東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。
恐らく過去一更新頻度を空けてしまいました。皆さん本編の内容覚えてますか?もし覚えてなければ最初から読んでみてください(面倒だわ)。
まあでも次の更新までの間に全部読めるでしょう。そう思ってるなら早く書けって話ではありますが。
長々と話しましたが本編をどうぞ。
あ、あと今更ですがあけましておめでとうございます(遅すぎるわ)。


18話・妹様と再び。

 パチュリーが図書館で寝ている時、高橋はフランの部屋の前に来ていた。

「フランいるか?」

『ヨシノ?入っていいよ』

 扉をノックして尋ねるとフランが扉越しに返してきた。

「どうかしたの?」

 部屋に入ると同時にフランが聞いた。

「紅魔館に少し用があってな。ついでにフランにも顔を見せようと思って」

「またお姉様に見張るように言われたの?」

「いや、今日は仕事抜きだ。可愛い可愛いフランの顔を見たかっただけだよ」

「ヨシノったらどれだけ私の事好きなのよ」

「そりゃこんな薄暗い地下に一人で来るくらいにだよ」

「モテる女の子って大変ね」

「俺はモテない男で良かったよ」

「向上心の無い男は成長しないって咲夜が言ってたよ?」

「大言壮語なだけの男はもっとタチが悪いってあのメイドさんに言っといてくれ」

「?わかった」

 いまいち理解していないフランが答えた。

「じゃあヨシノ、私と遊んで」

「おう。何する?」

「弾幕ごっこ」

「いや無理じゃん」

「冗談よ。なら私とギャンブルして」

「おお、ギャンブルに手を染めるなんて悪い子だ」

「だって私は血を吸う悪魔だもの。良い子なわけないわ」

 可愛らしく返すフラン。

「やるのは良いが、何を賭ける?金、って言ってもフラン自身はそんなの持ってねぇよな?」

 無い物を賭けるわけにもいかないし、こちらが金を賭けてもフランが金回りに困っているとは思えない。

「なら私が勝ったらヨシノが私の言う事を何でも聞いてよ」

「この前の仕返しってわけか」

「そうかもね」

「なら俺が勝ったら同じ条件で良いんだよな?」

「勿論」

「なら何で勝負する?また鬼ごっこか?それともカードか?シンプルにコイントスってのも有りだが」

「なら私のスペルカードを使おう」

「フランのスペル?別に良いが何でだ?」

「だって『弾幕ごっこ』が『ギャンブル』に変わってから一度も使った事が無いもの。どんな風になったか試してみたいわ」

「あー、成程。でもどんなものかはある程度把握してるんだよな?」

「うん。でも使わないと分からない事ってあるじゃない?」

「確かにな」

 どんな事にも経験に勝るものは無い。

「じゃあ始めようよ」

「いつでもどうぞ」

 高橋がそう答えるとフランが自身のスペルカードを唱えた。

 

「禁忌『禁じられた遊び』!」

 

 スペルカードを唱えた直後辺りは光に包まれ、その光が収まると、周りの景色が変わっていた。

「何だここ?フランのスペルカードの影響か?」

 高橋が立っていたのは先程までのプランの部屋ではなく、四メートル四方の簡素な部屋だった。部屋にあるのは木製の机とA4サイズの白紙の紙が数枚。そして本棚に納められた大量の本だけだった。

「フランはいねぇし窓も無し。唯一出入り出来そうな扉が一つ、と。・・・って鍵が掛かってやがる」

 部屋を見渡しながらそう口にした高橋。現状この部屋から出る事は出来ない様だ。

(禁じられた遊びって事は何かを制限した上で行われるゲームって事だよな?まさか俺の動きを禁じますってオチか?)

 つまらない冗談を思いながら机に置かれた紙を一枚ずつ眺めていると一枚だけ書かれた紙があった。

 

『このゲームでは各部屋の謎を解き進み、全ての謎を解き明かしゴールの部屋にいるフランドール・スカーレットの元へと辿り着く事が出来れば貴方の勝ちとなります。

しかし、各部屋毎に貴方には禁止事項が課されます。それを犯してしまった場合はその時点で貴方の負けとなりますのでご注意下さい。

 

 この勝負での貴方の敗北条件は以下になります。

・制限時間内にクリア出来ない。

・自身に課された禁止事項に抵触する。

・各部屋内での能力の使用

・ゲーム中のギブアップ宣言

 以上の点に気をつけてゲームをお楽しみ下さい』

 

「なんだこの脱出ゲーム」

 思わずそう呟いてしまった。そして次の瞬間、高橋の体に異変が起きた。

「っ痛!」

 急に右手の甲に痛みが走った。見てみると『3:59:54』と書かれており、一秒毎にカウントが減っていた。

「成程、これが制限時間ってわけか」

 つまりは約四時間でこのゲームをクリアしなければならないわけだ。

「で、問題はどうやればここから出られるかって事だよな」

 ここから出る為のヒントがわからない以上どう動いて良いかもわからない。であればまずはそのヒントを探すところから始めよう。

(まずは目の前の紙の束からっと)

 とそこで高橋は手を止めた。大事な事を忘れる所だった。

(まずは脱出のヒントよりこの部屋での禁止事項を調べるのが先だな)

 もしここでの禁止事項が『本に触れる』や『扉に触れる』であれば無闇に動くのは危険である。

(仕方ねぇ。まずは見える範囲で調べるとするか)

 まずは先程も見た扉を見た。すると何も無かったはずの扉に文字が書かれていた。

 

『・禁止事項 床に手をつける。

 この部屋では如何なる理由でも床に直接手が触れた時点で負けとなりますのでご注意下さい』

 

「そんなので良いのかよ」

 と思わず口にする高橋だったが、まだゲームは序盤。この禁止事項もお遊び程度と思って良いだろう。

(禁止事項が必ずしも一つだけとも限らない。注意していくとするか)

 そう考えて机の上の紙も見てみたが禁止事項の様なものは何も見つからなかった。

「さて、そうなると次は無難に本棚だな」

 そう言いながら本棚の中から一冊を手に取って中を確認する。

(内容は普通の小説か。じっくり読みたい所ではあるがそんな時間は流石に無いわな)

 パラパラとページを巡り、大まかに確認し終えた本を棚に戻した時、高橋はある事に気がついた。

(背表紙に書かれているタイトルの下に数字?)

 棚に並べられた本を見るとそれぞれの本のタイトルの下には確かに別々の数字が書かれている。

(でもタイトルはそれぞれ違うからシリーズ物ってわけじゃないよな?・・・となると)

 少し考えて高橋は本棚の本を番号順に並び替えた。

「えらく簡単な謎解きだな」

 並び終えた本を見ながら高橋は少し笑った。

「『白紙の紙全て床に落とせ』か」

 それぞれの本を番号順に並び替え、それぞれのタイトルの頭の文字を読むとそんな文章が出てきた。そしてその命令通りに数枚の白紙の紙を全て床に落とした。すると扉に新たに文字が浮かんでいた。

 

『今落とした紙の中から赤い紙を折り目を付けずに扉に押し付けよ』

 

「うわぁ、面倒せぇ」

 思わずそう言わずにはいられなかった。

「だから態々紙を床に落とさせたのかよ」

 この部屋での禁止事項を考えながらそう呟いた。

 この部屋では床に手をついてはいけない。だからその禁止事項に触れる様に仕向けたのだ。

「まぁ、これくらいなら能力使わずとも何とかなるけどな」

 そうは言っても油断するとすぐにアウトになってしまう。

 まずは指定された赤い紙だ。先程床に落とした紙に視線を移すと、床に落とした五枚の紙は色が変わっていた。左から青、黒、黄色、赤、緑だ。

 まず高橋は落ちていた紙を足で挟みながらゆっくりと足を閉じる。そして後は浮き上がった部分を掴み床に触れずに取るだけだった。

「念の為、他の紙も集めとくか」

 次に何があるかわからない為、やれる事はやっておこう。そう判断した高橋は同様の手順で残りの紙も拾い集めた。

「んで、この赤い紙を扉に、だったな」

 拾い上げた紙の中から赤い紙を取り出して扉に押しつけた。

 

『ガチャ』

 

 それと同時に鍵が開く音がした。試しにノブを回してみるとすんなりと扉が開いた。

「さっさと次のも終わらせるか」

 扉を開けるとその先には同じ様に窓の無い部屋が繋がっていた。

「この繰り返しってわけね。あと幾つ続く事やら」

 そんな事を呟きながら高橋は次の部屋に入って行った。

 

 残り時間『3:32:48』

 

 高橋が謎解きを楽しんでいる時、ゴールとなる部屋に一人いたフランは人知れず後悔をしていた。

「たーいーくーつー」

 部屋で一人大人しく待っていなければいないと言うこの現状に早くも飽きていた。

「こんな事なら違うスペルにすれば良かったわ」

 今更言っても仕方ないと分かっていながらもそう零すフラン。

「早く来てくれないかなぁ」

 一人呟くが、それに応える者は誰もいなかった。

 

 それから暫くして高橋は四つ目の部屋へと来ていた。

「あと幾つあんだよ!」

 終わる気配のないこのゲームに高橋が叫ぶが、こちらも誰かが応える訳でもなかった。

 文句を言うくらいならさっさと終わらせようと新しい課題に取り組むのだった。

「『この部屋にある物で最も薄い物をテーブルに置け』?何だそりゃ」

 部屋を見渡すが、この部屋にはテーブルに本棚しかない。それに禁止事項も無いようだ。

 そこで高橋はある事を思い出した。

(一番薄いってこれもだよな?)

 最初の部屋から持ってきた紙を取り出しながらそう考えた。物は試しだと高橋はその中の一枚を乗せた。

「あれ?」

 しかし何も起きる事はなかった。

「何でだ?他に同じくらい薄い物なんて・・・」

 頭を掻きながらそう呟いた時、閃いた。

「これでどうだ」

 そう言って高橋がある物をテーブルに乗せた。

 

 『ガチャ』

 

 どうやら鍵が開いたようだ。

「え、こんなのでいいのかよ」

 単純すぎる結末に戸惑いを隠せない高橋だった。

「まぁ楽に進めるならそれに越した事はないか」

 先程高橋が乗せたのは自分の髪の毛だ。紙でダメなら髪で行くと言う寒い冗談だ。

 やはり吸血鬼と言えど所詮子供。この程度で勝てると思っている辺り、可愛いもんだ。

 そう思いながら次の部屋に入り、扉に浮かんだ文字を見て絶句した。

 

『この部屋に入った瞬間から二時間、この部屋以外への出入りを禁ずる』

 

 扉にあったのはその一文のみ。試しに扉を開けてみたが鍵は掛かっていないようだ。

「二時間待機ってどんなゲームだよ」

 右手の甲を見ると残り時間は2:27:14となっていた。ここで二時間消費してしまうと残り時間は殆ど無いと言っていいだろう。

「いくら何でもパワープレイにも程があるだろ。こんな脱出ゲーム聞いた事ねぇよ」

 こんなルールが認められて良いのかと意見したいが、言った所で仕方がない。

「他に禁止事項も無いし、次の手について考えるか」

 動けないにしても考える事は出来る。この時間を少しでも有効に使うのだ。

(今までの課題は然程難しい物は無かった。これは単純にフランが適当に用意した勝負だからか?いや違う。スペルカードは持ち主の意思で全てが変えられているわけじゃない。持ち主自身も『大体の内容を知っているだけ』だ。だからそれを試す為に今俺はフランと勝負をしている。ならスペルカードがギャンブルに変更される際の定義って何なんだ?勿論名前に関連する内容に変えられるとは思う。でもだからと言って今回のこのスペル、規模がデカい割に内容がお粗末すぎる)

 態々別の空間に移動したにも関わらず、この単純さだ。

(内容も他の何かに影響されて作られているのか?そもそもフラン自身が勝つ気が無いからこんな単純な物ばかりなのか・・・)

 仮に高橋の言う様に今回のゲームが単純にスペルカードを試すだけの消化試合の様な物ならお粗末な内容にも納得が出来る。

(それとも屋敷に篭ってばかりのフランは知識や情報が少ないからこれくらいしか作れないとか?)

 もしもスペルカードの内容が持ち主の知識や経験、性格などから情報を自動的に引き出されて作られているならば、閉じこもってばかりのフランにはそれを作り上げる材料は少ないと言って良いだろう。

「・・・これからはスペルカードについてももっと調べる必要が有りそうだな」

 今後の課題が一つ見つかった。

「さて、残り時間をどう過ごそうかな。能力や魔法の練習・・・はやった瞬間俺の負けになるのか」

 部屋の中での能力の使用は負けとなってしまう。なのでこの部屋で出来る行動は殆ど無い。

「クソ暇だな」

 部屋に監禁される苦痛を何となく理解しだした高橋。成程、普段のフランはこんな心境だったのか。

「よし、寝るか」

 何を考えたのか、突然そう思った高橋はそのまま床に大の字に寝転がり目を閉じた。

「あ、寝過ごして負けってのも嫌だしタイマーつけとくか」

 そう言ってスマホを取り出してアラームをセットすると今度こそ彼は眠りについた。

 

 

 懐かしい記憶を思い出した。

 元の世界、そして自分の店。自分がその日暮らしの為に始めた便利屋。そこによく来ていた一人の人物がいた。当時は確か高校二年生だったろうか?しかし見た目の幼さ故に、中学生と言われても納得してしまいそうな容姿だ。

(あー、これ夢か)

 その人物の顔を見た途端、高橋は断言した。それも当然だ。何故なら本来なら二度と会う事はない相手だから。

「人の夢に出てくるとかどんだけ俺の事好きなんだよ」

「アンタが私の事好きなんでしょ。だからいなくなった後もこうして夢に駆り出されてるんだし」

 少女は自分の意見に間違いが無いと言わんばかりに言った。

「相変わらず口の減らない奴だな。まあ夢だから当たり前か」

「そ。当たり前」

 目の前の少女は簡単に受け流す。

「で?お前は俺が寝てる間の暇つぶしに付き合ってくれるのか?」

「どうしてもって言うならそうしてあげるわよ」

「なら頼むわ」

 高橋は言い合いするのも時間の無駄と判断した。

「今のアンタ、結構楽しそうじゃん」

 少女が言う。

「ああ、見るもの全てが新鮮だからな。飽きる気がしないね」

「昔のアンタとは大違いね。私の知る限りそんな楽しそうな顔見た事ないし。それに可愛いの子達に囲まれてるみたいだし」

「嫉妬か?」

「バーカ」

 シンプルな悪口だ。

「何だよ。昔はあんなに俺に好き好きって引っ付いてきたくせに」

「いつの話してるのよ」

「女との思い出ってのは男からしたら永遠の宝なんだぜ?」

「男ってバカね」

「当たり前だろ」

 男が馬鹿じゃなかったらこの世は終わってると高橋は勝手ながらに思っていた。

 そんな話は置いといて。

「一つ聞いていいか?」

「何?聞きたい事って」

 記憶の中の相手に質問なんて無駄だとわかってはいたが、思わず高橋は聞いた。

「わかってんだろ。あの日、何でお前は()()()()()

「七年も前の事なのに、未だに気にしてるんだ」

 そう。彼女が言うように、高橋は今から七年前の出来事を一度たりとも忘れた事は無かった。

「当たり前だろ。あの時の事は結局未だに謎だらけ。まともな手掛かりも拾えない。それなのに何を忘れろってんだよ」

「私の事を、だよ」

 少女は即答した。

「本当は私達が出会う事なんて無かった。自分達の意思で巡り合ったわけじゃない。他人や神様のせい。だから居なくなった奴の事なんて、死んだ馬鹿な女の事なんてさっさと忘れちゃえばいいんだよ」

「それが出来るならどれだけ楽だったろうな」

 高橋が呟く。しかしそんな事、彼には出来なかった。

「大事な奴を忘れられる程、俺はお気楽な性格してねぇよ。結構繊細なんだよ」

「そっか。そうやって思ってもらえてたなら良かったかも」

 笑いながら答える少女に高橋は悲しげな顔を見せた。

「そんな顔しないの。アンタはこれからも好きな様に生きていけばそれでいいんだから。何があっても悪いのは死んじゃった私で、アンタは何も悪くないんだから。いつも通り自分勝手に人生を楽しめばいいんだよ」

「死んだ奴に励まされてもなぁ。まあ少なくとも俺はお前の事を一生忘れる気はないし、一生引き摺って、その上で身勝手に生きてくよ」

「うん。それでこそアンタだよ」

 少女がそう言うと、部屋の様子が変わり、辺り一帯が白く変わっていった。

「そろそろ時間みたいね。久々に会えて楽しかったよ。それじゃあ、精々人生楽しんでね」

 言い終わると同時、彼女の姿も消えて無くなった。

「若くして死んだ奴に言われるとは思わなかったぜ。・・・あの日、何も出来なくてごめんな、ユキ」

 誰もいない白い空間で高橋がポツリと零した。

 

 

 目を覚ませばそこは先程の便利屋の部屋ではなく、ギャンブルの為に入った窓の無い部屋だった。

 傍らにはスマホのアラーム音が鳴り響き、自分の存在を主張していた。どうやら本格的に寝ていたらしい。

「ここじゃ連絡手段としては使えねぇが、こう言う時には役に立つな」

 いつバッテリーがなくなるかもわからない為、大切に使わねば。

「モバイルバッテリーでも有ればなぁ」

 そんな無い物ねだりをしながら高橋は携帯を上着のポケットへと仕舞った。

「残り時間は三十分。どうするかなぁ」

 そんな事を呟いたが、高橋は先程の夢の事が頭から離れなかった。

「・・・何で今更あいつの事を」

 何故このタイミングなのか、それが一番の疑問だった。

 忘れられない理由は分かりきっている。

(・・・俺はずっとあいつの事が好きなんだろうな)

 それが恋愛的意味なのか、人としてなのかは自分でも分かっていないが。

 ある日突然、二度と会う事が叶わなくなってしまった少女に対し、言ってやりたい事はもっと沢山あった。しかし、夢の中で幾ら言った所でそれが本物の彼女に伝わるわけではない。何故なら彼女はとっくに死んでいるのだから。そんな事は高橋自身よく分かっている。

 質問の答えははぐらかされてしまったがそれも当然だ。あれは夢の中の出来事で、彼女が何故死んだのか。それは今でも高橋は知らないのだから。

 しかしいつまでもその事に囚われるわけにもいかない。今はギャンブル中なのだから。

「もうそろそろ二時間が経つ。そうすりゃなるべく無駄無く動かなきゃ終わりだ。問題はこれからがどうなるか、どんなお題が出されるかだな」

 それから数分後、指定の時間が過ぎると扉に浮かんでいた文字が消えた。

「これでもう次の部屋に行っても良いんだよな?」

 恐る恐る扉を開けて次の部屋へ足を進めた。特に問題は無いようだ。

「何だこの部屋?」

 次の部屋に入った途端、高橋は眉を顰めた。しかしそれも当然だろう。なんせこの部屋には・・・。

「次の部屋への扉が無い」

 そう。部屋のどこを見ても今までのような扉が無いのだ。つまりはこれで最後という事だろうか?

「まあ時間も余裕は無いから有り難いと言えば有り難いが」

 呆気なく最後に辿り着き拍子抜けする高橋。

(でも可笑しいな。これが最後ならどうやってフランのいる部屋に行くんだ?)

 何処かに次の課題でも見つけられないかと部屋を見渡したらあっさりと見つかった。

「あ、あった」

 今しがた入ってきた扉を見たら課題が書かれていた。

『これで最後の課題です

 次の文章の(?)を全て埋めなさい。

 その後、この部屋からフランドール・スカーレットのいる部屋に行きなさい。

 

 フランドール・スカーレットが幽閉されていたのは(?)年。

 

 フランドール・スカーレットが住む屋敷の名は(?)。

 

 フランドール・スカーレットのスペルカード『禁忌「恋の(?)」』。

 

 フランドール・スカーレットはその部屋にいます。

 頭を使って考えて下さい』

 

「・・・」

 なんだか頭が痛くなってきた。

(まず一問目。フランが幽閉されていたのは確か495年。次が紅魔館。・・・でも俺フランのスペルなんて知らないんだよなぁ)

 しかしある程度答えがわかれば先の展開も予測は出来た。

「この答えがヒントになるってのはあからさまだ。となればあとはそれが何を意味するか・・・」

 他に気になる部分は無いか丁寧に見ていく。すると答えがわかった。

「なんだ。単純な謎解きじゃねぇか」

 そう言って高橋はその部屋を出て次なる目的地へと向かった。

 

 

─── 愛しいお姫様(フランドール・スカーレット)に会う為に ───

 

 

 丁度その頃、フランはベッドに仰向けで寝転がっていた。

「・・・暇すぎて死んじゃう」

 我慢の限界が近づいていた。

「二度とギャンブルでこのスペル使わないんだから!」

 自分のスペルカードに憤慨しながらもフランにしては大人しく待っていた。

 

 そしてその直後、

 

「待たせたな。フラン」

 

 待ち人(高橋 愛乃)が現れた。

「時間ギリギリ間に合ったな」

 右手を見て残り時間を確認すると『00:10:47』とあった。

「ヨシノ!」

「退屈してたろ?遅くなって悪かったな」

「本当。レディを待たせるなんて紳士失格よ」

「それはキツイ一言だ。女を待たせるのはしないようにしてたんだがなぁ」

「でもよく最後まで出来たね」

「あぁ。最後の問題はちょっと困ったけどな。俺お前のスペルカード知らないし」

「教えた事ないもんね」

 最後の問題。それは(?)に当てはまる言葉を導き出した時に出てくる言葉を使えば良いのだ。一つ目は495、次は紅魔館、そして最後は迷路(高橋は答えを知らなかったが)。しかしそれだけでは足りない。『頭を使って』考えるのだ。

「あれは要はそれぞれの答えの頭文字を使えって事だよな?」

 それぞれの答えの頭文字を取ると『4コメ』となる。つまりは四つ目の部屋にフランがいる、という事だ。

「最後にしてはちょっと無理矢理な感じもしてたんだけどね」

「それより先にハッキリさせたい。このゲーム、俺の勝ちでいいんだよな?」

「うん。約束通り私に会いに来てくれたもの」

 もう一度右手を見てみると先程の残り時間を示すタイマーが消えていた。

 そして次の瞬間、辺りの空間が変わり、元のフランの部屋に戻っていた。

「あー、退屈だった」

 フランがベッドに倒れ伏しながら言った。

「ただ待ってるだけ、だもんな。フランからしてみれば」

 付き合いが短い高橋でもフランが気長に待ってられる性格でない事はすぐわかる。

「さて、それじゃあ勝った事だし、どんな願いを叶えてもらうとするかな」

「エッチなのはダメだよ」

「バーカ。俺はガキには興味ねぇよ」

「あー、嫌われたぁ」

 言い終わると互いに笑っていた。そして高橋は閃いた。

「それじゃあフラン。今度俺とデートしよう」

「あれ?ガキには興味無いんじゃなかったの?」

「フランはガキじゃなくて素敵なレディだろ?」

「まぁね。それでどこへ行くの?」

「それはフランに任せるよ。紅魔館から出たくないならそれでも良いし、どこか行きたい場所があるなら僭越ながらエスコートさせてもらうよ」

「特に思いつかないけど折角のデートだもん。外に遊びに行きたいわ」

「うーん、フランとで歩いて楽しめる事・・・。何かあったか?あっ」

 丁度良さそうなイベントを思い出した。

「フラン、今日から五日後、人里に行こう」

「人里に?何かあるの?」

「五日後、人里でギャンブル大会があるんだ。良かったらそれに一緒に出ないか?」

「良いの!?出たい出たい!あ、でもお姉様が文句言ってきそう」

「・・・後でレミリアにも話しておくよ」

「お願いね。私の自由がかかってるんだから」

「今はそんな話よりもっと楽しい話題を考えようぜ」

「うん」

 それからしばらくの間、二人は他愛もない会話を楽しんだ。

 

 

「んじゃ、また来るよ。次は多分五日後のデートかな。朝から行くから寝坊するなよ」

「毎日来てくれても良いんだよ?寝てたらヨシノが起こしてね」

「寝てるフランにキスでもしてやりゃ良いのか?」

「やる時はお姉様にバレないようにね」

「例え冗談でもこんな話を聞かれた時点で殺されそうだがな」

 無防備に寝ている妹を襲う男。うん。どう足掻いてもレミリアからの判決は死刑以外に無いだろう。

「兎に角、まずはレミリアと話してフランが出掛けられるようにしとくよ。だから大人しくしてろよ?」

「うん。約束する」

「じゃあまたな」

「またね〜」

 軽く挨拶を交わした後、高橋はフランの部屋を後にした。

「さて、お姉さんに許可貰ってくるか」

 紅魔館を出るのはもう少しかかりそうだ。




今回は少しばかり主人公の過去を掘り下げてみました。今後もちょこちょこ出てくると思いますので覚えてもらえるとありがたいです。
話を考えてると書きたい事が増えて新しく作ろうかなんて思ってしまいますね(そんな時間あるなら早く更新しろ)。
次回も楽しみにしていただけたら幸いです。

誤字脱字、ご意見ご感想等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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