東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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前回の投稿から約2ヶ月とこの作品では早め?の投稿ですね。
今回は紅魔館が舞台となります。
では第5話、本編をどうぞ。


5話・幻想郷に来て初めての依頼を聞きに行く。

「・・・朝か。ん?」

博麗神社へ差し込む朝日に照らされ、高橋は目を覚ました。すると、彼の右腕に異常な重さがあった。

「なんで魔理沙が人の腕を枕にして寝てんだよ」

俗に言う腕枕の状態で魔理沙が隣で寝ていた。どうやら彼女も飲んでる最中に寝てしまったようだ。

「まだ起きそうにないし、起こすわけにもいかんよな」

魔理沙を起こさないように彼女の頭から腕をどかそうとしていると途端にパシャッと音がした。

「ふっふっふ。撮りましたよ決定的瞬間を。そしておはようございます」

音のした方を見るとそこにはカメラを片手に笑っている文が立っていた。

「おいコラ朝から何だ。あとおはよう」

「いえいえ、昨夜はお楽しみでしたね」

「ああ宴会のことな。確かに楽しんだよ。あと適当なこと言うな」

「あまりこの射命丸 文を舐めないで下さいよ。調子に乗ってるとこの熱愛写真を幻想郷にバラ撒きますよ」

唐突の脅迫だった。いや、相手を怯ませられていない時点で脅迫でも無いのだが。

「何が熱愛写真だ。そんなもん昨日幻想郷(ここ)に来たばかりの俺が相手じゃ新聞記事としてはインパクト低いだろ」

「では、先ずは貴方の取材をしましょう。それなら問題ありませんよね」

「まだ諦めてなかったのか・・・」

「当然です。諦めたらそこで取材終了ですよ」

「終わってもらって一向に構わないんだよ。こっちは」

自分への取材を諦めていない文に呆れながらも寝ている魔理沙の頭から腕を外した。

「あんた達、人の家で何騒いでるのよ」

「おうおはよう霊夢」

「霊夢さんおはようございます」

高橋と文が話していると奥から霊夢がやって来た。

「おはよう。魔理沙はまだ寝てるのね」

「みたいだな。ところで萃香は?」

「愛する彼女が心配かしら?夜中に勇儀達と飲み直すって出て行ったわよ」

「あっそ。それより朝飯まだか?」

「・・・図々しいわねあんた。今から作るからその間に魔理沙を起こしときなさい。文もいるでしょ?」

「は、はい。いただきます」

文が答えると霊夢は再び奥の部屋へ姿を消した。

「どうした?」

隣で驚いている文に高橋が聞いた。

「いえ、霊夢さんが朝ご飯を出してくれる事に驚きまして」

「昨日俺から金貰って飯代の心配が無いからだろうな」

文の発言に高橋も失礼な返答だった。

「それよりも愛乃さん。色々聞きたいんですが、萃香さんとお付き合いしてるんですか?」

「想像に任せるよ」

「そうなると、萃香さんというものがありながら魔理沙さんにも手を出したんですか。とんでもない最低男ですね」

「とんでもないのはお前の頭の悪さだよ。おい魔理沙、そろそろ起きろよ」

「・・・んん。なんだよ愛乃、私の寝込みを襲いに来たのか?」

寝ていた魔理沙を起こすとアホな事を言ってきた。

「なんで俺がお前の寝込みを襲わなきゃいけねぇんだよ」

「それは私がいい女だからだな。邪な思いを持つのも仕方ないさ」

「よし、もう一回眠りたいみたいだな」

魔理沙の答えに高橋は拳を握った。

「女性に乱暴するなんてやっぱり最低男ですね」

「お前もう黙ってろよ」

高橋は頭を抱えて言ったが当然文がそれで黙るわけがない。

「なら代わりの話題として、貴方のことを教えて下さい」

やはりどう足掻いても取材は諦めていないようだ。

「もうそれでいいよ」

「昨日はギャンブルまでして阻止したのに結局取材させていただけるんですね」

半ば投げやり気味に言ってきた高橋に文が笑って言った。

「俺はギャンブルができればそれで良かったからな。だから本当は取材を受けても良かったんだよ」

「・・・ただのギャンブル中毒ですか」

「失礼な記者だな。で、何を聞きたいんだ?」

「昨日の宴会でレミリアさんとの話を盗み聞・・・、偶然聞いたんですが愛乃さんは外の世界で便利屋をしていたとか」

「今盗み聞きって言ったよな、おい」

高橋のツッコミも気にせずに文は続けた。

「そして妖怪の賢者こと、八雲 紫さんに異変解決をするように言われてこの幻想郷に来た、と」

手帳に書き記しながら確認をするように言った。

「最初に紫さんに会った時はどんな感じでしたか?」

「どんなって言ってもなー。最初は紫のオーラに圧倒されたよ。正直ビビった。こいつはヤバイって」

「それでは何故紫さんからの話を受けようと思ったんですか?」

「あいつの話を聞いてたら興味を持ってな。元の世界に少し飽きていたし、それに・・・」

「それに?」

「紫の言葉に魅入られたってところかな」

「ご飯用意できたわよー」

高橋が笑っていうと同時に霊夢が朝ご飯を持って来た。

 

──────────────────

 

朝食を食べ終えてから数十分後、博麗神社には霊夢、高橋、魔理沙の三人だけとなっていた。食べ終わると同時に少しばかり文からの取材攻めの後、「これから新聞作りに忙しいので!」と言って帰ったのだ。

「それで、愛乃はこれからどうするつもり?」

お茶を飲みながら霊夢が聞いてきた。

「レミリアって奴に昨日の宴会で紅魔館に来いって言われたから今日はそこに行く」

「ならこの魔理沙様が連れて行ってやるよ。丁度、私も紅魔館に行くからな」

そう言って魔理沙は外へ出た。

「悪いな、助かる」

「またパチュリーから盗むのね」

「盗むんじゃない。死ぬまで借りるだけさ」

世間ではそれを窃盗という。

「まぁ案内してくれるなら何でもいいさ。それじゃあ行こうぜ」

「おう。なら早く後ろに乗りな」

霊夢と魔理沙の不穏な会話を聞かなかったことにして高橋は言われた通りに箒に跨った。

「振り落とされるなよ!」

魔理沙が言い終わると同時に箒は高度を上げてものすごい速さで空を飛んで行った。

 

──────────────────

 

魔理沙に案内され暫く空からの景色を楽しんでいると少し先に大きな湖が見えた。

「あれが霧の湖だ。そしてその先にあるのがお目当の紅魔館だぜ」

魔理沙が指差した方を見ると確かに湖の奥にやたらと豪華な屋敷があった。

その名に違わぬ紅い屋敷、紅魔館。

(どんな奴らがいるのか、どんな依頼をして来るのか、どんな未来が起こるのか、本当に楽しみだ)

昨日会った彼女がどんな依頼をして来るのか高橋は内心楽しんでいた。

高橋が一人で考えているといつの間にか紅魔館の門の前まで着いた。

「ほら着いたぜ。私は先に中に入ってるから精々頑張りな。あそこの門にいる門番に言えば良いだろうさ」

「魔理沙はその門番さんに会わなくて良いのか?」

「なんだ、一人じゃ寂しいから私にも着いて来てほしいのか?生憎と此処では私は顔パスなんだよ」

そう言うと魔理沙は箒に乗り直して屋敷の中へと飛んで行った。

「・・・多分あいつ不法侵入なんだろうな」

一人寂しく呟くと高橋は歩き出した。

「すみません。今日此方に来るようレミリア・スカーレットに言われて来た高橋ですが・・・」

門の柱に背中を預けて立っていた中国服を着た赤髪の女性に話しかけるとそこで高橋はあることに気がついた。

「寝てやがるよ、この門番」

門番らしき彼女は器用に立った状態で眠っていた。(魔理沙に侵入された時点で最早門番として機能していないが)

顔を覗き込んだり顔の前で手を振ったりしたが起きる様子はまるで無かった。

「魔理沙みたいに勝手に入る、訳にはいかないよな」

人としての常識的な観点からもそうだが、相手からの信頼が命とも言えるこの仕事で最初から相手へ心象を下げる真似はなるべくしたくは無い。

とは言え、依頼人をあまり待たせたく無いと言う思いも確かにあるので、このまま待っている訳にもいかない。

「誰かその辺に歩いてたりしないか?」

寝ている彼女の横を通って門に触れようとした時、高橋は直感的に勢い良く頭を下げた。

「 ─── っ!」

「今のを避けますか。なかなかやりますね」

先程高橋の頭があった場所には隣で寝ていたはずの女の拳があった。

背後という絶対的死角からの攻撃。

(避けてなかったら後頭部直撃だぞ!食らったらシャレになんねぇ!)

「それで、どう言ったご用件でしょうか?なるべく手荒な真似はしたく無いんですが」

背中を預けていた壁から離れて高橋の前に立つと女はそう言った。

「待て!待て!俺は今日ここの主のレミリア・スカーレットに来るように言われた高橋 愛乃ってもんだ」

これ以上の面倒事はごめんな為、高橋は慌てて答えた。

「そう言えば咲夜さんからそんな話が確かに。失礼しました。普段感じない『気』がしたのでつい」

「ついで命に関わる一撃をもらったらたまったもんじゃないぞ。それで、あんたの名前は?」

紅 美鈴(ほんめいりん)と申します。この紅魔館で門番をしています」

美鈴と名乗った彼女は深々と頭を下げた。

「いや、門番が寝てたらダメだろ」

「あはは・・・。それより、案内しますから中へどうぞ」

高橋のツッコミに美鈴は苦笑しながら門を開けた。

美鈴に連れられて門をくぐると、空から見た時は紅い屋敷へ目が行ったが中庭もなかなか立派なものだった。

「綺麗な花だな。見たことないのもあるけど。手入れが行き届いているんだろうな」

案内されている途中に見えた庭園へ視線を向けると素直に感想を述べた。

「ありがとうございます。実はあれは私が育ててるんですよ」

高橋の言葉に美鈴は少し照れながら言った。

「さ、どうぞお入りください。中でお嬢様がお待ちですよ」

館の扉を開けると美鈴が入るようにすすめてきた。

「それじゃあ、お邪魔します」

一言言ってから中へ入ると高橋は驚いた。外から見た時も思ったが、建物の中も外と同じ程紅かった。

少し悪趣味と思ったのは内緒の話である。

(どこもかしこも真っ赤だな。早く慣れないと気分が悪くなりそうだ)

辺りを適当に見回していると二つほど気になる点があった。

「この屋敷にはあまり窓が無いんだな」

「ええ。なんせお嬢様が吸血鬼ですからね。極力太陽の光が入らないように造られてるんです」

(あいつ吸血鬼だったのか)

言われてみれば確かにあのコウモリのような羽は吸血鬼っぽいと高橋は考えた。

まぁ、今まで吸血鬼を見た事はもちろん無いのだが。

そして、もう一つの疑問を口にした。

「外から見た時よりも広くないか?」

外から見た時も十分紅魔館は広く感じたのだが中に入ってみると明らかに空間の広さに違いがあった。

「あー、詳しい事は私も知りませんがここには空間をいじってる人がいるんですよ。だから外から見るより広いんです」

二人がロビーの真ん中で話していると途端に別の誰かの声がした。

「お待ちしていました。高橋様」

「あ、咲夜さん。お客様をお連れしました」

声のした方を見ると階段の上に昨日のメイドさんが立っていた。そしてその後ろにもう一人。

「レミリア・スカーレット・・・」

その姿を見て高橋は思わずその名を口にした。

「そろそろ来る頃だと思っていたわ。ようこそ我が紅魔館へ」

ゆったりとした口調でレミリアは高橋に言った。

「こちらこそお招きいただきありがとうございます。レミリア・スカーレット様。それで、本日はどう言ったご用件でしょうか?」

高橋もわざとらしい口調で返した。我ながらこの喋り方は少し鼻に付く。

「そのことなのだけど、少し気が変わったわ」

「何だ?まさかここに来て依頼取り消しか?」

「違うわ。一晩考えたら思ったのよ。『貴方の実力を見てみたい』と。『私が依頼するに足る相手なのか』と」

ゆったりと階段を降りながら言って来たレミリアの言葉に高橋は僅かにイラついた。

「だから今ここで貴方の実力を見せてくれないかしら?」

「つまり、今から俺にギャンブルをやれってことで良いんだよな?」

「ええ。相手は美鈴がやるわ」

「わ、私ですか!?」

突然呼ばれた美鈴は当然驚いた。

「何か問題があるかしら?門番をサボって寝ているならこのくらいしていた方が時間を有意義に使えるでしょう?」

「ま、まあ別に問題はないですけど・・・」

渋々といった感じで美鈴は承諾したが、高橋はそうはいかない。

「おいレミリア、何でお前の知的好奇心を満たす為に俺が協力しなきゃいけねぇんだよ」

「同じことを二度も言わすのは間抜けのする事よ。言ったでしょう『依頼するに足るか』って。なら信頼を結果で証明するのは当然じゃない」

「ッチ。わかったよ。やればいいんだろ、やれば」

恐らくこのまま言い合いを続けても埒があかないと考え、仕方なくと言った感じで高橋も承諾した。

「その代わり、俺が勝ったらそれなりの見返りはもらうぞ」

「貴方が勝てたら、ね。さあ美鈴、遠慮はいらないわ。好きにやりなさい」

「・・・わかりました。では僭越ながら、彩符『彩雨』!」

美鈴が自身のスペルカードを唱えると彼女を中心に辺りは光に包まれた。

そして光が晴れると、今回のギャンブルに使われる道具が現れた。

「貴女らしいと言えば貴女らしいわね」

それを見て咲夜が言った。

そこに置かれていたのは一つの四角いテーブルと椅子、そしてその上にはギャンブルではメジャーな麻雀の牌だった。

「麻雀か・・・。またシンプルだな」

「高橋さん、麻雀のルールはご存知ですか?」

「一通りは知ってるよ。問題無い」

卓の上の麻雀牌を弄りながら答えた。

「でも麻雀って言ったら普通は四人でやるもんだろ。後の二人はどうするんだ?」

「それなら心配ありませんよ」

高橋が聞くと美鈴が言った。

「それはどう言う・・・」

高橋が言いかけた時、左側の廊下から二つの影が飛び込んできた。

「魔理沙!?」

「よう愛乃、さっきぶりだな」

一つは箒に乗ってやって来た魔理沙だった。そしてその後に見知らぬ姿の女が現れた。

「待ちなさい!パチュリー様の本を返しなさい!」

長く赤い髪に、背中に羽が生えた如何にも悪魔と言うような風貌の女が魔理沙の後を追うようにやって来た。

(霊夢の言ってた盗むってこう言うことか・・・)

「これで人数は揃いましたよ。さあ、始めましょう」

「みんな揃って何か始めるのか?」

美鈴の言葉に魔理沙が問うた。

「今から俺とこの門番が麻雀で勝負するんだ。それでお前達二人はその頭数ってことらしい」

「面白そうだな。私はいいぜ!」

「私もですか!?」

高橋の言葉にそれぞれ反応した。

「初めまして、俺は高橋 愛乃って言います。文句なら此処の主人に言ってくれ」

「は、初めまして。小悪魔と言います・・・。私もいいですけどそれより本を返してください!」

少し緊張気味に高橋に答えると再び魔理沙へ言いよった。

「『返せ』と言われて返すくらいなら初めから持って行ったりしないもんだぜ。嫌なら実力で取り返すんだな。お前がこの勝負で私に勝てたら返してやるよ」

「馬鹿にしないでください!やってやりますよ!絶対にその本を返してもらいます!」

自分の犯行を棚に上げて言う魔理沙の言葉に小悪魔は見事乗せられていた。

「お二人共、これからやるのは『消失麻雀』ですがよろしいですか?」

「構いません」

「私もだ」

「なんだ、二人共知ってるのか?」

「知りません(知らないぜ)」

「・・・説明頼む」

二人の答えに高橋は反応に困りながらも美鈴に言った。

「はい。このゲームは基本的には通常の麻雀と変わりませんが、唯一違うところは一度あがり牌に使った牌ではそれ以降あがることができない。それだけです」

仮に一人のプレイヤーが待ち牌の三萬でツモあがりしたとする。その場合、それ以降全てのプレイヤーは三萬でツモ、ロンが出来なくなるという取り決めである。

「なかなか面倒なルールだな。でもまぁわかったよ。互いの勝利条件は?」

「どちらかが一位で終わりにしましょう。なので仮に私が二位で高橋さんが三位みたいな時は仕切り直しとしましょう」

「わかったよ。確認だが、ダブロン有りか?」

「ダブロンは有り、持ち点がマイナスになった時点で対局終了とします」

「さっさと始めようぜ!」

手近な椅子に座ると待ちきれないとばかりに魔理沙が言ってきた。

 

「始まるようね」

少し離れたところで椅子に腰掛けていたレミリアが静かに言った。

「お嬢様は美鈴とあの男、どちらが勝つと思いますか?」

隣に立っていた咲夜が唐突に聞いてきた。

「そうね、ただ予想するだけではつまらないわ。咲夜、どちらが勝つか賭けてみましょう。貴女が好きな方を選びなさい。私はその逆でいいわ」

「では ── で」

「そう。なら ── が勝ったら私の勝ちね。負けた方は ─────── をするっていうのはどうかしら?」

「・・・お嬢様は冗談がお好きですね」

「あら?私は本気よ。無論私が負けたらちゃんとやるから安心なさい。それと紅茶をお願い」

「・・・かしこまりました」

こうして高橋達本人の知らない所で静かに賭けが始まった。

 

場所決めが終わり、それぞれが目の前に牌を積んでいる最中、高橋は他の三人を見回した。因みに席の順番は高橋から時計回りに見て、高橋、魔理沙、美鈴、小悪魔となっている。

「ん、どうした?美少女三人に囲まれて緊張でもしてるのか?」

こちらの視線に気づいたのか魔理沙が言ってきた。

「ああ、こんな美少女三人と一緒に麻雀なんてなんて出来ないからな。ちょっとばかり緊張してるよ」

高橋は適当に答えたが、無論そんな理由で見ていたわけでは無い。相手を観察する為だ。

見る、観察する。一見単純だが、勝負ごとにおいてこれ程効果的で重要なことは無いだろう。

見られていれば相手はイカサマを容易く出来はせず、観察していれば相手の癖や心理も読めてくる。つまり、それだけで相手より有利に立ちやすくなるのだ。

それでも高橋にはいくつか不安要素があった。

(イカサマをしている様子は無さそうだがこのゲーム、圧倒的にこっちが不利かもしれないな

この勝負の終了条件は高橋、美鈴のどちらかが一位で終わらせる事である。で、あるならば隣に座っている小悪魔は無理に勝とうとする必要は無い。自分の点棒をそっくりそのまま美鈴へ渡せばそれで良いのだから。

ならばこちらもそうすれば良いのでは?と考えたい所であるが、この魔理沙がそれを良しとするだろうか?知り合って間もない高橋でもそれは無いと断言できる。

(多勢に無勢ってのはキツイな。取り敢えず点は低くても確実にあがっていくべきか?)

高橋がそう考えている間に親が決まり、それぞれ配牌が終わった。

東一局 0本場

ドラ{八}

親 小悪魔

高橋の手牌

{一一二六⑤⑦⑨4499中中}

(あがりだけを考えるなら中のみか七対子(チートイツ)か?それとも少し粘って対々和(トイトイ)・・・)

「リーチです」

「は?」

隣からそんな声が聞こえて思わず高橋は間抜けな声をあげた。

小悪魔が第一打、手牌から四萬(スーワン)を捨てリーチをかけたのだ。

(ダブルリーチ!?ど頭からそんなの有りかよ!)

小悪魔のダブルリーチに思わず目を疑ったが、間違いなどではなかった。

そして美鈴が山から牌をツモるとその手が止まった。

「ダブルリーチとなると待ちがわかりませんね」

言って美鈴は手牌から一枚を捨てた。

三索(サンゾウ)は大丈夫、みたいですね」

「こんな読みもきかないリーチに考えても時間の無駄さ」

美鈴の言葉にそう言うと魔理沙も山から一枚引き、特に考えることもなく手牌から一枚を捨てる。一萬(イーワン)だ。

「通ったぜ」

そして高橋の番になり、山から牌をツモる。

(あがらなきゃ勝てないが、欲かいて負けましたじゃそもそも話にならない。ならここで捨てるのは・・・)

少し考え、高橋は魔理沙と同じ一萬を捨てた。これでもう一巡は稼げる。

 

だが、それはあくまで自分への直撃を避けただけである。

 

「ツモです。ダブリー、一発、ツモ、平和(ピンフ)、ドラ二、・・・親の跳満で六千オールですね」

小悪魔の手牌

{一二三八八④⑤345789横⑥}

 

二巡目にして小悪魔がツモあがったのである。

開始数分でいきなり場の流れが変わった。高橋は直感でそれを察した。

 

残り持ち点

高橋 19,000点

小悪魔 43,000点

美鈴 19,000点

魔理沙 19,000点

「あがり牌が六筒(ローピン)ってことはこれ以降六筒であがれないって事だよな?」

「はい。その通りです」

牌を混ぜながら聞くと美鈴が答えた。

「これで六筒単騎待ちなんて事になったら笑えないよな」

山をつくりながら隣の魔理沙が笑って言ったが高橋はそれより気掛かりな事があった。

(俺はてっきり小悪魔が美鈴のアシストに徹すると思ってたが違うのか?俺に勝つなら適当に美鈴へ自分の点棒を渡して一位にさせればそれで済む。となるとこの二人は組んでないってことか?)

「いきなりあんな役出すなんてなかなかやるな」

「何としてでも貴方に勝ってパチュリー様の本を返してもらいますからね!」

(っ!そうか、そう言う事か!)

魔理沙と小悪魔の会話を聞いて高橋は先ほどの会話を思い出した。

『「返せ」と言われて返すくらいなら初めから持って行ったりしないもんだぜ。嫌なら実力で取り返すんだな。お前がこの勝負で私に勝てたら返してやるよ』

『馬鹿にしないでください!やってやりますよ!絶対にその本を返してもらいます!』

 

(そうか。小悪魔からして見れば俺達二人の勝負なんて()()()()()()()()()

そう。小悪魔からすれば高橋と美鈴の勝負など二の次なのだ。そんなことより彼女からして見れば一刻も早く盗られた本を取り返す事の方が重要なのだ。だから彼女は今、麻雀をしているのだ。

(そりゃあ点棒を捨てるような真似するわけがねぇよな。そのパチュリー様って奴の方が大事なんだからな)

思った以上に厄介な勝負になりそうだ。




今回はギャンブルでは割とメジャーな麻雀をテーマにしてみました。
流石に1話で終わらせると長くなりそうなので続きは次回へ。
そして気がつけばこの作品の投稿を始めてもうすぐ1年が経ちます。(1年経ってまだ5話かよ)
未熟ながらも何とかここまでやってこれました。ありがとうございます。
これからもこの作品を見て下さる方がいることを願って稚拙ながらも続けて行こうと思っています。
長くなりましたがではまた次回。
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