに至っては判断材料が少ないので何とも言えない。無論、多少なりとも不信感を抱かれていて、それ故の監視という可能性もゼロではない。

「勝負だ。愛乃はどうする?」

「俺も勝負でいいよ」

でもそれなら魔理沙ではなく紅魔館の誰かが監視につくはずだ。これが全て高橋の考えすぎであるならそれで構わないのだが。

「フラッシュだ!」

「そうか。俺はストレートフラッシュだ」

「何!?」

とは言え、出会う人間全員を疑ってかかるのは相手との信頼関係に関わるし、何よりこちらの精神がもたないのでほどほどにしておこうと高橋は考えるのをやめた。

「おい、愛乃!お前イカサマしたろ!」

「うるせぇな、夜にデカイ声で騒ぐなよ。あと、仮にそうでもイカサマをされたお前が悪い」

「なんだって?」

「イカサマはバレなきゃただの技術。勝つ為のテクニックなんだよ。イカサマはバレて初めてイカサマになるんだ。言ってる意味わかるよな?」

「それは・・・」

「それに、俺はイカサマを使わないと判断した時点で魔理沙が悪い。俺だってお前の言うイカサマくらいする。それは麻雀勝負した魔理沙がよく知ってるだろ」

初めは食ってかかってきた魔理沙も徐々に黙って聞いていた。

「それにお前が初めて俺とポーカー勝負した時、負けても俺は文句一つ言わなかったろうが。イカサマされた俺が悪いんだから。負けた後にグダグダ文句しか言えない奴はただの負け犬だ」

「ああそうかい。イカサマされたこの魔理沙様が悪いってんだな。いいぜいいぜ、敗者は大人しく帰るさ。遊びと勝負も区別出来ない奴にはもう用はないぜ。愛乃のバーカ!」

そう言って魔理沙は置いてあった帽子を掴んで部屋を出て行ってしまった。

「あー、やべぇ。流石にやりすぎた・・・。ちょっとからかうだけのつもりだったんだけどなぁ」

ご機嫌斜めだなんだと言ったが、自分でも思っている以上だったようだ。流石に大人気無かったと高橋は反省した。

「あれじゃ今から行っても話は聞いてくれねぇわな。明日朝から謝るとして、早く寝ちまおう、って、ん?」

よく見ると先程魔理沙がいた辺りに一冊の分厚い本が置いてあった。魔理沙が忘れていったものだろう。

「これってまさかここの図書館の本だったりするのか?だとしたら、明日図書館に持っていくか」

そう言うと今度こそ高橋はベッドで眠りについた。

 

一方その頃、魔理沙の部屋。

(チクショウ。何もあそこまで言わなくてもいいじゃないか。私はただ、愛乃と遊びたかっただけなのに。愛乃の馬鹿野郎・・・)

魔理沙は一人そう考えながら眠りについた。

 

 

翌朝、目が覚めた高橋はその日のやる事を頭の中で順番に考えた。

一つ目は昨夜の事を魔理沙に謝る事。

二つ目はこの紅魔館の図書館へ行き、閲覧の許可を得ること。

三つ目は魔理沙とともに医者に行く事。

(二つ目は交渉次第でどうにかなるとして、問題は残りの二つだな。流石に昨日は勢い任せに言いすぎたから許してくれなきゃそこまでなんだよなぁ。医者の方は最悪放っておいてもそのうち治るかもだけど)

そう考えながら部屋を出た。するとドアの前にある人物が立っていた。

「ん、咲夜さん?」

「おはようございます。高橋様」

「おはよう咲夜さん。突然で悪いんだけど魔理沙ってどこにいるか知らない?」

「彼女なら朝食の準備が出来ていると言ったら広間の方に」

「そっか。ありがとう」

そう返すと高橋は広間に向かって歩いた。

(やべぇ。朝飯って事は他の奴らの目もあるんだよなぁ。流石にそこで謝るってのはなかなか気恥ずかしいんだが・・・。とは言え、悪いのは俺だしな。素直に謝ろう)

広間に着くとそこにはレミリアと魔理沙の姿があった。

「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」

「ああ、お陰様でな」

高橋の顔を見るとレミリアが言った。魔理沙に関しては目も合わせようとしなかった。

「おはよう、魔理沙」

「・・・おはよう」

渋々と言った様子で挨拶を返した。余程怒ってるようだ。

「昨日はその、悪かったな。大人気なくお前にあたる様な真似して」

「・・・」

(わぁ、ご機嫌斜めぇ)

自業自得なのでこればかりはなんとも言えない。

「あら?昨日何かあったのかしら?」

小声で言ったつもりだったのだが吸血鬼の耳は誤魔化せなかったようだ。

「いや、気にすんなよ」

「そう」

そう言うと興味を無くしたのかレミリアはそれ以上聞いては来なかった。

 

それからフランもやってきて朝食を食べ始めてから時間が経ったが、魔理沙は一向に高橋と口を聞こうとしなかった。レミリアやフラン達とは普通に会話していたが。

「ねぇ愛乃。貴方はこの後どうするつもり?」

フランと魔理沙が広間を出た後、高橋はレミリアに呼び止められた。

「ちょいとばかりここの図書館にいるって言うパチュリーさんとやらに会いに行こうと思う。その後は帰るさ」

「パチェに?別に構わないけどどうしてかしら?」

パチェと言うのはレミリアのパチュリーさんの呼び方だろうか?

「図書館の本の閲覧許可が欲しくてな。単純にあれだけの本を管理してるって人にも興味があったしな」

「パチェがそう簡単に許可を出すか疑問だけど・・・。ならもう一つ聞いて良いかしら?」

「どうぞ」

「昨夜、魔理沙と何があったのかしら?」

ニヤつきながらレミリアが言った。

(最初からそれが狙いだろうが)

高橋は心の中で舌打ちした。

「何もない。では帰さないわよ」

「お嬢様がお気になさる事は何もございませんよ」

「ふざけてる?」

「別に。ちょいとばかり魔理沙と口論になっただけだよ。大人気なくアイツにあれやこれやと言いまくって不機嫌にさせちまった」

「反省はしてるみたいね」

「まぁな。まさかあそこまで口を聞いてもらえねぇとは思ってなかったけどな」

「それは自業自得でしょ。精々頑張りなさい」

「わかってるよ。なんとか機嫌直してもらうよ」

そう言うと高橋は広間を後にした。当然レミリアが一人残った。

「全く。世話のかかる奴」

少し笑いながらそんなことを言った。

 

 

レミリアと別れた後、高橋はとりあえず自分が泊まった部屋に戻った。昨日魔理沙が忘れていった(恐らくここの図書館の)本を回収する為だ。

「こいつはパチュリーさんとやらに返しておこう」

部屋に入ると置いてあった本を手に取りながら言った。とりあえずはこのまま後で本を返しに行こう。

コンコン。

と思っていると部屋の扉を叩く音がした。

「はい?どちら様?」

扉を開けるとそこには魔理沙がいた。

「魔理沙?どうしたんだ?」

「・・・いや、レミリアの奴が高橋が私に用が有るらしいから部屋に行けって」

高橋から視線を逸らしながら魔理沙が言った。

(・・・あのお嬢様に助けられたって事かな)

後で礼を言いに行こうと心の中で思った。

「それで?何もないなら私は帰るぞ」

「あーいや、あれだ。昨日は言い過ぎた。すまん」

高橋は素直に頭を下げた。

「もう良いよ。私こそその、さっきは悪かったな」

「・・・ふっ」

「・・・なんだよ」

突然笑い出す高橋に魔理沙が聞いた。

「いや、なんかこう言うのって俺達らしくないと思ってな」

「言われてみればそうかも知れないな」

「互いにごめんなさいしたんだからこれ以上言いっこなしにしよう?」

「そうだな。愛乃はこの後どうするんだ?」

「ここの図書館にでも行ってみようかってな」

「・・・そっか。なら私は外で待ってるぜ」

「なんだよ、一緒には行かないのか?」

「流石に毎日行くわけじゃないさ」

「毎回やってたらすぐ捕まるもんな」

「そう言う事じゃないんだけどな」

「まぁそう言う事ならあまり遅くならないようにするさ。適当に待っててくれ」

「わかった。適当にその辺をうろついてるんだぜ」

こうして魔理沙と仲直りを終えて、高橋は一人、図書館にいるというパチュリーさんとやらの元へと向かった。

 

 

「何度見てもやっぱ広いな・・・」

魔理沙と別れ、本を持って再び図書館へとやってきた高橋は思わず呟いた。取り敢えずは小悪魔を探せばパチュリーさんの所へ案内してくれるんだろうか?そんなことを考えながらフラフラと歩いていると都合良く小悪魔を見つける事が出来た。

「あ、高橋さん。今日はどうしました?」

「今日はパチュリーさんにお願いに来たよ。ここでの閲覧許可をもらいにな」

「わかりました。ではパチュリー様に紹介しますから付いて来てください。一応貴方の事は説明してますから」

「えらく準備がいいこった」

言いながら高橋は小悪魔の後について行った。

(一応この人の事は説明したけどパチュリー様がそんなにすぐに許可を出すかな?厳しいと思うけど・・・)

後ろを歩く高橋をチラリと見ながら小悪魔は考えた。実際問題会ったばかりの人間に自分の大事な本の閲覧許可などそう簡単に出すとは思えない。

しばらく歩き、図書館の最奥まで辿り着くと一人の少女のような見た目の女性が椅子に座りながら本を読んでいた。こちらには気づいていないのか、目も向けてこない。

(・・・全体的に紫だ。・・・しかもぱっと見かなり華奢だな)

パチュリーを見た瞬間の高橋の素直な感想だった。髪も紫色なら着ている服も紫だった。ゆったりとした服が彼女の雰囲気とあっているような感じがして個人的には好きだった。

「パチュリー様、お客様ですよ」

「・・・」

まるで反応がない。完全なシカトだ。

「あー、これは完全に本を読むのに没頭してますね」

「なるほど、これじゃあ魔理沙に盗まれる訳だ」

高橋がそう呟くと、先程までこちらに無関心だったパチュリーさんが漸くこちらに視線を向けた。

「あなたが小悪魔の言ってた、あの泥棒の手下?」

あの泥棒と言うのが魔理沙の事だと言うのはすぐわかった。一体彼女は今までどれだけの犯行に及んで来たのだろうか。

「友達であっても手下じゃないですよ。むしろ俺は貴女の味方になれると思うんですけどね?」

「味方?」

その言葉にパチュリーが聞き返した。

「はい。つまりこう言う事です。これは貴女の本ですよね?」

そう言って高橋は魔理沙が昨日忘れていった本を差し出した。瞬間、パチュリーの顔つきが変わった。

「・・・あなた、これをどうやって?」

恐らくどうやって取り返したか、と聞きたいのだろう。当然か。昨日魔理沙が盗んでいった物をその翌日に自分の所に戻ってきたのだから驚くのも無理はないだろう。

「昨晩魔理沙が俺の部屋に忘れていったのを回収しておいたんですよ。多分ここから持っていった物だろうと思って」

「だったらおかしいじゃない。魔理沙が忘れていったのを知っているなら魔理沙に渡すのが普通じゃないの?友達なら」

「まぁそうするのが普通かも知れないんですけどね。でも俺だって下衆な人間です。これをどう使えば損をするか得をするかくらいは考えますよ」

「何を言いたいの?」

何となく察しているであろうパチュリーが聞いた。

「簡単な話ですよ。これを魔理沙に返して泥棒の手下になるより、これを持って貴女に取引をした方が俺にとって得だと判断したので」

「一応聞くけど、仮に取引をしてあなたは何を望むのかしら?」

「ここの本をいつでも自由に読める閲覧許可をいただきたい。そして魔法についても色々教えてもらいたい」

「・・・もしも断ったら?」

「このままこの本を魔理沙に返すだけですよ。どっちに渡しても俺は困らないので」

「ずるい言い方するのね」

「優しい人間じゃないので」

「・・・わかった。でも条件があるわ」

少しだけ考えてから、パチュリーが言った。

「条件?」

「ええ。私が許可する範囲でならここの本は読んでいいわ。でも魔法は別よ。魔理沙から本を取り返して来てくれたらその度に教えてあげるわ」

「おー依頼ってわけだ」

「依頼?」

パチュリーが聞き返してきた。そう言えば彼女には高橋の仕事については話していなかった。

「実は俺、便利屋なんです。報酬に応じて依頼を受けるってわけですよ」

「この紅魔館にもレミリア様からのご依頼でお越しになった様ですよ」

隣にいた小悪魔が補足するように言った。

「そう。なら依頼という形でお願いするわ。本が無事に帰ってくれば問題ないもの」

相変わらず本を読みながら淡々と彼女は言った。

「はい。交渉成立です。俺が本をここに返しに来たら魔法について教えて下さいね」

「わかったわ。あと、本を読むのは構わないけど、丁寧に扱って。あと私が許可してない本は読んじゃダメ」

「危険な魔法の本が有るんですか?」

「自分の体で試してみる?」

「やめときます」

まだ死にたくはない。

「そ。取り返してくれる事を期待してるわ」

「はい。それと名乗るのを忘れてたな。俺は高橋 愛乃って言います。何かあればいつでも言ってください。報酬次第では請け負いますから」

「・・・パチュリー・ノーレッジよ。お願いする事はあまりないと思うけど」

二人の会話を聞いて隣にいた小悪魔は少しばかり驚いた。

(まさかパチュリー様を相手にこうもあっさりと条件付きとはいえ許可を取るとは)

「なら今日はこれで帰ります」

「そう。次来る時は本を持ってきてね」

そんな会話を交わしながら高橋は図書館を出て行った。

 

 

「どうでした?彼」

「どうって?」

高橋が出て行った後、小悪魔がパチュリーに聞いた。

「初めて会った感想とかですよ」

「何とも言えないわね。本を返してくれた事には感謝するけど」

「でも本を取り返してもらう為とは言え、よく魔法を教えるのを許可しましたね」

「仮に教えたからと言って必ず魔法が使えるわけじゃないわ。それにもし使えたとしても少しかじった程度の魔法じゃ特に何も出来ないわ」

「?」

いまいち理解していなさそうな小悪魔。

「つまり、まともに使えるようになるにはある程度教わらなければいけないの。そうなれば彼は嫌でも何度か私に本を持ってくる」

小悪魔は先程パチュリーが言った言葉を思い出した。

『魔理沙から本を取り返して来てくれたら()()()()教えてあげるわ』

そこで小悪魔も気がついた。誰も一度で全て教えるとは言っていないのだ。教える範囲はパチュリーのさじ加減なのだ。

「これで多少はあの泥棒から本を取り返してくれる可能性が上がるわね」

少し笑いながら彼女は本のページを捲った。

どうやらこの魔女の方が一枚上手だったようだ。

去って行った高橋にほんの少しだけ同情する小悪魔だった。




長々書いてる割にはあんま話し進んでない気がしてきたな・・・。
まぁゆったり書いてるんでもしよかったら次も見てやって下さい。

誤字脱字、ご意見ご感想などあればよろしくお願いします。
ではまた次回。
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