オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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聖人

時間は遡る。

めまぐるしく変化する戦場。アインズは決断を下した。侵入不可能となったエ・ランテルにいる子供達を見捨てると。

干渉不可能の領域にルベドだけが、桁違いの出力と頑丈さで闇の結界に穴を穿ち侵入に成功したが、穴はすぐさま塞がり援軍はルベドのみとなった。

闇の中、誰の犠牲もなく生還。そんな、甘い考えはギルドマスターのモモンガが許さない。

シャルティアとルベドの実力を信頼して待つしかない。

 

 

「……これよりギルド防衛戦を開始する。敵は目前だ。過去に撃退した1500人のプレイヤー以上の脅威と思い気を引き締めろ」

 

 

これは確認作業。僕はもちろん今一度己の緊張を高める儀式。地下10層『玉座』にて、頭脳陣との最終協議の結果を通達する。

 

 

「地下1〜3層『墳墓』を切り捨てる。デストラップに引っ掛かり終えるのが望ましいがそう簡単にいくまい。『墳墓』を犠牲に敵の構成を見極め弱点をつく。オーレオール・オメガ、分かっているとは思うが」

 

「はっ、賊どもが転移門を利用しようとすれば、隔離部屋に飛ばしスキル空間断絶の重ねがけで永久に閉じ込めてみせます」

 

 

オーレオール・オメガ。桜花聖域の領域守護者でもあり、プレアデスの末妹level100の人間(NPC)である。

人間は強い。弱者から強者の差が激しいとはいえ生物として逃れられない欠陥がある――――――酸欠死。こればかりはどうしようもない。

 

 

「最終防衛ラインを地下8層『荒野』とし、地下四層より本格的に向かい打つ。ナザリックのギミックを最大限に活用しろ」

 

 

 入口はそこそこのゴーレムを潜ませてある。

 来るなら来い、我々は人類に仇なす極悪ギルドアインズ・ウール・ゴウン。ハッピーエンディングの英雄譚なぞの糧になると思うなよ。

 アインズ・ウール・ゴウンを不動の伝説へ。

無敗を更新しろ。勝つのは"我々"だ。

故に役者が表舞台に君臨する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処までも静謐に、嚇怒の炎を瞳の奥にたぎらせた男がナザリック地下大墳墓を眼下の視界に収める。

 ここから先は真に選ばれた強者のみの領域。

 無駄な犠牲を払わずに、必要最低限の少人数での戦い。

 "英雄"クリストファー・ヴァルゼライドは深く、静かに、言霊を発した。

 

 

「……この世は素晴らしい。故戦う価値がある。化け物どもの好きになどさせんよ」

 

 

 王者の如く確かな覇気を滲ませ、英雄は死地へ踏み出す。追従するは二人の傑物。

 

 

「閣下のおっしゃる通りだ。この世はかくも素晴らしい……故にこれまでの積み重ねてきた数多の犠牲に報いるべく勝たねばならない」

 

 

 光を崇拝する巡礼者、"審判者(ラダマンテュス)" ギルベルト・ハーヴェスは魔王の犠牲となった対等な人間たちの死を何ら憚ることなく嘆き、必ずやより良い未来へ目指すべく勝利を願う。

 

 

「堅物共が、少しはユーモアのセンスを磨いてはどうだ?端的に言って会話だけで疲れるんだよこのアホウが。部下も連れず国のトップスリーが最前線とはな」

 

 

 裁きの天秤"女神(アストレア)"チトセ・朧・アマツはそんな苦もなくこの変態(二人)に付き合える自身に、やはり自分も改めて『そちら側』なんだと突きつけられているかのようだと自嘲する。

 

 

「アオイもアルバートも我が誇るべき優秀な副官だ。委細問題なく全権を預けられる」

 

「ヴァネッサ嬢も別の戦線を指揮してるが……別れたタイミングを考えるとエ・ランテルに辿り着けているかは怪しくなる。まあ問題ないだろう」

 

 

 要するに信頼する人物が自分の後任として後は頑張ってくれるから委細問題なしと。

 チトセも似たようなものだ。あいつ等が居れば第七特務部隊・裁剣天秤(ライブラ)は安泰だ。それはそれとして、愛する男を残して死ぬ気は更々ない。

 

 

「初心のままでは終わらんぞ……待ってろよゼファー、悪の親玉を滅ぼした暁には抱いてやるッ」

 

 

 獣の眼光を滾らせ、絶対に逃がしはしないと上唇をペロリと舐めた。

 人類最後の守護者。唯の人間の三人が、異形の魔王軍の城へ挑む。

 

 

「入口を厳重に警備するのは何処も当たり前だ。ああも入って下さいと誰一人門番もいないとかえって怪しいぞ。……でかい花火を打ち上げようじゃないか」

 

 

 先にヤラせてもらうぞ。殲滅は得意中の得意、罠ごと一掃する。

 

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――――――我らは煌めく流れ星」

 

 

 その言葉に燃えるような熱を乗せて、極大の詠唱が紡がれた。

 

 

「ああ懐かしき黄金の時代よ。天地を満たした繁栄よ。

幸福だったあの日々は二度と戻らぬ残照なのか。

時は流れて銀、銅、鉄――――――荒廃していく人の姿、悪へ傾く天秤に私の胸は切なく激しく痛むのだ 。

人の子よ、なぜ同胞で憎み合う。なぜ同胞で殺し合う。

正義の女神は涙を流して剣を獲る」

 

 

 鳴動する大気。渦巻く暴風。強烈な気圧変化に伴って空間さえも撓み、軋む。

 

 

「ならばその咎、この手で裁こう。愛しているゆえ逃さない。

吹き荒べ、天罰の息吹。疾風雷鳴轟かせ鋼の誅を汝へ下さん――――――悪を討て」

 

 

 裁きを平等に下す天秤(ライブラ)の頂点たらしめる真骨頂が――――――今、ついに。

 

 

超新星(Metalnova)――――――無窮たる星女神、掲げよ正義の天秤を(L i b r a o f t h e A s t r e a)

 

  

 チトセ・朧・アマツの星辰光。

 気流操作能力。大気という普遍的な事象を統べる。

 竜巻の創造に始まり、果ては積乱雲の発生による雷撃など、これを発現している間の彼女は生きた気象兵器と化す。高出力、並びに全方位に満遍なく優れているという理想的な万能型ゆえ、あらゆる場面での活躍が可能。

 チトセが持つ蛇腹剣との併用で、多数の相手にも難なく対処できる。さらに自身に風を纏わせることで接近戦でのパワー不足を補ったり、部下に星光を付与させて強化するといったサポートまでこなす。

 創造された暴風が地表の墓石ごと聳え立つ霊廟を削りぶち抜いていく。

 墓地の中には乱杭歯のように乱雑に墓石が並ぶ一方、美術的価値の高い彫像も並ぶなど混沌としつつも、非常に薄気味悪い雰囲気となっていたナザリック地下大墳墓『表層』を一撃を持って粉砕する。

 

 

「――――――進軍だ」

 

 

 地下1~3層『墳墓』は入り組んだ迷路のようになっており、道幅が狭い構造を利用し伸びる積乱雲が暴風と共に通路の安全を確保する。

 

 

「……静かだ。明らかに」

 

「誘い込まれているのだろう。罠だろうな。それでも進むしかない。分かっていたこととはいえ、ままならんものだ」

 

 

 それでも、ヴァルゼライド閣下なら必ずや踏破される。神々の試練を、奇跡を、人間の精神力のみで乗り越えると、光の巡礼者は心の底から信じている。

 

 

「……やはり城や砦と異なりダンジョンとして挑んだ方がよさそうだな」

 

「ダンジョン攻略の経験はないが攻め方はそう変わらんだろ?」

 

「罠が悪質に増えるし凶悪だ。ぷれいやー()の居住と考慮すれば即死はまあ当然あるだろう。それとそこは止めた方がいい。私ならそこで嫌がらせをする」

 

「……つくづく嫌な奴だよ審判者(ラダマンテュス)。誠に……身の毛がよだつほど誠に不本意だが罠の類は任せる。地下何層あるかおおよそになるが、一二層はこのまま強行する。ヴァルゼライド閣下も問題なかろう」

 

「ない。貴様らの実力ならば魔神にも問題なく通用する、好きに行くがいい」

 

 

 御大将から承諾は貰った。

 光を先導する貴重な体験だ丁重にエスコートしようじゃないか。

 英雄譚に相応しい語り継がれる伝説の物語。

 勝者が伝説に名を連ねる。

 

 聖王国の古い伝承には"聖戦"と呼ばれる神話の戦いが存在する。

それは預言であり、襲いくる災厄である。

 最終戦争。終末の日。神々の黄昏。

 解釈が数多と提唱されている"聖戦"。

 単純な宗教戦争という意見もあるが、スレイン法国が危険視する災厄の預言――――――『破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)』の出現。

 聖戦と破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を同一視する意見もある。

 魔導王アインズ・ウール・ゴウンこそが破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)なのか?預言の解釈を間違ってはならない。先人たちは確かな危機をメッセージとして子孫に残したのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石は智謀の王アインズ・ウール・ゴウン様。戦力に過信し『表層』に戦力を集中させていたら一網打尽にされてたわね。地下1〜3層を切り捨てたのも敵の分析は勿論、狭い迷宮ではあの災害は回避不可能。

 そして、何よりも消耗した守護者達の時間稼ぎ。失った魔力は自然回復を待つしかない。とくにマーレ様の魔力は空に等しい。

 侵入者は一層二層三層とぬるま湯に馴れたときが終わり。そのまま慢心しようが警戒しようが四層の仕掛けは絶対に人間ならば絶命する。よしんば生き残ったとしても五層六層七層――――――八層で詰み。

 黄金は微笑む。子犬との幸せを台無しにする愚かな人間よ滅びろ。

 嗚呼死ね死ね死ね死ね戦局も分からず神に喧嘩を売る馬鹿共が。

 それ故に。

 

 

「勿体無い、彼は英雄。かつて王国最強と謳われていたガゼフ以上に英雄に相応しく比べることも比較する行為そのものが愚かなほど彼は英雄として完成している」

 

 

 ニグレド様の魔法で覗いただけでこの煌めく覇気。

 直に会えば誰も彼から目が離せない。

 だからだろうか。乾いた喉も滲んだ手の平も気にならない。

 彼こそが私と同類。

 人間でありながら内に怪物を飼う狂人。

 精神が違う。天然ものだ!!

 

 

「彼こそが最大の脅威。クライムの為にも殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと……」

 

 

 愛しい男が、眩い黄金から煌めく光に目移りしちゃうでしょ?

 男の子は好きだもんねああいうのが。

 そうか――――――分かっちゃった。 

 

 

「同族嫌悪……?この私が?そんな人間の同じ回路がこの頭に機能といて眠ってたなんて」

 

 

 あは……あははははははっはははははははははっはははははははははははははははっははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

 

 

「死ね」

 

「ねえ大丈夫?体調が優れないなら休んでていいのよ?」

 

 

らしくないと、ニグレドが心配そうに声をかける。

 

 

「大丈夫ですニグレド様!むしろヤル気が溢れんばかりですわ!絶対に殺しましょう。それこそが死の王に捧げる祝福ですわ」

 

 

 堕ちろ英雄。

 人間に貴方の光は劇物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 反粒子の結界に穴を穿ったルベドは、中の状況に困惑する。

 肝心のシャルティアが何処にもいない。恐怖公もユリも皮一枚で助け出す事が出来た。

 仲間とは初対面が多いが、情報に記憶されている心優しい彼女となら仲良くやって行けそうだ。

 

 

「アイツら……殺してやるッ!!」

 

 

 ……戦争だ。人も変わるさ。けどねユリ・アルファ。この場の全権はアインズ・ウール・ゴウン様の名の下に私にあるの。だから、勝手に殺そうとしないで。

 

 

「助けられたねお嬢ちゃん(レディ)。この借りは必ず返させてもらう」

 

 

 恐怖公――――――頭部は胸部の下に隠れる。口には大きなアゴがあり、食物をかじって食べる。複眼の機能はあまり良くないが、長い触角と尾部の尾毛がよく発達し、暗い環境下でも周囲の食物や天敵の存在を敏感に察知する。脚がよく発達し、走るのが速い。例えばワモンゴキブリの走る速さは 1秒当たり1.5m体長の40~50倍と言われている。成虫には普通は翅が2対4枚あるが、前翅だけ伸びる種類、もしくは翅が全く退化してしまった種類もいて、これらの種類は飛翔能力を欠く。また、翅が揃っている種でも飛翔能力は低く、短距離を直線的に飛ぶ程度である。「アブラムシ」(油虫)の別名もあるように体表に光沢をもつ種類が多いが、種類によっては光沢を欠くものもいる。光沢をつくる脂質は、ヘプタコサジエンを主成分とする。

 二足歩行する紳士な彼には関係のない情報だ。

 インプットされているのは情報だけの筈なのに何故だろう……恐怖公とその眷属は初めて出会う仲間なのに……一匹残らず消し炭にしたい(エラー)

 

 

『テリャッ!』

 

 

 烈震灼槍(ブリューナク)はその突撃槍に、聖なる光輝を纏わせて。

 豪槌磊落(ミョルニール)はその鉄槌に、全身全霊の膂力を込めて。

 縛鎖姫(アンドロメダ)はその鋼糸を、罠を張り巡らせ共に合わせて放つが――――――

 

 

「動かないで、加減を間違えるの」

 

 

 絶対防御は顕然。煌めく星辰は無限を踏破するには出力も相性も何もかもが力不足。防衛機構の反応速度を上回らない限り、ルベドの意思に関係なく全てを防ぐ。

 level差による無力化を無効にする星辰は、結局の所ある程度拮抗した関係である事が前提。どう転ぶか分からないという天秤を傾けるのが策であり状況。最初から絶望的に開いている差をそれらで埋めることは出来ない。

 

 

「どういうつもりかなお嬢ちゃん?戦う気がないならお姉さんの邪魔しないでくれる?」

 

「話し合いがしたいの。何方か一方が全滅する殺し合いより平和に終わる方がずっといい。互いにもう十分傷つけあった……退いてほしいの」

 

「……それ本当に言ってるの」

 

「えぇっと……シャルティアは私が持ち帰る。アインズ様にもお願いする。だから……ッ」

 

「すまんな幼女。そうではないのだ」

 

 

 立場がある。使命がある。仲間の命を背負い努力と叡智を集結させて今がある。

 

 

「怖いのです。あなた方は恐ろしいまでに強く冷酷。魔導王の統治は合理的に、従うものには幸福を間違いなく齎したでしょうね」

 

「皆仲良く種族も立場も関係なくアインズ・ウール・ゴウンの名の下に永劫の繁栄が約束されるでしょうって……馬鹿じゃないの。私とブラザーは神を信仰する騎士として言わせてもらうわ。糞くらえよ!!」

 

 

 神様に見返りを求めてはならない。スレイン法国も他の国も困ったら神頼み。助けてかみさま~ってみっともない。

 

 

「神は何も差し伸べない、ただ愛してくれるだけよ。だからこそ我々は庇護に置かれた家畜ではなく、人間として胸を張り生きていられるのではないか。頑張った理由も結果も、時には運否天賦さえ、不条理に感じるものがすべて……人間へとあるがままに与えてくれた愛である」

 

 

 本当の神の奇跡など不要。魔導王の庇護下でしか生きられぬと誰が決めた?

 

「人間だけに人を救う素晴らしい喜びを許してくれたこと、これ以上の恵みが一体どこにあるという?困っている誰かに手を伸ばすこと……ただそれだけで幸せになれるのだぞ?」

 

 

 誰かが困っていたら助けるのは当たり前。

 

 

「おお、晴れるや。この世は誠、神の慈愛に満ちておるわ」

 

 

 ブラザー・ガラハッドは、そんな風にどこまでも誇らしげに、この世界の素晴らしさを語るのだった。 

 

 

「……神を求めないの?」

 

「おうともさ!!」

 

「勝てないと分かっていても?」

 

「死ぬのは困る。だがそれは神でも、ましてや他者の責任はあるまい」

 

 

 生涯を信仰に捧げたブラザー・ガラハッドの真理。

 ナザリックの下僕にとって信じがたい信仰。

だからこそ――――――

 

 

「人間は……すばらしい」

 

 

彼こそ聖人。天使より天使らしく。人々を英雄のような力ではなく優しさをもって人としていきられる道を示す。

カグラの影響か、己の真理。人生の答えを持つ優しい人間に、ルベドはとことん弱い。

パパと開きかける口を閉じる。

言ってはいけない。

言ったら最後、私が私ではなくなる。

 

 

「……一撃で終わらせる」

 

 

涙をこらえ、ルベドは拳を握る。生きているとはすごいこと、相手も私も――――――守りたいもののために、痛みを堪えるのだ。

さぁ終わらそう。

 

 

「え?」

 

 

遠く離れた二つの生命反応が重なり――――――今、ついに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここからが本番。
ナザリック崩壊まで――――――


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