ラブライブ!~奇跡を紡ぐ物語~   作:舞翼

26 / 27
第26話 先輩禁止

「……暑い」

 

「……そうだねぇ」

 

「……同感」

 

「……マジで干からびる」

 

 夏休みに入り、練習場である屋上の扉の前。

 だが、その屋上のコンクリートは、空から照らされた太陽で蒸し返す感じになっていた。

 

「ていうかバカじゃないの!?この暑さの中練習とか!」

 

 ですよね、にこ先輩。今日は部活を休みにしましょう!

 と、まあ、俺の心の声は絵里に掻き消されるが。

 

「そんなこと言ってないで、早くレッスンするわよ!」

 

「は、はい……!ごめんなさぃ……」

 

 それに驚いて、花陽は俺の背中に隠れてしまった。てか、俺の背中で隠れられるか?自分で言うのも何だが、俺の身長とか肩幅とか、全てに関して小さいと思うんだが。

 でもまあ――、

 

「落ちつけ、花陽。絵里は、前の硬ぶつ生徒会長じゃないから」

 

「そ、そうよ。花陽。これからは先輩も後輩もないんだから、ね?」

 

 とはいえ、絵里は前の硬ぶつ感がまだ強いからなぁ……。

 花陽は「……はい」と頷くだけだ。

 

「そうだ!合宿いこうよ!」

 

 穂乃果の提案は、やはり唐突である。

 てか、合宿?

 

「何でこんな良い事早く思いつかなかったんだろ~!」

 

「合宿かあ、面白そうにゃー!」

 

「そうやね。こう連日炎天下の練習だと体もきついし」

 

「でも、どこに?」

 

「海だよ海~!夏だもの!」

 

「いやいや、合宿するにしても、合宿費や食費はどうすんだよ」

 

「……穂乃果さん、ことりさんのバイト代を当てにはしちゃいけないよ」

 

 俺と竜也で、そう言って釘を刺す。

 穂乃果は、「……うぅ」と言葉に詰まる。てか、竜也の言う通り、ことりのバイト代を当てにするつもりだったのか……。

 

「そうだっ!真姫ちゃん家なら別荘とかあるんじゃない!?」

 

「アホか!真姫の家が金持ちでも、別荘なんて――――」

 

「あるけど……」

 

「「あんのかよ!!」」

 

 ハモる、俺と竜也。

 穂乃果は真姫にすり寄り、

 

「おおー!ホント!?真姫ちゃんお願~い!」

 

「ちょっと待って、何でそうなるの!?」

 

 そう、声を上げる真姫。

 

「そうよ、いきなり押しかけるわけにはいかないわ」

 

 絵里がそう言うが、穂乃果は目をウルウルさせる。

 

「そ、そう、だよね……あ、あはは……」

 

 つーか、皆期待の眼差しを真姫に向けてるのは気のせい?

 

「……仕方ないわね、聞いてみるわ」

 

「本当!?」

 

「やったにゃー!」

 

 そして、俺と竜也は頷いた。

 

「んじゃ、楽しんでこいよ」

 

「だな」

 

「え――っ!翔ちゃんと竜君は来ないのっ!」

 

「よし、穂乃果さん。オレたちの性別は?」

 

「え、男の子だけど……」

 

「そうだな。一つ屋根の下野郎が二人」

 

「……それがどうしたの?」

 

 穂乃果嬢。俺たちの質問にキョトン顔で返さないでよ。俺らどんな反応をしていいか困るからね。

 

「『どうしたの』じゃないからね、穂乃果嬢。女子の団体の中に、男子が二人だぞ」

 

「世間一般ではあまり宜しくないし」

 

「……うーん、うーん。やっぱり合宿行こうよ!」

 

「「アホ!今の話聞いてないのかよ!」」

 

 ここは、絵里に聞いてみよう。正しい反応が返ってくるはず。

 

「絵里は反対だろ。合宿に男子が二人入るんだぞ」

 

「……別にいいんじゃないかしら」

 

「「は?」」

 

 又しても、俺と竜也はハモる。てか、返しの反応が違いすぎるだろうが。

 

「それに、作詞と作曲はいいとして、振り付けはどうするんですか。二人が居ないと先に進みませんよ」

 

 ……海未の言葉が正論すぎて、返す言葉がねぇ……。確かに、振り付け担当の俺たちが居ないと、練習が中途半端になるのは否めない。

 

「ふ、振り付けノートを渡せばいいんじゃねぇか」

 

 ナイス、竜也。その手があったか!

 すると、ことりが、

 

「でも、本人たちが教えてくれた方が効率がいいよね」

 

 くっ……。又しても正論すぎて返す言葉がねぇ……。

 ……こうなったら最終手段?だ。

 

「じゃ、じゃあ、希先輩はいいんですか?」

 

「ウチは、別にかまへんよ」

 

「じゃ、じゃあ、花陽は」

 

「わ、私も構いません」

 

「ま、真姫はどうなんだ!?」

 

「私も、別に構わないけど」

 

「り、凛は嫌だろ」

 

「楽しそうだにゃー!」

 

 さ、最後のにこ先輩がNGを出してくれれば。

 

「に、にこ先輩は嫌ですよね」

 

「いや、別に私もいいけど。てか、あんたらも来なさいよ」

 

 俺と竜也は、ぐったりと項垂れた。

 

「「……はい、参加させていただきます」」

 

 こうして、不本意ながらも、俺たちの参加が決定したのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 合宿当日、俺はボストンバックを肩に下げ、絵里と共に指定の駅へ向かっていた。

 

「……結局、俺も参加かぁ」

 

「でもいいじゃない。竜也と夢見るハーレムよ」

 

「……まあ、見方によってはだけどな」

 

 でもまあ、ほぼ誰の目から見てもハーレム野郎かも知れんが。

 ともあれ、指定の駅に到着しました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

「さて、皆集まったところでやっておきたいことがあるの」

 

 なるほどなぁ。さっき言ってたあれか。

 

「それは……先輩禁止よ!」

 

「……えぇ!先輩禁止!?」

 

 てか、穂乃果さん。声のボリューム下げようか。他の人に迷惑かも。

 

「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩はもちろん大事だけど、踊っている時にそういうことを気にしちゃ駄目だから」

 

「そうですね。私も3年生に合わせてしまいますから」

 

「……そんな気遣いまったく感じないんだけど」

 

 海未の発言に、そう言ったにこ先輩。

 

「それは、にこ先輩は上級生って感じがしないからにゃ」

 

「上級生じゃなけりゃなんなのよ!」

 

「うーん、後輩?」

 

「ていうか子供?」

 

「マスコットかと思ってたけど」

 

「どういう扱いよ!」

 

 凛、穂乃果、東條先輩の順に言う。

 まあ、凛と穂乃果。気持ちは凄い解るが、相手は先輩やで……。

 

「じゃあさっそく、今から始めるわよ。穂乃果」

 

「え、はい。いいと思います……絵里ちゃん!」

 

 やはり、穂乃果でもかなりの緊張らしい。まあ、上級生を『先輩』つけしないしなぁ。

 

「じゃあ凛も!……ことり、ちゃん!」

 

「はい、よろしくね凛ちゃん。……真姫ちゃんも」

 

「えっ?」

 

 皆一斉(俺と竜也は除く)に真姫を見る。

 

「べ、べつにわざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ!」

 

 ……いつもの、ツンデレ乙。ってやつだ。

 まあ、ここまでは良かったのだが、矛先が俺と竜也に向けられる。

 

「それから、翔太と竜也も『先輩禁止』ね」

 

「いやいや。俺はお前に『先輩』呼びしてないだろうが」

 

 俺は絵里にいつもタメ語だし、先輩呼びもしてないね。

 

「それをいうなら、竜也の『先輩』と『さん』つけを取るべきだろ」

 

「ちょ、翔太。オレに振るなよ!」

 

 いや、ここは逃げるが勝ちなんだよ、竜也さんや。

 でもまあ、逃げられる訳がないんだよなぁ……。

 

「じゃあ、竜君。私のこと呼んでみて。いつも見たいに、『敬語』と『さん』とつけたらダメだよ」

 

「え、えーと……穂乃果。よろしくな」

 

「おー!良い感じだよ」

 

 それからの竜也は、先輩たちを『先輩禁止』で呼んで言った。いや、何。こんなにすんなり呼べるもんなの?

 でまあ、遂に俺の出番である。

 

「翔太君は、ウチと、にこっちだけやな」

 

 まあ確かに、にこ先輩と希先輩は、先輩呼びであり敬語もありである。

 つってもなぁ……。今呼ばないといけないの?

 

「……はあ、わかったよ。希、にこ」

 

「ほな、それでお願いな」

 

「そうよ。また、先輩呼びはしないこと」

 

「……さいですか」

 

 それからは、一年組も俺たちの事を名前で呼んでくれた。

 

「それでは改めて、これより合宿に出発します。部長の矢澤さんから一言」

 

「えぇ!?にこ……?」

 

 予想外の、絵里からの振りに硬直してしまうにこ。

 

「えーと……しゅっぱーつ」

 

「……それだけかよ?」

 

「考えてなかったのよ!」

 

 この時、にこはアドリブに弱い事が解ったのだった。

 ともあれ、μ‘sの合宿がこれから始まろうとしていた。




次回も頑張ります(*- -)(*_ _)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。