グリモア版真剣深夜の創作60分一本勝負参加作
お題「笑顔」

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 天気晴朗、まさに日本晴れの下、松島みちるは学園のグラウンドを周回していた。そよ風の当たる頬には雫が張り付いている。彼女の所属は陸上部。魔法使いである以上公式の大会には通常であれば参加できないのだが、来週行われる非公式の大会に参加させてもらえることになっている。非公式とはいえ、諦めていた大会への参加ができることがここ最近の何よりのモチベーションになっていた。しかし今の表情にはそれを微塵も見出だすことができない。何か考え込むような難しい顔をしている。心なしか走る速度も普段の半分くらいである。そもそもこの時間であれば、同じ陸上部に所属する南智花と共に学園の外を走っているはずだった。

 

 二時間程前、準備運動を済ませ正門前で走りだそうというとき、智花のデバイスが鳴った。

「ごめん、みちるちゃん。クエストが発令されたから行かないといけなくなっちゃった」

画面を確認した智花は、そう言い残し慌てて制服に着替えに戻っていった。みちるも自分の端末を開くと、街で魔物が集団発生したとの情報が入っていた。

 

 それから二時間経った今でも戦闘は終わっていないらしく、召集された生徒と負傷した生徒が時折学園を出入りしている。先程デバイスで確認した時点で、どうやら戦闘地域が広がっているらしい。画面の右端には風飛陸上競技場の文字と戦闘中の印が近接して表示されていた。みちるは居ても立ってもいられない気持ちになった。そこは来週の大会の会場なのだ。自分もこの戦いに参加したい。そして早く街に平和を取り戻したい。念いだけが強くなる。どうしようもないから走っている。

 

 もう何十週しただろうか、正門から智花が戻ってきたのが見えた。良い展望と悪い予感が入り混じるよりも先に、智花に向かって駆け出した。みちるに気付いた智花が足を止める。

「智ちゃん大丈夫? 怪我は? 戦闘は終わった?」

 みちるの続けた質問に智花はゆっくり答える。

「ちょっと怪我しちゃった。大丈夫って言ったんだけど敵が強いから一旦下がれって言われちゃって。保健委員も手一杯で」

 つまり戦闘はまだ終わっていない上に敵は強いらしい。これは長引きそうだと思ったが、どうやら街の中心部の戦闘は収まってきているということだ。後は会長のホワイトプラズマが決まれば決着が着くだろう。しかし智花は言う。

「……ホワイトプラズマはもう使っちゃったんだ。会長まだ戻ってない?」

 みちるには八方塞がりに思えた。幾人かの生徒は今風飛に居ない。ホワイトプラズマに代わる力を持つ生徒も居ない。後一息なのにとやるせない心持ちになる。しばし静寂が取り巻いた。

 

 

 ピリリリリ、ピリリリリと電子音が正門を潜った先の広場に音を取り戻す。みちるのデバイスだった。恐る恐る画面を表示させると、クエストの指令だった。智花とみちるは目を合わせる。出動すると思っていなかったみちるは慌てて準備に取り掛かった。

 

 みちるが学園を飛び出すと着信があった。みちるは走りながら電話に出る。

『風飛におらんで詳しいことは分からんが苦戦しとるようじゃの。聞くには大きい敵を倒すだけらしいじゃろ。お主は制御こそまだまだじゃが威力はホワイトプラズマに匹敵するくらいはだせる。妾が推しておいた。思う存分暴れてこい』

 師匠アイラからだった。ついに私にも役に立てるときが来た。この戦闘を終わらせてやろう。緩んだ頬に希望が光る。

 

 

 

   《了》

 

 




最後雑になってしまいました。短時間でまとまった量の文章を書いたのは初めてでしたが楽しんで頂けたら幸いです。

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