翌日の朝。
俺は、絢瀬から頂いたほうれん草のお浸しと、昨日冷凍した白米をレンジで温め、朝食を摂った。それから、練習着に着替えアパートのドアを閉め、二階の階段を下りて行く。
歩道に出た時、
「「あ……」」
金髪美人さんとエンカウントしました。てか、遭遇率高くね。
そんな訳で、途中まで一緒に歩く事になった。
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「お前、朝早くないか?」
「生徒会の仕事があるのよ。学園存続のアイディアも考えないといけないしね」
「……生徒会の義務ってやつか?」
まあ、十中八九そうなんだろうけど。
絢瀬は頷き、俺の予想した言葉を口にする。
「そうよ」
「……そうか。まあ頑張れ」
理事長が、生徒会が動くのをOKしてくれるか怪しいけど。だが、生徒会長にかかるプレッシャーも相当なものなのだろう。なので、生徒会で何とかしなくちゃ。という義務感を背負ってしまうのかもしれない。
「以外ね、後藤君は突っかかってくると思ったんだけど」
「そうか?まあ、絢瀬のやりたいようにやれば良いんじゃないか。どんな結果が出るか解らんけど。俺たちも好きにやらせて貰ってるんだし」
「……でも、講堂の使用許可を出したのは希よ……。それに、すぐに飽きるのがオチよ」
いや、それは無いだろう。
穂乃果たちは、スクールアイドルをやりたくて始めたのだ。てか、あいつが飽きる場面が想像つかん。
「どうだろうな。んじゃ、もう一度本人たちの意思確認を取って見ればいいんじゃないか?」
「私が、生徒会室に呼び出すのかしら?」
「違う違う。ライブの後にだよ。ま、それで判断すればいいんじゃないか?」
「……そうね、分かったわ」
話をしていたら、分れ道の場所まで来ていた。左に曲がれば、神田明神。右に曲がれば、音乃木坂学園である。それに、竜也も力になるって言ってたし。てか、指定時間に神田明神に来いって言ってたんだっけか。つーか、この話題になると火花が散るよな、俺と絢瀬。
「俺は練習行くな。あ、そうだ。今度タッパー返しに行くわ。また食わせてくれ」
「返しに来た時に、新しい料理をあげるわ。……私、後藤君に餌づけしてないかしら?」
「解らん。まあ、俺も食費が浮くし、絢瀬も料理の味見役ができる。正しく、win-winじゃないか。てことで、また後で」
「ええ、そうね」
俺は絢瀬に手を振り、神田明神に向けて走り出した。
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神田明神の階段に到着すると、一段目の階段に竜也の姿があった。ちなみに、コイツも練習着である。
「指定時間より早いな、竜也」
「そりゃそうだろ。音乃木のスクールアイドルの練習だぞ!」
竜也さん。かなりテンションが高いんですが。まだ、早朝ですよ。
「……はあ、お前ってスクールアイドルの事になるとキャラ変わるよな」
「そ、そうか。いや、でも、アイドルだぞアイドル」
「はいはい、分かったから。皆も来てる頃だろうし、上に行くぞ」
「お、おう。了解だ」
そう言って階段を上がり、穂乃果たちと合流。人数も増えた事なので、一人がタイムウォッチでタイムを計測し、記録をつけていく事になった。順位でいうと、俺、竜也、海未、穂乃果、ことりの順である。
また、海未に歌詞の手直しが終わったかと聞いたら、まだ終わってという事だ。だからまあ、俺、手直しやって見たいと言い、海未から歌詞ノートを借りました。ちなみに、竜也も名字呼びから名前呼びになった。仲間なのに、距離間があったらいけないしね。まあでも、あいつは『さん』づけなんだけど。
朝練が終わり、5人で今後の事を話しながら登校し、俺は授業中に海未が創った歌詞と睨めっこをしていた。にしても、START:DASHか。てか、作詞のレベル高くね?
つーか、歌詞見てたら無性にピアノが弾きたくなってきたわ。まあ、幼少期から趣味で弾いてるだけなんだけど。
そういう事なので、俺は歌詞ノートを持って昼休みに音楽室へ向かった。一応、家に鍵盤キーボード置いてあるしね。
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音楽室に到着し、前のドアをガラガラと開け、ピアノ椅子に座り板を上げ鍵盤に指を置く。そして俺が弾く曲は、
――――翼を下さい。
これは、俺が一番最初に覚えた曲だ。てか、赤髪のセミロングで、吊り上がった目。一言で言うならば、クールな少女って所か。その子がドアを開け、音楽室に入って来た。
「……先輩、ピアノ上手ですね」
「そうか?……まあ、弾く事しかできないけど」
――そう、俺には作曲と歌詞を書く才能はなかったのだ。簡単に言えば、音楽の才能は無かったって事だ。皆の前では言わないけど。だけどまあ、手直しはやって見たいと思い、海未から歌詞ノートを借りた次第である。
「いつも君が使ってたんだな。悪いな、邪魔して。無性にピアノが弾きたくなってな」
「……あ、あの。失礼を承知でお聞きしますが、うちの病院に入院してました?ええと、確か、後藤翔太さん」
てことは、この子が西木野真姫さんか。確か、作曲ができるんだよな。
「ああ、それであってる。てか、慣れない敬語は使わなくていいぞ。凄く話しずらそうだし」
ソースは俺。
「いいんで……いいの?」
「構わない。まあでも、先輩と認識はしてくれ」
「ふふ、わかったわ」
「そろそろ失礼するな。俺、やる事があるから」
やる事とは、歌詞の手直しの事である。
「……もしかして、スクールアイドル関連?」
「あ、ああ。何で解った?」
「いえ、先週の昼休みに、『あなたの事』と『スクールアイドルの事』を言ってた先輩がいたものだから」
かなり心当たりがある先輩なんだが……。
「それ穂乃果の事だな。悪いな、知り合いが迷惑をかけたみたいで。『アイドルをやりませんか?』的な事を言われたんだろ?」
「腕立て伏せもさせられたわ」
「あとアレか。作曲してともだろ?」
「え、ええ。その通りよ。それよりも、あなたの手にあるのは歌詞ノート?」
そう言って、赤髪少女の視線が作詞ノートへ向けられる。
「あ、ああそうだ。後は、手直しだけだな」
「……ねぇ、聞いていいかしら?」
西木野さんから、問いかけられる。
「ん、どうした?」
「貴方たちは、本当にスクールアイドル活動で廃校を阻止しようと考えてるの?正気なの?」
「正気だ。俺たちは廃校を止めて見せるよ」
まあ俺はそのサポートだけど。
西木野さんは声を荒げる。
「どう考えても無謀よ!無理に決まってる!」
「――――やってみないと解らないだろ。それに、穂乃果たちはやりたいからスクールアイドルをやってるんだ。誰かの為じゃない」
「――ッ!?」
少女の顔が強張る。……成程。この子は何かに縛られてる感じなのか。西木野病院関連か?いやまあ、俺の勘だけど。
「頼む。力を貸してくれ。虫の良い話だと解ってるが」
俺は立ち上がり深く頭を下げた。
「ちょ、頭を上げてよ!私、頭を下げられるのは苦手なの!…………今回だけ力を貸してあげるわ。今回だけよ!」
俺は頭を上げてから苦笑した。
「悪い悪い。でも、こうしないといけない気がしてな」
「まったく、変わった人ね。私ピアノを弾いてるから、できたら声をかけて」
それから俺は、音楽室の机の椅子に座り、机の上に広げた作詞ノートと睨めっこした。海未が考えた歌詞がどうなれば良くなるか?そして――――3人がどのような想いで、スクールアイドルの活動をしてるかをだ。廃校阻止の事、だけどそれは義務感では無く楽しんで活動してる事。ライブに向けて、一生懸命練習して事。様々な想いを込めた。……まあ一応、俺と竜也の想いも込めたけど。
そして、昼休みが終わる10分前という所で歌詞の手直しが終わった。
俺はできた歌詞を、ピアノの椅子に座ってる少女の元へ持っていく。
「これで作曲を頼む」
「ええ、これで作曲するわ。できたCDは、高坂先輩のうちのポストに投函しとくから」
「ああ、μ’s宛てって書いて投函を頼んだ」
そう言って、俺は音楽室を後にした。
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「す、凄い……」
私は、歌詞を見て感嘆な声を上げた。歌詞を読んでいて、先輩たちの想いが伝わってくるようだ。
「……これが、本当にスクールアイドルの歌詞なの?」
私は呆然と呟き、歌詞ノートを持ち自身の教室へ戻った。それに、早くこの歌詞を作曲して見たいという思いがあった。
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そして、三日後の朝練。
「みんな、聞いてよ。μ’s当てにうちのポストにCDと歌詞が投函されてたんだ。西木野さん、作曲してくれたんだ」
うん、人物特定されてる。いやまあ、西木野さんに海未の歌詞ノートを貸した時点でバレてるんだけどね。
そして、朝練と授業を終え、昼休みになった。俺がノートパソコンを借り、ノートパソコンを置いた周りに5人は座って集まる。ちなみに、場所は屋上である。
「じゃあ……いくよ」
穂乃果の掛け声と共に、Enterキーが押される。流れ出すのは西木野さんの声と曲。
「こ、これが私たちの歌ですね」
「うん、私たちの歌だよ」
「つか、クオリティかなり高いな」
「まあそうだな」
つーか、竜也の言う通り、クオリティ高すぎだろ……。彼女、作曲担当になってくれないかなぁ。と思う俺でした。
「よし!今日からこの曲で練習だ!」
「そうですね。ライブまで後少しです。頑張りましょう」
「うん!頑張ろう!絶対成功させようね!」
穂乃果たちはやる気満々である。
「俺たちは最大限のサポートだな」
「オレたちもできる限りの事をしようぜ。何せ、μ’sの為だからな」
曲も衣装もできてるし、最大限のサポートもする。後は、精一杯の練習だけだ。新入生歓迎会まで後僅かである。
うーん、ご都合主義が否めない。
ま、とにかく、曲が完成しました。
では、感想よろしくです!!