「さて、次は人里か」
竹林の外まで案内してくれた鈴仙と別れ、高橋と魔理沙は次の目的地を話し合った。
「何で人里なんだ?一度萃香と来たろ?」
「人里にいる上白沢 慧音さんって人に会いたくてな。色々と人里に顔がきくらしいから話を聞こうと思ったんだ」
「成る程な。だったら寺子屋に行くか。あそこに行けばまずいるだろ」
魔理沙曰く、そこまで遠くないそうなので歩いて移動する事にした。
「こうも早くまた来る事になるとは」
人里に来て開口一番に高橋はそう言った。
「前回は萃香で今回はこの魔理沙さんって、お前は出歩く度に女を取っ替え引っ替え忙しいな。次は霊夢か?」
「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「女ったらしの遊び人」
遊び人って点は合っている。
「お前が男だったらどつき回してたよ」
「図星を突かれたからって暴力に走るのは感心しないぜ」
「そんな事ばっか言ってると男も寄ってこないぞ」
「今私に寄って来てる男が隣にいるぜ?」
「俺はガキに興味はねぇよ」
誰が好き好んでこんな小生意気なガキに惚れなきゃならんのだ。
「それより、早くその慧音さんとやらに会いに行こうぜ」
「そうだな。こっちだ」
更に歩くと一軒の建物の前で二人は足を止めた。
「ここだぜ」
「まさかこの歳になって勉強の場に来る事になろうとは」
寺子屋の入り口を見ながら高橋が言う。やはり昔ながらの木造建築だった(人里の殆どがそうなのだが)。
「何だよ、愛乃は勉強は苦手か?」
「人並み程度には出来るよ。勉強も嫌いじゃなかったしな」
正確に言うと新しい知識が入るからと言う理由で勉強は好きな方だった。
「つまらない奴だな」
「もしかして魔理沙って俺の事馬鹿だと思ってるか?」
魔理沙の顔を見ると、よくわかってるじゃないかと言わんばかりの表情で返された。
「まぁ、んなこたぁどうでもいいや。早く入ろうぜ。授業中なら待つしかないけど」
ここで立ち尽くしても仕方ないので二人は静かに寺子屋の中に入って行った。
中に入ると部屋から何人かの話し声が聞こえた。中の様子は障子に遮られていて見えない。
「お、慧音の声だぜ。授業中だな」
「終わるまで待つとするか」
「いつ終わるかわからないけどな」
「なら待ってる間、昼飯賭けてギャンブルしようぜ」
「乗った!」
高橋の提案に賛成する魔理沙。
「ならどうやって勝負するか。コイントスか、ポーカー・・・はトランプが無いから無理か。ならこうしよう。あの部屋から最初に出て来るのが男か女か」
「私達以外のってルールをちゃんと付けとけよ」
文の時と同じ手は使えない様だ。まぁ魔理沙の目の前でやっていたのだから仕方がないが。
「わかった。なら今あの部屋にいる人物で、最初にあの部屋から出て来るのが男か女か。そしてこのギャンブルの間、俺達は部屋の中にいる人達に対して一切のアクションを禁止。これで良いか?」
「勿論さ」
「魔理沙が決めな。俺はその逆でいい」
その一言を聞いて魔理沙は考える。どちらを選ぶのが正しいか。
(確かここの子供達は男子の方が多かったな。そうなれば確率的には男子の可能性が高いか?)
朧げな記憶を頼りに考える。魔理沙達からは中の様子は障子に遮られていて男女の数はわからない。
(でも最初に出て来るのが子供とは限らないか。最初に慧音が出てきたらその時点で子供の割合なんて関係なくなる。生徒が出て来るとなったら十中八九男子だとは思うんだが・・・)
この時点で魔理沙の中では『出て来るのが男か女か』から『出て来るのが男子生徒か慧音か』に変わりつつあった。ならば終わると同時に慧音をすぐに呼び出して部屋から出させるか?いや、それではルール違反になって魔理沙の負けとなってしまう。
(失敗したな。最後のルールだけ無ければ上手く誘導出来そうなものなのに)
文の時の様な動きを封じようとして動いた後にそこで満足してしまった自分のミスだ。慢心して高橋の最後の提案に乗ってしまった決定的なミス。勿論これは高橋の第二の策でもあった。
常に策は二つ以上用意しなければ、勝てるものも勝てないのだ。
しかもこの慢心は高橋の一つ目の策を封じた事によるものだけではない。
以前、魔理沙は初めて会った時に高橋とのポーカー勝負に勝っている。その時の事が脳裏によぎっていたのだ。そして魔理沙は無意識に考えてしまった。
『そこまで考えなくてもまぁ勝てるだろう』と。
自分は一度勝っているのだから確かにそう思ってしまっても仕方がないのかもしれない。だが、勝ちを常に信じて求めるのと、手を抜いて勝利を求めるのとでは雲泥の差だ。
それを感じて魔理沙は昨夜のポーカー勝負を思い出した。あれだって油断して彼のイカサマを見逃して負けたのだ。危うく同じ様な事を繰り返すところだった。
昨日と違うとすればイカサマの余地が無い点だろうか。
いや、今更そんな事を思い出しても仕方がない。本題に戻ろう。
(確率は五分五分か?いや、そもそも慧音が最初に出て来る可能性は本当にあるか?)
一つ一つの可能性を思案する魔理沙。数多くの可能性を考え出したらキリがないかも知れないが、考えない事には始まらない。
そしていつだったか、授業が終わった時の慧音を見た時の事を魔理沙は思い出した。
(そうだ。確かあの時、慧音は子供達が居なくなってから最後に部屋を出てた!だったら今回も同じ可能性があるぜ)
予め慧音の元に会う約束が有ればこの仮説は崩れるかもしれないが、今回は突然の訪問だ。当然慧音に連絡などしていない。
そうなればさっき魔理沙が考えた『出て来るのが男子生徒か慧音か』と言う前提が崩れる事になる。そうなれば当然人数の多い男子生徒の方が出てくる可能性が高い。
つまり魔理沙の答えは、
「男だ」
「わかった。なら俺は女の方だな」
高橋が答えると部屋の中から障子が開けられた。授業が終わったのだろうか?
そして中から出てきたのは ───
「お前達、そこで何をしているんだ?」
上白沢 慧音だった。
「成る程。今回の異変について私に話を聞こうと思って来たのか」
先の件から数十分後、二人は慧音にここに来た目的を話した。
因みに二人は教室の中で正座させられている。理由は単純。
「会いに来るのは勝手だが、人の授業の邪魔をするんじゃない」
「「はい」」
結果として言えば、賭けは高橋の勝利だった。魔理沙の推測は悪くは無かった。寧ろ順当に行けば間違いなく魔理沙が勝っていただろう。だが、今回は魔理沙の推測に一つだけ落とし穴があった。
『授業が終わった際に誰が出て来るか』と言う点しか考えていなかった事だ。
つまり授業が終わる前に誰かが出て来る可能性を考慮していなかったのだ。
そして高橋は何となくだが慧音が出て来る気はしていたのだ。何故なら、
(そりゃ、授業中に外から五月蝿い話し声が聞こえたら気になって出て来るよな)
ある意味当然と言えば当然の結果だった。
そしてお互いの自己紹介が終わると同時にお説教へと移行したのだ。
「それで高橋 愛乃と言ったか?私に聞きたい事と言うのは?」
「異変が起きてから人里にも多少なりとも影響が出てると聞いたから人里の事に詳しい慧音さんに話を聞こうかと」
高橋の言葉を聞いて慧音は少しだけ考える素振りをした。
それは高橋を疑っているからなのか、どう伝えれば上手く説明出来るかを考えているからなのか、高橋には判断出来ない。
「人里での影響と言ったが、お前はどこまで知っているんだ?」
「あくまで噂程度だが、今回の異変を利用してギャンブルで悪事を働いたりしている輩がいるって位だな」
「因みにそれは誰から聞いた?」
「永遠亭の鈴仙から」
「成る程」
そう言って彼女は再び考え込んだ。
「お前の言う通り、今回の異変を利用する輩が里の中にいたのは事実だ。だがなぜそれで君が動く?仮にもお前は外の世界の人間だ。ここで何が起きても然程関係無いように思うが?」
当然の疑問を聞いてくる慧音。
「これでも一応今回の異変解決が俺の仕事なんでね。長期間幻想郷にいるつもりだ。そうなれば俺だって人里で活動する事だってある。それなのに人里がまともに機能してませんってなったら俺自身困るんでね」
自分は決して優しい人間では無いと高橋は自覚している。だから見知らぬ誰かの為に世話を焼いてやろうとか手を貸してやろうなどとは思わない。あくまでこれは自分への後々の不利益などを考慮した上での行動だ。間違っても『優しい人』だとは高橋は思われたくないと思っている。だから自分の考えは大概相手に伝える様にしている。
「利害は一致してると思うんだけどな?このまま放っておけば良くない事を企てる奴は増えるかも知れない。そうなれば里の人間で困る奴も増える。そうなれば遅かれ早かれ俺も困る事になる。まぁそれを利用して依頼料取って仕事するって言うのも手かも知れないけどな」
再度説明する様に高橋が言った。それを聞いて慧音も考える。
(この男の目的は今回の異変解決。なら確かに活動範囲が狭まるのは彼としても困る。だったら問題が起きる前に対策をしておこうと言うこの男の言い分は尤もか)
高橋の言葉に裏が無いか、矛盾が無いかを考える慧音。
(聞いた話では今この男は霊夢の所で世話になっているらしいな。何かしら裏が有ったとしても霊夢がそれをみすみす見逃すとも思えない・・・。ならば少なくとも今は信用してもいいか)
渋々と言った感じで慧音はそう結論付けた。慧音個人としては軽薄そうな高橋の事はまだ信用していないが、会って間もないのだから仕方がないと言えるだろう。
(わぁ、明らかに俺を疑ってるよ。少なくとも俺個人を信じてねぇな。霊夢の時と同じ雰囲気だよ、これ)
その気配を高橋も感じ取っていた。
「わかった。ならお前にも里で何かトラブルが有れば解決を頼もう」
「その代わりと言ったら何だが、今後色々と情報提供なんかをしてくれるとありがたい」
「情報提供?」
「何処かで変わった動きが有ったとか、異変が起きてからこんな噂を耳にしたとかそんな事さ。生憎とこっちは異変解決を頼まれはしたけど幻想郷について殆ど何も知らないんでね。些細な事でも知りたいんだよ」
「てっきり解決してやる代わりに金銭でも差し出せと言うかと思ったんだがな」
「それでも良かったが、今後を考えたら力のある人との繋がりと確かな情報が欲しいからな。それに生憎と今は金には困ってないんだ」
そもそも人とのコネクションを作るのに必要なのは信用だ。それに金で作られる信用なんてものは有りはしないし、仮に有ったとしても脆すぎる繋がりだ。そして信用を作るのは確かな実績だ。
「なんせ仕事が便利屋なもので、人からの信用が大事なんですよ」
「便利屋、か。何かあれば私も依頼しても良いか?」
「報酬さえいただければ」
「わかった。それはそれとして、知りたい事は他にあるか?」
なんだかんだ言いながら、慧音の対応が少し柔らかくなった様に感じた。少しは高橋に対する警戒を緩めたのだろう。
「取り敢えずその悪事を働いた奴の事と被害を受けた店側の事を教えてくれ」
「悪事を働いたとされているのが銀太と言う青年だ。以前から度々悪さをしていたようだが、今回の異変を知ってお前の言うように店側と勝負をして店側に被害を与えたようだ」
「でもただ店の奴とギャンブルしてるなら言う程問題でもないんじゃないか?イカサマだってバレなきゃ問題ないんだろ?」
ここに来てようやく魔理沙が口を開く。
「それだけなら確かにそんなに周りも騒ぎはしないだろうな。ちょいとばかり店側の方が運が悪かったとか言ってな。でも問題は多分そこじゃ無いんだろ?」
言いながら高橋が慧音へ視線を向ける。
「・・・ああ。問題は賭けをする前なんだ。どうやら初めは店側も勝負を断ったらしいのだが、どうも青年の方が賭けを断れない様に動いていたらしい」
「脅迫って事か?」
魔理沙の問いに無言で頷く慧音。
「つまりはこういう事か?そいつは店に入ると同時に『ギャンブルに参加しろ。でなきゃ店を荒らすぞ』みたいな事言って無理矢理させたって言うのか?」
「まぁそう言う事になるんだろうさ」
元より評判の悪いらしいそいつならそんな事を考えついてもおかしくは無いかと高橋は内心で思った。
「まぁギャンブルで負けたのは店側の責任としても、流石にそんな真似を今後もやられたらこっちとしても迷惑だな。飲食店全部でそんな真似されたら里の店が全部潰れるぞ」
「どうするんだよ?」
「ん?パッと思いつくだけの案ならまずは被害が悪化しない様に店の人間がギャンブル出来ない様にするか、直接その銀太って奴の所へ殴り込みをかけるかだな」
「やり方は任せるが、あまり手荒な真似はするなよ」
「わかってるよ。俺だって無駄に反感を買いたいわけじゃないからな」
「それならいいが」
「それと、その被害を受けたって店の名前を教えてくれ。今から行って話を聞いてくる」
「ああその店なら ─── 」
「ここかよ」
慧音から話を聞いて言われた店に来た途端、高橋は呆れた様な声を出した。しかしそれも仕方ないだろう。何故ならその店は高橋が萃香と共に来た店だったのだから。
「あのオヤジ、まんまとカモにされたってわけだな」
隣にいた魔理沙が笑った。
「まぁ昼飯のついでに話を聞くとするさ。可愛い魔理沙ちゃんの奢りだしな」
「嫌な事はよく覚えてる奴だぜ」
「そう褒めるなよ。照れるぞ」
魔理沙の嫌味を軽く流しながら二人は店の中へと入って行った。
「いらっしゃい」
入ると同時に店主が元気よく言ってきた。
「お?こないだの兄ちゃんじゃないか。今日は萃香の嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」
「こいつ、今日は私とデートしたいって言い出したんだ」
「兄ちゃんも若いねぇ」
「お前ら適当な事言いすぎだろ」
もう解決するのやめてやろうかと少しばかり思う高橋。
「取り敢えず俺は肉うどんで」
「私も」
「あいよ。ちょっと待ってな」
注文を聞くと、オヤジさんは調理を始めた。
「にしても相変わらず客少ねぇな。この店」
「悪かったな。人気のねぇ店で」
どうやら聞こえていたらしい。
「挙げ句の果てにはギャンブルで負けてタダで飯食われてるんだもんな」
今度は聞こえる様に言った。
「お前さん、どこからそれを聞いた」
「里の何人かは既に知ってるぜ。何処ぞの悪ガキに一杯食わされたってな」
高橋の代わりに魔理沙が言った。
「でまぁそんな悪ふざけを何とか止めようと俺らが来たってわけだよ」
「何?」
オヤジさんが聞き返す。
「どうする?オヤジさんが望むならそいつに仕返し出来るけど?」
「本当か?」
料理中のオヤジさんの手が止まる。
「信じるか信じないかは貴方次第」
「なら是非とも頼む!」
オヤジさんが頭を下げながら言ってくる。余程悔しいのか、状況が切羽詰まっているのか。高橋からして見ればどちらでも構わないが。
「ならその依頼、受けましょう。依頼料は成功報酬で飯奢ってくれりゃいいよ」
「依頼?」
「俺、便利屋なので」
「便利屋、か。まぁ飯奢る程度で解決するなら安いもんさ。頼むぜ、兄ちゃん」
「なら取り敢えずオヤジさんにギャンブルを吹っかけて来た奴の事とそいつとやったギャンブルの内容を教えてくれ」
「内容?」
二人分の料理を運びながらオヤジさんが聞き返す。
「どんな勝負をしたのか、何を互いに賭けたのか。正確に知らなきゃ対応に問題が出るからな」
「そりゃそうだな」
高橋と魔理沙が言い終わると二人は肉うどんを頬張った。
「ええと、あの時は俺が勝ったら飯の代金を倍に、俺が負けたらその時の飯代をタダにするって内容だったな」
「それで終わりか?他に付け足されたルールは?」
「いや、それ以外はねぇな。断ったら店が営業出来ない様にしてやるって脅されはしたが」
「でもよく考えたらそれってルール違反じゃないのか?」
オヤジさんの言葉に魔理沙が疑問を浮かべるが、それを高橋が否定した。
「いや、ゲーム中の暴力行為なんかはルール違反になるが、ゲーム開始前に誰が何をやろうとルール違反だなんて書かれて無かったよ。いかにも悪ガキが考えそうな事だな」
「感心してる場合じゃないぜ。それでどんな勝負だったんだよ?」
「トランプを使った簡単な賭けだったぞ。シャッフルして裏向きになったカードの中からアイツが絵札を当てれるかどうかってな」
「絵札をって事はジョーカーを抜いていたとしても確率は12/52ってところか。そのトランプって向こうが用意した物か?」
「いや、それはうちにあったやつを使ったさ。持って来たもんを使われたらイカサマされてるかもしれないからな」
「流石のオヤジもそれくらいは考えついたか」
「まぁ警戒して負けてりゃ世話ねぇけどな」
「お前達、さり気なく人を傷つけないでくれるか?」
オヤジさんが言うが二人は当然の様にこれを無視する。
「カードをシャッフルしたのもオヤジさんか?」
「ああ。アイツがカードに触れたのはカードを引く時だけだったぞ」
「それで負けた、と。単純に運が悪かったんじゃないか?」
「そうかも知れんが、アイツの自信ありげな顔がどうにもなぁ。始める前からまるで自分が勝つのが当然みたいな顔だったな」
「運を呼び込む為に普段から強気な態度でいるギャンブラーってのも少なくはないけどな。つい最近起きたこの異変でその反応は確かに妙な違和感はあるな・・・」
仮にその銀太と言う男がイカサマをしたとして、どんな方法を使ったのか?その男に萃香やフラン達の様な能力が無い前提で考えてみよう。
一つ目はあらかじめカードを隠し持っていた可能性。これなら選ぶフリをして隙を見てカードを用意しておいた絵札とすり替える事は出来るだろう。だが、先程言ったようにカードを引く時だけしか触れていないならそれは難しいだろう。
「なぁ、カードを選ぶ時、どういう風にカードを取ったんだ?テーブルに並べてか?」
「いや、カードの束は俺が持っていた。・・・こうやって裏側にして広げる様にアイツに見せてな。勿論選んだカードはその場で確認したから特におかしな事はしていないと思うが」
言いながらオヤジさんは店にあったトランプを持ってきて再現した。まるでカードマジックでカードを選ばせるマジシャンみたいだ。
「カードは相手にもオヤジさんにも見えてなかったのか。ならすり替えは無理か・・・」
と考えた所で高橋はある可能性を思いついた。
「なぁオヤジさん。そいつ、カード選ぶ時、やたらとカードを触らなかったか?」
「ん?ああ。何度もカードを弄ってカードとカードの間を広げる様な事してたな。特にカードに特徴的な傷とかも無いんだが」
「それ、片手でじゃなかったか?」
「確かにそうだが、もしかしてわかったのか?」
「まぁな。えらく単純なイカサマだな」
「何だよ。透視でもしたってのか?」
魔理沙が言った。
「そいつが透視出来るならカードをいちいち触る必要もねぇだろうさ。実際にやってみようか。魔理沙、試しに俺に向かってカードを広げてくれ」
「ああ。わかった」
高橋の指示を受け、オヤジさんからトランプを受け取った魔理沙は先程のオヤジさん同様、カードを広げて高橋に向けた。
「これでいいのか?」
「ああ。この中から絵札を取ってみせよう」
まるで予言のように高橋が言う。そして右手で何度かカードを広げると、その中から一枚を抜き取った。
「ほら。この通り」
引いたカードをそのまま二人に見せた。するとそのカードはスペードのキングだった。
「おお!すげぇな兄ちゃん」
「いや、よく観察したらバレる簡単なイカサマだよ」
驚くオヤジさんに高橋が否定する様に言った。
「寧ろこれに気付かなかったオヤジがおかしい」
魔理沙も呆れ顔で続く。やはり気づいた様だ。
「どういう事だ?」
「オヤジ、愛乃の左手を見てみな」
「左手?・・・あっ!」
魔理沙に言われるまま高橋の左手を見ると同時にそんな声を上げた。流石の彼にも分かったのだろう。この手品の種が。
高橋の左手にはある物が握られていた。
そう。それは小さな鏡だった。
「右手でカードを選ぶフリをして左手に隠し持っていた鏡を使って下からカードの絵を確認したんだよ。わざわざカードを広げたのは、重なっていて絵札かどうか分からなかったからだ」
「カードの陰とは言え、目の前で堂々とイカサマされるなんてオヤジも舐められたもんだぜ」
全くだ。だが、実際に見抜けなかったのだから彼の負けだ。
「とまぁ種明かしはこんなもんだけど、問題はここからだ。取り敢えずこのままだったらオヤジさんはまた同じ目にあって毎日の様にギャンブルを吹っかけられる事になる」
例え銀太と言う男を退けても同じ事を考えた人間に狙われないとも言い切れないし、常に高橋が守れる保証もない。
「な、なら俺はどうしたらいい?」
「簡単さ。今後ギャンブルに乗らなければ良い」
「まぁそうなるよな」
「だが無理矢理にでも参加させられたらどうしようもないぞ」
成る程。現時点で既に自分が負けた時の事しかイメージ出来ていない。これでは負けても仕方ないかと高橋は考えた。
「関係ないさ。無理矢理にでも参加出来ない状態にすればいい」
「そんな事が出来るのか?」
今度は魔理沙が聞いた。
「俺の予想が当たればな。オヤジさん、俺とギャンブルしよう。勝った方が負けた方の言う事を一つ聞く」
「何?それが関係あるのか?」
「大有りだ。勝負はジャンケン。俺がグーでオヤジさんがチョキな?」
「あ、ああ」
言われるがままにジャンケンをし、話の通り高橋はグー、オヤジさんがチョキ。当然高橋の勝ちだ。
「俺の勝ちだな。ならオヤジさんに命令だ。『今後オヤジさんは俺、高橋 愛乃の許可無しに一切のギャンブルに参加する事を禁止する』」
「それで本当に大丈夫なのか?」
「多分な」
魔理沙の問いにそう返すが、特に変わった様子などは無さそうだ。
「これで何が変わるんだ?」
「試さないと確かな事は言えないけど、これでオヤジさんはギャンブルが出来ない筈だぜ」
「何でそう言い切れる?」
「あの紙にあったろ?『ゲームの勝敗によって決められた内容は絶対遵守される』って。あれは多分俺らが気付いていないだけで、行動や思考すらもあのルールで多少なりとも操作されていると思うぜ。だから皆、どんな結果になっても相手が出した指示に従ったんだ。無視出来たなんて話は調べた限りじゃ聞いた事ないからな。仮に何とかしようとしても結果は変わらないんじゃないか?」
「しかしよくそんな事思いつくぜ」
実を言うとこの可能性は昨日の時点から考えていた。正確に言えばフランとの勝負の後にだ。
あの我儘で人の話を素直に聞かなかったフランが勝負の直後には素直に高橋の言う事を聞いていた。その点に僅かながら違和感を覚えていたのだ。
「幻想郷は何でも有りだ。ぶっ飛んだ能力を持った奴らが沢山いるんだから、人の思考や行動を操作出来る奴がいても不思議じゃないだろ?」
「まぁこんな異変を起こすくらいだからな。それは確かに言えてるぜ」
これで一先ずオヤジさんの被害は無くせるだろう。
後は銀太とやらを叩きのめすだけだ。
ギャンブルも思いつかなきゃ後書きに書く事すら思いつかなくなってきたや。
思いつき次第書きますんでその時はまた見てやってください。
そう言えばUAが1000件超えまして皆様ありがとうございました。
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