今私は、神田明神へ足を向けていた。それは知り合った先輩が、『どれだけ穂乃果たちが本気なのか、確認すればいいよ。いつも早朝、神田明神で朝練をしてるから』という言葉を去り際に貰ったからだ。
「(……ちょ、ちょっとだけだから!……それに気になるのよね。あの歌詞を込める想いが……)」
私が、神田明神の階段の壁に隠れるようにしていたら、何やら楽しそうな声が聞こえてくる。
『まだ上半身の筋トレと、体幹トレーニングも残ってるんだけど?……筋肉のつき方のバランスが悪いのも良くないしな。ダンスの時、体の各部位の動きにズレが出る。……だからまあ、海未の考えた階段ダッシュだけでは足りないな。ほら、やるぞやるぞ。最大限のサポートはするから』
『こんな事言ってるけど、コイツ、休み時間や昼休みを使って、練習方法や柔軟に関わる本を熱心に読んでるんだぜ。穂乃果さんたちにバレなようにな。いや、授業中も偶にだな』
『――ッ!?て、テメェ、竜也!何バラしてるんだよ!』
『へぇ、翔ちゃんがそんな事やってたなんて』
『だから時々、声をかけても反応がなかったんですね』
『翔太君、一度決めた事は最後まで頑張るよね』
『だろ。流石、μ’sを支える大黒柱』
『~~~~ッ!?いいから練習するぞ!ほら、散った散った!』
『了解だ、大黒柱さん』
『『『はぁい。大黒柱さん』』』
『……お、お前ら……つ、潰す……』
このような感じで、とても楽しそうに活動をしていた。そう、――義務感などは関係なく。やりたくてやってるのだ。
また、友達と話す。という事は、何故あんなに楽しそうなのか。そう考えていたからか、私は背後の影に気付く事ができなかった。
「きゃあああぁぁぁっ!」
そう。胸を揉まれたのだ。
「まだ、発展途上っていった所やなぁ」
「い、いきなり何なのよ!」
巫女さんは、階段の上を見上げ、
「そんなに気になるんなら、皆の所へ行ってみればいいと思うんやけど」
「……ただ見に来ただけだし。ここで構わないわよ」
「そうなん?でも彼ら、楽しそうに活動してるやろ」
「……え、ええ、そうね。話には聞いてたけど意外だったわ」
すると、又しても上から声が聞こえる。
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『翔ちゃんの悪代官!海未ちゃんの練習よりキツイよ!』
『皆頑張ってるんだから、最後までやりなさい!ほら、ここのステップがずれてるからな。ここは、右左右って感じだ』
『もうっ、鬼教官!』
『何とでも言え!』
『翔ちゃんのおたんこなす!』
『おま、アホ乃果!』
『アホじゃないもんっ!』
『うるせぇ!数学はいつも赤点って聞いてるからな!』
『なっ!?だ、誰から聞いたの?』
『企業秘密です~』
『……むぅ』
『翔太も、穂乃果さんも練習だぞ』
『そうです。真面目にやってください』
『でも、いつもこんな感じだよね』
そう言って、笑いに包まれている。
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私の眼差しは、階段の頂上に向けられていた。
「混ざってみたいんやろ?」
「そ、そんわけないじゃないっ!」
私は逃げるように学園に足を向けた。
この時、巫女の人が何かを呟いた気がしたが、風によって掻き消されてしまった。
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神田明神での朝練を終え、学校へ向かっている途中、星空と小泉に出会った。
「お、星空と小泉じゃん、おはよう!」
俺がそう言うと、2人は振り向く。
「おはようございます!ええと、後藤先輩でいいですかにゃ?」
「清水先輩もおはようございます!」
「おう、おはよう!」
竜也も、小泉から挨拶をもらった。
んで、7人で登校する事になった。
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「穂乃果たちスクールアイドルを始めたの」
「へぇ、アイドルですか。……アイドルウゥゥゥゥゥゥ!」
お、おう。穂乃果のアイドル発言にかなりの反応を見せたな、小泉の奴。もしかして、アイドルに興味あるのか?
「先輩方……頑張ってくださいね、アイドル!」
「つーか、小泉と星空もスクールアイドルをやってみればいいんじゃないか?似合いそうだし」
「ふええぇぇええええ!?む、無理ですよ私には!声も小さいし、鈍臭いし……」
「り、凛にも無理ですよ!ほら、凛髪も短いし、────女の子っぽくないので。……あ、かよちん!飼育委員の仕事しなきゃ!ほら早く早く!」
「え?あ、凛ちゃん待ってぇ~」
そう言って2人はその場から走り去っていった。
「……行ってしまいましたね」
「ことりは、2人は似合うと思うんだけどなぁ」
「穂乃果も同感だよ」
「いや、でも、星空さんと小泉さんはその意思が無いようだったし、無理に勧誘するのも良くないと思うけど」
だけどまあ、2人がライブを見に来てくれたら、何かが変わる予感がする。俺の勘だけど。
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明日ライブという事なので、作成したチラシを学園で配る事になった。まあそういう事なので、俺たちはチラシを配る為に動き出した。
「明日ライブをやりまーす。よかったら見に来てください」
「お、後藤君発見」
「……えーと、すまん。誰だっけ?」
俺がそう言うと、女子3人組はずっこける。いや、何。お笑芸人みたいだったぞ。
「はあ、クラスの人の名前くらい覚えときなさいよ。私は、中村ヒデコ」
「私は、中沢フミコ」
「私は、坂本ミカだよ」
ふむ。ヒフミトリオと覚えよう。覚えやすいし。
「んで、どうしたんだ?」
「えーと、明日ライブやるんでしょ?」
話しによると、ライブの準備。照明とか、放送とか。その他諸々を手伝ってくれるらしい。何とも、心強い味方である。
「じゃあ、当日頼んでいいか?」
「ええ、任せなさい。学園の廃校阻止したいのは貴方たちだけじゃないんだから」
「……そうか。頼りにしてるよ」
じゃあ、頑張ってねー。と言い、ヒフミトリオは学園を後にした。
それから数分後。俺はチラシは、最後の1枚となった。
「あ、あの、1枚貰ってもいいですか」
声の主は、小泉だった。
「ライブ、来てくれるのか」
「は、はい!絶対行きます!」
「頼んだ」
小泉は、俺からチラシを受け取り小走りで学園を後にした。その先には、星空の姿もある。とまあ、これでチラシ配り終了である。
だか、壁際に隠れ、屈んでいる海未の手には、結構なチラシがあった。おそらく、恥ずかしいから隠れてしまっているのだろう。
俺は壁際に歩み寄り、
「――さて、海未。頑張ってチラシを配ろうか」
「む、無理です」
「……お前の覚悟はそんなものだったのか?――――それだったら、ライブは穂乃果とことりだけの方がいいかもな」
海未は、唇を噛み、拳を握り締めている。
――海未、一歩を踏み出せ。その為になら、俺は嫌われ役になってもいい。
海未は立ち上がり、口を開く。
「……わ、私だって、穂乃果とことりとステージに立ちたいです!」
「そうか。海未、周りを見てみ」
海未は周りを見渡した。
「海未ちゃん、手伝うよ」
「私も手伝うよ」
「オレも手伝う。仲間だしな」
「うし、俺も手伝うぞ」
「……み、皆。ありがとうございます。私、頑張ります」
つーか、俺が一番多いのは気のせいか?まあいいけどさ。
その後も、神田明神で最終確認をし、明日のライブに備える事になった。
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『以上で、新入生歓迎会を終わります』
新入生歓迎会は滞りなく進み、無事終了した。そして、放課後。ライブが行われる30分前、俺は絢瀬にメールで呼び出された。なので、照明や放送諸々はヒフミトリオと竜也に任せて、俺は中庭に足を運んだ。『頑張れ、今までの練習の成果を出せよ』っていう伝言も頼んだが。
「……今日、貴方たちの全てが決まるわ」
「……ああ、分かってる。それを聞かせる為に呼び出したのか?」
「……それもあるわ。でも、彼女たちは
「……俺が居て勇気が出せるかもしれないのに、それをさせないとか、厳しいんだな。でも、
俺と絢瀬の間には、重苦しい空気が漂う。
「……いえ、必ず起きるわ」
「……そうか。なら確認しに行くか」
俺と絢瀬は、講堂に向かって歩き出した。胸の高鳴りを押さえながら。
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――――俺と絢瀬が講堂の後方のドアを開け、周りを見渡すと、俺は愕然とした。
そう、開演5分前だというのに、観客は竜也しかいないのだ。満員まではいかなくても、少数は集まると思ったのだ。
「……嘘……だろ……」
――――これが現実、スクールアイドルで学園の廃校阻止なんか無理だ。諦めろ。と世間から言われてるような気がした。
「……後藤君、これが現実よ……」
俺は講堂の真ん中に移動しようとするが――、
「……何処に行くのかしら。行かせないわよ」
――――生徒会に任せなさい。貴方たちの役目じゃないんだから。と絢瀬は俺に言いたいように聞こえる。
俺はすぐに講堂内部に入りたい衝動に駆られるが、それは絢瀬が許してくれない。
何か無いのか、この場の悲劇を止める方法は、……何かあるはず、何かあるはずなんだ。俺は思考を回し続ける――、
「大丈夫や、後藤君。彼女たちは挫折せえへんよ。彼女たちを近くから見てたやろ。それに、あの場には清水君がいる。だから、ここで見守ろうか」
親瀬と俺が後方を振り返ると、東條先輩が居た。
「……東條先輩」
「の、希!?」
「エリチ、あの子たちの夢は軽いものじゃないんよ」
なので、俺と先輩たちは、事の成り行きを見守る事になった。
そして、開演時間になり、幕が上がる。
――――穂乃果たちは講堂を見渡してどのような顔をしただろうか?唖然、絶望、それとも全てに背を向けたくなった?おそらく、全ての感情が入り混じっているのだろう。
「……そりゃ、そうだ!現実は、そんなに甘くない!」
泣きそうな声で穂乃果がそう言う。おそらく、ショックなのは、2人も同じだろう。
「穂乃果……」
「穂乃果ちゃん……」
そんな時、講堂の真ん中にいた竜也が口を開く。
「……3人の努力は無駄なんかじゃない。それに、観客ならここにいる!きっと翔太も何処かで見てるはず。お前たちの全力を見せてくれ!────だから、そんな泣きそうな顔するなよ!」
「(そうだ。お前たちの想いはどんなものにも負けない。だから、立ち上がってくれ!)」
その時、講堂の真ん中の扉、希望の扉が開かれた――。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「あ、あれ……ライブは、ま、間に合ったの……?」
「……か、かよちん~。早いにゃ。って、誰もいないにゃ!」
「……も、もう時間のはずでしょ」
星空、小泉、西木野さんだ。おそらく、走って来たのだろう。かなり息が乱れている。てか、西木野さんと星空が居るとは意外だ。まあ、小泉に連行されたのかもしれんが。
1年生組は、ステージに立つ穂乃果たちと、講堂内部を見渡した。
「あれ、お客さんは私たちだけなの?」
「お、凛たちの貸し切りにゃ」
「まったく、この2人は……。先輩方、ライブ見に来ました。あと、その曲をダメにしたら承知しませんよ。ある先輩が、私に頭を下げてまで頼んだんですからね。1年の私に頭を下げるなんて、本当変わった先輩でしたよ」
西木野さんの言葉に、穂乃果たちは息を呑む。
「じゃ、じゃあ、あんなに渋ってた西木野さんが作曲してくれたのは……あいつが説得して、なのか?」
「……翔ちゃん、私たちの為に。――――やろう!全力で!もう躊躇わない、ここまで練習してきたんだもん!」
穂乃果の瞳に覚悟が宿る。それは呼応して、海未とことりに伝染していく。
「穂乃果ちゃん……。うん、そうだね。今日の為に頑張って来たんだよね」
「私もです。やりましょう、穂乃果、ことり」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「皆さんこんにちは、音ノ木坂学院スクールアイドルのμ'sです!本日はお集まりいただき本当にありがとうございます!――――今日から私たちは、夢に向かって全力で駈け出します!聞いてください」
そしてライブが始まる。曲名は、
──START:DASH!!
始まった。穂乃果たちの第一歩が。
彼女たちの歌声で、ダンスで、表情で、観客を夢の世界に連れて行ってくれる。観客は少ないが、穂乃果たちには、今は些細な事でしかない。
客観的に見ても、ダンスは所々ずれてるし、動きもぎこちない。だが、彼女たちは笑う。そしてそれは、周りを笑顔に変える事ができる。彼女たちの想いがひしひしと伝わってくる。そう、客席は穂乃果たちに魅了されていた。
だが、絢瀬絵里だけは、何とも言えない表情をしていたが。何が彼女を、ここまでさせているのだろうか?
曲が終わり、講堂内部は拍手に包まれる。その拍手には、様々な想いがあった思う。まあ、俺の勘違いだったらアレだけど。
そして、後方から歩き出す、俺と絢瀬、東條先輩。
「生徒、会長……」
「ええ、そうよ。……これからどうするつもり?」
何が、とは聞かない。
だが、穂乃果は自信もってこう答える。
「続けます!」
「何故?これ以上やっても意味がないと思うのだけど」
絢瀬はそういうが、この程度の言葉では穂乃果は止まらない事を俺は知ってる。
「やりたいからです!」
そう言い切った。
「私たちは、もっと歌いたい!踊りたいんです!こんな気持ち初めてなんです!やってよかったと本気で思ってるんです!」
講堂に、穂乃果の声が響く。
「このまま見向きもされないかもしれない。応援だってしてもらえないかもしれない。でも、一生懸命頑張って、この想いを届けたい!いつか、いつか必ず、ここを満員にしてみせます!」
俺はニヤリと笑った。
「そういう事だ、絢瀬。本人たちはやる気だぞ」
「……勝手にしなさい!」
そう言って、絢瀬は講堂を後にした。てか、何となくわかったような気がする。絢瀬は、本当のダンス、挫折を知ってるから、穂乃果たちの行動を否定するのかもな。いやまあ、多分だけどね。てか、部の設立には6人必要なんだよね。あと1人かぁ。どうすっか?
「後藤君、後は頼んだよ」
「了解しました、東條先輩。あ、あの、絢瀬は――」
「エリチの事は、もう少しウチに任せて。でも、もしかしたら、後藤君の力が必要になるかも知れへんな」
「その時は任せてください。音乃木で初めての友人ですからね。それと、俺はずっとあいつの味方でもありますから、伝えといてください。一回言った言葉でもあるんですけどね」
「ふふ、りょうかいや」
そう言って、東條先輩は講堂を後にした。つーか、ドット疲れたんだが……。
「活動続行の祝勝会に行こうぜ!……もちろん、竜也の奢りな」
竜也は、俺の隣まで歩み寄る。
「ちょ、待て!オレは奢るって一言も言ってないからな。それに、5人分の金とか。てか、翔太も少し出してくれよ!」
「いやいや、お前が全部出せよ。今月は怪しんだよ!」
俺と竜也はそう言ってるが――、
「竜也君。翔太君。――――おねがぁい!」
ことりのお願い攻撃である。
「よしゃ!何処に行く?オレ、奢っちゃうぜ」
「おう、俺も出しちゃうぞ。何処に行く、ことりたちが決めてくれ」
変わり身が早い、俺たちである。
「……男って」
「……単純ですね」
……穂乃果さん海未さん。女子も例外じゃないんだからね。こうして、μ’sのライブは成功し、祝勝会に行く事になったのだった。
それを見つめる、小泉、星空、西木野さんの、何処か羨ましそうな視線を浴びながら。てか、黒髪ツインテールの子を見たんだが、気のせいか?
区切りが解らなくて長くなっちゃいました(-_-;)
次回から気をつけます……。ちなみに、部設立の人数は改変してます。
では、感想よろしくです!!