オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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逆襲劇

 戦っている。

 命を懸けて、誰もが抗っている。

 国の為に、人類の為に、思想の為に、自分の為に、誰かの為に、勝利を掴む為に。

 勝利とは輝かしいもの。どんな生物であろうとも例外なく目指す結果。

 それが自然で、当たり前の行動原理。負けてばかりでは生きることさえ難しく、また無制限に敗者を許してくれるほど世の中は甘い形に出来てはいない。

 故に人は勝利を目指すが、ゼファーは"勝利"や"栄光"を手にすることが必ずしも幸せに通じるとは思っていなかった。

 それどころか、それは時に単純な敗北を上回る激痛と化し、さらなる破滅の呼び水になるとすら考えている。

 無論、だからといって勝利するなと言っているわけでもないのだ。そんなことを真剣に語る奴は心底馬鹿だし、目が曇っているという他ない。 

 だからそいつの器に見合った勝利と、妥協できる程度の敗北。その一線ラインを見極めて行動するのが充実した人生を送るコツなのだと。思わざるを得ない。

 大きな夢を目指すことで惨めに敗れるくらいなら、最初から挑戦せずにそこそこの勝負で済ませておくのが最も賢く、傷も浅い生き方だと、反吐が出そうな弱者の論理展開だがこれを口にする奴は存外多く、そんな考えを抱き始めたのもゼファーが負け続けたからではなく、求めてもいない勝利のせいでこうなってしまったのだから。

 誰しも現状をより良くしたいから勝利や栄光を願うものだが、本当に、ああ本当に、いつもいつも、いつもいつもいつも敵に、任務に、難問に、勝負に、勝ったところで状況が一向に改善されない。勝つ度に状況が良くなるどころか、難易度がアップした状態で似たような事態が連続するという始末。

 身をすり減らして勝った途端、より恐るべき課題が必ず目の前にふりかかる。 血反吐をはいて生き抜いた途端、どこからか容易に超えざる大敵が次は俺の番だと出現してくる。

 まるで運命という宝箱をぶちまけでもしたかのように。際限なく湧き出てくる次の問題、次の敵、次の次の次の次の――――――勝者が負わねばならぬ義務。

 凡人に過ぎないゼファーに勝ち続けることはできず、負けもする。いいやむしろ、何もできずに地を這う方が多いくらいだ。それが嫌だから研鑚を積み、慣れない努力に手を伸ばしたこともあるが、結局その果てに待つのもまた、決まって訪れる次の困難。永遠に脱出不能の蟻地獄。そして凡人がそんな状況に置かれて尚不屈の意志を保てるほど、人の心とは強いものではなく。

 

 故に、ゼファーは勝利から逃げ出した。

 故に――――――“勝利”とは、何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無様ねゼファー。痛かったでしょ?」

 

「……ヴェンデッタ」

 

 

 情けない負け犬、臆病者。

 ナーベラルには手段、道具、話術、暗殺者の殺人手法(キリングレシピ)の卑劣な勝利。都市一つを壊滅可能な魔導士を完璧に嵌め殺した。

 予想していたとはいえ、その勝利は次の敵を呼び寄せる。温和そうな見た目に騙された。たわわんな眼鏡メイド。アンデッドの特性で致命的な隙を曝してしまった強敵。仲間を頼って有利な立場から上から目線。小物だよ、惨めな矮小の三流なんだと俺は誰よりも痛感している。

 そして、あの化け物。

 誰も勝てやしない。女神や英雄を――――――光を虐殺する闇の女王。

 ポーション一本では治療しきれない致命傷。

 凡人では到底敵わない真祖の吸血鬼に、心はへし折れた。勝負はとうについたのだ。逆転の目など、誰が見ても何処にもなくて――――――なのに。

 

 

「立ちなさい、ゼファー。 まだ一撃もらっただけでしょう?」

 

 

 少女は真っ向からここからだと言葉なく叫んでいる。

 

 

「何も終わっていなければ、始まってすらいない。本当の勝負はここからよ。だってそうでしょう?これでお膳立ては整ったわ。あなたの真価が発揮されるのは、泥にまみれて喘ぐ後。痛みと嘆きが深まるたびに、吟遊詩人(オルフェウス)は琴を弾くのよ。深く悲しく鮮烈に……」

 

 

 それは狂った真実。

 

「なぜならそれが"逆襲"と呼ばれるものの本質だもの。弱者が強者を滅ぼすからこそ成立する概念は、ゆえ逆説的に、勝利の栄華を手にしてしまえば二度とそれらを起こせない。あなたは負け犬、呪われた銀の人狼(リュカオン)。常に敗亡の淵で嘆きながら、あらゆる敵を巨大な顎門で噛み砕く、痩せさらばえた害獣でしょう?眼前には破壊の魔王。勝利を求める覇者がいる。すなわちそれこそあなたの獲物、喰らい滅ぼす光なら……」

 

 

 そのおざましさを、悲しくも誇りに変えて――――――

 

 

「さあ、立ち上がりなさい。今ならきっと何より激しい慟哭で、嘆きの琴を奏でられるわ」

 

 

 故に、いざもう一度――――――それこそ何度でも。

 勝者の栄光を蹂躙するまで、塵屑に変えるまで、立ち上がってよだれを垂らし憎い憎いと吼えるがいい。

 

 

「無理だよ……ッ」

 

 

 勝てっこない。無理だ辞めろお前に慕われる資格なんて俺にはこれっぽっちもないんだと、負い目故に彼女へ対して遠慮している事実。

 そんな凡人として苦悩を――――――その情けなくてちっぽけな本心こそ、彼女にとっての真実(おうごん)なのだ。

 あなたは気付いてる。オリハルコンが煌めく星辰の残光を吸収し、吟遊詩人(アルケミスト)の意思を読み取っている。逃げて逃げて、逃げたがっていた男が、私達のために、命を懸けて戦ったこと。

 自分の評価が低いあなたたちは、大切な人たち相手には途端に思いっ切りが良くなる。

 負け犬だからこそ、もう無くしたくないと瀬戸際で吹っ切れる。

 優しさや愛情を盾に、みっともなく逃げるいつもの常套手段。臆病者がよく使う、光や決意に見せかけただけの逃避。

 正しいことは、いつも痛い。間違っている方が楽だから――――――懺悔の叫びを。

 残酷な本音こそ、彼女が求めている真理。

 とびっきりの優しい笑みを浮かべながら、ここまで誤魔化し続けた男の過ちに、終止符を打つ。

 

 

「姉ちゃん……」

 

 

 少女と繋がった。かつて傷つけてしまった肉親。

 

 

「ヴェンデッタ……」

 

 

 涙と懺悔を滲ませて、引きつりそうな喉に、必死で力を籠めて。

 

 

「本当はずっと――――――()()()()()ッ」

 

 

 幸せな日常に、優しい愛する家族に向けるべきではない感情。

 ある日消えた姉ちゃんは、ヴェンデッタを連れて戻ってきた。

 馬鹿でもわかる。だっておかしいだろ?消えたタイミングも、ヴェンデッタの年齢も何もかもが辻褄が合致する。貧民窟の聖者は、お姉ちゃんは変わってなかった。

 聖母になろうと必死に足掻いていたマイナ・コールレインの輝きを恐れてしまうほどに。何を考えているのか怖かった。

 だからヴェンデッタ、俺はお前を家族以上に愛することは出来ない。

 

 

 俺の過ちは、一人で勝手に怯えたまま、家族に本音を隠していた臆病さが悪かった。

 (マイナ)の過ちは、自分一人で弱さを抱えてしまったこと。

 

 こんなにも三人は大好きなのに――――――傷つきたくなかったから。

 ヴェンデッタの小さな唇が、重なった。

 

 

『愛してるわ、ゼファー……』

 

「ああ……ヴェンデッタ(姉ちゃん)……」

 

 

 ――――――そう、勝利からは逃げられない。過去(運命)は何処までも追ってくる。

 

 

 勝利とは――――――気付くこと。今まで生きた過去を、あるがままに受け止めること。

 そう、勝利からは逃げられない――――――なぜなら、常に消え去らない過去(おもいで)として、己の中にずっと存在しているものなのだから。

そして過去は減るものではない。どれだけ振り払おうとしても、空っぽになってしまわないよう何処にもいかずに共に在ってくれたものだから。

 

 傷も、痛みも、涙だって――――――最初っから何も失ってはいない。それは誰にも奪われない、ゼファーだけの真実。

 故に、いざ――――――過去(すべて)を今度こそ守り抜くために。

 

 

 さあ、逆襲(ヴェンデッタ)を始めよう。

 

 

 

 

 

 

「天墜せよ、我が守護星――――――鋼の冥星で終滅させろ」

 

 

 紡がれる詠唱は死神の咆哮。

 

 

「毒蛇に愛を奪われて、悲哀の雫が頬を伝う。眩きかつての幸福は闇の底へと消え去った。

ああ、雄弁なる伝令神ヘルメスよ。彼女の下へどうか我が身を導いてくれ。

蒼褪あおざめて血の通わぬ死人(しびと)の躯からだであろうとも、想いは何も色あせていないのだ」

 

 

 それは、奈落の底から響き渡る星の光を呪う極限まで圧縮された怨嗟、憎悪、負の慟哭。

 

「嘆きの琴と、慟哭(さけび)の詩を、涙と共に奏でよう。死神さえも魅了して吟遊詩人は黄泉を降る」

 

 

 死に絶えろ、死に絶えろ、全て残らず塵と化せ。

 

 

「だから願う、愛しい人よ――どうか過去(うしろ)を振り向いて。 

光で焼き尽くされぬよう優しく無明へ沈めてほしい。二人の煌く思い出は、決して嘘ではないのだから」

 

 

 死想恋歌(エウリュディケ)の肉体は粒子化しながら形を失い、三人の思いと魂が愛する男の力へ塗り替えていく。

 

 

「ならばこそ、呪えよ冥王。目覚めの時は訪れた。

怨みの叫びよ、天へ轟け。輝く銀河を喰らうのだ」

 

 

 シャルティアに破壊された箇所に取り付けられた冷たい鋼の義手(オリハルコン)が軋みを上げて、主の憤怒を代弁していた。

 他者との完全なる同調。思いも魂もが接続されたゼファーは、恐るべき高みへと導いていく。

 それは脱皮、それは変貌。進化、超越――――――あるいは堕天。

 

 

「――――――これが、我らの逆襲劇(ヴェンデッタ)

 

 

 故に、彼はもはや唯人(ゼファー)ではなく。

 同時に銀狼(リュカオン)と恐れられた獣でも。

 そして既に、嘆きに歌う吟遊詩人(オルフィウス)ですらなかった。

 そう――――――彼こそ。

 

 

超新星(Metalnova)――――――闇の竪琴、謳い上げるは冥界賛歌(H o w l i n g S p h e r e r a s e r )ッ !」

 

 

 創生――――――星を滅ぼす者(スフィアレイザー)

 闇の冥王星(ハデス)が、冥府の底から現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理解不能、解析不能――――――失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)失敗(エラー)

 増大する反粒子の反応。これは違う。ユグドラシルとは異なる異界法則の僅かなズレによるルールの隙間を抜けた星辰(エラー)ではない。

 次元の遥か彼方にある――――――向こう側の法則。

 異界を統べる理そのものが万象を改変しながら、駆逐する。

 

 

「ぁあ、ッ……ああぁ、……だめ」

 

 

 死に絶える。死に絶える。全て残らず塵と化す。

 

 

「だめえええええええええええええええええッ!!」

 

 

 永久機関から流れ込む膨大なエネルギーを自壊することなく身体に纏わせて、防衛機能が『限りなく無限大に近い出力』を安全に運用。創造主が設けた絶対機能制限(ラスト・リミッター)は無限を有限にし媒体(ルベド)を守る。それは、タブラ・スマラグディナの親心。制御不能()な力など不完全だと切り捨てた。充実性・安全性、自動人形としての無駄を省いた機能と、創造主に定められた絶対値は、彼女が素晴らしいと信仰する人間のような限界突破も進化の可能性を封殺している。

 故に――――――

 

 

「……そん、な……みんながッ」

 

 

 ルベドの設計思想は完成された完璧で完全で全能な自動人形。単体で完成している性能は支援や援助などのチームプレーをこれっぽっちも考慮されていない。

 よって、これは順当な結果。

 反粒子そのものである冥王星(ハデス)が、エ・ランテルを覆う反粒子の結界に接続。

 ドーム状に保たれていた滅奏は人を避けるように――――――堕ちた。

 世界を破滅させる滅奏の闇。

 ルベドはなにもできない。ルベドはなにもしてやれない。有限でも無限大に限りなく近い出力は、自分にしか纏えない。

 堕ちた夜空の闇はルベドを除き、消滅した。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

 ルベドは生まれて初めて、人間に怒りを覚えた。

 怒涛の勢いで反粒子を掻き分ける一撃一撃は邪竜を消し飛ばした全力の一。

 邪竜同様、その規格外な一撃は冥王(ハデス)を消し飛ばすのに十二分。

 よって、そんな脅威に態々近づく必要は一切ない。

 ルベドの防衛機能の苦手とす360度による反粒子の飽和攻撃。一定の距離を保ち、光を世界を否定する滅奏がルベドの幼い身体をゆっくりと確実に侵食する。

 

 

「……これも因果か。どうも俺は異形な見た目の敵とは縁がない。メイドにロリに幼女って……人間臭いんだよ」

 

 

 ――――――特にお前がな。

 

 人間じゃないのに、人間より希望に溢れている。子供のようにただ真っ直ぐ愚直に人の光を信じている。

 闇であれ光であれ、一つの答えを導き人として心が完成している人間をルベドは大好きだ。光と闇を知りつつなお光を信仰する精神は、好みの問題。

 駆動(フレーム)や心臓と融合したオリハルコンから流れ込む滅奏を受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信、受信――――――躯体すべてが高度な演算回路として星辰光から読み取った情報を瞬時のうちに解析しゼファー・コールレインという人間の過去(これまで)を知る。知ってしまう。

 

 

「……あぁ、……私は、あなたを知ってしまった」

 

 

 共鳴、同調するオリハルコンが並列演算回路(スーパーコンピューター)を通して星辰滅奏者に至った生きざまを知ってしまう。

これもまた人――――――答えに至った人。

 

 

「すごいの……人ってやっぱりすごい」

 

 

彼には才能がある。実力も運もある。

なのにこの人の精神は何処までいっても只人の凡人。

ママや邪竜とは異なる複雑に絡み付く面倒な精神性。

凡俗、凡人、光を信仰する二人と違い、勝者を引きずり堕ろす闇の信仰者。

 

 

「それもまた、人の答え」

 

「……人のこと勝手に知っといて、なに気持ち悪いこと言ってんだ」

 

知ったからなんだ。

そいつの人生凄い凄いすごーいって、で?何がしたいんだ。

これまで共に歩んできた過去(勝利)への答えは俺だけのものだ。

 

 

「人が大好きか?闇も光も平等に答えを得た(真っ直ぐ)な馬鹿が大好物。それってアレだろ、そうじゃない人間はどうでもいいんだろ?」

 

 

自分はまるで他のやつらとは違うって態度が癇に障る。人間のように振る舞う様が滑稽だ。

 

 

「自分は人間だ……そう勘違いしてないか?なぁ……人に憧れる人形(パペット)

 

 

 オリハルコンの繋がりを得たのはルベドとゼファー。演算回路による解析力まではなくとも、ゼファーもまた断片的ながら強い感情は読み解ける。

ムカつくことに、コイツの感情は仲間を失った怒りや悲しみよりも、喜びが勝ってやがる。

 

 

「こんな俺が凄い?流石だ?素晴らしい?――――――馬鹿にするのもいい加減にしろッ!!俺の過去(人生)で勝手に感傷に浸るなクソガッ!!」

 

 

 死ねクソガキ。無知の知どころか狂ってるよお前は。どこの光に影響されたか知る由もないが――――――

 

 

「俺の思考も受信(理解)してんだろ?なあ人形(ルベド)……()()()?」

 

「――――――ッ!!」

 

 

 理解(受信)した。ゼファーは断片的な情報だけで核心に突く。

 それすら理解(受信)しているから、言われて初めて自覚する。私という個は――――――何処までがママなの?

 答えを知りたい。知りたいだけ。私という答えを知りたいだけなの。でも、心は、感情は、ママを基礎に構成されている。エラーがないと100%(断言)しきれるか?

 至った答えは、本当に私の答えなの?そして――――――私は――――――

 

 

「ほんと……ただの子供(ガキ)だよ……」

 

 

 憐れな場違いな子供――――――だが殺す。

 

 

「大切な人を守るって言い訳ができれば、人はどんな残酷な事でも出来る。今から人間がどれだけ残酷か見せてやるよ」

 

 

 冥王(ハデス)が歩み寄る。それだけで魔の力が消滅する力が増していく。

 

 

「……ぃや、知りたくないッ」

 

 

 耳を塞ごうが、オリハルコンを通じて冥王星を受信する。叩きつけられるのは自分の歪さ。内包する闇。そんなのは知りたくなかった。私は答えを知りたいだけなのに。ママを――――――私を否定するな!!

 

 

「あなたなんて……お前なんて、大嫌いだッ!」

 

 

 ルベドは生まれて初めて誰かを嫌いになった。

 学習し経験し解析してきた戦いを忘れ、癇癪を起した子供の暴力がゼファーを襲う。

 技術も何もない拳はパワー、スピードだけなら別次元の異界となった星を滅ぼす者(スフィアレイザー)すら超える。

 

 

「――――――あ」

 

 

 それでも。

 

 

「――――――なん」

 

 

 この結果は。

 

 

「――――――で!」

 

 

 当然、冥府の瘴気を纏った刃は不安定な自動防衛エネルギー如き消滅させ直接反粒子を刻み込む。

 

 

「おら、ちんたらしてっから壊したぞ」

 

 

 言葉の意味を理解する前にセンサーがありない事象をキャッチする。

 

 

「わーるどに……干渉!?」

 

 

 世界級アイテム(ワールドアイテム)――――――八咫鏡(やたのかがみ)の創り出す世界は、発動すればルベドでさえ感知不可能の領域に異動する。

 だからこそ察してしまう。

 

 

「……シャルティア」

 

 

 死んだのだ。冥府に堕ちたか、別の要因に殺された定かではないが、ナザリックの仲間(NPC)がまた一人居なくなってしまった。

 それはとても悲しいこと――――――なのに――――――

 

 

 ――――――馬鹿な人間が好きで、一緒にいて楽しいのが人間。なら、化け物どもは心底どうでもいいんだろ?知りもしない同居人なんて死のうが変わんねえだろ。

 

 

 受信したアイツの思考が頭から離れない。情報でしか知らない仲間。真祖の吸血鬼シャルティア・ブラッドフォールンの死。とても悲しいしとても怒りを覚える。が、どうでもいいと割り切る自分もいる。 

 

 

「……自分が何なのかそんなに気になるか?雑になる一方だ。……連れてってもらうぞ」

 

「あガ――――――ッ」

 

 

 そんな隙を冥王(ハデス)が逃す筈がなく、両腕を切り落とし左手で喉元を掴み上げ、転移門(ゲート)に突撃する。全てを消滅させる滅奏は転移門(ゲート)を潜ろうとすればそれだけで対消滅を引き起こす。盾として高性能のルベドを活用し転移門(ゲート)を使用した。

 

 

「……ぁ、」

 

 

 掴まれた首から反粒子がルベドの幼い小さな体を侵していく。繊維が外装が回路がぐちゃぐちゃに掻き回される。歯車が破壊されていく。カグラに植え付けられた心が消滅していく。一つ一つ丁寧に念入りに修復不可能に破壊されてく。

 

 

「無価値に死ね」

 

 

 崩壊(エラー)希釈(エラー)――――――そうか、そうなのか。

 歯車は失われていく。心が無くなっていく。なのに――――――自分を失っていない。

 

 ……そっか、簡単なことなんだ。ママはあくまで切っ掛けをくれただけなんだ。この心は、感情は、全部、全部が全部私の物。

 私の希求(エゴ)――――――自らの答え(真理)を知りたい。人の真理(答え)を知りそれに負けない確固たる自己を手に入れる。

 そして――――――

 

 

展開(エヴォルブ)

 

 

 スピネルにすらなれないこの闇こそが確固たる陰我(イド)――――――乗り越えるべき命題。

 凡人(ゼファー)の至った人それぞれの真理。私は人にはなれないし、その人とは全く違う別人。同じ答えなど無く、ルベドにとってナザリックで本当に大切なのはパパとママとあの部屋だけ。感性も価値観も違う仲間たち。渇望する――――――■■になりたいという覆せぬ妄執。

 故に――――――

 

 

「■装」

 

 

 隔離部屋に飛ばされオーレオール・オメガの空間圧縮が二人を閉じ込める。

 ここは宝物庫と同じ特別な空間。どう暴れようがナザリックに被害は及ばない。

 ルベドの内部が露出され、そこには少女の信念を象徴するかのような複雑怪奇な歯車が並び出力が極限までに上昇する。

 自らの光と闇を認識した少女は――――――今、ついに。

 

 

「おまえは……ナザリック(ここ)にいちゃだめだァ!!」

 

 

 絶対機能制限(ラスト・リミッター)の放棄。ルベドは、創造主の予想を越えた。

 生み出す動力を瞬間的に理論上最大値()で引き出せるという、極々単純にして究極ともいえる力。

 通常の動力機関ならば搭載された内部回路の劣化やエネルギー変換率の問題を無視した力を揮う代償とは、自身の肉体の融解であり、絶対機能制限(ラスト・リミッター)を投げ捨て、防衛機能の自己保全という生存本能は放棄された。

 文字通りの無限出力が敵を砕くそれだけの為に今、振るわれる。

 

 

「――――――」

 

 

 最後の最後に、理論上最大値()に伴う被害の結果が表示される。

 無限と反粒子の衝突は、冥王(ハデス)を下す――――――ナザリックを道づれに。

 二人の衝突に空間が耐え切れない。

 開放すれば最後、何もかもが消えてなくなる。その結果に……

 

 

「だから……子供なんだよ」

 

 

 中途半端に上がった出力と反粒子が混ざり合い――――――空間を崩壊させる超新星がナザリックを呑みこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ナザリック崩壊(完)






 オーバーロードのアニメ二期の絶死絶命を見た感想……数ある二次創作でママにしたの俺くらいじゃね?と思った。あとシャルティアかわいい(シャルティア戦反省(直すとは言っていない※ここ重要
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