ラブライブ!~奇跡を紡ぐ物語~   作:舞翼

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れ、連投やで。
絵里加入編、クライマックスですね。


第20話 9人の女神

 翌日。

 俺は学校の校舎に入り、上履きに履き替え屋上へ向かう。ちなみに、朝練の時はバラバラに集まるようになっている。てか、屋上に続く階段を上がっていると、見知った制服姿の人が壁に隠れながら屋上の様子を窺っているのだが……。

 

「絢瀬さん。何やってるんだよ。早く練習に行くぞ」

 

 俺は絢瀬の右手を握り、屋上に連行。途中で、『ちょ、待ちなさい』って聞こえたが無視である。

 

「おーす。今日も練習頑張るぞ。てか、新しい練習方法も考えて来たぞ。――――絢瀬。後で確認を頼んだ。俺だけじゃ不安だし」

 

「ちょ、聞いてないわよ!」

 

「いや、言ってなかったし。当然だろ」

 

 ともあれ、全員揃ったので、練習開始である。……てか、俺が最後だったのね。

 

「おはようございます!」

 

「まずは柔軟からですよねっ!」

 

 穂乃果とことりが、元気良く問いかける。

 

「辛くないの?」

 

 これは絢瀬の、率直な疑問だ。まあ確かに、あそこまで言われたのに、何故続けるの?って聞きたいのは必然だ。

 

「昨日あんなに言われたのに、今日また同じ事するのよ。第一、上手くなるかどうか分からないのに」

 

 絢瀬も、穂乃果から返ってくる言葉は分かってるはずだ。

 

「やりたいからです!――――皆で踊って歌うのが楽しいからです!」

 

「っ……!」

 

 この言葉に、絢瀬の顔が若干強張る。

 

「確かに、練習は凄くキツイです。昨日、たくさん指摘もされました!でも、廃校を阻止したいという気持ちは、生徒会長にも負けません!だから今日も、よろしくお願いします!」

 

「「「「「「お願いします!!」」」」」」

 

 そう、この言葉たちこそが穂乃果たち。いや、μ’sの根本であるといっても過言ではない。そしてこれは、ただの言葉ではない。芯が通った、想いが詰まった言葉だ。

 

「……っ!」

 

 絢瀬はこの言葉聞き、何かを感じ取ったのか。屋上をから出て行ってしまった。

 

「あ、生徒会長!……ど、どうしよう……」

 

 穂乃果がそう言い、俺は息を吐いた。

 

「穂乃果たちは、昨日絢瀬から指摘された所を重点的に練習しててくれ。――――俺は頑固者の所に行ってくる」

 

 そう言い残し、俺は屋上を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 絢瀬絵里は逃げるように屋上を後にし、廊下を歩いていた。

 

 ――――やりたいからです!

 

 ――――廃校を阻止したいという気持ちは、生徒会長にも負けません!

 

 これがμ'sのリーダー、高坂穂乃果の言葉。

 

 ――――それが、絢瀬の本当にやりたい事か?

 

 そしてこれは、絢瀬絵里の友人。後藤翔太からの言葉である。

 絢瀬絵里は解っていた、この言葉が思い浮かんだという時点で、今までの行動は“本当にやりたい事”ではないという事に。

 ファーストライブの時、絵里は何とも言えない感情が心に渦巻いた。本格的にバレエを経験した絵里から見れば、素人が歌い、踊っただけ。でも、それでも、絵里は必死に想いを届けようとする3人から目が離せなかった。

 そう、彼女たちはステージの上で“輝いていた”といえばいいのか、言葉で現すとしたら、今の言葉が適切であろう。絵里は彼女たちからは、目が離せなかった。

 

 ――――彼女たちは、仲間に支えられ輝いていた。シンデレラのように光り輝いていた。

 

 絵里も一瞬だけ、このように輝いて見たいと思ってしまった。

 

 ――――でも、私は生徒会長。アイドルなんてお門違い。

 

 この言葉を想いの上に被せ、感情を押し殺した。

 生徒会長には、学校存続の“義務”があり、個人の感情で動いて良い立場ではない。

 

 ――――肩の力を抜け、お前は硬すぎるんだよ。

 

 これも、友人である後藤翔太に言われた言葉。

 解っていた。自分が“義務感”に囚われ、その言葉ごと“義務感”という感情で塗り潰している事に。

 でも、どうすればいいのか解らない。どうすれば、目の前の鎖の扉が開けるか――――自分の枷を取り除けるのかを。

 そんな時、友人である1人の少女が、絵里の前に現れる。

 

「ウチな……」

 

「っ、希……」

 

 そして、影からμ’sを支えていた少女が動き出す。

 

「エリチと友達になって生徒会やってきて、ずーっと思ってた事があるんや。エリチは、本当は何がしたいんやろって」

 

「え…………」

 

 希は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「ずっと一緒にいると、分かるんよ。エリチが頑張るのは、いつも誰かのためばっかりで、だから……いつも何かを我慢してるようで……全然自分の事は考えてなくて……――学園を存続させようってのも、生徒会長としての義務感やろ!だから理事長は、エリチの事、認めなかったんと違う!?」

 

 解ってる、本当は解っているのだ。翔太から言われた言葉、理事長からの言葉の意味も。そう、全部解ってるのだ。

 

「エリチの……エリチの本当にやりたい事は!?」

 

 希の叫びの後、2人の間には沈黙が続いた。

 ――そして、沈黙を破ったのは絵里だった。

 

「……何よ……何とかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!私だって、好きな事だけやって、それだけで何とかなるんだったらそうしたいわよ!」

 

 絵里の蒼い瞳の目許に、涙が溜まっていく。

 

「……自分が不器用なのは分かってる……。でも!今更、私がアイドルを始めようなんて言えると思う……?」

 

 自分の感情を漏洩した絵里は、涙を流し走り出した。

 そして、希は見てしまった。

 

「ぁ……」

 

 絢瀬絵里が一度も見せた事がない悲しい姿。涙を流してる姿だ。一番見たくなかった姿に自分がさせてしまった。

 そして再び静寂が廊下を包む。だがその時、1人の人間が姿を現す。

 

「……ごめんな、みっともないとこ、見せちゃったんっ……。ウチじゃ……あかんかったみたい……。ずっと一緒におったウチが、エリチを救いたかったんやけどな……っ」

 

 その言葉は震え、必死に涙を堪えているようだ。

 

「ウチは……、無力だったんかな……エリチに何もしてあげられないんかな……。ウチじゃ……エリチを救えなかった……。お願いっ……もう、ウチじゃ何もしてあげる事はできない……。だから、君に頼むしかないの……。私の代わりに、エリチを助けてあげてっ……!」

 

 最後は、懇願に近い言葉だった。限界だったのだろう。親友の苦しむ姿は見たくなかったのだろう。普段の似非関西弁じゃいられなくなる程、辛かったのだろう。

 そして、翔太は息を吐いた。

 

「ったく、親友がここまでぶつかってくれたのに、あのお嬢様は何処まで硬いんだか」

 

 翔太は希に一つの頼み事をする。

 

「タイミングを見計らって来て下さい。あいつの居る場所は、検討はついてるですよね?」

 

「……きっと、教室やね」

 

「そうですか、よろしく頼みますね」

 

 こうして、後藤翔太が動き出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ……希から逃げ出した後、私は教室の窓際の一番後ろの席に座り、外の景色を眺めながら黄昏ていた。

 そんな時、教室の後方のドアが開いた。

 

「――――よう、絢瀬」

 

 教室に入って来たのは、私の友人、後藤翔太だった。

 後藤君は、私の隣の机の上に座った。……生徒会長として見逃せない行為だけど、今は如何でもよかった。

 

「んで、何黄昏てんだ。お前には似合わないぞ」

 

「……私に似合わないってどういう意味よ……」

 

 私は無意識に喧嘩口調になってしまうが、後藤君はそれを全然気にしてないように受け流す。

 

「いや、絢瀬はもっと口煩くて、我儘で、意地っ張りなお嬢様だろ。……後、シスコンな」

 

「……何よ、嫌がらせに来たのかしら」

 

「アホか、俺がお前を嫌がらせに来るとか有り得ないからな。友達を助けに来たんだ。――――つーか、お前は賢い癖にポンコツだよな」

 

「め、面と向かって言う事ではないわよね!」

 

 後藤君は苦笑した。

 

「それだよ。絢瀬にはその強がりがないとな」

 

「……褒められて無い気がするのは、私の気のせいかしら?それより、早く練習に戻ったらどうかしら?私の事は放っておいて頂戴」

 

「頑固者だな、お前は。――ていっ」

 

「いたっ」

 

 後藤君が、私の額を小突く。

 

「絢瀬は遠慮しすぎだからな。友達なんだから、あの時みたいに頼ってくれても良いんだからな。てか、頼れよ。1人で抱え込まないでくれ。友達が苦しむ姿は見たくない。お前は1人じゃない、――――何度でも言うぞ。俺は、お前の味方なんだからな」

 

 後藤君は、私の頭に右手の掌をポンと置き、優しい声で、私の頭を撫でながら言葉を続ける。

 

「――――絢瀬は生徒会長として頑張った。今は、ただの女の子になってもいいんじゃないか?」

 

「……い、いいの、かな?」

 

「いいと思うぞ。てか、お前は溜め込みすぎだからな。ったく、悪い癖だよ。お前の」

 

 後藤君は立ち上がり、私の体を抱き寄せ自分の胸に私の顔を押し当てる。

 突然の事に、私は顔を紅潮させたが、それは徐々に無くなり涙が溢れ出す。

 

「……辛かった、苦しかったよ……ううぅっ……うわぁぁあああんっ……」

 

「……今までよく頑張ったな。――――今後からは1人で抱え込むなよ。俺は絢瀬の友達なんだから。――約束だぞ、いいな?」

 

「……ぐすっ……うん、わかった。わ……わかったよ……うわあぁぁんっ!」

 

 後藤君はそれからも、私を優しく包み込んでくれた。――――――まるで、お婆様の抱擁のように。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 暫く時間が経過し、私の涙は止まり、私は顔を上げている。

 ――ようやく、素直な私の“答え”が見つかった気がする。これを気に私は勇気を振り絞る。友達なら当たり前だものね。

 

「さっきは、みっともない姿を見せてごめんね。――――――翔太(・・)

 

 後藤君はビクッとしたが、『なるほどな』と納得したようだった。

 

「いや、構ないよ――――――絵里(・・)

 

「ふふ、名前で呼ぶのって新鮮ね」

 

「そうかもな。特にお前の場合は」

 

「むっ。それってどういう意味かしら?」

 

「いや、深い意味はないぞ。てか、絵里はやってみないか?アイドル」

 

 私は、この言葉は言えば、決定的に何かが変わるような気がした。

 

「……私ね、μ’sに入って皆と踊りたい、楽しみたい。だって、スクールアイドルがやりたいだもの……皆と一緒に廃校を阻止したい――」

 

 そう、これが私の中で出た答え。絢瀬絵里の素直な答えだ。

 

「それが絵里の本当にやりたい事か?」

 

「うん。嘘偽りのない、私の素直な気持ちよ」

 

「そうか。――――だってよ、穂乃果!」

 

 その時、教室の後方のドアが開いた。

 入って来たのは、μ’sのメンバーと希だ。

 

「の、ぞみ……?」

 

「ごめんね、エリチ……。ウチがエリチを助けないとあかんかったのに。でも、後藤君に頼んで正解やったみたいやね」

 

 訳が分からなかった。自分から引き離してしまったのに、何故、希は私に謝ってきたのか、何故、μ'sのメンバーと一緒にいるのか。

 

「俺が東條先輩に頼んでおいたんだよ。穂乃果たちにタイミングを見計らって入って来るようにって」

 

「それはいいけど。ずっと立って待ってるの退屈しちゃったよ!」

 

「悪い悪い。生徒会長が号泣しちゃってな」

 

 私は顔を真っ赤に染める。あの時の、自身の姿を思い出してしまったのだ。

 そして私は立ち上がり、表情が引き締める。

 

「μ’sのリーダー、高坂穂乃果さん。……わ、私をμ’sのメンバーに入れて下さい!虫が良い話だとは解ってるつもり。でも、それでも、皆と歌い踊り、廃校を阻止したいの。お願いします!」

 

 頭を下げ、右手を差し出す。

 私が顔を上げると、高坂さんが微笑む。それはまさに、太陽のような笑顔。私は、何故この子がリーダーなのか納得した。彼女は、μ’sを輝かせる太陽なんだから。

 高坂さんは、私の右手を優しく握った。

 

「こちらこそよろしくお願いします!生徒会長!いえ、絵里先輩!――これで8人だ!」

 

「いや、まだや。ウチも入れて9人や」

 

 希は微笑んだ。

 

「占いで出てたんや。このグループは9人になった時、未来が開けるって。だから付けたん。9人の歌の女神、μ'sって」

 

「じゃ、じゃあ、あの名前付けてくれたのって、希先輩だったんですか!?」

 

 μ’sの名付け親は、希。こうなるのが、初めから解ってたのかしら……。

 

「希……。まったく、呆れるわ……」

 

 そして、私は歩き出す。

 

「どこへ?」

 

 園田さんの問いかけに、私はただ一言だけ言った。

 

「……決まってるでしょ。練習よ!――――行くわよ、翔太!」

 

「おま!もう仕切ってんのかよ!いや、いいけどさ!竜也!お前も行くぞ!」

 

「ちょ、待ってて!袖を引っ張るな!伸びるだろが!」

 

 そう言って、私たちは教室を後にし、屋上へ向かった。

 この時、初めて翔太と掛け合いをした。清水君は呆れてたけど。まあでも、かなり楽しかったわね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「希先輩。翔ちゃんと竜君は――」

 

 穂乃果が希にそう聞いた。

 

「そうやね。後藤君は太陽。清水君は星や。でも、星を見つけ、女神を導くのは太陽があってからこそや」

 

 そう、太陽と星が女神を支え、μ’sは輝く事ができるのだから。

 そして、絵里と希が加入したμ’sは、新たなスタートを切った。




翔太君は、μ'sを支える、道を示す太陽って所ですね。
ともあれ、無事、絵里と希もμ'sに加入です。
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