東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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今年初の投稿となります。
出来ればもっと早くに投稿したかったのですが、ネタが纏まらなかったり新年早々インフルエンザにかかったりとで遅くなりました。(言い訳)
それでは本編をどうぞ。


4話・博麗神社は客は来ても参拝客は来ないらしい。

「流石に動き回ったから少し疲れたな。何処かで一休みしないか?」

賭場を後にして人里の散策を再開していると高橋が萃香に聞いた。

「丁度昼時だしせっかくだからなんか食べて行こうよ。愛乃の奢りで」

「さりげなく人に奢らせようとすんなよ。金は有るけど」

「だってこれってデートなんでしょ?だったら愛乃が出してよ」

「男女平等なんて言葉はこの世界には無いのかよ。元より出すつもりだったけどさ」

そう言いながら高橋と萃香は近くの店に入っていった。

「いらっしゃい!」

店に入って直ぐ様店長らしい人が勢い良く言ってきた。

「ようオヤジ!来てやったよ!」

「お、萃香の嬢ちゃんじゃねえか。久しぶりだな、お連れさんはお前さんの彼氏かい?」

「まぁね。今日はこいつとデートなんだよ」

萃香の言葉を聞くとオヤジさんはニヤつきながら高橋へ視線を移した。

「へぇ、そいつはめでたいな。で、何にする?」

「私は肉うどん一つ。愛乃は何にする?」

「俺も同じのを」

「あいよ。ちょっと待っててくれ」

そう言うとオヤジさんは店の奥へと姿を消した。

「そんじゃ来るまでの間今後の話でもするか」

近くの席に座ると高橋が告げた。

「今後のって言われてもねぇ〜」

「あからさまに面倒がるなよ。とりあえず幾つか確認するとしようか」

「殆どはさっき霊夢が説明したと思うけどね」

「そう言うなよ。状況確認は何においても大事なことさ」

高橋は一呼吸おいて話を続けた。

「まず今から一週間ほど前から弾幕ごっこがギャンブルに変わった。そして元に戻すには黒幕であるゲームマスターとやらを倒さなきゃならない。ここまではあってるよな?」

「うん。確かにあってるよ」

「そこで一つ疑問なんだが、そのゲームマスターとやらが誰かわかってるのか?」

「さあ?」

「さあって、解決する気あんのかよ」

萃香の答えに高橋は呆れて言った。

「それがわかってりゃ苦労しないよ。それにみんな実際たいした被害とかないからさ、危機感とかって無いんだよね」

萃香の気の抜けたような言葉を聞いて高橋は頭を抱えた。

「これでどうやって異変解決しろってんだよ。手掛かりひとつ無いんだぞ」

高橋が項垂れていると店の戸が勢い良く開いた。高橋が入り口に視線を向けると白と黒を基調とした服を着た金髪の女が箒を片手に立っていた。

「いらっしゃい!」

二人ぶんの料理を持って来るとオヤジさんがさっきと同じように言った。

「ん?萃香じゃないか。こんなところで会うなんて珍しいな。しかも男連れか?」

萃香の姿を見るや否や金髪少女がそんなことを言ってきた。

「まあね。今こいつとデート中なんだよ」

「こいつは驚いた。萃香に酒以外に好きなものができるなんてな」

大袈裟に驚くような素振りをしながら金髪少女が言った。

「なんでも良いんだがとりあえず注文してくれないか?」

二人分の料理を運んできたオヤジさんが呆れるように言った。

「折角だから私もうどんにするぜ」

言いながら萃香の隣に座る彼女が高橋へ視線を向けて聞いて来た。

「それでお前、名前は?」

「高橋 愛乃。ついでに言っておくと人に名前を聞く時は自分から名乗るもんだぜ、金髪少女」

「私の名前は霧雨 魔理沙。魔法使いだ」

「魔法使い?鬼だの妖怪だの魔法使いだの、幻想郷は本当になんでもありだな」

「まあ幻想郷ってのは私達みたいな妖怪達の為にあるからね」

「ところで、愛乃?だっけ?見た所外来人みたいだがなんで幻想郷に来たんだ?」

「紫に異変解決を頼まれた」

高橋はうどんを頬張りながら答えた。

「よくもあんな奴の話に付き合おうと思ったな」

「成り行きで仕方なくな。それにちゃんと報酬が出る依頼だからな」

「依頼?」

「ああ。俺は向こうの世界で便利屋やってたんだ。だが、最近はまともに仕事が無くて暇してたんだよ」

「それでわざわざ幻想郷にまで来るなんて変わった奴だな」

高橋の言葉に呆れる魔理沙。

「退屈なだけの毎日なんて生きてる意味が無いだろ?」

「その意見には納得するぜ」

(とか言いながら、紫に会った時にはビビリまくって逃げたけどな)

内心で自分に毒突く高橋に魔理沙が聞いてきた。

「それで?これから異変解決についてのアテはあるのか?」

「残念ながら無いな。そもそもそれを探す為に萃香とデートしてたからな」

「なんだそりゃ。それでどこまで知ってるんだ?」

「ほぼ何も知らないと言って問題ないだろうな。ある程度は霊夢や萃香から聞いてはいるが」

「なんだ、霊夢にも会ったのか?」

「俺が目が覚めた時には博麗神社だったからな。どうも二人が助けてくれたらしい」

高橋は丼の中の汁を飲み干して答えた。

「そいつがなんでデートする事になったんだ?」

「愛乃に勝負で負けてね。酒飲めなくなるのが嫌ならいうこと聞けって脅されたんだよ」

「すげぇ聞こえが悪いな」

「でも間違ってはないよ」

どうも自分は女相手に口では勝てないようだと高橋はふと思った。

そんなことを考えていると魔理沙が唐突に言ってきた。

「なぁ愛乃、ここの代金を賭けて私と勝負しないか?」

「別にいいが何やるんだ?」

「それなら私に考えがある。おい、オヤジ!トランプあるか?」

「おう。ちょいと待ってろ」

魔理沙の言葉に答えると、オヤジさんがうどんと一緒に持ってきた。

「ほらこれでいいか?」

「ああ。ちょいと借りるぜ」

「それで何をするんだ?」

トランプをシャッフルしている魔理沙に愛乃が聞いた。

「シンプルにポーカー一回でどうだ?」

「それで良いよ」

愛乃の返事を聞くと魔理沙はカードを配り始めた。

「チェンジは一回だぜ」

「わかってるよ」

(初手は2のワンペアのみか・・・)

ペアがあるだけマシとも取れるが、そのペアが最弱な事を考えれば喜べはしないだろう。

「三枚チェンジだ」

愛乃は揃っていない三枚を捨て、山札から新たに三枚を引いた。

(2のスリーカードかよ。さっきよりマシだけど・・・)

一方の魔理沙を見てみると手札を四枚捨て山札から新たに引いていた。

(何で一枚だけ残した?あれがジョーカーか勘で残したか・・・)

「私はこれで良いぜ。勝負するか?」

「ああ。俺もこれで良い」

そしてお互いの手札が開かれた。

その結果、勝ったのは───

 

 

「はっはっはっ!悪いな愛乃、奢ってもらったりして」

勝負から数十分後、店を出ると魔理沙が大笑いしながら言ってきた。

「勝負の結果だ。気にすんなよ」

「勝った私が気にするわけないさ」

悪びれる様子もなく言って返してきた。

(何で四枚チェンジしてストレートフラッシュになるんだよ)

三人分の代金を支払うと愛乃は毒づいた。

大方イカサマでもしたんだろうと内心で考えていたが、正直彼からしてみればそんなことはさほど問題では無かった。それよりも彼が気にしているのはイカサマをされたとして、それに気づけなかった自分の不甲斐無さにだった。

(まあ、今更言っても手遅れで、仮にイカサマでも証明のしようもないか)

結局、勝負の世界ではイカサマを見破れなかった者が間抜けで、負けた方が悪いのだ。ただそれだけ。

「それじゃ、私は帰るけどお前達はどうするんだ?」

「俺たちはまだ残るよ。なんせ愛する彼女に貢がなきゃならんからな」

「なら精々高いもんでも送ってご機嫌を取るんだな」

言って魔理沙は手にしていた箒に跨がると空高く飛んで言った。その姿は確かに魔法使いそのものだった。

「さて、約束の酒を買いに行くぞ。萃香」

「お酒、お酒〜」

そうして二人はまた人里へ歩いて行った。

 

 

愛乃達が魔理沙と別れてから数十分後、愛乃と萃香は再び博麗神社へと戻った。

「おい霊夢戻ったぜ」

「ただいまー」

愛乃と萃香が神社の中に入ると二人の姿があった。

「あら、お帰りなさい」

一人は霊夢だった。そしてもう一人は、

「よう、数十分ぶりだな」

先程別れた魔理沙だった。

「なんだ魔理沙、来てたのか」

「おう、ここは私の家みたいなもんだからな」

「いつからここはあんたの家になったのよ」

魔理沙の言葉に霊夢はジト目で言った。

「細かい事を気にするなよ。私と霊夢の仲だろ」

「人の家に来たと思ったら勝手にお茶と煎餅食べだす奴と仲良くなった覚えはないわね」

「そんな不届きな輩がいるのか。そいつは大変だな」

霊夢が何を言っても特に気にしない様子の魔理沙。おそらく彼女には何を言っても聞く耳を持たないのだろう。

「で、萃香は何を買わせたんだ?」

「決まってんじゃん。お酒だよ」

萃香は手に持っていた酒瓶を見せつつ言った。

(ニ本で十万を超えるとは思ってなかったよ・・・)

隣で笑ってる萃香をよそに高橋は苦笑した。

「なら今夜はそれを皆で飲もうぜ」

「勿論、皆で飲んだ方が美味いからね」

「それよりも愛乃、さっきの約束・・・」

と、霊夢が言いかけたところで、外から声がした。

「霊夢さーん、いますかー?」

「ん?誰か来たみたいだな」

「・・・あの声は文ね」

声のする方へ視線を向けると霊夢は外へ出た。それにつられるように三人も外へ出た。

「どうも霊夢さん。何か面白そうなネタはご存じ無いですか?」

外へ出ると先程霊夢を呼んだらしい少女がカメラを片手に立っていた。

「さあね。あんたの好みに合いそうなネタはうちには無いわよ」

「つれないですね〜。あやや、魔理沙さんと萃香さんもご一緒でしたか。ってあれ?」

高橋の姿を見た途端、ほんの僅かに少女の動きが止まった。そして一瞬のうちに高橋の前に立っていた。

「はじめまして!私、鴉天狗の射命丸 文と申します。外来人の方ですよね?少々取材にご協力お願いしても良いですか?」

「相変わらず一方的ね」

「愛乃、そいつに話すと有る事無い事書かれるぞ」

「話さなくても好き勝手に書いてるけどね」

それは最早取材の意味はないだろうに・・・。

「ご丁寧にどうも。俺は高橋 愛乃だ。面倒だし疲れてるから断るって言ったら諦めてくれるのか?」

「確認を取ったと言うことは実際には問題ないと言うことですよね。それでは取材協力お願いします!なんなら私にできることなら何でも後でお礼します!」

「・・・本当か?お前の取材に協力すれば、本当に何でもしてくれるのか?」

文の言葉を聞いて高橋の顔が少しだけ真面目な表情になった。

「はい!取材協力に対するギブアンドテイクです。なのでお願いします!」

「だが断る」

「えっ!?」

「この高橋 愛乃が最も好きな事のひとつは自分の思い通りになると思っているやつに『NO』と断ってやることさ」

「おー、なんか無駄にかっこいいな」

「どうしても取材したかったら、ギャンブルだ。それが嫌なら帰れ」

「ここで引き下がったら新聞記者の名折れ!受けて立ちましょう」

「なんでそこまで俺に固執するんだよ」

「貴方からは面白そうなネタの匂いがプンプンするんですよ」

「・・・新聞記者の嗅覚ってやつか?何でもいいが、やるってことでいいんだよな?」

「はい。私が勝ったら私の気がすむまで取材に協力してもらいます」

「もし俺が勝ったら?」

「先程も言ったように私が出来る範囲で貴方の言う事を一つ聞きましょう。ゲームはどうしますか?」

文が言うと高橋は辺りを見渡して一つのものを見つめた。

「よしこうしよう。制限時間三十分以内にあの賽銭箱にこの神社にやって来た参拝客が金を入れたら俺の勝ち。時間が経っても参拝客が金を入れ無かったら君の勝ち。これでどうだ?」

「構いませんけど、本当にいいんですか?」

「何がだ?」

「だって、この博麗神社に参拝客なんて殆ど見た事ないですよ」

「無いね」

「参拝客がこの神社に来るなんてそれ自体が異変だぜ」

三人がそれぞれ失礼極まりない事を言い出した。

「あんた達後で泣かすわよ」

巫女さんが物騒な事を言い出した。

「今まで来なかったからってこの後も来ないとは限らないだろ?」

「それで良いならこちらは構いませんが・・・」

こうして、双方同意のもと賭けが始まった。

だが、

「もう十五分経ちましたよ」

「いや、まだ十五分あるだろ」

誰一人来る気配もなかった。

 

更に五分後───

「やっぱ誰も来ないね」

「だから言ったんだ。来る方が問題だぜ」

 

更に五分後───

「後五分ですよー」

「なんで誰も来ないのよ!」

「どうなってんだよこの神社は!」

誰一人として来ない現状に霊夢と高橋は怒りに任せて叫んでいた。

「誰でも良いからこいよ!」

言うと高橋はその場から離れ、博麗神社の階段を降りて行った。

「待っててもどうせ来るはずありませんよー」

文が言い終えると同時に高橋が階段から戻って来た。

「どうやら諦めたみたいですね」

「そりゃ後五分も無いのに一人も来る気配が無いんだ。諦めるに決まってるぜ」

文と魔理沙の話を他所に高橋は賽銭箱に向かって歩いて行った。そして上着の中から札束を取り出し、そのまま賽銭箱に放った。

「二礼二拍手一礼だっけか・・・」

一通りの作法を終え、高橋が振り返ると霊夢が満面の笑みを浮かべていた。

「霊夢、これで俺も参拝客って言えるよな?」

「もちろんよ。ありがとうございますお客様」

「だそうだ。これで俺の勝ちだな」

高橋は文に向かって自慢げに行った。

「ちょ、ちょっと待ってください!なんでそうなるんですか!」

「なんでって、まだ五分はある。時間切れじゃないんだから勝ちだろうが」

「そうじゃなくて!どうして貴方がお賽銭を入れたら貴方の勝ちになるんですか!」

「そりゃあ、俺が参拝客だからな」

「え?」

「おい、魔理沙。俺がさっき言ったこの勝負のルール覚えてるか?」

「ああ。『制限時間三十分以内に博麗神社に来た参拝客が賽銭箱に賽銭を入れたら愛乃の勝ち、来なかったら文の勝ち』だぜ」

「そうですよ。現にまだ誰も来てないじゃないですか」

言い迫ってくる文に対してハァとため息をつくと言葉を返した。

「察しが悪いな。おい文。いつ誰が、『この場にいる奴らは含まれない』って言ったよ?」

「っ!」

「俺は一度博麗神社から離れてからもう一度ここに来て賽銭箱に賽銭を入れた。これなら参拝客と言っても問題ないだろ?」

「・・・」

「沈黙は肯定なりってな。そう言うわけだ。残念だが俺の勝ちだ」

文は彼の言葉に対して何も言えなかった。心の中で認めたのだ。自分の負けを。

「ちゃんと考えれば気づけたんでしょうけどね完全に油断してましたよ」

「そうだな。もし俺がお前の立場なら時間切れまで誰一人、賽銭箱に近づけさせなかったろうよ」

「いや〜、悔しいですね。それで貴方は何を命令するんですか?」

「何も」

「何も?」

高橋の言葉を繰り返し言った。

「ああ。あるとしたら、これからもよろしく頼むよ。射命丸 文さん」

高橋の言葉を聞くと文はニヤニヤと笑い出した。

「愛乃さんってちょっとキザですよね」

「うるせー」

茶化された高橋が視線を賽銭箱に向けると霊夢が賽銭箱の中を漁っていた。

「愛乃ー、お賽銭に入れたお金、今更返せって言われても返さないからね。良いわね?」

札束を片手に興奮気味に霊夢が言って来た。

「ああ良いよ。帰って来たら賽銭入れるって言ったし、少しばかり稼いで来たからな」

「それじゃあ魔理沙に萃香、今日は宴会よ!皆で盛大にやるわよ!」

「「よっしゃ!任せとけ!」」

霊夢の言葉を聞いた途端、魔理沙と萃香は勢い良く飛んで行った。

「それじゃあ私は宴会の料理の準備するわ。あんた達も手伝いなさいよ」

「わかったよ」

「いえ、私は取材に行かなければならないので。宴会には参加させていただきますので!」

言うだけ言うと文も魔理沙達同様に飛んで行った。

「ったく。逃げ足が速い奴・・・」

「元気な奴らが多いな、幻想郷は」

そう言って高橋も霊夢の手伝いに向かった。

 

 

─── その夜の博麗神社 ───

 

 

八雲 紫が言っていたがこの幻想郷には確かに妖怪の類が多いらしい。そのことを高橋は改めて実感した。

「この殆どが妖怪かよ・・・」

宴会の行われている博麗神社の部屋の中には大勢の人やら妖怪やらが酒を酌み交わしていた。

「おい愛乃、ボサッとしてないでお前ももっと飲め飲め」

右隣にいた魔理沙が酒の入った瓶を寄越してきた。

「お前さんが噂の外来人かい?話によるとお前さん、萃香に勝ったそうじゃないか」

魔理沙から渡された酒瓶を受け取ると後ろから声がした。振り返ると額に赤い角を生やした長い金髪の女性が立っていた。

「私は星熊 勇儀。地底に住む鬼さ。ちょいと隣、失礼するよ」

言って星熊 勇儀と名乗った女性は高橋の左隣に腰を下ろした。

「はじめまして勇儀さん。俺は高橋 愛乃。これからよろしくお願いします」

「そんなにかしこまらなくて良いよ。勇儀でいい。それより折角の酒だ、堅い話は無しで楽しく飲もうや」

酒の入ったグラスを片手に勇儀に言われ、高橋も酒の入ったグラスを持つと互いにグラスを合わせ、乾杯した。

 

─────────────

─────────

 

それから数十分後、彼は別の部屋の隅で酔い潰れていた。

「・・・飲み過ぎた。気持ち悪い」

あの後高橋は勇儀にわんこそば並みの速さで酒を飲ませて来たのだ。断る訳にもいかずに飲み続けた結果がこのザマであった。

「外の空気でも吸うか・・・」

高橋が部屋から出ようと襖を開けようとした途端、襖が唐突に開いた。反対側から誰かが開けたのだ。

「高橋 愛乃さん、少々よろしいでしょうか?」

襖が開いた先にはメイド服を着た銀髪の女が立っていた。

「別にいいけど、俺に何か用か?」

「私、紅魔館でメイド長を務めさせていただいています十六夜 咲夜と申します」

十六夜 咲夜と名乗った女は丁寧に頭を下げた。

「それで一体メイド長さんが何の用ですか?」

「実はお嬢様が貴方へお話があるとの事です」

「お嬢様?」

よく見れば彼女の後ろに背の低いコウモリの様な羽を生やした少女が一人立っていた。

「はじめまして、貴方が高橋 愛乃ね。私はレミリア・スカーレットよ」

「・・・はじめまして。俺に話があるってのは君か?」

「ええそうよ。少しお邪魔するわね」

そう言って二人は部屋の中に入ってきた。

「魔理沙から聞いたのだけど貴方、外の世界から来た人間だそうね?」

「ああ、その通りだ」

「そして外の世界では便利屋をやっていたようね?」

「そうだ。俺が幻想郷に来たのも紫から異変解決を依頼されたからだよ。仕事の依頼なら喜んで話を聞くが?」

高橋が問うとレミリアは首を横に振った。

「残念だけれど今は言えないわ。大した話ではないのだけれど、盗み聞きしている不届き者がいるようだから」

レミリアが言うと背後に立っていた咲夜はどこから取り出したのか、手にしたナイフを入って来た襖へ投げた。

『あやや⁉︎』

投げたナイフが襖に刺さると襖越しにそんなマヌケな悲鳴が聞こえてきた。盗み聞きの犯人は何処ぞの新聞記者らしい。

「・・・なるほど、なら細かい話はまた日を改めてって事で」

「ええ。出来れば私の屋敷がいいのだけれど構わないかしら?」

「屋敷?さっきそこのメイドさんが言ってた紅魔館って所か?」

「そうよ。場所はわかるかしら?」

「いや知らん」

「ここから西にしばらく飛んだ所に湖があるわ。その先にある紅い屋敷が我が紅魔館よ」

「あ、やっぱり皆さん『飛ぶ』が前提なんですねわかりました」

「あら?貴方は飛べない人間なのかしら?」

「強ち無理でもない」

「そう。なら明日の昼、屋敷で待っているわ」

「失礼します」

言って二人は部屋を後にした。

「・・・騒々しい奴ら」

一人取り残された高橋はそう呟くと自分も部屋を後にした。

 

「ふぅ」

外に出て縁側に座ると一息ついた。

 

「どうだったかしら?幻想郷は」

 

と本来いるはずない隣からそんな声がした。

「!?紫、お前いつの間に」

「あら?私はずっと隣にいたわよ」

あからさまな嘘を言いながら紫は小さく笑った。

「それより、人の質問に答えなさいな」

「・・・退屈はしないですみそうだよ」

「それだけ?」

「楽しいよ楽しいですよ。これで満足か?」

「よろしい」

高橋が忌々しく答えると紫は小さく笑って答えた。

「それより、なんで今まで姿を見せなかった」

「だって私が動いたら貴方へ依頼した意味がないじゃないの」

「お前、楽がしたいからって俺に依頼してきたのかよ」

「どうかしらね?それよりせっかくの宴会よ。飲みましょう」

言って紫はどこから取り出したのか酒の入った瓶とグラスを差し出してきた。

「ったく。自由な女だな」

紫からグラスを受け取ると一気に飲み干した。

「ところで紫、お前───」

「おい愛乃、そんなところにいないでこっちでもっと飲もうぜ」

高橋が言いかけたところで部屋の中から魔理沙が呼んできた。

「今行くよ。それより紫、ってあれ?」

高橋が魔理沙に答えて再び紫の方を見ると既に彼女の姿はなかった。

「本当、自由な女」

一人呟くと彼は部屋に戻り、夜遅くまで皆と酒を飲み明かした。




4話が終わってようやく一日分が終わりましたね。いや、長かった。次は誰が出てくることか・・・。まぁ紅魔館のキャラ達でしょうけどね。
それでは次回もお楽しみに。
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