東方賭博奇譚   作:シフォンケーキ

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今年最初の投稿ですね。
今年も気長にやっていきたいと思います。
それでは本編をどうぞ。


8話・妹様と話をしに行く。

「私の妹を黙らせなさい」

レミリアのその一言に高橋は思わず耳を疑った。

「なんだよその物騒な物言いは」

「またフランの奴暴れてるのか?」

「フラン?」

魔理沙から出た聞き慣れない名前に高橋は聞き返した。

「フランドール・スカーレット。レミリアの妹さ」

「それでそのフランドールさん?とやらを俺にどうしろと?」

「人の話も聞かずに暴れまくっているのよ。流石に相手をするのも面倒になったから貴方に妹の遊び相手になってもらいたいのよ」

「それが姉の言葉か」

レミリアの言葉に思わず高橋はツッコんだ。

「愛する妹の為に出来る限りの事をしてあげたいという姉の気持ちがわからないのかしら?」

レミリアの態度にこれ以上言っても時間の無駄だと判断した高橋は話を続けた。

「で?俺はその妹さんを大人しくさせればいいのか?」

「ええ。あの子を傷付けること以外なら大概の事は許可するわ。尤も、貴方にあの子をどうこうするなんて無理でしょうけどね」

「そんな恐ろしい子なのか、フランさん」

「悪い奴じゃ無いんだけどな。ちょいとばかり気がふれてる」

「超怖ぇ」

「それで結局この依頼を受けてくれるのかしら?怖いから嫌だと言うなら無理強いはしないけど」

「いちいち煽るなよ。まぁ、折角来たんだ、やれるだけやるさ。だが成功報酬は高いよ?」

「そう。別に構わないわよ。なら美鈴、彼をフランの所へ案内しなさい」

「わかりました」

「門番の仕事はさせなくていいのかよ」

「仕事をしないで寝てるくらいなら他に何かさせたほうがマシよ。それに美鈴がいればフランも喜ぶでしょうしね」

「なんだよ。美鈴と仲が良いのか?」

「私の次に、ね」

「ふーん。ならとりあえず行くとしますか。魔理沙はどうする?」

「私はここの図書館にまた行くさ」

「・・・止めたいけど止められない」

魔理沙の言葉に小悪魔が不満そうに言った。

(またなんか盗む気だな・・・)

「それではお嬢様、行ってきます」

そう言って二人はフランの元へ、魔理沙と小悪魔は図書館へと向かった。

 

 

「お嬢様、一つお聞きしても?」

四人の姿がなくなってから咲夜が口を開いた。

「何かしら?」

「あの男を妹様に会わせて大丈夫なのでしょうか?」

「キスした相手がそんなに心配かしら?」

揶揄いながら言ってくるレミリアに咲夜は反応に困った。

「冗談よ。それに彼なら心配いらないわ。彼にそんな運命は見えないもの」

「運命、ですか」

「ええ。仮に彼の身に何かあっても所詮その程度の男だったというだけの話よ」

 

 

「ところでフランって奴について教えてくれ」

高橋と美鈴は魔理沙達と別れ、フランのいる部屋へと向かう途中にそんな話し合いになっていた。

「どうしたんです?急に」

「これから会う相手の情報は必要不可欠だろ?」

「確かに。それで、何を知りたいんですか?」

「一通りのプロフィールだな。性格や好み、能力。知れる限りは知っておきたい」

「フランドール・スカーレット、さっきも言いましたがお嬢様の妹で勿論吸血鬼です。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っています」

「よし帰ろう」

そう言って逃げようと後ろを振り向いた途端、美鈴に肩を掴まれた。

「まぁ待って下さい。別に目が合った途端に殺されるって決まったわけじゃないんですから」

「その言い方だと幾らかの可能性で俺は殺されるって事だよな!?」

美鈴の言葉にツッコミを入れると美鈴が苦笑いしていた。

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。妹様はお優しいですから」

美鈴の一言に安心する高橋。だがその後の言葉に耳を疑った。

「他に言うとすれば495年程家から出ていなかった事くらいですかね」

「495年?」

「はい。妹様の能力や性格の問題でお嬢様がそうさせていたんです。と言っても、妹様本人もそこまで屋敷から出る気もあまり無かったそうですが。まともに人間を見るのは魔理沙さんや霊夢さんが初めてだったらしいですよ」

「おいおい、家庭内で監禁事件ですか?」

「どちらかと言うと幽閉ですかね?」

「たいして変わんねぇよ」

高橋が言うと先導していた美鈴が扉の前で立ち止まった。

「ここが妹様のお部屋への道です」

美鈴が扉を開けながら言ってくる。よく見て見るとそこは地下へ続く階段だった。

「なんだ?監禁場所は地下室か?定番といえば定番だが」

「何の定番ですか・・・」

言いながら二人は薄暗い地下への道を歩いて行った。何とも薄気味悪いうえに予想以上に長い螺旋階段に高橋が嫌な顔をしていると唐突に美鈴が止まった。

「ここが妹様のお部屋ですよ」

そう言って見せられたのはなんて事はない普通の扉だった。だがその扉の奥から何とも恐ろしい気配を感じた。

(ビビってどうなる。何もすぐに殺されるって決まったわけじゃないんだ)

高橋が考えていると美鈴が扉をノックしていた。

「妹様、お客様がいらしてます」

すると中から扉越しに声が聞こえた。

『・・・お客様?』

「はい。初めての方です。妹様にお会いしたいとのことです」

美鈴が言うと少しして中から「入っていいよ」と聞こえた。

「失礼します」と一言言って美鈴は扉を開けた。するとそこにはレミリアと然程背丈の変わらない金髪の少女がいた。吸血鬼と言うからレミリアと同じ様な翼なのかと思っていたが羽の部分には左右それぞれに宝石の様なものが付いていた。

(あの子がフランドール・スカーレット・・・。パッと見は普通の可愛い女の子って感じなんだがなぁ)

部屋に入り、フランの姿を見ると高橋は内心でそう考えたがそれより気になったことがあった。

(・・・部屋の中がひどい惨状だな)

高橋の目に入ったのは壁の所々が抉れ、床の彼方此方にヒビが入っている惨状だった。予め話を聞いていなければ彼女が暴れてこうなったなど到底信じなかっただろう。

「それで、私に会いに来たのってあなたの事?」

フランがつまらなさそうな顔で高橋に聞いてきた。

「初めまして、フランドール・スカーレットさん。訳あって貴女に会いに来ました、高橋 愛乃と言います」

高橋は出来る限り丁寧に挨拶をした。決してフランに対して恐怖心を抱いてこんな態度を取っているのではない。これが彼の仕事の際のいつものやり方なのだ。

「それでは私は部屋の外にいますので何かあれば呼んで下さいね」

高橋たちを二人にしようと考えたのか、それとも単純に場の空気に耐え切れなかったのか、美鈴は部屋から出て行った。そして残された二人の間には重い空気だけが残った。

「それで?人間が態々こんな所に来て私に何の用なの?だいたい想像は出来るけど」

相変わらずつまらなさそうな顔で言いながらフランはベッドに座った。

「多分想像通りだよ。君の姉に依頼された」

「依頼?」

「俺は元々外の世界で便利屋をやってたんだ。まぁ今は色々あって幻想郷で仕事中だったんだが、あのお嬢様から君の相手をしろって言われてな」

「やっぱりお姉様か。どうせ暴れてる私をなんとかしろって話でしょ?」

「話が早くて助かるよ。フランドールはそもそもなんで暴れてるんだ?」

「だって最近なんでか知らないけど弾幕ごっこが出来なくなったのよ。だから退屈でイライラするの」

どうやらフランは弾幕ごっこがギャンブルに変わったことを知らない様だ。

「姉さん困ってたぞ」

「だからこそ暴れるの。お姉様が困るなら私は面白いもの」

「イカれてやがる」

「っ!」

高橋がそう言うとフランはゆったりと自分の右手を閉じた。するとそれと同時に高橋の足元にあったぬいぐるみが突然弾け飛んだ。

(怖ぇぇぇ!これがさっき言ってた『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』ってやつか!?・・・多分これは警告だな。これ以上煽ったらマジで俺がやられる)

「悪かった。流石に言い過ぎた」

高橋もまだ死にたくは無いので素直に自分の非を認めた。

「そう。ならそのままお姉様の所に帰って」

「残念だがそうもいかないさ」

「ならあなたがストレス解消の相手になってよ。そうしたらさっきの話考えてあげる」

「他に誰かいないのかよ」

「お屋敷の皆は誰も相手してくれないし、家から出るのも禁止されてたのよ?誰もいないわ」

「・・・どうしたらフランドールのストレスは無くなるんだ?」

「フランで良いよ。思いっきり暴れ回るか弾幕ごっこが出来ればストレスが無くなるかもね」

「その両方が出来ないから困ってるんだろ?」

「それをなんとかするのがあなたのお仕事でしょ?」

「・・・」

「・・・」

二人の間にまたしても沈黙が生まれた。

(まるで俺に興味を持ってないな。単純に俺に興味が無いのか、姉貴の差し金なのが気に入らないのか)

如何にか会話の糸口がないかと頭を捻っているとあることを思いついた。

「フラン、弾幕ごっこが出来なくなった理由、知ってるか?」

フランが弾幕ごっこが好きだと言うならあえてそれをネタにすればいい。簡単な事だった。

「知らない。能力は使えるのに弾幕が全く出ないの。スペルカードも変だし。多分お姉様が何かしたのかもね」

案の定、フランは此方の話に食いついてきた。

「実は最近、弾幕ごっこがギャンブルに変わったんだとよ。とある奴の所為でな。スペルカードとやらもギャンブルをする時にしか使えないようだぜ。内容も変わっているみたいだけどな」

そう言って高橋は懐から出した例の紙を手渡して見せた。予め紅魔館に来る前に霊夢から貰っておいたのだ。

「誰が何の為に?」

「そいつを突き止めて元の弾幕ごっこに戻すのが俺の本来の役目なんだが、いかんせん俺はこっちに来たばかりで幻想郷(ここ)の事をよく知らないんだよ」

「それで?」

「フランさえ良ければ協力してくれないか?」

「あなたに協力したら弾幕ごっこが出来る様になるの?」

ここに来て初めてフランが高橋の言葉に興味を示した。

「そればっかりは今後の努力次第って所だな。だが味方は多いに越した事はない。どうだ?協力してくれるか?」

「・・・嫌」

少し考えた後、フランは高橋の提案を断った。

「理由を聞いても良いか?」

「だってそもそもあなたの言ってる事が本当って証拠が無いもの。もしかしたらお姉様が私に嫌がらせする為に仕組んだ事かもしれないし、本当は弾幕ごっこが出来なくなったって言うのも嘘かもしれないじゃない」

「そんな事の為にあの女が俺やこんな紙を用意したって思うのか?」

「それだって証明は無理でしょ?仮に本当だったとしても皆で私を騙してるって私が思ったらそれでお終いだもん」

警戒心が強いのか、疑い深いフランはどう足掻いてもこちらの言い分を認めようとはしない様だ。ここまで言われるともはや泣けてくる。そしてそれを聞いて先程のレミリアの言葉を思い出した。

(何処が仲が良いんだよ、この姉妹・・・)

「ならどうしたら信じてもらえるんだ?」

「その勝負(ギャンブル)?であなたが私に勝てばいいのよ。そうしたらあなたの言う事を聞いてあげる」

何とも上からな言い分だが彼女の立場からしてみればそう考えても仕方がないのかもしれない。無論高橋も断れる立場では無いのでフランの言葉に同意するしかない。

「わかった。ゲームはフランが決めな。但し、俺が圧倒的に不利なのは勘弁な」

「はいはい。なら鬼ごっこにしましょう。私が逃げるから、貴方が追いかけるの。制限時間は三時間でその間に貴方に捕まったら私の負け。逃げ切ったら私の勝ち。それでいい?」

「それでいいよ。もし俺が負けたら俺が出来る限りでフランの言う事を聞こう。その代わり、フランが負けたら俺の言うことを聞く。構わないか?」

「ええ、いいわよ。それじゃあ・・・、ゲームスタート!」

そう言ってフランは勢い良く部屋から飛び出して行った。すると部屋の外から騒ぎが気になったのか美鈴が心配そうにやって来たのだ。

「何かあったんですか?今妹様が出ていったようですけど」

「今から俺とフランとでギャンブルするのさ。どうやら命がけの鬼ごっこらしいけどな」

「命がけ!?」

高橋の冗談を聞いて美鈴が大声で叫んだ。いきなり命がけの勝負などと言われたのだから無理も無いだろう。そう思って部屋の外に続く扉を開け部屋を出た。

その直後だった。

 

───背後の扉が爆破したのだ。───

 

突然起きた爆破による爆風に高橋は勢いよく吹き飛ばされた。

「っ!?ガハッ!んだよこれ!」

吹き飛ばされた際に床を転げ回ったが、骨折などの大きな怪我は無いようだ。当然全身が痛みはしたが。

「大丈夫ですか!?」

部屋の中から美鈴の声が廊下へと響いた。

「な、何とか死なずには済んだよ。しかしこりゃ確かに命がけだ」

跡形もなく吹き飛んだ扉を見て少しばかり恐怖を覚えたが、今更そんなことを言っても仕方がない。まさか適当に言った自分の冗談が本当になった事に恐怖しながらも高橋は再び階段を上って行った。

「・・・本当に大丈夫かなぁ」

そんな彼の背中を見ながら一人残された美鈴はぽつりと呟いた。

 

 

フランの部屋を出て長い螺旋階段を登り終えた後に高橋がやって来たのは先程美鈴達と麻雀勝負をした場所だった。

「これからどうしたら良いもんか。俺、この屋敷の事碌に知らないんだよなぁ」

何処にどの部屋があるかすら知らない高橋にとってこの状況は非常に良くないものだった。

つまりは軽い迷子状態である。

「屋敷のどっかにいるのは間違いないんだから隠れられそうな所を虱潰しに探していくしかないか」

そう言って高橋は手当たり次第に部屋を調べて回った。そうしていくうちに他とは違う扉を見つけた。

「ん?なんだここ。まぁ入ればわかるか」

そう考えて扉を開けて入るとそこには見上げる程の高さの本棚とそこに収められた大量の本があった。恐らく此処が魔理沙の言っていたこの屋敷の図書館なのだろう。

「こんな所にフランがいるのか?それにしても広い部屋だな。本棚は壁みたいに天井くらいまであるし、本はやたら多いし、こんな量の本は一生かけても読みきれないな」

元々本が好きな性格の高橋はそんなことを言いながら辺りの本を見回した。出来ることなら今から読んでみたいのだが、人様の物を勝手に見る訳にもいかないし、そもそもそんなことをしていたら気がついた頃には制限時間を過ぎてしまうだろう。

「あ、貴方は先程の」

背後からそう言われて振り向いたら先程麻雀をした小悪魔がいた。

「おうさっきぶりだな。ここがさっき言ってたパチュリー様って人の部屋か?」

「よくわかりましたね。そうですよ。ここがパチュリー様の図書館です」

「て事はここの本全部がパチュリー様とやらの物か。これだけの本をよく集めたな。幾つか読めなさそうな本もあったけど」

「ここには普通の物語の本以外にも魔導書や魔法に関わる本など様々な種類の本が有りますからね」

「すげー読み漁りたい。出来る事なら一日中小説とかその魔導書とか読んでたい」

「う〜ん。それにはまずパチュリー様の許可をいただかないといけませんね。それに魔法に関する本は読めるかすら怪しいものもありますし」

高橋の言葉に苦笑しながら小悪魔が答えた。

「そうなのか?」

「はい。全てではありませんが、一部の魔導書には魔力が無ければ一文字も読めなかったり、普通の人が読めばそれだけで精神に異常を及ぼす物もありますから」

「物騒すぎるな。わかったよ、下手な好奇心で迂闊に手を出さないようにするよ。そういや、魔理沙がここから本を盗んでるんだっけ?」

「そうなんですよ。何度も被害にあって困ってるんです。それに一向に返す気配も無いんです。そうだ、良かったら今からパチュリー様に紹介しましょうか?もしかしたらここの本を読むのを許可してもらえるかもしれません」

「いや、折角の御言葉に申し訳ないんだが、今フランを探さなくちゃいけないんでな。悪いがその後か後日でいいか?」

「妹様をですか?」

小悪魔が可愛らしく首を傾げて聞いてきた。

「ああ。今フランと勝負しててな。時間内にあいつを探し出さないといけないんだよ」

「なるほど。では終わったらまた来て下さい。その時にはまたパチュリー様にお話ししますので」

「その時は頼んだよ」

そう言って高橋は図書館を後にした。

 

その後ろ姿を見つめる人影に気付くこともなく。




年明けから結構経ちましたがようやく更新できました。
これからも遅いながらもやっていきますのでよろしくお願いします。
ご意見、ご感想などあればお願いします。
ではまた次回。
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