東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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前回から一年半経ってまだこの作品を覚えてくださっている人はいるんだろうか?


21話・己の限界を知り、そこから更に成長しよう。

 現在高橋の心の中を埋めているのは「自分では西行寺 幽々子には勝てない」と言う事実だ。

(・・・さて、どうしたらいいか)

 イカサマの様子はない。しかし運の良さだけでは説明がつかない結果の連続。疑いたい現実だではあるが、信じざるを得ないのもまた事実。つまりはなす術がない。

 諦めるしかないのか。そう考えだした時、ふと思った。

 

『途中で投げ出して何が勝負師だ』と。

 

(・・・そうだった。たとえ負けるとしても最後まで抗え。頭を働かせろ。手を止めるな。自分で自分を否定する事だけは何があってもするな)

 自分の中のルールを思い出し、諦めかけていた心に光が差した。

(ふふ。まだ心は折れていない様ね)

 高橋の顔を見ながら幽々子は内心で微笑んだ。

(次はどう来るのかしら?)

 そして次の勝負が始まった。

 

 幽々子 残り三十二点

 

 高橋  残り八点

 

 それぞれ手札が配られ、高橋は自分の手札を見るより先に幽々子の動きに視線を向けていた。勿論イカサマを見張る為だ。

(さっきは最初に自分の手札を気にしていた。つまり一瞬の油断、隙はあった。見逃した時があるとしたらまずはその時だ)

 仮にイカサマを封じたとしてもひょんな事で負けが決まりかねない状況だ。

(それらしい動きはない。つまり今回手札にイカサマは仕込んでないって事か?)

 それと同時に幽々子が能力を使っている可能性を考えた。

(確か能力は『死を操る程度の能力』だったな。仮にそれを比喩として使ったとして、この勝負でも応用出来るのか?)

 直接的に考えるなら相手の命を奪い取る能力であると言うのは理解出来る。それをこのギャンブルに置き換えるとしたらどうだろうか?

 高橋の持ち点を『命』として。その点数がゼロになる事を『死』と捉えたのならば確かに辻褄は合うだろう。

(だとしたらこれはイカサマなんてレベルの話じゃねぇ)

 そもそも能力を使う事自体はルール違反ではない。

(仮にこの説が当たっていたとしたら最初の一ゲーム目で俺を倒す事も出来たって事か。でも何故そうしなかったんだ?)

 そして幾つかの理由を考える。すぐに終わってしまってはつまらないから?それとも高橋という人間の事を知る為か?それとも別に理由があるのか?

(しなかったんじゃなくて出来なかった?)

 いや、これはいくら何でも都合の良い考えだ。この相手に限ってそんな明確な弱点は無いだろうと高橋は本能的に結論付けた。

(現実的なので言えば俺の裁量を計る為ってのが妥当だろう)

 数秒間幽々子の動きを観察しながら考え、漸く自分の手札を確認した。

(悪くも無けりゃ良くも無いって感じだな。後は引き次第か?)

 手札を確認し、場の札も見たがやはり可もなく不可もなしと言った感じだ。

(ここは大勝ちを狙うんじゃなくてコツコツと確実に点を稼ぎに行った方が賢明だな)

 あれこれと考えながら手を進める。自分に出来る最善手を打ち、相手の動きを常に監視する。当たり前ではあるがこれを繰り返す。

 その結果。

「俺の勝ち、か」

 今回は高橋が取り、持ち点を増やした。

 

 幽々子 残り二十六点

 

 高橋  残り十四点

 

 持ち点を増やしたと言っても高橋の劣勢には変わりない。

 

 その後、何度か勝負を繰り返して持ち点が増えたり減ったりしたが、幽々子へ決定打を与える事は出来なかった。

 

 幽々子 残り三十六点

 

 高橋  残り四点

 

 気がつけば再度高橋はギリギリの状態へと追いやられていた。

(・・・勝つビジョンが全くと言って良い程見えねぇ。かと言ってこのまま降参ってわけにも行かんし、どうすっかなぁ)

 この行ったり来たりの勝負が偶然の物では無い事は高橋も気がついていた。高橋の持ち点が僅かになれば幽々子が負け、余裕が出てくればまた高橋の持ち点がギリギリのところまで削られる。

(つまりは遊ばれてるって訳だよなぁ)

 この相手に一太刀浴びせるにはどうしたら良いのか?まるで見当がついていない高橋。

 それに比べて幽々子はまるで子供を遇らうかのような立ち回りである。

 挑んでは遇らわれ、望んでは突き放される。この繰り返しではその内戦う意欲さえ失われかねない。

(これじゃあ持ち点をと言うより俺の心を死に誘おうとしてるみたいだな)

 成程。能力に偽りは無く、しかし確実にこちらを潰せる手口だ。しかしそれがわかったからと言って何か突破口が見つかったわけでは無い。

(多分完全にとどめを刺さないのは俺を観察する為だろうな)

 ふと高橋はそう考えた。そして更にこうも考えた。

(今が攻め時じゃないのか?)

 持ち点が少なくなった時、人はまず自分の点を安全圏まで増やしたいと思うのが道理だ。それを知ってか幽々子もトドメを刺して来る事は無かった。あくまでも彼女の目的は高橋に勝つ事ではなく、彼を観察する事なのだから。

 なのだとしたら、幽々子は率先的に勝ちに来る事は無いという事になる。

 この仮説が正しいのなら攻めに行かないのは愚の骨頂である。向こうがゆったり待っていてくれているのだ。今までのらりくらりと勝負をこなして来た自分は何と浅はかな事か。そう思い直し、高橋は自分の手札と場の札を確認する。攻めるには不安の出る手札だが、攻める事を恐れた奴に正気など永遠に来ない。

(ここで勝負を掛けるしかねぇ)

 そう決意して先攻の高橋は手札から一枚を場に出す。

(先ずは一つでも多く役を作る)

 手札から菊のカス札を出して菊の盃を手に入れる。場に桜の札もススキの札も無い為、初手から花見は出来ないが、相手に先に取られるのは悪手な為、こうするのが最善だろう。

 そして山札から一枚を捲る。梅のカス札だ。場に梅の札は無い為そのまま場に置かれる。

「私の番ね」

 言って幽々子が札を出す。出されたのは桜のカス札だ。

(場に桜の札は無いのに桜の札?手札が悪いのか?)

 通常なら一つでも多くの役を作る為に場と同じ札から処理していくのが定石だ。

「何が出るかしら」

 そして幽々子が捲って場に出たのは桜の二十点札。つまりは高橋が欲しい札だ。これで高橋に「花見」の役は無くなってしまった。

「あら偶然ね♪」

 幽々子が言うと高橋は内心で舌打ちした。攻めようと決意した途端に流れが悪くなる。これに舌打ちしたくなるのは仕方がないだろう。

(花見がダメなら月見だ)

 気持ちを切り替えて思考を巡らせる。他に今狙える役は無いか。気をつける点はないか。相手の動きにおかしな点はないか。その全てを精査し、次の行動へ移る。

 そして高橋の番になり手札から一枚を出す。梅のうぐいすの札だ。これにより置かれていたカス札とうぐいすの札を手に入れた。

 そして山札から一枚を捲る。ススキの月の札だ。

(これで次の番でススキの札を出して月見成立)

 高橋の手札にはススキのカス札がある。

 

 しかし、そうはうまくは行かなかった。

 

「あら、良い札が来たわね」

 言うと同時に幽々子がススキの札を出した。つまりは高橋は月見も花見も作れなくなってしまった。

 またしてもチャンスを失ってしまいじわじわと勝機から遠退く。

(だが諦めねぇ。最後まで醜く足掻いてやる)

 昔から高橋は諦めが悪い方だった。状況は決して良くは無い。それどころかどんどん追い詰められている。だが、それでこそ面白い。

(忘れていた。俺はこう言う展開の時こそ誰よりも楽しめる奴だった)

 高橋の顔は笑っていた。

 一手先では負けるかもしれない。

 二手先では絶望を感じるかもしれない。

 しかしそれを掻い潜れる手を打てた時、それは何よりも勝る快感を得る瞬間だ。それを忘れて何が勝負師か。

(状況は絶望的。俺に勝機はほぼ無い。でもそれでこそ博打)

 この状況下に立たされて尚、高橋は笑っていた。

「ふふ。随分と楽しそうね」

「大事な事を思い出したので」

 答えながらも高鳴る鼓動を抑える為に一度呼吸を整える。

(ぜってぇに巻き返してやる!)

 気持ちを新たに高橋は闘志を燃やすのだった。

 

 

「お疲れ様♪」

「・・・楽しそうですね」

 勝負は終わった。結論から言えば高橋の勝利だった。

 いや、勝たせてもらったと言うのが正しいだろう。あの後は特に何の盛り上がりを見せる事も無く、高橋の連勝による逆転勝利で幕を下ろした。だがその際、先程まで幽々子から感じた威圧感は無かった。

(まあ、何も賭けてないんだから勝っても負けても良かったんだろうけどさ・・・)

 勝負全てに勝つ必要は無い。勝つべき場面で勝ててこそ勝負師だ。

 しかし、あからさまに手を抜いて戦われたのだから勝ち誇るわけにもいかない。高橋からしてみたら消化不良もいい勝負だ。

(まさに大人にあしらわれるガキそのものだな)

 内心で苦笑しながら現状を吐き捨てた。

「勝てて良かったな」

 後ろで見ていた魔理沙が言ってくる。口ぶりからして勝たせてもらったのだというのはわかっていそうだが。

「そう言えば、賭けと言いつつ互いに何を賭けるか決めてませんでしたが、どうしますか?」

「あら、そうだったわね。だったら一つお願いを聞いてもらおうかしら」

「何ですか?」

「今から何かお肉を使った料理を作ってもらえるかしら?食材や道具はうちに有る物を自由に使っていいわ」

「そんなので良いんですか?人並み程度には料理は出来ますけど特別得意ってわけでもないですよ?」

「そんなので良いのよ。外の世界の人が作る料理を食べてみたいの」

 嬉々として言う幽々子。そう言われてしまえば断る理由もない。

「分かりました。肉料理ならどんな物でも良いんですか?」

「ええ。楽しみに待ってるわ♪」

「・・・キッチンお借りしますね」

「こちらにどうぞ」

 妖夢に案内され、高橋はキッチンへと向かった。

(まぁ、霊夢に飯作る前の予行演習とでも思うとするか)

 

 

「結構広いんだな」

 妖夢の後について行きキッチンを眺めながら呟く。料理をするには申し分無いスペースだ。

「何かお手伝いしましょうか?」

「いやいいよ。手伝わせたら賭けの意味が無くなっちまう。わかんねぇ事があったら教えてもらうのと話し相手になってくれればそれでいいさ」

 答えながら食材のチェックを始める。

(肉は牛、豚、鳥と全部あるから選択肢は多いし油もあるから揚げ物が無難か?しかし既に結構な量を食ってたとしたら流石に重たいか)

 食材や調味料、道具をそれぞれ見ながら思考を巡らせる。

「なぁ妖夢さん、今まで何作ったんだ?参考までに教えてくれ」

「えっと、ビーフステーキ、ハンバーグ、唐揚げですね」

「結構食ってんな。OK。ありがとう」

 妖夢から説明を聞き、料理の候補を考える。

「んじゃ、さっさと作りますかね」

 片手で包丁をクルクル回しながら呟いた。

 

 

「お待たせしました」

「ありがとう〜」

「順に生姜焼き、照り焼きチキン、カツ丼です。ついでにサラダも軽く作っておいたので合間にどうぞ」

 作り終えた料理を食卓へ並べながら高橋が言った。

「あら美味しそうね。それに些細な気配りも素敵よ」

「それはどうも。豚肉が多かったのでそちらを優先的に使わせてもらいました。召し上がれ」

 高橋が言い終わると同時に幽々子が料理へと箸を伸ばした。それをゆったりとした仕草で口へ運んでいく。数回の咀嚼の後に飲み込む。

「・・・」

 その動きを黙って見ている高橋。この時間は意外とプレッシャーを感じた。

「うん。とても美味しいわ」

「お口にあって良かったです」

 幽々子の言葉に淡々と返したが、内心で高橋はホッとしていた。やはり自分が作った料理を良く思われるのは少なからず嬉しいものがある。

「またいつかお願いしてもいいかしら?」

「暇な時ならいつでも。でも次からは報酬もらいますけどね」

「勿論いいわよ」

「なら今度私にも作ってくれよ」

 唐突に魔理沙も便乗して言ってくる。

「気が向いたらな」

「とか言いつつちゃんと作ってくれるのがお前だろ?」

「あー今ので完全にやる気無くしたわぁ」

 とは言いつつも勿論いつか魔理沙にも振る舞うつもりである。

「それじゃ、そろそろ失礼します」

「いつでも遊びに来てね〜」

 そうして高橋と魔理沙は白玉楼を後にした。

「で?次はどこに行くんだ?」

「先ずは人里に行ってオヤジさんに肉を分けに行くかな。元々そういう約束だったし」

「ならさっさと行くか!」

 

 

「オヤジさん、いるか?」

「おう来たか。頼んでた件はどうなった?」

「勿論、解決してきたよ」

 そう言って高橋は手にしていた包みを店のテーブルに置いた。

「金輪際今回の様な事はしないと言ってたから多分大丈夫だろ。いくらか貰ってきたよ」

「悪いな」

「依頼されたからにはちゃんとやるよ。オヤジさんにも分けようと思ってたからいくらか持ってってくれよ」

「助かる。こりゃ一日じゃなくて三日分の働きだな」

「何の話だ?」

「今回の件を解決したら一日タダ飯食わせてもらうって約束だったんだよ」

 事情を知らない魔理沙に説明する高橋。

「お前だけずるいな。おいオヤジ、私にも何かしてくれよ」

「なんでだよ」

「いや、今回の件に関しては魔理沙が案内してくれなきゃ相手のいる場所まで辿り着けなかったからな。一日くらいは良いんじゃないか?」

 魔理沙の発言に賛同する高橋。

「・・・まあそう言う事なら仕方ねぇか」

 渋々と言うように承諾するオヤジさんだった。

「ヨッシャ!てな訳で早速だがカツ丼頼んだ」

「兄ちゃんはどうする?」

「なら俺も同じ物を」

「はいよ。ちょっと待ってな」

 そして暫くして運ばれてきたカツ丼を魔理沙と二人で味わうのだった。

 

 

「ただいまー」

 食事を終え、買い出しを済ませた高橋は博麗神社へと戻っていた。

「あらお帰り。ちゃんと胃薬は貰ってきてくれた?」

「あんまり失礼な事言うと今晩の飯と今後の賽銭は抜きでも俺は一向に構わねえぞ?」

「愛乃が作るご飯が楽しみだわ♪」

「・・・今から作るからゆっくりしてな」

 深く追及する事もなく高橋は料理作りを始めるのだった。

 

 

 それから暫くして食卓には高橋の手料理が並んでいた。ご飯と味噌汁、生姜焼きにポテトサラダ。我ながら悪く無い出来だと思っている。

「ほら出来たぞ」

「あら、見た目は美味しそうね」

「もう少し素直に人を褒める事は出来んのか」

「だから褒めてるじゃない」

「まぁ良いや。早いとこ食ってくれ」

「いただきます。はむっ」

 ゆっくりと料理を食べる霊夢。それを見て高橋に少しばかり緊張が走る。

「うん。美味しいわね。正直ここまで美味しいとは思わなかったわ」

「お気に召したようで安心したよ」

 霊夢の反応に一安心しながら高橋も箸を伸ばした。

「愛乃、今度から夕飯は当番制にしない?」

「良いよ。ただ住まわせてもらってるだけじゃ悪いしな。飯くらいは作るよ」

 当番制にしようと思う程度には自分の料理を気に入ってくれたのだと高橋は内心で喜んだ。

「それで、今日はどうだったの?何か進展あった?」

「何も。冥界に行って花札して食材調達して来ただけさ」

「冥界って言うと幽々子の所?何でわざわざそんな所まで」

「感謝しろよ?俺が白玉楼まで行かなかったら今日の晩飯に肉が並ぶ事は無かったんだからな」

「?」

 事情を知らない霊夢が意味がわからないと言った顔で首を傾げた。

「それで?明日はどうするのよ」

「慧音のとこに行って子供達に会いに行く事になっちまった」

「あんた勉強なんて教えられるの?」

「失礼な。これでもそれなりに頭はいい方だぞ。それに慧音曰く勉強を教えるわけじゃないらしい。何か子供達が俺の事知って会ってみたいんだとよ」

「あんたみたいなのに子供が興味持つなんて世も末ね」

「言わんでくれ。自覚はある」

「自覚があるなら直しなさいよ」

 霊夢が呆れ顔で言ってくる。

「俺の人生だ。自分のしたい事をする為に使わなきゃ損だろ」

「それで周りに嫌われても?」

「嫌ってる奴がいてもその分俺を好きだって言ってくれる奴もいるからな。そいつらと連んでれば良いさ」

 適当に答えてご飯を口にかき込む。

「昼頃に来いって言われてるから朝は割と暇だな」

「だったら朝は掃除手伝って」

「はいよ」

「それより、子供達に変な事教え込むんじゃないわよ?」

「そんなもんは明日の俺に言ってくれ。何話すかすら考えてねぇからな」

 適当に笑いながら答える高橋に霊夢がまたしても呆れ顔で返した。

 そして夕食を終えた後、高橋は一人で今後の行動を考えた。

(明日は昼から寺子屋。数日後には人里で行われるギャンブル大会でフランとデート。忙しいねぇ)

 そう思いはするものの、この現状を高橋は楽しんでいた。何も無い元の世界を捨てて幻想郷に来たのに退屈な毎日など御免である。

(後忘れちゃいけないのが今後どうやって黒幕について探るか、だな。現状では俺は何もわかってないんだ。今のまま過ごしていても遅れを取るだけだ)

 

 黒幕は何者なのか。

 黒幕が何を思ってこんな大規模な事をしたのか。

 黒幕は何が望みなのか。

 

 たった一人の影も掴めていない相手の事を考え始めると疑問が止まらない。

「こんな面白い事をしでかす大馬鹿野郎。是非とも会ってみてぇな」

 呟きながら彼の顔は自分がニヤけている事に気づいていなかった。

 だが浮かれているばかりではいられない。この黒幕の正体を突き止めて異変解決をしなければならないのである。

(何故黒幕は態々弾幕ごっこからギャンブルに変えた?と言うか変えた後の対象を何故ギャンブルにした?その方が都合が良いからか?それともそうせざるを得なかった?)

 そう仮定するのであれば、この黒幕は少なくとも極端に腕っ節が強いと言うわけではないだろう。仮に腕っ節に自信があるのならこんな回りくどい物は選ばないだろう。

(いや、そもそもそれだと幻想郷のルールに触れるってのもあるのか)

 前提として弾幕ごっこは妖怪と人間の力関係を公平にする為に設けられたルールだ。その根幹を否定する事はいくら異変と言えど出来なかったのかも知れない。

(だとしても何故ギャンブルなのか?やっぱ黒幕は力が強くないと考えていいのかも知れない。・・・推測するにしてもやっぱ情報が足りねぇ)

 推測する事自体は無駄ではない。だが考えるに足るピースが無いのであればそれは時間の無駄と言われても仕方がない。

「もう少し真面目に情報集めしないとなぁ」

 そう呟いて高橋は寝る事にした。

 

 

 そして翌朝、時間は朝七時。高橋が目を覚ますと既に霊夢が起きていた。

「あら、おはよう。思ったより早く起きたわね」

「俺に対してどんなイメージを持ってるか気になる発言だがまぁいいか。顔洗ってくるわ。何か手伝える事あるか?」

「なら朝ご飯の準備してくるから境内の掃除お願い」

「へいへい」

 適当に返事を返しながら顔を洗い、言われた通りに境内の掃き掃除を始めた。

「さて、飯食ったら昼まで何すっかな。何か良い感じに暇潰しになる事でも有りゃ良いが。何も無きゃ魔法の練習だな」

 そんな事をぼやいた所で都合良く起こる筈も無い。それを自覚して高橋は黙々と掃き掃除を進めた。

 

 

 朝食を終え、適当に時間を潰していると出掛けるのに良い頃合いだった。

「少し早いがそろそろ行きますか。おい霊夢、慧音の所に行ってくる」

「いってらっしゃい。精々迷惑はかけないでよ」

 この巫女さんは人を何だと思っているのか。そんな事を考えつつ、高橋は人里へと向かっていった。

 

 

「おーい、先生。来たぞー」

 外から呼びかけると慧音が出てきた。

「やあ高橋。約束通り来たんだな」

「そりゃまあ一応仕事ですから」

「良い心がけだ。今日は頼むよ」

「はいよー」

 そんなやりとりを終えると慧音に先導されながら寺子屋の奥へと進んでいった。そしてとある部屋の前で止まった。以前魔理沙と来た時と同じ部屋だ。

「まず子供達に説明してくるから呼んだら入ってきてくれ」

「わかった」

「特に何をしろと言う気はないが子供達に悪影響の無い様に気をつけてくれよ」

「どんだけ俺って信用無いんだよ」

 先程霊夢にも言われたばかりだ。

「冗談さ。少し待っててくれ」

 そう言って慧音は部屋に入り少ししてから呼ばれた。

「高橋、入ってきてくれ」

「失礼しまーす」

 高橋が教室に入ると生徒である子供達がそれぞれ反応を見せていた。

「どーも、高橋 愛乃です。今日は慧音先生に呼ばれて一日だけ遊びに来ました。よろしくー」

『よろしくおねがいしまーす』

 高橋が簡単に挨拶をすると子供達も各々元気に返してきた。

 さて、楽しい授業の始まりだ。




投稿も遅けりゃ作中の時間進行も遅いときた。何やってんだ作者よ。
でも例え時間がかかる様な事があっても途中で投げ出したりはしませんので気長に待っていただければと思います。
こんな作者ですが気に入っていただけたら次回も読んでやってください。
お気に入り登録していただいた
mimizu0708様
ありがとうございました。

誤字脱字、ご意見ご感想が有ればコメントお願いします。
ではまた次回。
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