神罰の地上代行者   作:朱い月

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少し一話に書き足した物を新版として投稿します




新版 動き出す者達
神の右席


◆ヴァチカン市国 某所

 

「──優先する。小麦粉を上位に。人体を下位に」

 

緑色の修道服を着た背の低い男が小麦粉のギロチンを拘束されている背からコウモリの翼が生えている異形の男に振るう。

 

「アガッ…!ガアッぁぁぁぁぁァァッ!!」

 

異形の男を一度で殺しきれなかったことに修道服の男──左方のテッラは少しばかり驚きながら思う。

 

ああ、調整が足りなかったか、と。

 

「まあ、調整を間違えたのは仕方ありませんねー。最近"光の処刑"を使っていなかったですしねー」

 

「お、オレはッ誇り高き貴族ムルムル家の跡取りなんだぞッ!おまえっこんなことしてタダで済むと─」

 

男の言葉を遮るように再びギロチンが振るわれる。その後、ズシャッという音とともに男の体はずり落ちた。

 

「ああ、うるさいですねー化け物が。貴族だか何だか知りませんが、貴方方化け物は存在する価値すらないのですよー。それなのに調整に使用されたのだから主に感謝して死になさいよー、まったくですねー」

 

「ヒイッ…」

 

隅で震えている小さな異形の少女はその惨状についに悲鳴をあげた。あげてしまった。

 

「んぅー?そういえばまだ一人いましたねー。もう術式の調整も終了したのですが。折角だから念には念をってことでですねー、貴方でも試しましょうねー」

 

「や、やめてぇ…許して。許してよぉ!なんでもするから!!」

 

鼻水と涙と恐怖でぐしょぐしょな顔で許しを乞う悪魔の少女に流石に同情をしたのか、テッラはかがんで少女の頭を撫でた。

 

「仕方ないですねー許してあげましょう。私は心優しいですからねー」

 

「えっ許してくれるの…?殺さないでくれるの…?」

 

「ええ。もちろんですねー流石に少女を痛ぶる趣味はないのですよー、私だって」

 

少女は助かるんだ!良かった…と、安堵の表情を浮かべた。

しかし、現実は非情だ。そう甘くはない。

 

「なわけないのですよーこのクソ化け物が」

 

「えっ…!?」

 

テッラはギロチンを少女に振り下ろした。

ズシャアッという音がしたとすると助かると思っていた少女は絶望の表情すら浮かべることもできずに死んだ。

 

 

「んー?失敗しましたねー。何かの本で恐怖という物には鮮度が云々と最高の恐怖と絶望を見るための方法が書いてあったので化け物の最高の恐怖と絶望の表情を見たかったので実践してみたのですが。物の見事に失敗してしまいました。とりあえず、術式の調整も終わったことですし次の機会に試すとして、そろそろ大聖堂に戻りますかねー」

 

 

全く、化け物共の処理と"光の処刑"の調整が同時にできるなんてなんて素晴らしい世の中だ、とテッラは上機嫌で大聖堂に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

◆ヴァチカン市国 サン=ピエトロ大聖堂

 

世界三大宗教の一角の十字教。

 

世界に20億人もの信徒を持つ、十字教最大派閥たるローマ正教の総本山であるサン=ピエトロ大聖堂。そこで今、二人の男達がこれからの世界の行く末を左右する会話をしていた。

 

その男達の片方、世界的に有名なファンタジー小説の魔法使いの少年を主人公としたある物語の登場人物の一人の校長先生を感じさせるような容姿の男が口を開いた。

 

「───フィアンマ。本当に実行するのか?」

 

「ふん。当たり前だ。悪魔などというものは人間に害しか与えない。そんなものと仮にも天使を名乗る肉塊がテロリスト如きの為に和平を結ぶ?そのようなことなど認められるのか?お前は」

 

赤を基調とした服を着ているセミロングで妙な威圧感を持つ男──神の右席のリーダーたる右方のフィアンマの言葉にローマ教皇──マタイ・リースは苦々しい顔で首を横に振った。

 

「無論のこと、私も認められはしない。しないが…悪魔という種族の中にも無辜の市民達がいる。そして主の言葉から逸脱した行動をし始めている天使という機構。逸脱した行動をし始めているが、仮にも天使と呼ばれる存在なのだ。我々の信仰対象である主ヤハウェの配下なのだよ。もう既に主ヤハウェは身罷られているとはいえ正直複雑に感じるだけだ」

 

「ハッ。俺様はそのような事など一切感じんがな。そもそも奴らは天使ではない。あくまで天使を名乗る肉塊だ。そして、世界を救済できずに死んでいったヤハウェのことなどどうでも良い」

 

天使を名乗る肉塊。主ヤハウェなどどうでも良い──この発言を聞くとフィアンマが十字教徒か怪しくなるが、確かに右方のフィアンマは十字教徒でローマ正教徒なのだ。しかし、魔術師でもある。

 

この世界の魔術というものは悪魔という畜生共の使う術を人間向けに調整した簡易魔術、魔力を用いて人為的に奇跡を起こす神秘魔術、宗教的な法則などを用いて発生させる儀式魔術に大別される。

 

フィアンマは大別された魔術の中でも宗教的な法則などを用いて発生させる儀式魔術を使う魔術師。

 

儀式魔術の中では天使とは異能の力の塊、神ヤハウェの書いたプログラム通りに動く唯のロボットなのだ。そしてそのロボットが暴走すると儀式魔術で悪魔と呼ばれるものになる。

 

であるからフィアンマ達儀式魔術師には天界に住む和平を進めようとする天使達は天使ではなく唯の肉塊でしかない。

 

その上フィアンマは世界を救える人間だ。世界を救うことができなかったヤハウェ如きに興味はない。

 

 

ギイ…

 

そのような話をしている大聖堂の最奥の部屋の扉が開いた音がすると三人の人物が部屋に入って来ていた。

 

緑色の修道服の男──左方のテッラ。

 

「おやおやー?お話の途中でしたかねー?」

 

全身黄色で十字架を舌から垂らした女──前方のヴェント。

 

「そんなこと気にする必要ないわよ。フィアンマが呼びつけたのに私たちが遠慮するとかアホじゃないの?」

 

青系のゴルフウェアを着た体躯の良い男──後方のアックア。

 

「む。聖下もいるのであるか。フィアンマよ、神の右席全員と聖下を集めて何の話だ?」

 

 

その三人が部屋に入ってきたのを確認したフィアンマは三人をちらりと見て言う。

 

「ああ、来たか。では、話をするとしよう。──世界を救う話を」

 

 

 

 




〜解説〜

左方のテッラ
○ローマ正教の中心組織である神の右席のメンバー
○優先順位を変える効果を持つ"光の処刑"という儀式魔術を使う。

ムルムル家
○悪魔の貴族の家。七十二柱の中からテキトーに選んで犠牲になってもらった。ナムアミダブツー

恐怖という物には鮮度が云々と書いてある本
○ジル・ド・レェの名言(?)をプレラーティちゃんが面白おかしく書いて遊びで出版した本

右方のフィアンマ
○神の右席のリーダー的な存在
○"聖なる右"という儀式魔術を使う

教皇マタイ・リース
○ローマ正教の教皇

前方のヴェント
○神の右席のメンバー
○"天罰術式"という儀式魔術を使う

後方のアックア
○神の右席のメンバー
○"聖母の慈悲"という儀式魔術を使う
○二重聖人と呼ばれる存在

儀式魔術
○とある魔術の禁書目録世界の魔術のこと。区別のために勝手に名前をつけさせてもらいました

神秘魔術
○型月世界の魔術及び魔法のこと。区別のために勝手に名前をつけさせてもらいました

簡易魔術
○ハイスクールD×D世界の魔術のこと。区別のために勝手に名前をつけさせてもらいました

天使
○ハイスクールD×D世界の天使及び悪魔ととある魔術の禁書目録世界の天使及び悪魔が存在する。文中に悪魔と天使の説明あり。





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