今回はいつもより早く更新しようとしたら結局いつもと変わらない期間になってしまった・・・。
違うんですよ、別に話がまとまらなかったとか、ゲームに夢中だったとかそんなアレでは無いんですよ。
では本編どうぞ。
高橋の予想とはうらはらに、小悪魔の初っ端からダブルリーチの一発ツモにより、開始からいきなり大きく点差をつけられてしまった。
(ならこの勝負、小悪魔は一位で勝ち抜けるつもりなのか?)
そう考えると同時にそうでは無いだろうと考えた。
確かに魔理沙に勝つならば一位であれば文句無しではあるが、この二人の間には高橋と美鈴の様な順位の指定は無いのだ。つまり最終的に魔理沙に勝ってさえいればそれで良い。
(今のうちに点棒を稼いでおいて後から美鈴へ点棒を送ればあの二人は問題無いって事か)
小悪魔が美鈴のアシストについているのかどうか、未だにはっきりしていないが、それでも高橋がしなければいけないことに変わりは無い。
そう、美鈴に勝つ事だ。勝てば全てが正しくなる。
東一局1本場 ドラ {①}
親 小悪魔
高橋の手牌
{一一一①①①⑤⑦111東東}
高橋、配牌でまさかの
だがここで先程の魔理沙の言葉を思い出した。
『これで
(六筒単騎ィィィィィィ!)
こともあろうに高橋の待ち牌はあがれぬ牌、六筒であった。
『消失麻雀』の特殊ルールによって無残にも殺された役満への可能性。
不運。圧倒的不運。
「どうした愛乃。まるで自分の不幸を呪っている様な顔だぞ」
「イヤ、ソンナコトナイゾ」
魔理沙の言葉に思わずカタコトになって返してしまった高橋。ポーカーフェイスも何もあったものではない。
そして高橋以外の三人は確信した。
『こいつ(この人)六筒単騎待ちだ・・・』
案の定と言うべきか、全員に高橋の待ちがバレてしまった。
そして親である小悪魔の一打目は六筒だった。
「これは通りますよね、高橋さん?」
わざとらしく聴いてくる小悪魔に少しイラつく高橋。
続く美鈴と魔理沙はそれぞれ、二筒と八萬を捨てた。
そして高橋の一巡目、引いた牌は東だった。
高橋の手牌
{一一一①①①⑤⑦111東東東}
(・・・これで五筒か七筒でリーチをかければ四暗刻単騎でダブル役満か)
再度訪れた役満への可能性。もしこれで高橋があがれば64,000点を得ることになり、勝ちが確定する。
(このチャンスを逃す手はねぇぜ)
そして七筒を捨てた。
「リーチだ」
「それロンです」
高橋が牌を捨てた途端、隣からそう聞こえると同時に牌が倒された。
「断么、
小悪魔の手牌
{二二二⑤⑤⑦⑦333888横⑦}
「これがツモだったら文句無いんですけどね」
もしもこれが小悪魔のツモだったなら四暗刻、役満である。そして皮肉な事に、高橋がどちらを捨ててもあがられていたのである。
残り持ち点
高橋 6,700点
小悪魔 55,300点
美鈴 19,000点
魔理沙 19,000点
今のあがりで10,000点以上が小悪魔へと流れてしまった。
(下手したら次で
そして、このまま小悪魔が美鈴へ点棒を送る作業が始まってしまえば高橋が勝つ可能性は極端に下がってしまう。
(いつでも俺をやれるってところかな)
すずめの涙程度しかない高橋の点棒を削り取るなど造作もない。
だが、そんなことよりも高橋には考えなければならないことがある。
(小悪魔のやつ、幾らなんでも聴牌速度が早過ぎる。てことは何かしらのイカサマをしてるってことだ)
一度ならまだしも、二度も続けてのあの早さのあがりは運がいいと言うだけでは説明できない。
(本来運という曖昧な概念に理屈を求める方がおかしいのだろうが)
(大方美鈴も協力しているんだろうが、恐らくは『積み込み』か・・・。クソッ、見ていたにも関わらずイカサマされるとか油断するにも程があるぞ、俺)
手積みの麻雀では代表的なイカサマの一つ、『積み込み』。自分の目の前の山を積む際に自分に都合のいいように牌を仕込んでおくイカサマである。無論、自分で積み込んだ牌の並びを覚えておかなければいけない。
「これで七筒も使えなくなりましたね」
これにより、六筒と七筒の二つがあがれぬ牌となった。
そしてそれぞれが再び山を積み始め、高橋は先程以上に注意深く二人の動きを観察した。先程の流れはどう考えても小悪魔と美鈴のからかい半分の挑発だ。小悪魔と高橋の役の形が同じだったのが何よりの証拠だし、リーチをかけなかったのも高橋の持ち点を考えてのことだろう。
そして現状において、高橋に出来ることは大きく分けて二つある。
一つ、このまま小悪魔や魔理沙に自分の点棒を渡してどちらを一位にさせ次の勝負に持ち越すこと。
一つ、負けたままでなるものかと逆転を目指しこのまま勝負を続けること。
だが、この考えには両方共問題点がある。前者の場合、今回は良くても決定的な解決策がない限り、問題を先送りにしているだけであるということ。
そして後者の場合、小悪魔が美鈴に点棒を差し出しても此方はそれを防ぐ術が何一つないということだ。俗にいう絶体絶命というやつである。
───────────────
高橋が美鈴達を観察しながら考えている時、美鈴も高橋の視線に気づいた。
(流石に此方のイカサマには気づいたようですね)
高橋の予想通り、小悪魔と美鈴は確かに積み込みをしていた。無論、それだけではない。もう一つ、『通し』である。
『通し』とは、自分と仲間だけにわかるように言葉や仕草で伝える合図のことである。これにより、二人は積み込む際のやり取りをしていたのだ。
そして美鈴は小悪魔の方をちらりと見た。
(美鈴さん、そろそろ終わらせますか?)
(そうですね。油断して負けでもしたらお嬢様に怒られてしまいますから早く終わらせましょう。役はどうします?)
牌を混ぜながら美鈴が見ると小悪魔は少しだけ考えて答えた。
(美鈴さんのあがりで役は大三元、地和)
もし仮にこのまま小悪魔の言う通りにこの役が決まればダブル役満となり美鈴には64,000点が入り、高橋の持ち点がマイナスとなる。
(これが決まれば美鈴さんが一位であがってあの人はハコテン。文句無しに私達の勝利です)
小悪魔からの通しを読み取ると小さく頷き、必要な牌を集めて山を積んだ。
(これで仕込みは完了。後は小悪魔さんが二の目を出せば私達の勝ち)
親がサイコロ二つを振り、それから牌を取る山が決まる。二の目が出たなら美鈴と小悪魔が積み込んだ山から順に牌を取ることになり、後は美鈴の手番が来て牌を引けば地和、役満のあがりで終了である。
(このままなら貴方の負けです。どうしますか?高橋 愛乃さん)
高橋の方を見たが特別動きがある様にも見えなかった。
そして運命を分ける小悪魔のサイ振り。その出目は ───
(ニ!出た!勝利の目!)
小悪魔が出したサイの目を見た瞬間自身の勝ちを確信した。当然である。自分達の勝ちに必要な課題を全て達成したのだから。
東一局 2本場 ドラ{南}
親 小悪魔
そして配牌を終え、全員に牌が行き渡った。美鈴がこの手配を開けば大三元の手が姿を現わす。
そのはずだった。
(なっ、なんですかこれは!?)
美鈴の手には大三元とは程遠い配牌だった。
(あり得ないっ、私も小悪魔さんも『積み込み』も出目も完璧だった。なのにこの手牌はっ!)
美鈴の手牌
{一九①⑤⑧37899東北白}
何度確かめても美鈴の手牌は仕込んでおいたものとは全く違っていた。
(なんでこんなことになった?出目は問題無い。私の積み込みも同じく。となれば小悪魔さんの積み込みミス?)
一瞬美鈴の脳裏にそんな事を考えたが、それはないと切り捨てた。確かに小悪魔のミスなら辻褄があうかもしれないが、そもそも美鈴自身が積んだ山から取った牌ですらバラバラなのだ。小悪魔のミスで片付く話ではない。
「なんだ、意外そうな顔だな。美鈴」
美鈴が考えていると隣で座っている魔理沙が突然言ってきた。
「三人だけで楽しむなよ。私も混ぜろ」
今まで動かなかった魔法使いがようやく動き出した。
(こいつ、やりやがった)
自分達の勝ちを確信し、油断していた二人は気づいていなかったが、隣で見ていた高橋にはわかっていた。
山を積む時、美鈴と小悪魔が『積み込み』をしている事には魔理沙も気づいていた。そして美鈴が三元牌を集め、積み込んだのを見た時、それを利用する事を考えたのだ。みんながサイコロの出目を見ている一瞬の隙に自分の山から四牌を美鈴の山へと付け足したのだ。
当然取る牌も二列ズレる。つまり、美鈴へ行くはずの牌は魔理沙の元へ行くという寸法である。
「ところで一つ小悪魔に言いたいんだが、私がお前に勝ったらどうなるんだろうな?」
「何が言いたいんですか?」
魔理沙の問いに怪訝そうに小悪魔が言った。
「お前は私に自分が勝ったらパチュリーの本を返せって言ったんだ。お前は勝った時のメリットがあるのに私には何も無いなんてそんなのギャンブルとしておかしいよな?」
「そ、そんなのただの屁理屈じゃないですか!誰も認めませんよ」
「小悪魔、残念だがそれは無理だ」
小悪魔の言葉に高橋が言った。
「無理?」
「ああそうだ。確か弾幕ごっこからギャンブルに変わった時のルールにあったよな?『対戦者はゲーム前に予め何かを賭けてからゲームを始める事』って。お前が何も賭けないならそんなものに強制力も意味も無い」
「・・・」
高橋の言葉に小悪魔は黙るしかなかった。自分自身納得してしまったからだ。
「勝って私から本を取り返したいなら私からの条件も飲むしかないぜ」
「何が望みですか」
「私が勝ったら今後パチュリーの本を借りていくことを邪魔するな。それで勘弁してやるさ」
この一言に小悪魔は悩んだ。確かに小悪魔は魔理沙から本を取り返したい。だが、だからと言って魔理沙に協力する様な事はしたくないし、その可能性に繋がる様な真似もしたくない。それは彼女からしてみればパチュリーに対する裏切りにも等しいからだ。
「わかりました。それで構いません」
だが、それを踏まえて尚、彼女は勝負に応じた。
別に自暴自棄になった訳でもパチュリーに対しての考え方が変わった訳でもない。ただ単純に思ったのだ。『勝てばいいじゃないか』と。
「やってくれるのはいいが早くしろよ」
「五月蝿いですよ。捨てればいいんでしょ」
魔理沙の軽口にイラつきながら小悪魔が牌を捨てた。七萬だ。
「はははっ」
それを見て魔理沙が笑い出した。
「ついに頭がおかしくなったんですか?」
「いや、まさかこうもうまくいくなんて思わなくってな」
小悪魔の言葉を対して気にもせず魔理沙は続けた。
「それ、ロンだ」
言うと同時に魔理沙は牌を倒した。
魔理沙の手牌
{七①②③白白白発発発中中中横七}
「大三元だ。この場合、
「・・・残念ですが、私達の間では人和は認めていませんよ」
人和とは子が配牌で聴牌した状態で、最初のツモより前に捨てられた牌でロンした際に成立するローカル役である。
「何にしても役満だ。小悪魔、気をつけないとすぐに負けるぞ」
残り持ち点
高橋 6,700点
小悪魔 22,700点
美鈴 19,000点
魔理沙 51,600点
魔理沙の作戦により、小悪魔から大幅に点数を減らすことが出来た。
だが、これで安心というわけではない。美鈴が点の高い役を決めればそれで終わり。やはり気は抜けない。
「こんなのイカサマじゃないですか!」
そんなことを考えていると隣の小悪魔が声を荒げて言ってきた。
「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。イカサマの証拠でもあるのか?」
「ふざけないで下さいよ。大三元に人和なんてイカサマしてるとしか思えないじゃないですか!認めませんよ、こんなの!」
「
「!?」
高橋の静かな一言で小悪魔はその先を言えなかった。会って間もない彼女でも分かる程度に彼はキレていた。
「さっきから黙って聞いてりゃ都合の良い御託をペラペラ言いやがって。イカサマは認めないってお前だってイカサマしてんじゃねぇか」
「何を証拠にそんなっ」
「証拠なんて無いさ。だから俺も魔理沙も何も言ってなかっただろ?しょうがない。だって証拠が無いんだからな。けどそれはお前も同じ筈だ。適当な御託や半端な憶測で勝負を中断なんか出来やしない。それが、‘‘
「はっはっ、確かにその通りだ!」
高橋の言葉に魔理沙が笑った。
「で、どうする小悪魔。自分の都合通りにいかないからってここで諦めるか?」
聞かれるまでもなく彼女の答えは決まっている。
「勿論やりますよ。でもイカサマを疑われるのも嫌なのでオール伏せ牌で、ですけどね」
「おいおい、相棒の許可も無しに勝手に決めてもいいのかよ」
「別に私は構いませんよ。どうせ勝つのは私ですから」
特に気にする様子もなく、それでいて挑発的に美鈴は答えた。普段の彼女からして見れば珍しい。
───────────────
それからしばらくして魔理沙と高橋がそれぞれあがったが、点数では魔理沙がトップのままだった。
残り持ち点
高橋 12,700点
小悪魔 18,700点
美鈴 13,000点
魔理沙 55,600点
そしてやって来た高橋の初の親番。
オール伏せ牌が効いているのか、先程までのような勢いは美鈴達には無いようだ。だがそれでも高橋は安心することはなかった。
(麻雀のイカサマなんて積み込みだけじゃない。他にもやろうと思えばいくらでもやりようはある)
先程の『通し』に始まり、やり手によってイカサマの手口は多岐にわたる。その全てを封じるなど不可能に近い。油断したら一瞬でやられるのだ。
東四局 0本場 ドラ {三萬}
親 高橋
高橋の手牌
{三三四四八九①③⑤⑦⑧257}
(何とも言い辛い配牌だな・・・。取り敢えずは安くても親を守る事だけ考えるか?)
因みに現在までの消失牌は六筒、七筒、七萬、東、五索の五枚である。
少し考え、高橋は手牌から一枚を捨てた。
(それにしても妙だな。美鈴の奴、何かを仕掛けてくる気配が無い)
高橋からしてみれば美鈴のこの姿はただただ不安でしかない。対戦相手の思考がまるで読めないのだ。
(これからイカサマを仕掛けてくるのか、それとも既に何かされてるのか・・・)
───────────────
美鈴はこの現状に少し焦った。
魔理沙のイカサマから状況は一変、美鈴達に前半の様な勢いが完全に無くなってしまったからだ。
(しかし、目の前の勝ちに目が眩んでイカサマを見逃すなんて・・・)
一度考え出してしまえば後悔はとどまる事はない。
なぜもっと早く勝負を切り上げようとしなかったのか。
なぜ相手のイカサマに気がつかなかったのか。
たった一度の油断から全ては崩れた。
だが、ここにきてもまだ美鈴は冷静であった。
(なってしまった事は仕方がない。問題はここからどう巻き返すか)
美鈴の手牌
{六八九⑥⑥⑦⑦2367東東}
一見するとある程度纏まっている様にも見えるが、待ちに消失牌が含まれていることを考えればあまり喜べない手牌である。
そして高橋が一筒を、続く小悪魔は西を捨てた。
肝心の美鈴の最初のツモは八筒だった。
(上手くいけば三色や一盃口にいけるかな?それとも確実に役牌のみであがって親を流すか・・・。このままだと流れが来る前に負ける可能性がある。どこかで流れを変えなきゃ)
流れを変える、と一言で言ってもそれはなかなか簡単な事ではない。流れというものは何気無い行動一つで良くも悪くも変化する。だから皆、あの手この手で流れを自分へ向けようとするのだ。
(でも下手なイカサマは自分の首を絞めかねない)
ならばどうするべきか、美鈴の答えは決まっている。
(イカサマせずに勝てばいい!)
小細工が自身の危険を招くのなら、そんなものこちらから御免被る。
そもそも、高橋の予想は大前提から間違っていたのだ。
(私、イカサマってあまり好きじゃないんですよね)
ギャンブルにイカサマはつきものとはよく言われたもので、ギャンブルをする際はまず先にイカサマの危険を考えるものである。その理由は言わずもがな、その行為一つで互いの有利、不利が大きく決まるからだ。
だが、当然ながらそれがギャンブルの全てではない。
イカサマで勝つ者もいれば、自分のつくりあげた理論や確率論を用いて理詰めで勝つ者、運が全てだと考えて勝つ者もいる。美鈴からしてみればイカサマだけに頼りきっている者など程度が知れている。
(まぁさっきはイカサマに頼りきって足をすくわれたんだけど・・・)
内心で自分の言っている事とやっている事の矛盾に毒づいた。だがレミリアが見ている手前、そう簡単に負けるわけにもいかないのだ。うん、仕方がない。
(とは言え、あまり時間をかけると勝っても負けてもお嬢様に怒られそうだしな〜。なんとかしないと)
主人の機嫌をとる。勝負にも勝つ。『両方』やらなくっちゃあならないってのが従者のつらいところである。
そして美鈴はニヤリと笑いながら高橋に向かって言った。
「そう言えば高橋さん、私達もお互いに何も賭けていませんよね。何か賭けましょう」
「確かに言われればそうだったな。いいぜ、賭けよう」
高橋の言葉を聞いて美鈴が続けて言った。
「では勝った方が相手を一日中好きにできるっていうのはどうですか?」
「やれやれ。可愛い顔して何を言うかと思えば、意外と過激な要求するな。俺もそれで構わんよ」
「過激な方が男性は嬉しいんじゃないですか?色々と」
「否定はしません」
高橋の返答に美鈴は軽く笑うと手牌から一枚を手に取り、
「覚悟はいいですか?私は出来てます」
と言った。
今回で麻雀編終わらせるはずだったのに書きたいこと書いたら終わらなかった・・・。
次で終わるだろう(多分)
話の所々に好きな作品のネタ入れるの楽しいわー
ではまた次回。
ご意見・ご感想などがあればお願いいたします。