東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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まず初めに、更新頻度がめちゃくちゃ遅くて大変申し訳ございませんでした。全然ネタが纏まりませんでした。
今までの話をもし忘れてると言う方がおられましたら大変お手数ではありますがもう一度読み返していただけたらと思います。
では本編どうぞ。


20話・手料理を振る舞う為に食材調達をしよう。

 成り行きから霊夢に手料理を振る舞う為、人里に買い出しに来ていた高橋だったが、未だに何を作るか決まっていなかった。

(何を作るかなぁ。霊夢の奴は好き嫌い無いって言ってたしその辺は気にしなくて良いんだろうが)

 金銭面は問題無いのだが、かと言ってあれこれ買って料理を作っても「食材が良いだけ」と言われる可能性もある。それでは意味が無いのだ。

(選択肢がありすぎるってのも悩みもんだな)

 昔母親に言われた「何でも良いが一番困る」という言葉の意味をこの時初めて理解した高橋だった。

「せめて和、洋、中のどれかにするかくらいは早く決めないとな」

 基本的に和食が多そうなイメージがある霊夢に対して中華や洋食で攻めるのも邪道な気がする。となれば和食で攻めるのがベストだろうか?

「まぁ、店眺めて思いついたもん作るか」

 そう言って高橋は人里の店を眺めて回る事にした。何か一つに拘る必要はないのだ。ようは霊夢に美味いと言わせればいいのだから。

「やっぱ肉料理は一つくらい作りたいよな。次いでにサラダでも作って、と」

「おい高橋」

「ん?」

 背後から声をかけられ、振り返るとそこには慧音がいた。

「あら先生。どうかしたか?」

「何、お前の姿が見えたからな。調査の方はどうなったかと思ったのさ」

「成程。それなら最近、黒幕さんとやらから素敵なラブレターを貰ったよ」

「ラブレター?」

「ああ。今度人里でやるギャンブル大会に勝てだとさ」

「成程、あの件か。しかし手紙を貰ったという事は黒幕の顔は見れたのか?」

「いや、いつの間にか博麗神社に置かれてたらしい。霊夢も気がつかなかったって言ってる」

「黒幕についてはまだまだ謎のままか」

 慧音も頭を働かせるが、続きを語る事は無かった。答えを出すには情報が無さすぎるのだろう。

「そういえば、銀太を倒したというのは本当か?」

「ん?ああ、アイツあれからどうしてる?」

「里中を歩いて回って謝って今では真面目に働いているよ」

「そいつは結構なこった」

 やはり現在の幻想郷のルールは絶対遵守されるようだ。

「それでお前はこれからどうするんだ?」

「ん?まあやっぱまずはギャンブル大会次第だなそれまではいつも通り過ごすさ」

「つまりは当日までは暇という事なんだな?」

「今日はダメだぜ。愛する霊夢の為に飯作らなきゃいけないから」

「安心しろ。本格的に要があるのは明日だ。お前の出番さ」

「・・・何が言いたい?」

 周りくどい言い方に少し高橋はイラっとした。

「簡単な話だよ。お前に依頼したいんだ」

「依頼?」

 慧音の急は言い分に繰り返して言う高橋。

「ああ。簡単に言えば寺子屋で一日だけ子供達に勉強を教えてやってほしい」

「何で俺が」

 当然ながら高橋は教員免許など持っていないし、子供に勉強を教えた経験も無い。

「何、別に小難しい話をしてくれと言っているんじゃない。普段のお前の話をしてくれれば良いんだ」

「俺の話?」

「ああ。どうやらお前の存在を子供達も知ったようでどんな人なのかと聞かれてな。それで子供達がお前と会ってみたいと言ってきたんだ」

「俺はアイドルか何かかよ」

 自分で言って高橋は苦笑した。似合ってないにも程がある。

「やるのは良いが、先生は代わりに何してくれるんだ?俺がタダで引き受けるなんて思ってねぇだろ?」

「勿論。その分の金は払うよ」

「いや、金はいい。他で支払ってもらいたい」

「私の体が目的なのか?男というのはそんな事ばかりしか考えていないのか」

「バーカ。そんなんじゃねぇっての」

「ふふっ。わかってるさ。それで、何が良いんだ?」

「報酬は後払いであんたの能力を教えてもらう。そして俺とギャンブルしてくれ」

「そんなので良いのか?」

「それが良いんだよ」

 高橋の能力を知らない慧音が不思議そうに聞いてきた。

「お前がそれで良いなら私は構わんが。では明日、頼んだぞ」

「おう。っと、その前に俺は何時頃行けば良いんだ?授業の事とか何も知らねぇし」

「明日の昼に寺子屋に来てくれたらそれで良い。場所はわかるだろ?」

「勿論」

 一度魔理沙と行っている為問題無く辿り着ける。

「そういう訳で、明日は頼んだよ」

「あいよ。確かに引き受けた」

 そしてそのまま慧音はその場を後にした。こうして明日の予定が決まった。だが、そうだとしても今晩のメニューが決まった訳ではない。

「・・・危うく飯の事忘れる所だった」

 その時ふと思いついた。

「丼物にするか」

 特に理由はないがそう閃いた。決まればあとは材料を買い集めるだけだ。

「カツ丼でも作るか。普段アイツ肉食ってなさそうだし」

 何とも失礼な独り言を呟きながら必要な食材を買って行く。

 

 だがそこで問題が起きた。

 

「何で何処行っても肉が売り切れなんだよ」

 そう。何故かは知らないが、行く店全て肉類が品切れなのだ。

「どうすんだ?これじゃカツ丼作れねぇ」

 いくら料理スキルが高かろうが食材が無いのであれば話にならない。そして一度これを作ろうと決めた高橋には他のメニューを考える気はサラサラ無かった。

「どうも誰かが買い占めてるらしいがそんな事をする馬鹿野郎は何処の何奴だ」

 腹立たし気に言うがそれに答える人物はいなかった。

「誰かに言って肉分けてもらうしかねぇか」

 そしてそのまま高橋はある場所へと向かった。

 

 

「オヤジさん、いるか?」

「いらっしゃい。おや、誰かと思ったらお前さんか。今日は一人か?」

「まぁな。それよりオヤジさんに頼みが有るんだが」

「おう、どうした?」

「少しで良いから肉を分けてくれないか?買い物に来たんだが何処の店も肉だけ品切れときやがった」

「あー、お前さんもか。悪いが無理だな。俺も肉が無いんだ」

「・・・マジかよ」

 当てが外れて高橋は頭を抱えた。

「全く参ったもんだ。これじゃ商売にならねぇ」

「確かに飯屋に一部とは言え食材が無いってのは致命的だわな。しかもメインの肉が」

「なぁ兄ちゃん、犯人探し頼めねぇか?もし今後もこんな事が続いたら洒落にならねぇ」

「依頼ってんなら聞くけど報酬は?」

「犯人が見つかったら一日タダで好きなだけ食わせてやる」

「その話乗った」

 二つ返事で了承する高橋。労働後のタダ飯ほど美味い物もない。

「しかし問題は何処のどいつがこんな馬鹿をやりやがったかだよな。もう一度そこら辺の店行って証言でも集めるかな」

「それならある程度わかってるぞ。何か刀を二本持った女の子らしい。名前とかは知らんが」

「そんな特徴があればすぐわかりそうだな。知ってそうな奴にでも聞いてみるか」

 そうと決まればまずはその女の子の情報集めから始めるべきか。

「折角来たんだ。肉はねぇが何か食って行けよ」

「ならうどんで」

「あいよ」

 そして暫くしてから差し出されたうどんを平らげて高橋は店を後にした。

「さて、お探しの女の子とやらは何処の誰だろうか」

 やはりまずはそのこの事を知ってそうな人に聞いて回るしかないだろう。

 その人物に会う為に高橋は歩き出した。

 

 

「先生、いるか?」

 高橋が来たのは慧音のいる寺子屋だった。

「おや?さっきぶりだな。どうかしたのか?」

「いや、ちっとばっかトラブルが起きてな。先生は今人里で起きてる事件って知ってるか?」

「人里から肉類が一斉に買い上げられたという話か?」

「ああ。それの犯人探しと言うか解決を依頼されちまってな。先生は刀を二本持った女の子って知らねぇか?」

「思い当たる人物ならいるな。会いに行くのか?」

「まぁな。そうしないと色々と困るんでな」

 適当に返す高橋。

「で、どこに行ったら会える?」

「確実なのは冥界だろうな」

「冥界?」

 聞き馴染みの無い言葉に再度聞き返す。

「冥界は罪の無いものが成仏や転生をするまでの間を幽霊として過ごす世界だな」

「そんな場所に行けるのか?」

「冥界には結界があるんだがその結界に穴が空いているんだ。それで行き来は然程難しくない」

「成程」

 何にしろ行ける場所ではあるらしい。

「先生、一緒についてきてくれないか?流石に見知らぬ土地を一人では行きたくないんだが」

 それが冥界という場所なら尚更だ。

「生憎と私もそこまで暇ではないんでな。他の奴に頼んでくれ」

「あーあ、フラれた。でも忙しいなら仕方ない。そんじゃまた明日来ますよ。・・・誰に頼むかな」

 寺子屋を後にしてふと考え込む。限られた高橋の交友関係では頼れる人数にも限りがある。最悪相手が見つからなければ単身で乗り込む事も視野に入れなければならない。

「仕方ねぇ。魔理沙でも誘って行くとするか」

 人里からだとそれなりに距離があるが仕方がない。

「私がどうかしたか?」

 背後から声をかけられ、振り返ってみるとそこにはお目当ての魔理沙がいた。

「おー魔理沙、いい所に来た。今から一緒に冥界に行ってくれねぇか?」

「冥界?何でそんな所に行きたがるんだ?」

「何か人里中の肉を冥界にいる刀を二本持った女の子に買い占められたらしくてな。それについて問題解決を依頼されたんだが、俺は冥界について何も知らんし何処にあるかも知らないんだ」

「成程。この魔理沙様に冥界までの道案内をしろって事か」

「話が早い魔理沙ちゃん大好き」

「ったく。調子の良い奴だよ。ほら、連れて行ってやるから乗りな」

 そうして二人は冥界へと向かった。

 

 

「ほら、此処が冥界だ」

「何つうか、不気味な所だな」

 初めて来た冥界を見渡しながら高橋が言った。

 辺り一体は暗く、僅かに肌寒さを感じる。これは気温のせいと言うよりこの場の雰囲気がそう感じさせるのだろう。

「で、さっき言った女の子ってのはどこにいるんだ?俺は名前も知らんが」

「それも知らずに会いに行こうとしてたのかよ。そいつの名前は魂魄 妖夢。白玉楼に住んでる庭師だ」

「白玉楼?」

 またしても聞きなれない名前に聞き返す高橋。

「この冥界にあるデカい屋敷さ。そこに住む主人の名前は西行寺 幽々子。亡霊だ」

「本当に幻想郷は何でもありだな」

 神様に妖怪、亡霊まで品揃えが豊富だ。

 話しながら歩いているとやがて長い階段に辿り着き、その階段を登って行く。

「その西行寺 幽々子さんとやらはこの冥界で何してんだ?」

「ここにいる幽霊達の管理だとさ。詳しくは知らん」

 言われてみれば先程から「いかにも幽霊」の様な白いのが辺りを飛び回っていた。

 やがて階段を登り終えると和風の屋敷が見えた。

「ここか?」

「ああ。ここが白玉楼だ」

「それで、肝心の探してる女の子ってのはどこにいるんだ?」

「それを探す為に来たんだろ?入ろうぜ」

 言われてしまえばそこまでの為、高橋は何も言えず、入っていく魔理沙の後ろに続いた。

「止まりなさい!」

「お、お探しの女が出てきたぜ」

 敷地内に入るや否や、高橋達に立ちはだかる様に一人の女の子が現れた。

(銀色の髪に側には白い霊魂みたいなのが浮いてんな。それよりも、刀が二本。オヤジさんが言ってたのはこの子の事か。この前の宴会の時には確かいなかったな)

「あれ、魔理沙?何の用?と言うか後ろの人は?」

「はじめまして。八雲 紫に言われて外の世界から幻想郷に来ました高橋 愛乃と言います」

「は、はじめまして。この白玉楼で剣術指南役兼庭師をしてます。魂魄 妖夢です」

 妖夢と名乗った少女は軽く一礼すると再度聞いた。

「それで二人は今日は何の用でここに?」

「君に会いに来た」

「私にですか?」

「お前さん、人里の肉類を一人で買い占めたらしいじゃないか。その訳を聞かせてもらおうと思ってな。あと出来たら一部分けてもらいたい」

「そ、その件でしたか。申し訳ありません。今後この様な事はしませんのでお許し下さい」

 丁寧に頭を下げて謝罪する妖夢。

「いや、別にだからってお前さんをどうこうする気は無いんだけどよ。俺は目的を知るのと肉を少し分けてもらえたらそれでいい」

「・・・実はここの主人である幽々子様が『お腹いっぱいお肉を食べたい』と仰いまして。それで里で売ってるお肉を買えるだけ買いました」

「人里中の肉って一人で食い切れねぇだろうに」

「いや、あいつならやりかねねぇ」

 何処か納得がいったように魔理沙が一人頷く。

「なんかよく分からんが、その幽々子様とやらに会わせてもらってもいいか?人様の家に来たのに主人に挨拶も無しってのも失礼だしな」

「でしたらこちらにどうぞ」

 妖夢に連れられて、高橋と魔理沙は屋敷の中へと入って行った。

 

 

「幽々子様、お客様が幽々子様にお会いしたいそうです」

妖夢が障子越しに語りかける。

「お通しして〜」

 返事が聞こえて障子を開くとテーブルいっぱいに並べられた料理を頬張る一人の人物がいた。

 桜色の髪に白と水色を基調としたフリルの様なものが付いた着物を着ていた。彼女がこの白玉楼の主人、西行寺 幽々子だ。

「食べながらでごめんなさいね〜」

 言い終わると同時に彼女はテーブルの料理を全て平げ終えていた。

「いえ、此方こそ急にお邪魔してすみません。はじめまして。高橋 愛乃って言います」

「知ってるわ。私はここ、白玉楼の主人、西行寺 幽々子よ。貴方は紫に言われて幻想郷に来たのよね?」

「はい。今回の異変解決を頼まれてます。ですが今回白玉楼(ここ)に来たのは別件ですけどね」

「あらあら、何かしら?」

 大方予想はついているであろう幽々子が聞いてきた。

「そこの庭師が人里にある店全部でありったけの肉を買い込んだ所為で商売にならねぇって聞いたんで犯人探しをしてたんですよ」

「あらあら〜。妖夢ったら悪い子ね〜」

「聞く所によればそれを指示したのはその主人らしいんですが?」

「そんな迷惑な指示をするなんて信じられないわね〜」

 尚も食べながら幽々子が答える。

「いやあんただろ」

 思わず高橋はツッコんでいた。

「今回限りだから安心して」

「なら良いんですけどね。あと出来たら肉を少し分けてもらえると助かるんですが?」

「迷惑かけちゃったみたいだし、良いわよ」

「ありがとうございます」

 案外あっさりと話がついた。

「その代わり、色々貴方のお話も聞かせて」

「構いませんよ」

「ならその間に妖夢は差し上げる準備をしておいて」

「わかりました」

 言って妖夢がその場を後にした。

「妖夢が戻って来る間、お喋りしましょうか」

「では先ずは何から話しましょうか?」

「そうね〜。じゃあ自己紹介からお願いしようかしら」

「高橋 愛乃。ギャンブルが好きで外の世界にいた時は便利屋をしていました。さっきも言った通り、八雲 紫に依頼されて異変解決の為に幻想郷に来ました」

「異変解決の進捗は?」

「残念ながらまだまだですね。まだ犯人の影も掴めてませんよ」

「あらあら、ならこれからに期待ね」

「なので今は幻想郷での交友関係を増やしてる所ですね。知り合いもいないんじゃいざって時に何も出来ないので」

 自嘲気味に笑う高橋。言っている間に妖夢が戻ってきた。

「ご用意が出来ました」

 言いながら妖夢は風呂敷に包まれたそれをテーブルに置いた。

「まだ手をつける前の物を用意致しましたのでどうぞお納め下さい」

「どうも。では有り難く」

「その前に」

 差し出された風呂敷に手を伸ばそうとした時、その動きを止めるかの様に幽々子が言った。

「どうかしましたか?」

「まだ貴方の事についてのお話が終わってないわ」

「他に聞きたい事でも?」

「貴方、賭け事が好きって聞いたのだけれど本当かしら?」

「本当ですよ。元いた世界でも賭け事ばかりしてました」

「かなり強いって話だけどそれも本当?」

「まぁ人並みにはって所ですかね」

「人並みな人を態々紫が選ぶかしら?」

「さあ?気の迷いってのが有ったんじゃないですか?」

「あらあら、紫ったら酷い言われ様ね」

「まぁ頼まれたからには仕事はちゃんとしますけどね」

「ふふ。素晴らしい事ね。そこで一つ提案なのだけれど」

「何でしょう?」

「今から私と賭けをしないかしら?」

「構いませんよ」

 ギャンブル好きの高橋からしてみれば断る理由も無い。

「なら早速やりましょう」

「何をするんです?」

「これよ。最近ハマってるの」

 そう言って幽々子は近くの棚にあった物を手に取った。

「花札ですか」

「ええ。ルールはわかるかしら?」

「はい。何度かやった事はありますから」

「なら問題はないわね」

「こいこいで良いかしら?」

「構いませんよ」

 聞きながら花札の束をシャッフルする幽々子。

 花札は一種類につき四枚、十二種類の計四十八枚を使うゲームだ。親と子がそれぞれ自分の番に手札から一枚を場に出し、同じ種類の札があればその札を二枚一組として自分の物に出来る。次に山札から一枚を捲って同じ様に繰り返す。これを交互に繰り返して役を作っていくゲームである。

「お願いします」

「はい、一枚選んで」

 束から二枚を裏向きに置いて言ってくる。先攻後攻を決めるのだ。

「ならこっちで」

 片方の札を捲る。描かれていたのは紅葉。十月の札だ。

「なら私はこっちね」

 残った方を幽々子が捲る。出てきたのは桜。三月の札だった。つまり先攻は幽々子となった。

「持ち点二十点の争奪戦にしましょう。すぐに終わったらつまらないもの」

「わかりました。七点以上は得点二倍で良いんですよね?」

「ええ」

 幽々子が答えながら花札をシャッフルし、札を配っていく。

(・・・これは、勝ち目無さ過ぎだろ)

 配られた手札と場の札を見て内心で高橋は思わず溜息をついた。なんせ高橋に配られたのは大して役にもならないカス札ばかりだったからだ。

(これからデカい役を作るのはなかなかに厳しい。となればカス札だけを集めて役にでもするか?)

 カス札は十枚集めれば一点の役になるのだ。

 場に出ているのは八枚。

 

・松の二十点札

・菊の十点札

・松の五点札

・萩の十点札

・アヤメのカス札

・梅の十点札

・梅の五点札

・梅のカス札

 

(・・・どう攻めるべきか)

 そんな事を考える高橋に対して幽々子が笑って思考を止めさせる。

「ごめんなさいね。手四(てし)よ」

 言って幽々子が自分の手札を見せる。するとそこには三月を表す桜の札が四枚あった。

「は?」

 思わずそんな声を上げる高橋。手四とは最初に配られた手札に同じ月の札が四枚有ればその時点で六点の役として成立する役だ。

「なかなかに珍しい事を」

 あっさりと初戦が終わってしまった。

 

 幽々子 残り二十六点

 

 高橋  残り十四点

 

 そして続く第二ゲーム。

「次こそは」

 意気込む高橋だったが、これも呆気なく終わる事になった。

「ごめんなさい。くっつきよ」

「は?」

 またしても間抜けな声をあげる高橋。くっつきとは配られた手札が同じ月の札が二枚ずつ四組揃っていれば六点の役として成立する役だ。

 たった二ゲームで高橋は何も出来ずに十二点を失った。そこで考えた。

(もしかしてイカサマか?)

 真っ先にそう考えたが幽々子の動作に不審な点は無い。二度も立て続けに見逃す程高橋も間抜けではない。

(となれば能力か?)

 どんな能力を持っているのかは知らないが、それが何かを突き止めないと疑問も消えないだろう。

「幽々子さん、一つ聞いても良いですか?」

「私の能力は『死を操る程度の能力』よ」

 高橋が聞く前に幽々子が答えた。

「・・・何故そんな事を?」

「あら?そう聞かれると思っていたのだけれど。違ったかしら?」

 何も間違っていない。

「二度も続けて珍しい手が出てまず最初に疑うのは私がイカサマをしていたかどうか。でもそれらしい動きが見れらない。そうなれば何か能力を使っているのかも知れない。どこか違った?」

 これも何も間違いはない。

「『死を操る程度の能力』というのは?」

「言葉の通りよ。相手の命を奪う事が出来るの。あとは死霊を操る事も出来るわ。滅多にする事は無いから安心して」

「それは良かった」

 適当に返した高橋だが、内心ではそれどころではなかった。

(この一瞬で全て読まれてる。しかもこの雰囲気、紫と初めて会った時と似てやがる)

 たった二ゲームで戦況を固めた運。そして相手の思考を読んで先回り出来る程の洞察力。そしてこの場を支配するかの様なオーラ。

 

 この瞬間、西行寺 幽々子が高橋 愛乃よりも格上だと高橋本人が痛感した。

(・・・これは不味いな)

 自分自身で相手が格上だと知る。学ぶ。痛感する。これは勝負事において致命的と言っていい。何故ならそれは自分自身に『お前では勝てない』と言っているのと変わらないからだ。

 自分で自分の可能性、勝ち目を否定する奴に勝てる道理も、勝つ資格もない。

 可能性だけで言うならやり続けたらいつかは勝てるのかもしれない。十回に一回か百回に一回かはわからないが、いつかは高橋に勝ちが転がってくるだろう。

 だがそんな偶然の勝ちに価値は無い。自分の運と実力で勝ち上がらなければギャンブラーとしての価値は上がらない。

「さ、続きをしましょうか」

 言って札を配る幽々子を見て内心で焦りを感じる高橋であった。




前回の投稿から今回の投稿で10か月くらい空いてて「流石にやらかした」と思うのと同時に「そういや過去に丸々一年空いた事あったなぁ」と思い返して今更かと思う自分もいたりしました。反省はしてます。
作中の時間経過が遅すぎるけどこれをいきなり変えたらそれもそれでバランスが悪くなりそうって言うのが最近の悩みだったりしますね。
あと今回の本編の最後の部分、一部とある曲の歌詞から連想してたりします。もしわかったらコメントなどしていただけたら幸いです。

誤字脱字、ご意見ご感想等有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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