玄界の国のアリス   作:虹富命瑠

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06.どういうことだってばよ

さて、どうしたものか。

今回現れた個体数はおそらく二体。

そのうちの一体は今誰かが交戦中で、もう一体は今も尚性懲りもなく壁を登っているのだろう。

階段は瓦礫だらけで音を鳴らさずに行けそうにないし、かといってここにずっと居て見つかれば一般ピープルである私の人生はその時点で一巻の終わり(ジ・エンド)。味方--今戦ってるボーダー隊員に見つかってもだめだ。余計な気を使わせてしまう。

今私が持っている物は以下の5点。

 

 

・一応自衛のために拾ったブレード

(なんとこのブレード収納が可能だった。しかも畳めるので持ち運びに便利。敵すごい)

・なんか機械踏んだ時に見つけたカメラの破片

(正直何に使うかわからない。やはりレンズは本来の用途で使うべきのようだ)

・父と兄からもらったお守り

(はたして瓶をお守りというものなのか。お気に入り)

・爽健美茶

(走っていたためかなり泡立っている。カフェインゼロ)

・白と青の財布

(中にはお金と保険と名刺が入っている。カードは家に置いてきた)

 

 

……所々おかしい物が混じっているが、気にしないで頂きたい。説明文もおかしいって?気にしちゃ負けだ気にすんな。今大事なのはこの状況をどう乗り切るか、ということなのだから。

先にいった通り、私は敵にも味方にも見つかってはいけない。屋上(或いはシェルター)へ続く階段の一つはここにあるのだが激しい戦闘によって道が塞がれている。瓦礫を退ければ行けないこともないが、退かしている最中に敵が背後から来たら詰む。味方が音に気付いても、こちら側に気を取られている--つまり余所見をしているということになり、敵に撃破されやすくなって、案の定撃破されてしまった場合、残るのは見るからに強そうな装甲と(ブレード)の敵VSトリガーを持たない一般人。詰む。つまり……あれ、これもう詰んでね?大丈夫?私生きて帰れるのこれ??

 

 

頭を抱えて唸っているうちに気づけば攻撃が止み、少し静かになった。考えていても仕様がない。

静かに走り、ドアが付いた教室へ一時避難する。敵が入ってこないように音を立てずに扉を閉めて、一息つく。これである程度はなんとかなるだろう。

……この時なぜ私はそう思ってしまったのだろう。

 

 

なぜ敵がやすやすと壁を壊せるということを忘れていたのだろう。

--大規模進行の悲惨さをを忘れたの?

 

 

なぜ周りを見る前に、前を向く前に扉を閉めてしまったのだろう。

--気が緩みすぎだ。ここは戦場だよ?

 

 

なぜ(ゲート)が屋外に、校庭だけに開いたのだと思ったのだろう。

--あの鼠は、まだいたのに?

 

 

 

なぜ私は、

 

 

「……な、んで」

 

 

 

敵はその場に留まらず、派手に動き、刃を奮うとと錯覚していた?

 

 

 

「ここにいるんだよっ……!?」

 

 

--そんな絶対的な前提なんて、あるわけないだろうに。

 

口の中の目が、こちらをギョロリと見据えた。

 

 

 

♦︎♠︎♥︎♣︎

 

 

階段を全速力で下り、廊下を疾走した甲斐あって--そのため勢い余ってオサムに激突しそうになったのを跳躍して避け、先に『盾』印(シールド)を張った後着地するということになった--おれは既のところでオサムを助けることができた。

まっぷたつにたたっ斬った個体と、ついさっき串刺しにして下に落とした個体。

門が出てきたときに地上に落ち、動いたモールモッドは2体だったので、これで大丈夫なはず。

 

「あとはアリスを見つければミッションコンプリートだな」

 

こちらを見て何かを思案していたオサムだったが、アリスの名前を口にしたところ「上にいなかったのか……!?」と目を開いて青ざめた。

 

「ああ。こっちに来る途中でチェシーに会ってな。また下に降りようとするのを止めて--そのまま飛び降りようとしてたぞ--全員で帰ってくる、って言ってきてここにきた」

「あいつまた全段飛ばししてたのか……!危ないって言ってるのに……じゃなかった。だったら尚更早く見つけないと。瓦礫に埋もれてるかもしれないから隅々まで探そう」

「その可能性はなさそうだけどなあ。もしそうならチェシーがとっくに見つけてるだろ」

「いやまあそうだろうけど……」

 

その会話は長くは続かなかった。地響きがしたからだ。2人揃ってバッと横を振り返ると教室のガラスが飛び、そこから煙が立っていた。

 

「……どうやらあそこにいるらしいな」

 

もう一度オサムのトリガーを起動した後、煙の立つ方へ駆け出す。後ろをかけてきたオサムが息を切らしながらも付いてきた。

 

「なんであんなところに……!?もう2体倒した筈だろ!?」

「わからない。……けど、このままじゃあいつやばいだろ」

 

煙も大分薄くなったところで、例の教室の扉の前へ着く。オサムを下がらせて、扉に近づく。

……やけに、静かだ。割れた窓の方から生身の身体中に巡るあの赤い絵の具の臭いがして顔を顰める。この臭いには多少なりとも耐性はついてるがまだ慣れない。オサムの方にもそれがきたようで、顔の下半分を手で覆っていた。……まさか。

嫌な予感がしたおれは扉を勢いよく開けた。横でガシャンと鳴ってはいけない様な音がしたが気にしない。開いた先に広がる部教室には所々にガラスと血が飛び散っていて、机と椅子はぐちゃぐちゃになっていた。扉の延長線の壁にはアリスが座っていて、肩から血を流してぐったりと寄り掛かっている。痛みで目がやや死んではいるが「うわやっべ見つかった」と笑いながら言っているため口は元気そうである。

 

「おい有栖川!大丈夫……か……?!」

 

それに気づいたオサムが近づいてきてアリスに声をかけて、途中で途切れた。そりゃあそうだろう。おれだってびっくりした。だってこいつ、一般人だ。トリガー持ってないはずで、だから怪我をしたんだろ?

 

「なあ、アリス」

 

……だったらどうして、

 

 

「おまえ、これどうした?」

「ごめんこっちが聞きたい」

 

 

 

--トリオン兵が壊れているんだ……?

 

 

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