では本編をどうぞ。
「彼に何か質問がある子はいるか?」
「「「はーい」」」
慧音が聞くと何人かの子供が手を挙げた。慧音の方を見ると目線を子供達に向けて促してきた。どうやら自分で選べという事らしい。
「じゃあ、そこの君」
そう言って一人の男の子を指差した。
「高橋さんはいつもどんなお仕事をしてるんですか?」
「俺は普段は便利屋、つまり困ってる人達のお手伝いをしてお金を貰ってる。いなくなったペットを探したり、場合によっては店の手伝いなんかをする事もある。何なら貰うのはお金じゃない時もあるけどな。他に聞きたい人は?」
「はーい」
「それじゃ、そこの女の子」
「それって私達子供がお願いしても良いんですか?」
「ああ。お金は後から慧音先生から貰うから困った事があったら遠慮無く言いに来な。普段は博麗神社にいるからついでにお賽銭を入れていくと良い事があるかもな。でも慧音先生から出された宿題を代わりにやってくれってのはダメだぞ。俺まで慧音先生に怒られるから」
「ちょっと待て、色々言いたい事があるぞ」
高橋が言うと隣にいた慧音に怒られた。
「「「あはははっ」」」
子供達にはウケたようだ。
「他に聞きたい人は?」
「はい」
「そこの君」
「高橋さんが好きな事は何ですか?」
「好きな事か・・・。俺はギャンブル、賭け事が好きだな」
「賭け事?」
「一般的に言えばギャンブルなんて楽してお金を稼ごうって碌でもない考えの奴がするものだ。それは皆も何となく思うだろ?」
高橋の言葉に子供達は頷いた。
「確かにその考えは間違ってない。中には人を騙したり汚い手段で勝とうとする奴等も沢山いる。それでもお金や物を賭けた真剣勝負。一瞬の後には勝って笑顔になるか、負けて人生のドン底に落ちるか。そのスリルが堪らないんだ」
高橋が言うと次々と質問が飛び交ってきた。
「それって僕達にも出来ますか?」
「そういう人達に騙されない為にはどうしたら良いですか?」
さも楽しそうに話す高橋の顔を見て子供達も興味津々な様だ。
「皆落ち着きな。順番に答えるよ。まず最初に俺個人の考えで答えるなら君達は出来る、出来ない以前にやったらダメだ」
「何でですか?」
一人の子供が聞いてきた。
「一言で言えば『自分で責任が取れないから』だ」
「責任?」
「ああ。今の君達は何かあれば大人達が助けてくれるって言う素晴らしい環境にいる。でもそれは自分達では何かをする力がないからだ」
「・・・」
子供達も無言で聞き続ける。
「自分で仕事をしてお金を稼いだり、問題が起きた際に解決させる為に自分で動いたり。それを出来るのが大人ってやつだ。でも今の君達はそのどれも一人じゃ出来ない。知識も少なければ力も他の大人と比べて極端に弱い。だから周りの優しい大人が守ってくれてるんだ。勿論、ここにいる慧音先生も守ってくれるその一人だ」
そこで一旦言葉を止める高橋。子供達の顔を一通り見ていく。
「そしてもう一つの質問の答え、『どうしたら騙されないように出来るか』だ。やる事は二つ。色んな事を想像して触れる。そして色んな事を勉強しろ」
騙すと言うのは人の心の死角を突くと言う事だ。だから相手の発言、行動に対して『何を狙っているのか』『そこに裏は無いか』等を想像して対象するしか無い。その為には想像力と対処する為に必要な知識、知恵、技術が不可欠なのだ。
「人を騙そうとしてくる奴は基本的に知識も多く、人を罠に掛ける技術も多く知ってる。そんな奴を相手に上を行くのは簡単じゃないが、『こいつは自分を騙そうとしているんだ』って理解するだけで被害に遭うリスクは減らせるんだ」
一拍置いて更に高橋は続けた。
「世の中ってのは理想や希望だけじゃどうしようもない事が沢山ある。さっき言ったみたいに自分が得をする為なら平気で人を騙す大人だっている。もし未来で君達が叶えたい夢や目標があるなら、そう言う奴等の良い様にされない為にも色んな事を経験して色んな事を学ぶ。それが今の君達が出来る最初の一歩だ」
いつしか高橋の話を聞く子供達の顔も真剣になっていた。
「まあ、言葉だけ聞いてもピンとこないだろうから実際にやってみるか」
そう言って高橋は上着の内ポケットからトランプの束を取り出した。
「今から一人だけ、代表として俺と勝負をしてもらう。もし俺が負けたら君達全員にお小遣いをやろう」
「本当!?」
「やった!」
子供達がそれぞれ声を上げた。
「おいおい、勝ったらの話だぞ。人の話を聞けない奴には勝ちはないって覚えときな」
適当に子供達を落ち着かせながら高橋が続ける。
「ルールを説明する。さっき言った通り、この中から一人を選んで俺と勝負してもらう。ただし、他の奴等との相談や指示のやり取りは一切禁止とする。と言っても他の子達も無関係じゃない。この中の誰かが勝負の間に俺がイカサマをした際にそれを見破れたらその子には特別賞として一万円をあげよう。その代わり、もしその指摘が間違っていた場合、罰ゲームとして俺の命令を何でも聞いてもらう。まぁ指摘する時は慎重にやるんだな。それと俺が勝った場合も全員俺の命令を一つ何でも聞いてもらう」
「おい高橋、ちょっと待て」
当然と言うべきか、慧音が高橋の言葉に割って入ってきた。
「おいおい先生、今から楽しいゲームが始まるんだ。止めてくれるなよ」
「お前が何をしようが自由だが子供達に危害を加えるなら私も黙ってないぞ」
「怖い怖い。でも仕方ないだろ。お互いが何かを賭けなきゃゲームが成立しないんだ。それに何をしようと自由なんだろ?」
「悪影響を与えるのは禁止と先に言っておいた筈だ」
「悪影響?これは今の幻想郷で悪い大人に騙されない為に必要な教訓だ。それとも何か?先生はこのままこの子達が何も知らないまま汚い大人の食い物にされても文句言わねぇってのか?」
「・・・それは」
「別に俺だって大人気なくこの子達から何もかも全部巻き上げるなんて真似しねぇよ。それくらいの常識は俺にもある。それに、子供達はやる気満々みたいだぜ?」
言いながら視線を子供達へと向ける。
「早くやろー」
「まだー?」
その子供達の声を聞いて高橋がニヤリと笑った。
「子供の学ぼうとする気持ちを無碍にするのが先生の仕事なのか?」
「くっ。お前という奴は・・・。良いだろう、許可する。だが、子供達に変な真似をしてみろ。その時私はお前を許さない」
「怖いねぇ」
何はともあれ、先生の許可も得たので早速始めるとしよう。
「それじゃあ、俺と直接勝負したい子はいるか?」
『はーい!』
高橋の質問に何人かの子供が手を挙げた。
「それじゃあ、そこの女の子、前に出て」
選ばれた女の子が前に出てくる。そして慧音が聞いてきた。
「高橋、何故彼女を選んだ?」
「俺が話してる間、ずっと態度を変える事なく話を聞いていた。それにさっき、俺が負けたら小遣いをやると言った時、他の子はテンションが上がっていたのにこの子だけは変わらず冷静だった。目先の欲に囚われないってのは大事な強さだ。だからこそ戦う資格がある」
慧音に簡単に答えると今度は女の子の方へ向き直って話しかけた。
「君、名前は?」
「鈴って言います。お願いします」
「おー、鈴ちゃん。礼儀正しいのは良い事だ。対戦お願いします」
お互いに頭を下げて簡単に挨拶を交わす。
「それじゃあ、早速ルール説明だ。使うのはジョーカーを除いた二つのマークの26枚のトランプ。鈴ちゃん、好きなマークは?」
聞きながら高橋はトランプを赤と黒のカードで分け始めた。
「えっと、ならハートでお願いします」
「OK。ならそっちが君の手札、スペードが俺の手札だ。今回は練習だから説明しながら途中までやろう」
言って高橋はスペードのA〜Kの13枚を手に取った。つられるように鈴もハートの13枚を取った。
「お互いのプレイヤーはそれぞれ手札から1枚を選んで場に伏せて出す。先攻後攻の順番でな。先攻は鈴ちゃんがやりな」
高橋が言い終わると鈴がカードを選んで伏せる。それに続くように高橋もカードを伏せた。
「場にカードが出たらお互いにカードを捲る。そして強い数字を出した方が勝ちだ。強さはAが一番弱くてKが一番強い。出したカードが同じならドローだ」
二人はカードを捲った。高橋はスペードの5。鈴はハートの6だった。
「この場合は鈴ちゃんの勝ちになるが、これで終わりじゃない。お互いの数字の差が勝った方のポイントになる。鈴ちゃん、6−5は幾つになる?」
「1です」
「正解。つまり今回は鈴ちゃんに1ポイント入ったって事だ。これをカードを使い切るまでやって、最終的にポイントが多い方が勝ち。わかったかな?」
「はい」
「よし。じゃあもう二点、言う事がある。このままだとAがただ弱いだけのカードだ。でも相手が出したカードがKの時だけAは最強のカードとなって20点の扱いになる。つまりAでKに勝てば7点入るわけだ。何処で使うかは慎重にな。そして先攻後攻は各勝負で負けた方が次のターンの先攻になる」
一通りの説明を終え、高橋が一枚カードを選んで伏せた。
「次は鈴ちゃんの番だ」
高橋に促され、手札から一枚を選んで場に出した。
「それじゃあオープンだ」
二人がカードを捲った。高橋はスペードの8、鈴はハートの4だ。
「この場合は俺に4ポイント入ったって事になる」
この時点で二人の点数は4対1で高橋の優勢となった。
「どうする?もう少し練習するか?それとも本番を始めるか?」
「このまま練習をお願いします」
「OK」
鈴の返答に高橋はまたしても感心した。
(浮き足だって本番に入らずにこのゲームの性質を理解する為にチャンスを無駄にしない。良いねぇ)
自分の手札を見ながら考え込む彼女を見ながらそう思った。
「慧音先生、普段のあの子ってどんな感じだ?」
二人の間に立っている慧音に聞いてみた。
「真面目な子さ。勉強は出来るし誰とでも仲良く過ごしてる。その上周りをよく見てる自慢の生徒だ」
「ベタ褒めだねぇ」
慧音の言葉に適当に返しながらも高橋はいくつか考える。
(周りをよく見てるって事はそれだけ観察力があると言う事。場の勢いに流される事無く一歩下がった所から全体を見る事が出来る子なんだろう。更に言えば用心深い。練習の機会をちゃんと使ってこのゲームをより理解しようとしている。子供とは思えないレベルだな)
高橋は元よりそんなつもりは無かったが、そんな相手にイカサマを仕掛けるのは中々に難しいだろう。
そんな事を考えている間に鈴がカードを出した。それを見て高橋もカードを出す。
「オープンだ」
言うと同時に二人はカードを捲った。
「2対2。同点だな。次も鈴ちゃんが先攻でいいよ」
言われて鈴が再度手札から一枚選んでカードを場に出した。その動きを見て高橋もカードを出す。結果は7対7。またしても同点だ。
「次も先攻は鈴ちゃんだ」
言われて鈴が手札を見つめるが、ここに来て初めて彼女の手が止まった。
(長考か。無理もない。得点が逆転された直後に二回連続の同点。次の手をどうするか悩む所だろう)
そばで見ていた慧音はそう考えた。事実鈴は次のゲームをどうするか決めかねていた。
(二回とも連続で同点なんてあるのかな?それともこの人には私が何を出したかわかってる?でもカードを覗き見されたりしてないし・・・。いや、でもまだ始まったばかりだし偶然かもだよね。まずは逆転しないと)
そんな事を考えつつ鈴はカードを場に伏せた。後に続く様に高橋がカードを伏せながら言った。
「鈴ちゃん、これが本番じゃなくて良かったな」
「え?」
「そんな心の声が丸聞こえじゃ自分の手を教えてる様なもんだぜ。オープンだ」
言い終わると同時にお互いにカードを捲る。それを見て鈴は驚いた。
鈴が出したのはK。それに対して高橋が出したのは・・・。
「これで11対1。俺の圧倒的なリードだな」
Aだったからだ。
「!?」
あまりの事に鈴は驚いた。それも仕方ないだろう。高橋が出したAはKにこそ強いカードではあるが、他のカードに対しては何の役にも立たない最弱のカードだ。それを狙い澄ましたかの様に出すのは信じ難い事だ。
(・・・そんな、まだ勝負は中盤なのに。何で私がここでKを出すのがわかったの?)
向かい側に立つ高橋を見るが、何か怪しい動きをした様子も無い。
「鈴ちゃん、君は結構わかりやすい性格みたいだな。『何で終盤でもないこの状況で俺がAで勝てたんだ?』って思ってるだろ?」
鈴は無言で頷く。
「イカサマなんてしなくても相手の事をずっと見てたら色々わかるんだよ。多分君はさっき、『そろそろ得点を逆転しておきたい』って思ったろ?そして確実に勝つにはKを出せば良い。まだ中盤でいつAを出すか決めかねてる今なら出される可能性も低い。だから最悪ドローになっても負ける事は無い。悪く無い考えだ。でも今回は他と比べてカードを場に出す時の力加減が少し強かった。つまりそのカードはそれだけ強いカードである証明になるんだよ」
説明を終えると高橋が一拍空けて言った。
「どんな場面でもポーカーフェイス。ギャンブルをする上で真っ先に気をつけなきゃいけない点だ。さあ、続きを始めようか」
言われた鈴は次の行動に迷いを抱いていた。しかし無理もない事だ。勝てると思った矢先にこちらの考えを全て読まれたのだ。心が折れるのも仕方が無い。
(どうしたら良いの?どうにか点差を減らさないと。なら一番強いカードを出す?)
そう考えると同時に鈴はその考えを自ら否定した。
(ダメ。それでさっき負けたんだから。高橋さんはまだKを持ってる。なら私もそれにAを出せればまだ勝てるかもしれない)
だが問題なのはそのKを高橋がいつ出すかだ。このゲームの肝となる点は如何に少ない点差で負けて如何に多い点差で勝つか。もし仮に鈴がAを出して高橋のKを狙い撃つ事に失敗したのなら鈴に勝ち目は殆ど無いと言っていいだろう。
(私がやる事は少しずつでも自分の得点を増やす事。負けない事。それに高橋さんがKを出す瞬間を見逃さない事)
鈴の心には勝とうとする闘志の炎が宿っていた。感情が昂り体温が熱くなるのを自覚した。彼女にしては珍しく感情を剥き出しにしていた。
(絶対勝つ!)
鈴は人生で初めてギャンブルを楽しいと思った。
「はい。これで俺の勝ち」
結果としてこの練習試合は高橋の圧勝で終わった。
「中々良い線行ってたよ」
「・・・悔しいです」
「まぁ本番じゃないからそんなに気にしなくても良いさ」
「でもこれが本番なら終わりでしたよね?」
高橋の言葉に鈴が返す。その言葉を聞いて再度高橋は感心した。
(ちゃんと本番を意識して取り組んでる。それだけでこのゲームにどれだけ真摯に取り組んでるかよく分かるな)
そこでふと高橋は考え、他の子供達に聞いた。
「今の勝負で鈴ちゃんが負けた理由、それか俺が何かしたと思う子はいるか?」
そのまま本番に移っても良かったが、高橋は子供達の反応を見る事にした。
子供達はそれぞれわからないと言った様子で顔を横に振っていた。
(外した時のペナルティーを気にしてんのかね。まぁ迂闊に発言しないってのは評価出来るな)
消極的にも思えるが、根拠が無いのでは何も言えないのも無理のない事だ。
「先生は何か気が付いたか?」
「わ、私か?」
「他にこの場に先生がどこにいるんだよ。あ、先生も勿論間違えたらペナルティーな」
「何故だ!?それはお前と子供達との約束の筈だ!」
「俺は『この中の誰か』って言ったんだ。先生を除外するとは言ってねぇよ。それに、慧音先生ならこの程度とっくに気がついてるに決まってるよなぁ?」
高橋は敢えて語尾を強調するように言った。すると案の定、子供達はそれに乗せられて声を上げた。
「本当!?」
「やっぱり慧音先生って凄いんだ!」
「先生教えて!」
ここまで子供達が乗り気になってしまえば慧音としては引くに引けない状況である。
「くっ、高橋、覚えていろ」
「ははっ。早く子供達に教えてやんなよ」
「・・・まず大前提として、高橋は何一つイカサマはしていない。そして恐らく能力も使っていないだろう。そして勝負の間に彼が言った言葉にも嘘は無いと思う」
「俺が嘘をついていないと思う根拠は?」
「少なくとも言っている言葉に違和感や矛盾する点は無かった。途中で鈴に説明していた点も理にかなっていたし、言われてからだが納得出来るものばかりだった」
淡々と答える慧音の言葉を聞きながら高橋も考える。
(慧音先生はちゃんと相手の言葉をロジック的に解析するんだな。もし慧音先生と戦うとしたら発言には気をつけるとしよう)
「であるからして、高橋が勝ったのはイカサマではなく彼の洞察力による物と推測した。恐らくだが鈴が負けた理由も読めた」
「へぇ、じゃあ慧音先生の答え合わせを聞かせてもらいましょうか」
「答えは鈴の手札の持ち方だ」
「持ち方?」
思わず鈴が聞き返した。
「ああ。正確には手札の並べ方だ。鈴は自分から見て左から順にA、2、3と順番に並べて持っていた。だからわかったんだろ?『何処から出したかで数字が予測出来る』と」
「その通り」
高橋が笑って答える。
「最初は『多分順番通りに持っているんだろう』程度にしか思っていなかったが二、三度やったらすぐにわかったよ。だから俺からしたら一度でも勝てれば実質そのゲームは勝ち確定と言っても良かった」
「どういう事ですか?」
鈴が問い返す。それに慧音が答えた。
「鈴、このゲームのルールを思い出すんだ。この勝負は各ターンで負けた方が次のゲームで先攻になる。つまり先にカードを出さなければならない。結果一度勝てれば高橋は次の鈴の手が読めるんだ。その後は同じ事の繰り返しだ。さっき彼が言った様に相手の手が読めているなら後は自分が負けない様にカードを選ぶだけ。鈴に逆転の目は無かったんだ」
慧音が手品の種明かしをする様に語る。鈴の顔には絶望に近い顔が浮かんでいた。しかしそれも仕方ないだろう。なんせ高橋の有利な状態でゲームが進んでいたのだから。
「そんなのズルいよ!」
「そうだそうだ!」
「反則負けだよ!」
高橋と慧音の説明を聞いて他の子供達がそれぞれ文句を言ってきた。
(まぁそうなるよな)
想像通りの子供達の反応に高橋はため息をついた。
「好き勝手言ってくるのは良いがな、今のどこにイカサマの要素があった?」
高橋のその一言に子供達は言葉を詰まらせた。
「俺は事前にルールを説明し、相手もそれに納得した。ルールの範囲内で行われた事をズルだのイカサマだの言うんなら、それこそギャンブルなんて最初から向いてない」
ハッキリと切り捨てる高橋の言葉に子供達は何も言えずにいた。
「今の話を聞いてそれでもギャンブルに興味があるなら止めやしない。君達の自由だからな。だが、相手が用意したゲームには必ず何かあると言う事だけは忘れたらダメだ。それに結果論だが、慧音先生は俺のやり口を見抜いた。それはこのゲームに対してそれだけ思考を巡らせた証拠だ」
そもそもの話ではあるが、このルールにおいて、例え高橋が自分に有利になる様にしていたとしても必ず勝てる保証なんてものは無い。現に最初の時点で高橋はポイントを取られていた。仮に鈴が初めから高橋の企みを読んでいたなら負けていたのは高橋だ。
「勝負の結果が出てからのずるい、卑怯は敗者の戯言だ。そんな事を言った時点で自分自身で負けを認めてるようなもんだ。これはギャンブルに限った話じゃない。大人の世界では途中で気付けない奴が悪いんだ」
この高橋の言葉に反論してくる者はいなかった。
「さっきも似たような事を言ったが、大人と君達の大きな違いは物をどれだけ知ってるかどうかだ。でもだからと言って必ず大人が勝つわけじゃない。君達には知らないが故の思いつきってのがある。固定概念で決めつけてかかる大人に唯一対抗出来る武器だ。だから色んな事を勉強してその上で独自の技術を手に入れられたらそれは誰にも負けない武器になる」
そこで高橋は一拍間を開けて続けた。
「っと、偉そうに講釈垂れたが、これはまだ練習だ。今のを踏まえて次からが本番だ」
高橋が鈴へと向き合って話す。
「どうする?鈴ちゃん。やるか、やめるか?」
「やります」
鈴は即答した。それを見て高橋は心の底から楽しそうに笑うのだった。
前回の投稿から一年と三ヶ月。最低でも年一くらいでは更新しようと思ってたのに気がついたらこのザマでした。
読んでくださる方の中にも「そんな作品もあったなぁ」くらいに思ってる方も多いかと思いますが今後とも読んでいただけたら幸いです。
もしよければもう一つの作品の方も読んでいただければと思います。
誤字脱字、ご意見ご感想等が有ればコメントお願いします。
ではまた次回。