「大変申し訳ありません!」
「ません!」
部室で謝罪したのは、穂乃果と凛の2人だ。向かいには、俺と竜也、海未、ことりだ。
「小学生の頃から知ってはいましたが、穂乃果……」
「数学だけだよ!ほら、小学校の頃から算数苦手だったでしょ!」
「7×4?」
これは、俺の質問である。
「……2……6……」
おいマジか!中学までこの町に居たから、知ってたけどさ。
てか、花陽まで微妙な顔をしてるぞ。
「海未……ことり……後は任せた」
「……翔太は他人事すぎます!翔太も英語が赤点に近いんですから勉強してください!」
「え、翔太君。英語の点数が低いの?」
「い、いやー、何の事かな……。はい、すいません。勉強します……」
つーか、何で知ってるんだ?情報源は?
そう思い、周りきょろきょろと見回すと、隣に座る竜也がニヤニヤ笑みを浮かべていた。てか、お前かッッっっっ!……うん、痛い奴じゃないからね。
「まあでも、翔太の心配はしてません。やる時はやりますから、翔太は」
「それで、凛ちゃんは?」
ことりが、凛にそう聞いた。
ちなみに、凛の向かいには、真姫と花陽が座っている。
「凛は英語!英語だけは肌に合わなくて~……っていうか、凛たちは日本人なのに、どうして外国の言葉を勉強しなくちゃいけないの!?」
……うん、共感できる俺が居て、何か悔しいわ。
「屁理屈はいいの!」
「真姫ちゃん怖いにゃ~……」
「これでテストが悪くてエントリーできなかったら、恥ずかしすぎるわよ!まったく、やっと生徒会長を突破したっていうのに……」
真姫が言うように、あれだけ大見えを切ったのに、テストの点数で赤点を取ったのでエントリーできませんでしたとか洒落にならない。
「まったくその通りよ!赤点なんか絶対取っちゃダメよ!」
「……にこ先輩、数学の教科書が逆ですよ……」
かなりテンパってる証拠だ。話によると、穂乃果と同じく数学がヤバイらしい。
すると、海未が、
「取り敢えず、私とことりは穂乃果を、花陽と真姫は凛を、竜也は翔太を見て下さい。にこ先輩は――」
「それは、ウチが担当するわ」
部室に入って来たのは東條先輩だ。確かに、同級生である東條先輩が教えてくれるのはありがたい。
そんな時、東條先輩が俺の耳元でボソッと呟く。
「(エリチが、『明日の早朝練習では覚えてなさいっ!』って、後藤君に会ったら伝えといて言われたんやけど)」
…………マジか。明日死ぬんじゃね、俺。これ、冗談抜きで。つーか、完全に八つ当たりやん!
「(……了解です。伝えてくれてありがとうございます)」
「(ふふっ、何のことか解らへんけど頑張ってな)」
「(……ええ、死なないように頑張ります)」
それにしても、よく東條先輩が部室に来るって解ったな、絢瀬の奴。にこ先輩を教えるのは、上級生。って事になるけどさ。
東條先輩は、にこ先輩の元まで歩み寄る。
「さて、にこっち。勉強しよか」
「に、にこは別にだいじょ―――」
「にこっちはふざける場合があるから、ウチがわしわしでお仕置き役としてもいいやろうしね!」
東條先輩は、にこ先輩の胸を鷲掴みした。そして、にこ先輩は顔を若干青くする。
「……わ、わかりました。教えてください……」
まあこのようにして、勉強会が開始されたのだった。てか、俺は竜也と一緒に英語の小テストをしたが、60点は採れた。これなら、期末テストは問題ないかもしれん。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~某公園広場~
「1、2、3、4、5――――後藤君、ステップが乱れてるわよ。それじゃあ、指導者の立場までは程遠いわよ」
お分かりの通り、今は、早朝のダンスのレッスン最中である。いつもはこの後に神田明神に行くんだが、今週中は、テスト勉強に集中という事で部活は休みである。だからまあ、いつもより練習ができる事でもあるんだが。
「――――はい、OK。一旦休憩にしましょう」
上体を曲げ、俺は両手を両膝に突け、額には汗の粒がかなり浮かんでいる。
「……絢瀬。今日はいつも以上にきつすぎるぞ」
昨日、東條先輩から聞いてたから知ってたけど。
「そうかしら?そんな事はないと思うけど」
「……いやいや、いつもよりきついからね。まあいいけどさ」
さて、聞きやすいとしたら、今か?
上手く交わされる可能性も捨てきれないけど。
「……なあ絢瀬。最近、調子はどうだ?」
「……何のかしら?」
絢瀬の雰囲気が、僅かに変わる。
「分かってるだろ?てかあれだ。――――友人として教えてくれよ」
絢瀬は、重い口を開く。
「……そうね。正直辛いわ……」
「……生徒会の活動、ずっと認められてないんだもんな」
「そうよ。何回も理事長に進言しても、断られているわ」
「原因は、解ってるのか?」
絢瀬は頷いた。
「確証はないけど、私が生徒会長として学園存続をさせる為に行動をしてるからかもね。……もしかしたら、お婆様もそんな事をしなくてもいいって言うと思うわ。――――でもね、それでも、私は学園を守らなくちゃいけないのよ」
絢瀬は苦笑してから、
「……
俺は溜息を吐く。
「……そこまで解ってんのかよ。てか、そこまで解ってんなら、絢瀬の『やりたい事』をやればいいじゃんかよ」
「……それはダメよ。私は音乃木坂学園の生徒会長。やりたい事をやっていい立場じゃないわ。私は生徒会長として――」
俺は絢瀬の言葉を遮り、頭にチョップをかます。絢瀬は、若干涙目だ。……そんなに強くないはずなんだがなぁ。まあいいや。
「アホだろ、絢瀬は。肩の力を抜けって言っただろ。1人で抱え込みすぎだ。つーか、お前は1人じゃないんだからな。――あの時、俺は何て言ったか覚えてるか?」
「……『俺は絢瀬の味方だからな』って言ってたわ」
絢瀬は苦笑し、
「でも、学園では敵対関係よね」
「うぅ……痛い所を突くんだな。そういう設定って事にしてくれよ」
「ふふ、そういう事にしとくわ」
さて、ここからが本題の本題である。
「なあ絢瀬。お前から見て、μ’sはどう映ってる?」
「……っ」
絢瀬は、一度顔を強張らせたが、ゆっくり口を開く。
「……みんな、とても楽しそう、だわ。……みんなと笑ったり、遊んだり……私も、あんな風に活動して、廃校が阻止できるなら――――」
これこそが、絢瀬の心の内に秘めた
だが、絢瀬は、でもね。と言葉を続ける。
「でも、私はμ’sに入ろうと思わない。私個人として頑張るつもりよ。生徒会長としても、
――――絢瀬の意思は硬い。言葉だけでは、揺らぐ事はないだろう。
「……そうか解った。言ってくれてありがとうな。てか、東條先輩には何で言わないんだ?」
「それは……希に迷惑はかけられないわ」
「おいこら、俺には迷惑をかけてもいいのかい」
「男の友人なんだし、当たり前でしょ」
いや、何を基準で男の友人ならいいでしょうかねぇ?絢瀬さんや。
――でもまあ、今はいいか。
「んじゃ、練習の続きといこうぜ。絢瀬先生」
「わかったわ。それじゃあ――さっきのから一段上げるわ」
「おま、俺を殺す気か!?」
「上手くなりたいんでしょ?当然よ」
どうやら、逃げ道は無いらしい。
俺は息を吐き、
「……よろしくお願いします、絢瀬先輩」
「よろしい、始めるわよ」
絢瀬の掛け声によって、練習が再開された。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
授業が終了し、部室にドアを開けたら、穂乃果と凛、にこ先輩が必死に勉強をしていた。そして、その傍には東條先輩。
「……うん、アレを食らったんだね、穂乃果たちは。んで、もうやられない為に頑張ってると」
「……たぶんな、隠れて練習しようと思って、東條先輩に見つかって所か?」
「ま、それが妥当だろうな」
まあそんな事があり、俺は椅子に座り、テーブルに英語の小テストを開き問題を埋めていく。んで、採点をしたら70点。
これなら、期末テストの英語は問題ないだろう。
「ことり。穂乃果の勉強をお願いします……。竜也は、翔太をお願いしますね」
「え?うん……」
「お、おう。了解だ」
2人の返事を聞くと、海未は部室から出て行ってしまった。てか、いつもと様子がおかしい。これは、何かあったと思われる。東條の表情を見ると、何らや難しい表情をしていた。おそらく、
「ごめんな、ウチも少しだけ出てくるわ」
「……悪い、俺も出てくる」
東條先輩は目を丸くした。
「――――皆、悪い。ここは見逃してくれないか?たぶん、後から必ず解る事だから」
俺がそう言うと、皆は了承してくれたので、東條先輩と一緒に部室を出た。
東條先輩は、何かしらを俺から感じ取ったのだろう。
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俺と東條先輩が今居る場所は、生徒会室前の廊下だ。海未は俺が居る事に、目を丸くしたが、それは一時的なものだった。
東條先輩が口を開く。
「どうする気なん?」
「生徒会長からも、ダンスを教えて欲しいと思っています。そうすれば、今まで以上に上達して、人を惹きつけられると思っています」
どうやら海未は、昨日の放課後に絢瀬と偶然会って、絢瀬がμ’sに対して否定的な一部を聞いたらしい。
「……そうか。海未は、絢瀬の過去を聞いたんだな」
「しょ、翔太は知っていたのですか!?生徒会長がバレエ経験者という事に?何故、私たちに秘密に?」
「ああ、経験者って知ってた。だけどな、俺はμ’sのメンバーじゃないし、俺が教えるのも筋が違うと思って黙ってたんだ」
東條先輩が教えてあげたのは、ちょっと予想外だ。
でもまあ、真っ向から否定されたら、理由が聞きたくなるのは当然だと思う。
「そ、それは、そうですが……」
ここで、東條先輩が口を開く。
「……流石、エリチの友人やね、そこまで知ってたんや。他にも色々知ってそうやけどな」
「まあそうっすね。俺の事もあいつは知ってますけどね」
絢瀬は、俺に親が居ない事や、前の学園での出来事。まあ俺の過去の出来事だな。それに、好き嫌いとかも知ってたりする。いや、すいません。これは関係なかったかもしれん……。
「まあでも、外では友人でも、学園では敵対関係ってなってますけどね」
「そうやね。でもそれは、エリチと
「そうだったら嬉しいですけどね。てかあいつ、友達いなそうですし」
友達は居るわよ……希が。って言いそうだけど。絢瀬の奴。
「今はこれは置いといてや、話を戻すな。――園田さん、エリチに頼み事もいいと思うやけど、その前にやる事があるやろ?」
東條先輩が言うやる事、それは期末テストの突破である。
それから、生徒会室に入って行く東條先輩。
「海未、戻るか。絢瀬に話をするのは、試験を突破してからだな」
「……そうですね。解りました」
それから部室に戻ったのだが、海未は穂乃果の家に泊まり込みで勉強を教える事になった。だからまあ、凛は、真姫の家で勉強らしい。まあ何だ。2人とも頑張れ。としか言いようがなかった。
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そして、試験が終わり返却の日。
μ’sのメンバーは部室に勢揃いして、椅子に座っている。ちなみに、凛は48点。にこ先輩は55点。俺は65点と赤点は回避だ。
残るは、穂乃果だけという事になったのだが。――そして、部室のドアが開かれる。固唾を飲み、穂乃果が取り出したテスト用紙を見る、メンバーたち。
「もうちょっといい点だったら良かったんだけど……」
テストの得点欄には、53点と書かれていた。
つまり――――、
「よっしゃぁ!全員赤点回避だ!」
「よぉし!今日から練習開始だぁ!」
色々あったが、テストは突破した。後は、“ラブライブ”に向けて前進あるのみ。
「よし、皆着替えて、理事長に報告しに行こう!」
まあそう言う事なので、俺と竜也は部室から出た。てか、竜也に、テンション上がりすぎだ。って指摘されてしまったけど。
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理事長室に到着し、穂乃果がノックしようとしたら絢瀬の声が届いた。ドアを僅かに開け、内部の様子を見ると、絢瀬が理事長に何やら抗議をしていた。
「そんな!?説明してください!」
これは、絢瀬の叫び声。
「ごめんなさい。もうこれは決定事項なの」
そして、次の言葉を聞き、俺に衝撃が走る。
「――――音ノ木坂学院は、来年より生徒募集を止め、廃校とします」
さて、そろそろあのシーンですね(^O^)
気合いを入れて書きます!(二度目)