~帰宅途中~
別れる者とは別れ、俺、竜也、穂乃果、海未、絵里は赤く染まる景色の中を歩き、口を開いたのは穂乃果だった。
「意外だな~。ことりちゃんがそんな事悩んでたなんて」
暫しの沈黙が流れる。
「意外とみんな、そうなのかもしれないわね」
絵里がそう言って、俺も呟く。
「かもな。自分が優れてると思ってる人は、殆ど居ないんじゃないか。だから、努力する。努力は人を裏切らないっていうし」
「そうやって少しずつ成長して、成長した周りの人を見てまた頑張って、ライバルみたいな関係なのかもね。友達って」
「確かにそうなのかもしれません」
「……ライバルか。……確かに、オレにとってはライバルになるかもな」
絵里、海未、竜也と続く。
ともあれ、各自の分かれ道まで到着した。
「「じゃあ、また明日」」
「「「また明日(です)!」」」
俺と絵里。穂乃果と海未、竜也となって別れた。
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「やっぱ、皆色々あるのかもなぁ」
絵里は、クスッと笑った。
「翔太って、悩みがなさそうよね」
「いやいや、俺にも悩みあるからな」
練習メニュー考えたりとか、もっと歌詞を作るのを上手くなるにはどうすばいいかとかな。……今思った、これって悩み事じゃなくて、考え事じゃね……。
考え込んでる俺を見て、絵里は「どう?」と首を傾げて聞いてくる。
「……今はないかも。そ、そういう絵里はどうなんだよ」
「やっぱり、学園関係かしら。でも、前みたいに思い詰める事はないわ。皆が助けてくれたからね。その中でも翔太、あなたに一番助けられたと思う。ありがとう」
「いや、俺はしたいことしただけだよ。てか、友達が困ってるんだ。当然なことなんじゃないか?」
「それが当然と思えるなんてね。タラシね」
「おいこら、誰もタラシ込んでないわっ」
「ふふ、冗談よ」
「……ったく」
俺は、絵里の頭をクシャクシャと撫でた。絵里は、「セットが崩れるわよ、バカ」と言ってたけど、無視である。
絵里は髪の毛を直しながら、
「翔太、この後時間あるかしら」
「あるけど、どうしたんだ?」
「ちょっと、思う所があってね」
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俺たちがやって来たのは、秋葉原の交差点だ。
「ねぇ翔太。私ね、さっき街を歩いていて思ったの。次々新しいものを取り入れて、毎日目まぐるしく変わっていく。この街は、どんなものでも受け入れてくれる。1番ふさわしい場所なのかもなって」
1番ふさわしい場所。そして、μ’sは現在50位。それを20位付近まで上げるには、思い切った手が必要だ。これが、その答えなんだろう。
「でもあれだな。A-RISEに喧嘩を売ってる感じでもある」
「だからこそ面白い。違う?」
「違いない。よし!クレープ買って帰ろうぜ」
「いいわね。もちろん、翔太の奢りね」
「……お、おう」
俺と絵里は笑い合った。そしてこの瞬間、μ’sのライブ場所が決まったのだ。そう、期待を胸にして。
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「秋葉でライブよ!」
部室内に絵里の声が響く。
「えっ、そ、それって……」
「路上ライブ?」
「秋葉といえば、A-RISEのお膝元よ!?」
「それだけに面白いやん!」
「随分大胆ね」
「アピールする場としては、かなり良いと思うけど。……にしても、博打要素もある気がするんだけど」
まあ確かに、竜也の言う通り、博打要素が僅かに入ってると思う。
もし、秋葉でパフォーマンスが満足にできなければ、順位の降格もありえるかもしれない。……俺と竜也の偏見かもしれんが。
「まあでも、秋葉はアイドルファンの聖地。だからこそ、あそこで認められるパフォーマンスができれば、大きなアピールになるのは確かだぞ」
「良いと思います!」
「楽しそう!」
穂乃果もことりも賛成のようだ。他の皆も特に反対意見はない。
でもまあ――、
「しかし、凄い人では……」
海未の照れ屋さんが発動してしまっている。だからあれだ、人の顔を野菜と見れば問題なしある。
「人がいなかったらやる意味ないでしょ?」
「そ、それは……」
にこ先輩に正論を言われてしまい、海未は口を閉ざしてしまった。
まあ、反対意見は無しということだ。
「決まりね」
「んで、歌詞なんだけど。秋葉を良く知ってる人が書くのがいいと思うだ。どうだ、ことり?」
ことりは、僅かに目を丸くした。
これは昨日、絵里と話し合った事でもある。ことりに成長を促し、勇気をつけてもらう感じか。
「えっ、私?」
「ええ、あの街でずっとアルバイトしてたんでしょう?きっと、あそこで歌うのに相応しい歌詞を考えられると思うの」
「それいい!凄く良いよ!」
「穂乃果ちゃん……」
「やった方が良いです!ことりなら、秋葉に相応しい良い歌詞が書けますよ!」
「凛はことり先輩の甘々な歌詞で歌いたいにゃー!」
「ちゃんと良い歌詞作りなさいよ?」
「期待してるわ」
「おう、オレも期待してる」
「頑張ってね!」
「う、うん……」
皆から応援され逃げ場を失ったことり。まあなんだ、かなりのプレッシャーだが頑張れ!だがまあ、最初は戸惑う確率が大だと思う。……歌詞って、切っ掛けがないとかなり難しいんだよね……。でも、皆信じてるから大丈夫だ!
「が、頑張ってみるねっ!」
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~屋上~
今日の練習では、ことりは歌詞を考える為お休みだ。ちなみに、穂乃果と海未は、ことりの様子を見に行ってる。
「それにしても、絵里さんと翔太はいつ路上ライブを考え付いたんだ?」
ストレッチをしながら、竜也が俺にそう聞いてくる。
「皆と別れた後だな。その時、絵里が思いついて俺が賛成したって所か」
俺は絵里を見る。
「てか、絵里さん。あのクレープのせいで今週の金がヤバいんですが……」
あのクレープとは、スペシャルブレンドクレープで、クレープ屋で一番高やつだ。……900円とか高くね。ほぼ1000円やん。ちなみに、俺は400円のクレープである。
「翔太が奢ってくれるて言ったんだから、別にいいじゃない」
「……ぐッ!で、でもな、限度ってもんがあるだろが」
「いい翔太、口は災いの元っていうのよ」
「おいこら、上手く纏めようとすんな」
「……なんつーか、翔太と絵里さん。かなり息が合ってる感じだな」
『練習とかそういうのは除いてな』と、竜也は付け足した。
「そうか?まあでも、絵里には俺の個人情報がダダ漏れだな。流石、完璧星人生徒会長様」
「その言い方はひどいわ。翔太が教えてくれたんじゃない」
「……そうだけどさ」
その時、一通のメールが届いた。
鞄からスマホを取りメールを確認する。差出人は、穂乃果だ。メールの内容は、『明日の放課後は、ことりちゃんのバイト先に集合ね』という内容だ。
……歌詞作成から、どうしてこうなった?まあ、明日行ってみれば解る事だ。
翔太君、絵里ちゃんと仲がいいですね~。