「た、大変ですぅ!」
PVである“これからのSomeday”の撮影を終え、梅雨に足を踏み入れた6月初旬の事。
各自が座り、部室で駄弁っていた時、花陽が息を切らして部室の扉を開け飛び込んで来た。
「花陽、そんなに息を切らしてどうした?」
「ら、ら……“ラブライブ”です!“ラブライブ”が開催される事になりました!」
椅子に座り、花陽はパソコンを起動させ、キーボードを叩いていく。
「……“ラブライブ”ってなんだ?」
「し、知らないんですか!?」
花陽はキーボードを叩く手を止め、こちらを振り向く。
「お、おう。俺、μ’sの事で頭が一杯で、そういう知識が今一なんだよ」
ダンスのスパルタレッスン、振り付け等、歌詞のお手伝いがあって、調べものが疎かになっていたのだ。てか、皆も『……そうだったんだ』的な感じになるのは止めてくれませんかねぇ。
「んで、その“ラブライブ”ってのは、大会見たいなもんか?」
「はい!そうです!一言で言えば、スクールアイドルの甲子園、それが“ラブライブ”です。スクールアイドルサイトに登録されたチームのランキング上位20組以内の学校が本選出場で、スクールアイドルの№1を決める大会ですぅ!」
へぇー、面白そうな大会なのな。
でもまあ、全国的に見るとスクールアイドルの数は約1000チーム位。その中の20組という事は、かなり狭き門でもある。
「んで、アイドル好きの花陽の予想ではどんな感じなんだ?」
「はいっ!上位20組となると……1位のA-RISEは確定として、2位3位は……まさに夢のイベントですっ!チケット発売はいつでしょうか!」
って、2、3位の予想は言わんのかいっ!……てか俺、突っ込みが板についてないか?気のせいであって欲しいんだが……。
「へぇー!私たちも参加してみようよ!ラブライブ出場だ!」
「まあ、目指するだけ目指してもいいんじゃないか?」
穂乃果と竜也も言葉に、花陽は声を上げる。
「うえええええええぇぇぇ!?そんな、私が参加なんて……畏れ多いです……」
「花陽、あなたキャラ変わりすぎ……」
「凛はこっちのかよちんも好きだにゃー!」
花陽の変わりように、真姫と凛がそう言う。
まあ確かに、花陽はアイドル関連になると人柄がかなり変わるしなぁ。
「でも、現実は厳しいわよ?」
「……ですね」
おそらく、真姫や海未が言っているのは、μ’sの現在の順位の事だろう。PVを撮る前に確認した順位では、上位20組には食い込む事は不可能だ。
だからまあ、真姫が現実的なるのも頷ける。
そんな事もあり、海未がパソコンで現在の順位を確認する。
「確か、大会に出られるような順位では……えっ!?」
海未が声を上げた為、穂乃果たちは海未の傍まで歩み寄りパソコンの画面を見る。
「あっ!順位上がってる!!」
「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!」
「本当だー!コメントもいっぱいきてる!」
パソコンから流れている曲は、先日撮影した“これからのSomeday”だ。
俺もこの曲の歌詞も少し齧ったが、歌詞を創るってかなり難しいのね。コメントも賛辞の声がかなりあった。
「もしかして凛たち人気者!?」
「……なるほど、この影響ね。実は――」
「ストップ!この先は気になると思うけど、屋上行くぞ」
「「「「「「「はーい」」」」」」」
……声、揃いすぎだろ。まあいいや、練習練習。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「「「「「「「出待ち!?」」」」」」」
練習着に着替えストレッチをしてる時、真姫の発言に全員が驚いた。いや、まさか出待ちが発生してるとは。てか、まだ他のメンバーは無いらしい。
つーか、あのツンツンお嬢様が写真撮影をOKしたとは。最初に比べると、かなり丸くなったと思われる。
すると、屋上のドアが勢いよく開けられ、勢いよく入って来たのは日直で遅れると連絡があったにこ先輩だ。
「みんな!聞きなさい、重大ニュースよ!ついに開かれる事になったのよ。スクールアイドルの祭典!」
「”ラブライブ”ですか?」
「……知ってんの……」
そこはこの場に合わせようぜ、ことりさん。
まあ、善は急げという事で、μ’sメンバーは動く事になった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
練習を早く切り上げたμ’sメンバーは、現在、理事長室の前までやって来た。それは、“ラブライブ”のエントリーの為である。エントリーには、学校の許可が必要らしい。
最初は生徒会室に。という事になったのだが、絶対断られるから理事長とお話しよう。って事になった。禁止って訳じゃないしね。
すると、穂乃果が、
「翔ちゃん、竜君。期待してるよ」
「「は?何で?」」
俺と竜也は同時に声を上げる。
「だって、理事長室に入った事あるんだよね?」
「まあ一応、屋上の許可を取る時にな」
「でもまあ、あの時は勢いがあったし。気にならなかったって事もある」
つーか、またイレギュラーとか発生しないよね?
前回は、まあ置いといて。って事ができたが、今回はそうはいかないかもしれん。俺がノックをしようとしたら――内側からドアが開いた。
「────貴方たち」
「あ、お揃いでどうしたん?」
あー、イレギュラーの発生だわ。まさか、絢瀬と東條先輩が理事長室から出て来るとは予想外である。……てか、学園では俺と絢瀬。完全に敵対関係なんだよね……。これ、タイミング悪ぃぞ。
「タイミング悪っ……」
うん、にこ先輩が俺の心の言葉を代弁してくれた。
つーか、『生徒会長に反論できるのは、君だけなんだからね』って視線は止めてくれ、皆……。
「何の用?言いだしっぺは、後藤君なんでしょ?」
「まあそうだ。理事長に話があって来た」
「各部の理事長への申請は、生徒会を通す決まりよ」
「申請じゃない。だだ、理事長と話に来ただけだから、生徒会は関係ないはずだ」
「いえ、関係あるわよ。話に来たって事は、何らかの許可を取る為。これは、立派な申請よ」
暫く視線をぶつけ合う、俺と絢瀬。絢瀬の目線から感じ取れるのは『私は譲る気はないわよ』。って感じだ。
だからまあ、俺も『こっちも引く訳にはいかないんだよ』。って言葉を視線で送る。
それから、俺が口を開く。
「……やっぱり、学園ではこうなるのな」
外では、普通に友人なんだけどなぁ。どうしてこうなった?
「……あの時から解ってた事でしょ」
「……そうだったな」
廊下には、俺と絢瀬の言葉が響き渡る。
その時――、東條先輩の後ろで、ノックをする音があった。
「どうしたの?喧嘩?」
音乃木坂学園理事長、南雛さんだ。ことりの母親でもある。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
理事長室には、2年組が理事長と向き合い、にこ先輩は後方で待機。俺たちの隣には絢瀬と東條先輩。1年組は外で待機だ。
取り敢えず、今回の案を告げる。
「へぇ~“ラブライブ”ねぇ」
「はい、ネットで全国的に集計される事になっています」
「もし出場できれば、学校の名前をみんなに知ってもらえると思うの!」
「それに、それで人気が出れば世間にもアピールできると思います」
俺たちはそう言うが、反論する者が1人。
「私は反対です――理事長は、学園の為に、学園生活を犠牲にするような事はすべきではない仰いました。であれば、彼女たちにもそれは当てはまるのではないでしょうか?」
「そうねぇ。でもいいんじゃないかしら?エントリーするくらいなら」
「……ちょっと待って下さい!どうして彼女たちの肩を持つんです!?」
「別にそんなつもりはないけど」
「だったら、生徒会も、学園を存続させる為に活動させてください!」
……おそらく、お婆さんの母校を守らなくてはならないという、義務感からきてるんだろう、絢瀬の行動の根本は。
でも、それは、自分の気持ちを殺してるって事と同義なんだぞ。……絢瀬。本当は、気づいてるんだろ?
「それはダメ」
「意味が分かりません!」
「そう?簡単な事よ?」
「……失礼しました」
「エリチっ」
絢瀬は理事長室を後にし、その後を、理事長に一礼してから東條先輩が追った。
「ただし、条件があります」
……なんつーか、嫌な予感……。
「勉強が疎かになってはいけません。来週の期末試験で、1人でも赤点を取るような事があったら、“ラブライブ”へのエントリーを認めません。いいですね?」
――うん、あれだ。ここには数学が常に赤点がいるんだった。俺も英語は45点なんだけど。
「……うう、どうしよう」
穂乃果は崩れ落ちる。
後方を振り向くと、
「…………だ、大丈夫よ」
「…………うぅ」
って、凛とにこ先輩も崩れ落ちてるんかい!
あれだ。一難去ってまた一難ってやつだ。……うん、俺も赤点近いし勉強頑張ろう。
もうそろそろあの場面ですね。気合いを入れて書きます!