東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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今月が終わるまでにはこの話を投稿しようと思ってたら最終日のこんな時間ギリギリになるとは。


13話・悪ふざけの代償をガキに教え込もう。

 オヤジさんへの対策を一先ず終え、残る問題は今回の騒動を引き起こした銀太とやらへの対応だけとなった。

「それでこれからどうするんだ?」

 少しばかり心配そうな顔をしながらオヤジさんが聞いてくる。

「安心しろって。後はその銀太って奴に二度とふざけたマネ出来ない様にお説教するだけだからよ」

 何をしようと自由だが、大人を舐めたからにはそれなりの覚悟を持ってもらわなければ困ると言うものだ。

 人に喧嘩をふっかけたのだ。当然やり返される覚悟はあるはずだ。

「何する気だ?愛乃」

 魔理沙が尋ねる。

「目には目を歯には歯を、ギャンブルには勿論ギャンブルだよ」

「これで負けたら笑い者だな」

「絶対に負けないから安心しろって。どうせ向こうから負けに来るんだから」

「何で言い切れるんだ?」

 今度はオヤジさんが尋ねる。

「前回オヤジさんとの対戦で向こうは特に何の問題も無くあっさり勝った。となればそれに味をしめてまた同じ事をしに来る可能性が高い。だから俺達はここで待ってりゃ向こうから勝手に来るって訳さ」

「そんな上手い事いくか?」

「上手くいくさ」

 高橋は断言した。これに関しては高橋は絶対的な自信があった。

「俺とそいつは似てるからな」

「は?」

 高橋の言葉に魔理沙がそんな間抜けな声を上げる。

「そいつと俺の思考はよく似てる。だから次にどう動くかもある程度予測ができる」

「似てるか?そいつと愛乃」

「似てるさ。俺もそいつも同じクズだからな」

 好き好んでギャンブルに手を染める奴にまともな人間はいない。それが高橋の考えだ。

「そうなれば後はギャンブルでの経験と実力差の問題だ。ギャンブルをする事の大変さって物を馬鹿に叩き込んでやる。慧音先生じゃ出来ない特別授業さ」

 そう言って数十分後、店の入り口が開く音がした。

 そこには背の低い丸坊主の男がいた。見た目で言えば歳はまだ二十にもなっていないだろう。

「へへ。おいオヤジ、今日も来てやったぞ」

 気味の悪い笑顔を見せながら男が言ってくる。

(成る程。こいつが銀太って奴か。案の定、味を占めたってわけだ)

「客だったら喜んでもてなすんだがな。お前さんはそんなつもりはないんだろ」

 露骨に嫌な顔をしながらオヤジさんが言い放つ。すると男はニヤケ面をしたまま返す。

「馬鹿言わないでくれよ。前にも言ったろ?アンタが勝てば俺は代金を倍にして払ってやるって」

「そんな羽振りがいいならギャンブルなんてしないで普通に金を払って食ってくれた方が俺は嬉しいね」

「おいおい、そんなつまらねぇ事は言っちゃいけねぇよ。そんな事言ってると、明日にはこの店無くなっちゃうかもよ?」

「ッチ。口の減らねぇガキが」

「ま、そう言うわけで、今日も一勝負しましょうぜ」

「残念だがそれは無理な相談だな」

 会話を遮る様に高橋が言った。

「あ?誰だテメェ」

「人に名前を尋ねる時は自分から名乗れよクソガキ。俺は便利屋をやってる高橋って言うもんだ」

「あ?あーお前か。外から来たって奴は。そんな便利屋様が何で人の話に首突っ込んでんだ?部外者は引っ込んでろよ」

「自己紹介も出来ねぇド低脳に説明してやる義理は無いんだが、まぁ寛大な精神で教えてやるよ。さっきオヤジさんは俺との勝負に負けて俺の許可無しにギャンブルは出来なくなった」

「はぁ?そんな訳あるかよ。適当な事言ってんじゃねぇよタコ」

「なら試してみろよ。勿論俺は許可しないけどな」

「誰がテメェの許可なんざ取るか。おいオヤジ、さっさとやるぞ」

「仕方ねぇ。やってや・・・」

 言いかけて、オヤジさんはそこで言葉を止めた。

 否、その先が言えなかったのだ。

「え?」

 真っ先に驚いたのはオヤジさん本人だった。まるで声が出なかったのだから。

「おいオヤジ、何ふざけた真似してんだ」

「い、いや、そんなつもりは・・・」

「おい愛乃、これって」

 魔理沙が聞いてきた。

「ああ。やっぱ思った通りだ」

 高橋の予想した通りの結果になった。

 

 オヤジさんは挑まれたギャンブルに同意出来ない。

 

 互いの同意が無ければこの異変の効力は適応されない。何故ならそもそもギャンブルが行われないのだから。

 結局、何度やろうとオヤジさんが同意する事は無かった。

「気は済んだか?」

 高橋が煽る様に言った。

「ふざけんな!今すぐ許可しろよ!」

「ふざけてんのはお前の方だ。何で俺がお前の命令に従わなきゃならねぇんだ?そんな義理は勿論ねぇよな?」

「・・・」

 男が沈黙で返した。さて、ここからが本題だ。

「それでもギャンブルがしたいって言うなら俺と遊ぼうや」

「は?」

「まぁそう警戒すんなよ。お前が勝ったらこれをくれてやる」

 言って高橋は上着の内ポケットから百万の束をテーブルに放った。それを見た男の目つきが明らかに変わった。

「・・・マジかよ」

「勿論。ただし、ゲームはこっちで選ばせてもらう。お前が勝ったらそれを持って行ってくれて構わないさ。ただし、俺が勝ったら俺の命令を三つ聞いてもらう。さぁどうする?」

 高橋が言い終わると同時に男は即答した。

「やるに決まってんだろ。お前のその金、望み通りに貰ってやるよ」

 こうして二人の勝負が決まった。

「で?何で勝負するつもりだ?」

「その前に、俺は名前も知らない奴と勝負する気は無いんでな。お前の名前は?」

「銀太。山  銀太(やまぎし ぎんた)、歳は18だ。これで良いか?」

「ああ。ならゲームをしよう。オヤジさん、悪いけどトランプ貸してくれ」

「わかった」

 オヤジさんからトランプを受け取り、高橋は今回のギャンブルの説明を始めた。

「今回やるのは『High&Low』ってゲームだ。使うのはジョーカーを含めた計五十三枚一組のトランプ。これを使う」

 ルールは以下の通りだ。

 

・まず、裏向きに置かれた山札の一番上のカードを表にして場に出す。

 

・互いのプレイヤーは場に出たカードの数字より次に捲るカードの数字が高い(High)か低い(Low)かを予想して山札からカードを捲り、場に出す。

 

・これを一枚ずつ交互に繰り返していく。

 

・数字の強さはAが一番弱く、Kが一番強い。

 

「大事なのはここからだ。例え予想が当たろうと外れようとその時点で次は相手のターンになる」

「ちょっと待て。外れても続くならどうやって勝敗をつけるってんだ」

「まあまあ説明は最後まで聞くもんだぜ」

 このゲームにおいて、負けとなる条件は以下の二つだ。

 

・相手より先に三回予想を外す。

 

・ジョーカーを引く。

 

 このどちらかだ。

「これだとジョーカーを引いたらその時点でお終いだからつまらなくないか?」

 隣にいた魔理沙が言ってきた。確かにこれでは予想をすると言うよりジョーカーを引くか否かの運の勝負だ。

「ああ。だから互いのプレイヤーは『パス』をする事が出来る。勿論条件付きでな」

「条件?」

 今度は銀太が聞き返す。

「さっき三回予想を外したらって言ったよな?つまりライフは三つあるって事だ。だからパスの条件は一度につき一つ、このライフを失う事だ」

 つまり最初の段階でいきなりパスを使ってしまえば、二回予想を外した時点でそのプレイヤーの負けとなる。

「ゲームが進めば進む程ジョーカーを引く確率も上がる。でもビビリまくってパスをしまくれば予想を外して即負けって事か」

「その通り」

 魔理沙の言葉に高橋が肯定で返す。

「どうする?このゲームにのるか?それともやめるか?」

 聞いて尚、高橋はこの男がやめるとは思っていなかった。百万と言うデカい餌が銀太を逃れなくさせている。だから彼の返事は決まっている。

 

「やるに決まってんだろが」

 

 ゲーム開始だ。

「一つ聞きてぇんだけどよ、もし場にある数字と捲った数字が同じだったらどうなるんだ?」

 テーブルの向かいの席に座る銀太が聞いてきた。

「その時はノーカウントでそのまま同じプレイヤーがもう一度予想する。その時は勿論パスしても構わない。それと互いにイカサマ出来ない様に魔理沙、カードをシャッフルしてくれないか?」

「ああ。良いぜ」

「待て。何でそいつがやるんだよ」

「何だ?自分がシャッフルしないといけない理由でもあるのか?例えばイカサマとか」

「ッチ。好きにしろ」

「心配しなくても彼女にはシャッフルと準備をしてもらうだけさ。一応言っておくが、カードを捲る時以外互いにカードに触れるのも禁止だ。カードに触れるのは予想を宣言してからだ」

「わかったよ」

 苛立たし気に答えると、魔理沙がシャッフルを終えてカードの束をテーブルの中央へと置いて、一番上のカードを捲った。♠︎の5だ。無論魔理沙は高橋が有利になる様な細工はしていないしするつもりもない。

「先攻は譲るよ。好きに予想しな」

 先攻は銀太。

「Highだ」

 宣言して捲る。出たのは♦️のKだった。次は高橋のターン。だが、考える必要も無い。

「Low」

 K以上の数字は無い為、当然の予想だ。出たのは♣︎の7。

 それを見ていたオヤジさんは考える。

(・・・7か。中途半端な所だ。どっちが出てもおかしくない。これなら外す可能性も高いはずだ)

 オヤジさんからして見れば高橋に勝ってもらいたいので当然の考えだ。

「Highだ」

 捲られたのは❤️の10。残念ながら銀太の予想が的中した。

「Lowで」

 続く高橋のターンで出たのは♠︎のA。よりにもよって相手にとって絶対安心のカードだ。

(このゲームでAとKを引くのは、相手に楽をさせるだけの行為だ。問題はそれをいかに相手のターンで消化させるか)

 二人の動きを見ながら魔理沙がそう予測する。確かにこのゲームでAとKは相手にとって絶対安心のカードでしか無い。

(それでも唯一安心出来ないカードはある・・・)

 そのカードは言うまでもない。『ジョーカー』だ。

 なんせそれは一撃で自分の首を切り落とす死神の札なのだから。

(そしてもう一つ安心出来ない展開。それがもし自分のターンで来たら厄介だ)

 魔理沙が考えていると、その展開が現実に現れた。

「Highだ」

 絶対安心のAが出た事で、銀太は迷わず宣言した。だが、出てきたのは、

「ッチ」

 ♣︎のAだった。

 これが魔理沙が考えていた厄介な展開。

 一見すると何も問題が無いようにも思える。同じ数字が出た時は続けて同じプレイヤーがもう一度予想するのだからまたHighを宣言すれば良いだけの事だ。だが、問題はそこじゃ無い。

(このゲームで大事なのはいかに予想を当てるかじゃない。いかに()()()()()()()()()、だ)

 確かに予想を当てる事も大事だ。だが、いくら予想を多く当てれても『死神の札(ジョーカー)』を引いてしまったらそれまでだ。そしてその確率はカードを引けば引く程高まるのだ。

(イカサマでも無い限り全てのカードを予想するなんてまず無理だ。仮に出来てもジョーカーを引いたらそれまで。だから同じ数字のカードを引いて捲る回数を増やす行為は悪手でしか無い)

「Highだ」

 当然の宣言。出たのは♦️の7。先程の銀太と似た状態が高橋に戻ってきてしまった。

「Low」

 捲られたのは❤️のA。またしても相手に楽な状況になってしまった。

「ハッ。デカい口叩いた割にはえらく運が悪いじゃねぇか。いや、俺の運が良すぎるのか?Highだ」

 言って♦️の10が姿を見てた。

「Low」

 銀太の言葉には特に反応もせずにカードを捲る。♣︎の8。ギリギリだ。

(さっきから兄ちゃん、真ん中と端っこの数字が多いな)

 そんな事を何となくでオヤジさんは思った。

「Lowだ」

 ♣︎の2。ここまで二人ともミスなく続いている。

 そして高橋のターン。

「High」

 言ってカードを捲るが、出たのは❤️の2だった。よって、もう一度高橋のターンだ。

「High」

 次に出たのは♣︎の3。何とかクリアだ。

「High」

 ♠︎の8。銀太もクリアだ。

(ここまでで使ったのは十四枚・・・。カードも数字の強さはほぼバランスよく出て来てる。これは予想がし辛い上に油断したら即ジョーカーだ)

 魔理沙がカードを見つめながら考える。ジョーカーがいつ顔を見せるか、その危険を察知していつパスを使うか。中盤からはこれが大事になってくるだろう。

(それにしても二人共凄い勘だぜ。お互い合わせて十枚近くミスが無いなんて何かイカサマでもしてるのか?)

 あまりにも的中率が高すぎる為、魔理沙はそう考えた。確かに高橋なら何かしらのイカサマをしているかもしれない。彼にも何かしらの能力はある様だし、カードに触れなくても当てる策は有るやもしれない。だが問題は銀太だ。魔理沙が知る限り、あの男にそんな力が有るなんて聞いた事すらない(勿論魔理沙が知っている事が全てではないが)。

「・・・High」

 長考した後、高橋の宣言。だが捲られたのは♠︎の6だった。ここに来て初のミスだ。これで高橋はあと二回ミスしたら自動的に負けとなる。

「おいおい、強気な口聞いた割には早速ミスしてるじゃねぇか。やっぱこれは俺の勝ちが見えてきたんじゃねぇの?」

「御託はいい。早く引けよ」

「ッチ。Lowだ」

 顔色を変えない高橋にイラつきながら捲ると出たのは♣︎の6。更に銀太のターンだった。

 だが、ここに来て銀太も長考に入った。

(今確か全部で十六枚出てたな。大体三分の一が消えた。ならそろそろジョーカーが出てもおかしくねぇな。仮に俺がパスをして、アイツも続けてパスしてもアイツは一度ミスってる。て事はアイツは俺よりパス出来る回数が少ねぇって事だ)

 パスの申請はミス一回とカウントされるルールだ。

(つまり押し付け合いになれば当然アイツが先に折れるしかない)

 一回分自分が優勢と言う状況。これはなるべく維持すべきだ。だが、それに拘ってパスを拒んでジョーカーを引いたらマヌケも良いところだ。現に自分の勘がそろそろ危険だと言っているのだ。なら理論より自らの感性を信じないでどうするか。

 すると瞬間、高橋が口を開いた。

「まさかあれだけ人を舐め腐ってたガキがいの一番にパスなんて臆病者みたいな事しないよな?」

「あ?」

「自分の運が良すぎるだの、勝ちが見えてきたなんて大見得切った割には小物臭ぇ事しか出来ないのかと思ってな」

「喧嘩売ってんのか?」

「さぁな?」

 露骨な煽りに銀太は熱くなりながらも堪えた。ここで彼を殴り飛ばすのは簡単だ。だが今は勝負の最中。ここで彼を殴れば理由や過程は如何であれその時点で自分の負けとなってしまう。これは相手の罠だ。そう自分に言い聞かせた。我ながらよく耐えたと銀太は思った。

(ほぉ。殴って来ると思ったが耐えたのか。少しだけ感心したな)

 これには高橋も素直に驚いた。

 一度呼吸を整え、もう一度銀太は考えた。

(落ち着け。あんな奴の口車に乗るな。ここでアイツを殴れば百万が水の泡だ。なら何故アイツは俺を煽った?簡単だ。俺にカードを捲らせたいからだ)

 もし仮に今の様に銀太が高橋を殴ろうとせず、口車に乗っていたなら間違いなくパスをせずにカードを捲っただろう。ならどうしてそうさせる必要があった?

(決まってる。アイツにはあのカードがジョーカーだとわかっていたからだ)

 つまりはイカサマをしていると言う事だ。だが、その手段がわからない。これでは高橋を負けとさせる事は出来ない。

(だとしたらやっぱアイツはここで俺にカードを引かせたかったって事だ。挑発したのがその証拠。あれで俺が殴るか、耐えてカードを引くか。二段構えで俺を罠に嵌めるつまりだったわけだ)

 だがその策は通じない。何故なら銀太はその二段構えの高橋の策を読み切ったからだ。

 ならばここで銀太が取るべき選択は一つ。

「パスだ」

 死神の札(ジョーカー)を高橋に押し付ける事だ。

(これで俺もライフを一つ失ったが、押し付け合いになっても俺の勝ち。お前はもうカードを捲るしかねぇ!)

 この時、銀太と同じ結論を魔理沙も弾き出していた。彼が挑発する時は何かの合図なのだと察していたからだ。

 挑発する理由は何か?

 相手の思考を妨害する為。

 そして相手の行動を単純化させる為。

 大雑把に考えればこの辺りが真っ先に思いつくだろう。そして高橋はそれを実行させようとした。

(態々こんな事をしてるって事はイカサマしてあの上のカードがジョーカーだと知らなきゃ説明がつかない。そしてカードに触れられない以上すり替えも無理だ)

 詰み(チェックメイト)

 高橋の負けは明確だ。

 

 だが、

 

「『さっさとそのジョーカーを引いて死にやがれ』って思ってるだろ?」

「は?」

 訳の分からない高橋の言葉に銀太がそんな声を出した。

「次にお前は『グダグダ言わずに早くしろ』と言う」

「グダグダ言わずに早くしろ!っは!?」

「お望み通りに引いてやるよ。予想はHighだ」

 そう言って高橋はカードを捲る。しかし出たのはジョーカーではなく、❤️の7だった。

 それを見た銀太と魔理沙は当然驚いた。そりゃそうだ。なんせ二人はこのカードがジョーカーだと思っていたのだから。オヤジさんはイマイチ状況を理解していない様だが。

「どうした?お前の番だぞ?」

「う、っく、く」

 言葉にならない声を出しながら銀太は考えた。何故ジョーカーじゃなかったのか。そして何故高橋はそれをわかったか。

(やっぱアイツが何かイカサマをしたのか?いや、アイツはまともにカードに触れてすらいねぇ。すり替えすら出来ない筈だ)

 なら何故あそこまで自信満々に捲れた?ジョーカーじゃないと断言できた?そう考えて銀太はある可能性を考えた。

(元々ジョーカーは入って無いとしたら?)

 五十枚以上あるトランプだ。一枚くらい入っていなくてもわかりはしない。それに銀太は一度もトランプを確認していない。つまりあの中にジョーカーが入っている根拠は無いのだ。

(って事はジョーカー云々のルールは無駄に俺にパスをさせてライフを削らせる策って事かよ。そして後が無くなった所で予想を外して負けさせる。そんな算段かよ。どっちが小物だよ)

 そうと分かればもうパスする必要など無い。ライフ一つ分のアドバンテージを失ったのは痛いが、振り出しに戻っただけと思えば大した事では無いだろう。

「Highだ」

 迷わずカードを捲る。出たのは❤️の8。またしても予想的中だ。

(やっぱ運は俺に味方してる。純粋な予想なら俺はまだ一度も間違えてねぇ。このまま行けば俺の勝ちだ)

「High」

 高橋もそう宣言して捲る。♠︎のQ。

「Low」

 宣言して捲るが、出たのは♦️のQ。またしても銀太のターンだ。

 だが別に気にする事もない。ジョーカーが入っていないのだから気にする理由が無いのだ。

「Low」

 もう一度同じ宣言をして捲った。今度は❤️の4だ。

「パスだ」

 高橋の宣言はそれだった。それを聞いて銀太は何も言わなかったが、内心で高橋を嘲笑っていた。

(いつまでそんな嘘をつくつもりだよ。お前の策なんざとっくに破綻してんだ。精々そのみっともねぇ策に縋ってろ)

「Highだ」

 そう宣言し、カードを捲ろうとした時、高橋が言った。

「覚えとけよクソガキ。お前じゃ俺には勝てねぇよ」

「黙れよホラ吹き野郎のクズが。精々よく見て次の予想でもしてろ」

 そう言って今度こそカードを捲り、そのカードをテーブルに勢いよく叩きつけた。

 

 死神の札(ジョーカー)を。

 

「は?」

「残念だが、予想の必要は無くなったな。お前の負けだ」

「んなわけあるかよ!何でジョーカーがあるんだよ!」

「最初に言ったろ。ジョーカーを入れた五十三枚を使うって。だったら入ってるに決まってるだろ」

 至極当然の話だ。

「お前の考えはすげぇ読みやすかったよ。途中で俺が挑発したのは何故か?お前に殴らせるか、冷静さを失い、口車に乗ってカードを捲らせる為。何故そうしようとしたか。それは次のカードがジョーカーだと何らかの理由で知っていたから。なら自分はどうすれば?簡単だ。パスをして目の前にいるホラ吹き野郎のクズに押し付けたらいい。だが実際にはジョーカーでは無かった。ではどう言う事か?そうか、このホラ吹き野郎は得意の嘘で自分を騙し、ライフを削らせる為にパスをさせたんだ。そもそも最初からジョーカーが有ると言うのが嘘だったんだ」

 高橋がまるで事件の真相を解き明かす探偵かの様に語る。

「だったらパスなんてもう使う必要は無い。何故なら最初からジョーカーは存在しないんだから。目の前に座るクズの嘘なのだから。ならば自分は予想を外さない事だけを考えればいい。目の前のクズがまだ必死に嘘を吐こうとパスなんて真似をしているが、そんな事はもう無意味。だが捲ってみたらどうだ?有る筈のないジョーカーが出てきやがった。っと、ここまで俺なりにお前の思考を推理してみたが、合ってるか?間違いがあるなら教えてくれ」

「・・・あ、合ってるよ」

 忌々しげに銀太が答える。

「す、すげぇ」

 オヤジさんが思わず零す。

「だから言ったんだ。お前じゃ俺には勝てねぇって」

 こうして、高橋の勝利が決定した。

 だが、それを素直に受け入れる程、銀太は真面目でもない。

(クソッ!何で俺がこんな奴に負けなきゃいけねぇんだ!)

 そう考えた直後、銀太が取った行動はシンプルだった。

(こいつを貰って逃げれば済む話だ!)

 テーブルに置かれた高橋の金に手を伸ばしたのだ。

 だが、その手が金に触れる事は無かった。

「お前の考えは読みやすいって言ったろうがっ!」

 金に触れる直前に高橋の拳に殴り飛ばされたからだ。

「ガハッ、ゴホッ」

 痛みでのたうち回る銀太の胸倉を掴みながら高橋が言う。

「おまえが負けたらどうするか、俺が考えてないとでも思ったか?それとも隙を突いたら金盗んで逃げられるとでも思ったか?あ?お前が何処で何をやろうとお前の自由だ。お前が賭けで勝った後に何を要求するのもお前の自由だ。だがな、負けた後の責任も持てねぇガキが偉そうな顔して賭け事に手を出すんじゃねぇよ」

「・・・ッ」

「お前が何で今まで痛い目に合わなかったかわかるか?それはお前が強いからでも偉いからでもねぇ。周りの大人が優しかったからだ。周りの大人が許してくれたからだ。あまり大人を舐めるなよ、クソガキが」

 そう言い放ち、高橋は銀太から離れて元の席に座った。対する銀太は力無くその場で寝転がったままだ。

 その姿を見て、魔理沙は少し驚いた。出会ってまだ日は浅いが、高橋 愛乃という男がここまで他人に怒りの感情を見せた所を見た事が無かったからだ。それも、ただ単に自分を舐めてかかった相手に憂さ晴らしをする為だけではない。

(ついさっき知り合った奴にお説教なんて、どんなお人好しだよ)

 最初高橋は自分と銀太は同じだと言ったが、赤の他人に説教する奴が銀太と同じだとは魔理沙には思えなかった。

「さて、高橋先生の特別授業が終わった所で、本題に入ろうか」

 魔理沙のそんな考えなど知らず、高橋は話を進めた。

「約束通り、命令を三つ聞いてもらうわけだが、オヤジさんは何かあるか?」

「・・・いや、目の前であんなモン見せられたらもうよくなって来た。お前さんが好きに決めてくれ」

 オヤジさんも流石に彼を可哀想に思ったのか、そう返した。

「そう言うんなら仕方ない。俺が全部決めよう。なら一つ目。銀太、お前は今後、俺の許可無しにギャンブルで勝つな。勝てる場面でもわざと負けろ」

 これで実質的に銀太はギャンブルが出来なくなったと言ってもいいだろう。

「二つ目。二度と他人に悪事を働くな」

 態々こんな事を命令しなければならないのがなんとも馬鹿らしいがこれで周りへの被害は出ないだろう。

「そして三つ目。今まで迷惑を掛けた里の人達全員に謝ってこい」

 果たして全員が彼を許してくれるかは疑問だが、里の連中が優しければ許してくれるだろう。それこそ彼にとっては賭けかもしれないが。

「・・・オヤジさん、本当にすみませんでした」

 ゆっくりと立ち上がると、銀太は深々と頭を下げてそう言った。

「おう。もういいよ。次は普通に食いに来いよ」

「はい。ありがとうございます。失礼します」

 そう言い残して銀太が店を出ようとした時、高橋が呼び止めた。

「おい銀太。リベンジしたくなったらまたかかってこい。相手してやるから」

「・・・次は勝つ」

 今度こそ銀太は店から出て行った。

「兄ちゃん、お前さん優しいな」

「だな」

「何言ってんだお前等」

「だってそうだろ?少なくとも最後の命令なんて必要あるか?何だったら今後ずっと自分の命令を聞けって言えば幾らでも命令出来るぜ?」

「あんなクズは奴隷にもしたくないってだけの話だよ」

「そう言う事にしておいてやるぜ」

 何を言っても認めないだろうと思った魔理沙は笑いながらそう返した。

「しかし疲れたな。オヤジさん、悪いけどもう一杯肉うどん追加で。どうせ魔理沙の払いだ」

「はいよ!ちょいと待ってろ!」

「お前全然優しくないな!」




今回の話はそれなりに楽しく書けたけど次の話どうするか全く考えてないや。まぁなんとかなるか!(要望とかあればコメントください)
ネタが思いつき次第また書きますのでよかったら次もまた見てやってください。

ご意見ご感想、誤字脱字等あればコメントお願いします。
ではまた次回。
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