サクラ大戦~暁の君へ~   作:アルムブレスト

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遅くなってしまって申し訳ない!


第二幕 夜明け

~太正4年 帝都?~

 

 

 

気がつけば廃墟と化した街で倒れていた

 

身体中が熱くて痛くて、寒い

何故このような傷を負ってしまったのか何も思い出せない

 

痛みに耐えて辺りを見回す

在るのは原型を留めていない建物と

同じく原型を留めていない人間だった者達

 

大きくため息をついて空を見ると、大きな満月が街を見下ろしている

 

周りに誰もおらず、生存の可能性はあまりにも低い

 

それを自覚した瞬間、絶望感と比例して体が急速に冷えていく

 

そして確実に歩み寄る死の気配

私はそれを何の恐怖もなく受け入れつつあった

 

 

 

 

~太正12年 大帝国劇場~

 

「――――――?」

 

 

弾ける勢いで体を起こす

動悸が激しい

心臓が痛いほど鼓動している

 

何度も深呼吸を繰り返し、心臓を落ち着かせる

 

「夢…か?」

 

目を覚ますと、見慣れない部屋に居た。

 

どうやらベッドらしき場所に横たえられているらしく、体を見てみると包帯だらけな事に気付く。

 

「・・・・・・・・ここは何処だ?」

 

記憶が妙に曖昧だった。

窓を見れば、もう外は暗い。どうやらずっと眠っていたらしい。

部屋の中を見渡す。

 

何の変哲も無い、必要最低限な家具のみを置いた無個性な部屋。

存在するのは箪笥と机と椅子、そしてこのベッドのみ。

何処かの苦学生みたいな部屋だな と一人言を言う。と、

 

突然何の前触れもなく扉が開けられる。

 

「あら、もう目が覚めたのね?」

 

そこには、洗面器を持った一人の女性が居た。

 

(陸軍の服装・・・まさか軍人か?)

 

思わずベッドの上で身構える。

 

「意識ははっきりしている?体の傷は浅かったから大丈夫だと思うけど・・・」

 

誰だろうか?

目の前の女性とは全くと面識が無いせいか、つい身構えてしまう。

そんな私の心中を知ってか知らずか、目の前の女性は柔らかな微笑を浮かべたままでベッドに近づく。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ、北条刀君。」

 

「見知らぬ人にそのように言われても説得力はありません。」

 

ピシャリと言う。

状況を見るに、どうやら自分はこの女性に手当てをされていたらしい・・・が、何者か解らない以上、警戒を解くわけにはいかない。

 

「あら、ごめんなさい、自己紹介がまだだったわね?」

 

目の前の女性は気を悪くした様子も無くクスリと笑うと、キシッと音を立ててベッドの横に置いてある椅子に座る。

 

「私の名前は藤枝あやめ。初めまして刀君」

 

 

 

 

数時間後

 

暗闇の部屋に響く時計の音が、嫌に大きく聴こえる

ただその秒針を数えていれば寝られると思ったが、三千数えても意識がはっきりとしているのを考えると・・・どうやら無駄らしい。

 

深い溜め息を付くと目を開ける。

いつの間にか暗闇に目が慣れ、天井の木目まではっきりと見える。

 

「落ち着けるわけなど無い・・・か」

 

今日起こったこと、そして今の自分の状況を考えると、とても安眠できる精神状態ではない。

上野公園での出来事は、全てあやめと名乗る女性が教えてくれた。

あの後、事件が起きてすぐに帝国華撃団が出撃し、多少の怪我人はでたが、死者は誰一人として出さずに済んだそうだ。

そして、今自分がいるこの場所は・・・

 

 

 

数時間前の記憶をもう一度思い出す

 

「帝劇!?」

 

あやめと名乗った女性は笑みを浮かべながらもう一度言った。

 

「そう、ここは帝国劇場。」

 

「何かの冗談でしょう?何ゆえ私はこの帝国劇場にいるのですか・・・は!まさか役者のスカウトですか?」

 

「まさか!・・・いや、よく思ったら刀君って中性的、いや、むしろ顔つきは女の子っぽいわね?」

 

刀の顔をまじまじと観察するあやめ

 

『意外と女優・男優共にイケルかも知れないわね。一度米田支配人と話をするべきなのかもしれないわね・・・ブツブツ』

 

何やら俯いてブツブツと呟いている。

内容は聞き取れないが、ろくな事ではなさそうだ。

 

何やら考え事をしていたあやめは、怪訝そうな刀の表情に気がついたのか、頬を赤らめながらコホンと咳をする

 

その様子に少し親近感を感じた刀であった

 

「ごめんなさい、話の途中で考え事なんてしちゃって・・・」

 

「いや、お気になさらずに。それより話の続きを」

 

「なぜあなたが帝国劇場にいるのか、という話だったわね?」

 

あやめは静かに言った。

 

「それで・・・何故私はここに?」

 

「普通の怪我だったら、病院での検査だけでも良かったのだけれどね・・・」

 

あの時、脇侍が放った砲弾

直撃は免れたものの、衝撃によって片足が折れていたらしい

 

骨折だけならば良かったが、魔操機兵による攻撃には邪気が含まれており

霊的治療もかねてこの帝劇にて治療したとの事だ

 

「ありがとうございます。」

 

「いいえ、当然の事をしただけよ。」

 

そうかそうか、一件落着・・・じゃない!

 

「あの~、もう一つ質問してもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、私が答えられる範囲だったらね。」

 

「何故、私はこの帝劇で治療を受けているのですか?軍や政府の建物ならば説明は付きますが、この帝国劇場にそのような専門家が居ること事態異常かと。」

 

「理由は簡単。この場所が政府直属の秘密部隊・・・帝国華撃団の本拠地だからよ。」

 

「・・・・・・え?」

 

即答され、目が点になった刀だが、あやめはさらに続ける

 

「続けて言えば、帝国華撃団・・・略称『帝撃』。帝撃の主力攻撃部隊『花組』の隊員はね、昼はこの大帝国劇場の花形スタァの顔を持つ女の子達なの」

 

「え、あ・・・ハイ?」

 

「彼女達は、平時は敵を欺くため・・・そして歌や踊りで都市に潜む魔を鎮めるために『歌劇団』として活動し、有事の際には魔を討つ『華撃団』として戦いに身を投じる戦士になるの。」

 

「じじじ、冗談、でしょう?」

 

何かの冗談かと思ったが、彼女の目は真剣そのものだ。

そして突然、すっと椅子から立ち上がった。

 

「さてと、今日はこの辺で話はこれで終わり、続きは明日話すわ。」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!話はまだ・・・」

 

立ち去ろうとするあやめを呼び止めると、ドアノブを掴みながらこちら振り向く。

 

「今日は色々あって疲れたでしょう?ゆっくり休みなさい。続きは明日話してあげるから・・・ね?」

 

そう言うと、部屋を出て行った。

 

そして、あやめが出てから二時間が経つが、刀は一向に眠れないでいた。

 

「眠れぬ!」

 

何度目か解らない寝返りをうち、腹立ち紛れに枕に拳を叩き込むと、衝撃がベッドまで突き抜け、骨組みが軋みを上げる。

無論、それは何の意味も無い。

時計を見ると、既に深夜の1時を指している。いつもならばとっくの昔に床について熟睡している時間帯である。

眠れないのには理由があった。

 

脳裏に焼きついたあの光景

死すると覚悟した時に、桜と共に舞い降りたあの少女の姿

 

「・・・・・・」

 

正直、あれは混乱した頭が生み出した幻覚か何かだと思っていた。

しかし、彼女、あやめの話が本当だとすると

 

「まさか、彼女が・・・いや、信じられるか!」

 

また、頭を振って雑念を払うと、もう一度寝返りをうつ。

もういい。考え事はもう明日にしよう。これ以上考えたら、ただでさえ利口でない頭が破裂してしまう。

秒針を千数えても眠れないなら、今度は万まで数えてやろうではないか!いや、いっそのこと行ける所まで!

 

「よし、行くぞ!」

 

結局、意識がまどろみ始めたのは、秒針が一万と千を越えた、太陽が上がり始めた頃だった。

 

 

―――――翌日

 

「・・・眩しい。」

 

窓から朝日が目に刺さった感触で目が覚めた。

大きく欠伸して体を起こすと、寝不足特有のだるさが体に残っていた。時計を見ると、朝の7時。結局あれから三時間位しか眠れていない。

いつもならば、もう稽古についている時間である。

 

改めて見慣れない部屋を見渡すと、先日起こったことは、どうやら夢ではないようだ

信じたくは無かったが・・・まぁいい。そんな事よりもまず

 

「まずは・・・顔を洗うか」

 

ベッドから起き、ふと机を見ると、丁寧に畳まれた自分の服があった。

洗濯されていたのか、アイロンまであてられている

 

「うむ、ありがたい」

 

すぐに患者服から私服に着替え終わると、丁度ドアをノックする音が聴こえた。

 

「刀君、起きているかしら?」

 

「あやめ殿?あ、どうぞ」

 

ガチャリと、甲高い音と共にドアが開かれる。

 

「おはよう刀君。あら、朝早いのね?」

 

優しく微笑みながら挨拶され、少し緊張気味に挨拶する

 

「お、おはようございます!あやめ殿。」

 

「あやめ・・・殿?」

 

首をかしげながら復唱するあやめ。

・・・しまった!つい地が出てしまった!

 

「あ、申し訳ありません、その、あやめ・・さん」

 

「い、いえ・・・なかなか新鮮な響きがして悪い気はしないわ、刀君。でも、変わった呼び方をするのね?」

 

「すいません、祖父の口癖がうつってしまったものですから・・・」

 

「まぁ、呼び方はまかせるわ・・・あ、それよりも刀君、お腹空いてない?」

 

「お腹?」

 

そういえば、昨日の昼から何も口にしていない事を思い出す

すると、グゥゥ~、と腹の虫が大声を上げた。

 

「あ゛」

 

自分でも頬がとても熱くなっているのが自覚できた。

 

「ご飯食べられるか聞きたかったのだけど、聞く必要なかったみたいね?それじゃあ、一階に行きましょうか?」

 

「は、はい!」

 

そのまま彼女の後をついて行くと、食堂というには広すぎるくらいの大広間に案内された。

朝日が射すその広間は、見ていて幻想的に見える。

大きなテーブルの一席に案内されると、あやめと向かい合う形で刀は席に付いた。

 

「刀君は好き嫌いとかはない?」

 

「いえ、特にこれといってないのですが、しいて言えば、河豚です。」

 

「ふ・・・河豚?」

 

「理由はその、正月の祝い事で、兄弟子の一人が河豚刺しを作った時にですね!」

 

あの兄弟子は、見吹き(河豚の毒を取り除く作業)もせずに、そのまま刺身を出してしまい、祝い事の後、次々と門弟が倒れた。死者が誰一人として出なかったのは不幸中の幸いである。

 

ちなみに、河豚の中毒の症状とは、口や唇の周りに痺れが広がり、最終的には呼吸筋が麻痺し、呼吸困難から呼吸麻痺に陥る状態を指し、最悪の場合死に到る。

また、フグ毒にあたった者を砂中に埋め毒抜きをするような行為だが、そのようなことをしても毒素の代謝・分解がされることはまず無い

 

「五年前の話ですが、あれからでしょうね・・・白い刺身を見るとあの時の事を思い出してしまうというか」

 

「それは・・・!刺身が苦手になっても仕方ないわね」

 

(だけど、刀君のそれは、好き嫌いとかそういう優しい問題ではなく、トラウマに近くないかしら?)

 

命を奪われかけたのだから、嫌いになるのも仕方がないとあやめは思った。

 

「い、いえ、少し無理をすれば普通の刺身は食べられますよ!ただ、あの刺身だけは絶対に口にできません!」

 

「好き嫌いは駄目だよ!」

 

「「え?」」

 

突然、刀の背後から声をかけられ、間抜けな声を出してしまう二人。

振り向くとそこには、ぬいぐるみを抱え、人形の様な可愛らしい服装をした少女が存在していた。

 

 

 

 

あやめ殿は用事があるとの事で、アイリスの紹介をした後はこの場を離れていった。

朝食は着席して間もなく事務員らしき女性に用意された。

メニューは「おむらいす」。朝から重いと思ったが、昨日は何も食べていないため難なく食べる事が出来た。

米を一粒残さず平らげると、箸を置き手合わせる。

 

「うむ、ご馳走様でした」

 

「ごちそうさま~」

 

目の前に居る少女、アイリスも箸を置くと、私に向けて柔らかく微笑えむ。

それ連れられ、ついつい頬が緩んでしまう。

 

「ほ~じょ~お兄ちゃんって何歳なの?」

 

「私は18だ。アイリスは?」

 

「む!れでぃーに『お歳』を聞くのは失礼だよお兄ちゃん!ね、ジャンポール?」

 

と、胸に抱くクマのぬいぐるみに声をかける・・・もちろん返事などするわけがないが。

それからアイリスと話し込む。

 

「ところでアイリス、一つ質問があるんだが聞いていいか?」

 

「歳がしりたいなら駄目だよ~。いいおんなには秘密がいっぱいなのよ♪」

 

唇に人差し指を当てながら流し目で見られた。

 

「・・・・・・」

 

あまり教育上によくない本や人物に影響を受けているらしい・・・可愛いが

 

「いや、そんなことではない」

 

「む~、少し残念」と、頬を膨らませるアイリス。

 

「まさかとは思うが、アイリス・・・君は」

 

 

帝国華劇団

 

帝都を異形の化け物達から守るための部隊。その力は、世界に誇る帝国陸軍でさえも歯が立たない化け物達

 

あの脇侍のような存在を殲滅する精鋭部隊。

まさか、こんな子供な訳が?

 

しかし、あやめが言ったあの一言が刀の頭から離れない。

 

『帝国華撃団・・・略称『帝撃』。帝撃の主力攻撃部隊『花組』の隊員はね、昼はこの大帝国劇場の花形スタァの顔を持つ女の子達なの』

 

「君は、まさか帝・・・」

「刀君」

 

言いかけた言葉はあやめの声でかき消された。

 

「あやめ殿?」「あやめお姉ちゃん?」

「刀君、米田支配人からお話があるそうよ」

「分かりました。アイリス、またな」

 

「うん、バイバイお兄ちゃん」

 

 

「米田支配人、失礼します」

 

支配人室にあやめに続いて入室すると、部屋の奥に一人の老人が座っていた。

その横には、精悍な顔立ちをした男性が立っている。

老人が自分を値踏みしているかのように足先から頭の天辺まで見るのとは逆に、彼はまっすぐな瞳で私を見ていた。

彼の瞳には、私はどのように映っているのか・・・不思議とそう思わせた。

 

「おめぇが例の新隊員か?」

 

多分、元々そのような口調なのだろう。不快ではなく、初対面のはずなのに、何故か懐かしい感じがした。

 

「初めまして、北条刀と申します」

 

「じゃあ、さっそくだが、ちょっとした手続きをしてもらおうか。あやめくんが見つけてきた人材だ。まず、間違いはねぇと思うが、一応規則なんでなこれにサインしてくれ」

 

そういうと、机に一枚の書類を出した。

 

その書類に目を通すと、刀は少し緊張しながらゆっくりとサインした

 

 

『帝国華劇団は帝都を守る者

帝国華劇団は愛と正義を大切に

帝国華劇団は純潔美行を大切に

帝国華劇団は秘密部隊であることの意識を高め、言動をつつしみ その内部における機密事項が漏れないようにしなければならない

以上のことを守り、帝国華劇団の一員として一ヶ月の間の体験入隊をいたします

北条 刀                 』 

 

「まぁ、硬くなるなよ。今回の体験入隊でいい成績を残せば、将来の隊長候補として考えてもいいと思っている。一ヶ月という短い期間だが、がんばってくれ

期待しているぜ。

それじゃあ、大神よ、後はよろしく頼んだぜ」

 

「はい!」

 

大神と呼ばれた青年は返事をすると、刀の目の前へと立つ

 

「初めまして。俺は大神一郎。帝国華劇団、花組の隊長だ。よろしく」

 

そういうと、柔らかい笑みを浮かべて手を差し出す

刀には断る理由も無く、心地良く握手に応じた

 

「初めまして、北条刀です。短い期間ですが、こちらこそよろしくお願い致します」

 

「よし、いい返事だ。それじゃあ、花組の皆を紹介するよ。」

 

支配人室を出て、二階のテラスへと移動すると、そこには数人の女性の姿があった。

彼女達は皆若く、とても『あの』帝国華劇団の一員には見えない。

その中にはアイリスと、気になっていた少女の姿もあった

 

「さて、みんな集まっているね。彼が一月のあいだ体験入隊する北条刀君だ。」

 

大神少尉の紹介され、皆の視線が刀に向く

対する刀は、女性と接したことがあまり無いため内心はかなり緊張していた

 

(さて、どう挨拶したものだろうか?

真面目に挨拶?いや、それは少し固いか?

笑わせた方が良いのか?それでは不真面目な輩と思われないか?

むしろ褒めた方が良いのか?)

 

刀が選んだ選択肢は…




本編ならばここで

LIPS

1花組の皆を褒めてみる
2普通に挨拶する
3笑いを取ろうとこころみる

と出る所です
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