オープンキャンパスが終了し、翌日の放課後。俺は穂乃果たちと部室に向かおうとしたのだが、今朝の登校時の会話を思い出し長い溜息を吐くのだった。それは、『放課後、生徒会の仕事を手伝って頂戴(強制)』って絵里に頼まれたのだ。
俺は穂乃果たちに一声かけ、吊り下げたバックを肩にかけ生徒会室へ急いだ。
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~生徒会室~
「……はあ~、終わった」
俺は椅子に座りながら伸びをした。俺の主な仕事は、書類の整理と会計処理だった。
絵里は苦笑し、
「助かったわ、翔太」
絵里は、俺に感謝の言葉を述べる。
「別にいいけど。仕事溜めすぎじゃね?」
「え、ええ。まあ色々あったからね」
「……そうかもな。絵里が泣いたり、絵里が泣いたりな」
「ちょ、その話は蒸し返さないで頂戴!私の黒歴史なんだから!」
絵里は顔を真っ赤に染める。
まあうん、凛とした今の表情からは考えられない光景だったしな。
「見たのは俺しか居ないんだし問題ないだろ」
「……そういう問題じゃないと思うんだけど……」
そんな俺たちを見て、希先輩が口を開く。
「エリチと翔太君は、ホント仲がええなぁ。ウチ、嫉妬してまうよ」
「そうっすか?」
「そ、そうよ。い、いつも通りの光景よ」
「……何でお前、言葉に詰まってるの?」
いや、こういうのに慣れてないだけだと思うんだけどさ。
ともあれ、俺は気になってた事を希先輩に聞いて見る。
「そういえば、希先輩と絵里の付き合いっていつからなんですか?」
「そうやね。高校一年時からや。エリチとは、ずっと一緒のクラスよ。……でもまぁ、3年は3クラスしかないから当然やのかも知れんけどな。その頃のエリチはな――」
「ちょ、それ以上は止めなさい!希!」
……テンパリすぎでしょ、絵里さんや。
でもまぁ、希先輩の続きの言葉は解る気がする。
「なるほど。その頃は硬すぎて、壁を作ってたんですね。学園限定でですけど」
「そうや。何で解ったんや?」
「いや、こいつと出会った時も、そんな感じだったんで。ま、賢いポンコツって所ですかね」
希先輩は、クスクスと笑った。
「そうやね」
ともあれ、絵里を弄った後、身支度を整え部室へ向かった。
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部室に入ると、花陽の声が響き渡る。
「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからとなったそうです!」
部室に入ると、花陽の言葉が部室に響く。
「それって……!」
「見に来てくれた子たちが興味を持ってくれたって事だよね!」
「うん!……でも、それだけじゃないんだよ~!」
そう言って、穂乃果が部室の奥の部屋の扉を開け、俺は扉の中を覗く。てか、意外と広いわ。ストレッチ位なら全員でできる。
「じゃじゃーん!部室が広くなりましたー!」
「「おおー!」」
声を上げる、メンバーたち。
「安心している場合じゃないわよ」
「絵里先輩」
部室が広くなってテンションが上がっている穂乃果に、絵里が声をかける。
「生徒がたくさん入ってこない限り、廃校の可能性はまだあるんだから頑張らないと」
その通りである。オープンキャンパスが大成功し、その場の廃校阻止はできたが、それは先延ばししただけだ。完全に阻止したとは言えない。
「ぅ……ひっく……嬉しいです……!まともの事を言ってくれる人がやっと入ってくれました……!」
海未さんー。俺たちはまともじゃないのん?まあいいけど。
「それじゃ、凛たちまともじゃないみたいだけど……」
ジト目になる凛。でもまあ、部室も広くなってメンバーも増えた。今は、これで良しとしよう。……うん、俺は誰に言ってるんだろうか?
「ほな、練習始めよか」
そう言った、希先輩。
「あっ……ごめんなさい。私ちょっと……今日はこれで」
それだけを言うと、ことりは足早に去って行った。
……うーむ。と唸り、俺は腕を組む。
「……ことりに彼氏ができたのか?」
「どうだろう?それっぽい言動はなかったけど。私今思ったんだけど、翔ちゃんは彼女さん居るの?ほら、前の学園とかに」
「……穂乃果嬢。俺のハートがブレイクちゃうからね。その質問はNGだからね」
年齢=彼女居ない歴の俺である。……なんつーか、言ってて悲しくなってきた……。てか、俺って彼女できるか怪しい、一生独身じゃね、俺……。
「まあまあ、そんなに落ち込まないで翔ちゃん」
「……お、落ち込んでねぇし。……てか、俺は彼女ができるか怪しい所だわ……」
穂乃果は頷き、
「じゃあ、もしもの場合は、穂乃果がもr――」
「――ストップ!穂乃果さん、天然を発揮しちゃいけないからね」
穂乃果の言葉を遮ったのは、竜也だ。てか、何て言おうとしたんだ?穂乃果の奴。なんつーか、女性陣は勘付いてる感じだけど。
「翔太、先に屋上行こうぜ」
「そだな」
という事で、俺たちは部室を後にし屋上へ向かった。
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~練習後、屋上~
「うわぁ~!50位!何これ、凄い!」
アイドルランキングをノートパソコンで確認し、穂乃果が声を上げた。
「夢みたいです!」
「20位に大分近づきました!」
「凄いわね」
「絵里先輩が加わった事で、女性ファンもついたみたいです」
「……確かに、背も高いし、足も長いし、美人だし、何より大人っぽい!」
「やめてよ……」
メンバーたちはそう言って、絵里は顔を赤らめる。
まあ確かに、絵里は綺麗だしスタイル抜群だけど――、
「でもな、穂乃果。絵里はポンk――おっちょこちょいだぞ」
……前、クッキー貰った時、砂糖と塩を間違えてたし。まあでも、全部食ったけど。
「ですよね、希先輩」
「そうやね。この前なんて、おもちゃのチョコレートを本物と思って食べそうになったり」
「ちょ、希と翔太……!生徒会室から、私を弄りすぎよ……!」
そんな時、二階の窓から声が聞こえる。ヒフミトリオである。
「おーい!穂乃果ー!」
「頑張ってねー!」
「ファイトー!μ's応援してるよー!」
まあうん。応援されるのは良いものである。……俺が言えた事じゃないと思うけど。
「ありがとー!」
「知り合い?」
「はい、ファーストライブの時から応援してくれてるんです!」
穂乃果がそう言った。にしても、ヒフミトリオには、ファーストラブでかなり助けられたな。
「翔竜コンビも頑張れー!」
「おう、サンキュー。……じゃなくてな!翔竜コンビってなんや!俺たちは力士か!?」
俺たちも、ヒフミトリオって名前の頭文字繋げてるけどさ。
「でも、ここからが大変よ」
そう切り出したのは真姫だ。
「真姫の言う通りだな。上にいけばいくほどファンも沢山いる。プレッシャーも圧し掛かるかもしれないし……」
確かに、竜也の言う通りだ。順位を上げれば上げるほど道は険しくなり、――“期待に応えなければならない”。というプレッシャーも圧し掛かる。なので、常に上を目指して練習に励まないとならない。
「そうだよね。20位か……」
「今から短期間で順位を上げようとするなら、何か思い切った手が必要ね」
思い切った手。見た人の印象に残り、ファンを増やすアイデア。……うーむ。何かあっかな?
「その前に、しなきゃいけない事があるんじゃない?」
にこ先輩がそう言う。てか、しなきゃいけない事ってなんや?
ともあれ、メンバーはある場所へと移動する事になった。