オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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一般メイド

 メイドとは完全で瀟洒な従者である。

 メイドとは清掃、洗濯、炊事などの家庭内労働を行う女性の使用人である。

 メイドとは乙女、未婚の女性である。※ここ重要

 メイドとはご主人様だいしゅきである。※いいよね。うん。だな。

 

 そんな一般メイドを作った三人の至高の四十一人ヘロヘロ、ク・ドゥ・グラース、ホワイトブリムの理念の下。今日も彼女たち一般メイド四十一人はナザリック地下大墳墓の第9階層〜第10階層の雑務と清掃を担当している。 

彼女ら四十一人はlevel1。メイドとは癒しでなくてはならない。level1のひ弱な存在だからこそ一つ一つの仕事姿にグッとくるものがあるのだ。眼福だ。

メイドとは仕事人、プロである。至高の御方(ヘロヘロ)は断ずる。エロ同人誌のような媚びるようなメイドはメイドではない……と。至高の御方(ク・ドゥ・グラース)曰く、気兼ねなくエロイことができるのがメイドの良さでしょ?おら☆正直になれYO!!こうした方があざトゥース↑だろ!?眼福だ。

至高の御方(ホワイトブリム)曰く、メイド服が……メイドとはメイド服あってこそのメイドなんだ。うん、眼福だ。

彼女らが戦うなど言語道断。メイドとは仕事をパーフェクトに仕上げ。主人の生活を影から支える有りがたき使用人。この子たちは、只そこにいるだけで人々を幸せにする。打算などない。裏切ることなどない。主人に身を捧げる彼女たちこそが、なにより至高の御方。

そんな一般メイドの一人、シクススは今日も変わらずナザリックのた、アインズ様のために、埃一つなく掃除するのだ。いつでも御方方が帰還されても良いよう各お部屋はとくに念入りに丹精込めて清掃。主人にさえ、同僚にさえ気付かせない気配りを自然に行う気配り。

ヘロヘロ曰く、メイドの仕事levelでそこの格式が分かるという。自分達の働きは、ナザリック地下大墳墓の旗を背負う誇りある働きと一般メイドは自負している。戦う力はなくとも、それに負けないくらい皆さんを支えればいいのだ。なにより。

 

 

「創造者様曰く、メイド服は決戦兵器ッ!!……だ、そうですよ?」

 

創造者様!シクススは今日も元気にお勤めを果たしてます!

 

 

「そのお言葉、確かホワイトブリム様のよね?」

 

「そうだよー」

 

 

風船の空気が抜けるような返答。シクススはもきゅもきゅと昼食を美味しそうに平らげていく。人造人間(ホムンクルス)である一般メイドたちは種族的なペナルティとして食べる量は非常に多い。

疲労、そしてご飯を食べる。それは神が残した嗜好の調味料。与えられた務めを全うする使命の次に、ご飯が大事とシクススは断言する。

 

 

「私思うの、メイド服は決戦兵器(このお言葉)には私たちじゃ想像もつかない意味がある!」

 

 

シクススはフォークをつきだしどや顔でそう言った。

 

 

「やめなさい行儀の悪い」

 

「そうそう食事は上品にいただくものだよー。……ンーおいひぃ~」

 

 

至高の御方の言葉に興味は引かれるが、メイドらしからぬフォークの使い方に注意を促すリュミーエル。

賛同するも頬っぺたいっぱい膨らませもぐもぐ食べるフォアイル。

仲の良い三人は今回も一緒のテーブルで食べている。

 

 

「うぅ……ごめん。て、そうじゃないよ!今ってほら、戦争してるでしょ?このお言葉の意味を解明すれば、私たちでも侵略者を撃退できる……のかな?」

 

「メイドの服は決戦兵器……私たちは至高の四十一人と同じ人数作られていることに関係あるのかしら?」

 

「ンーけど、戦うメイドはプレアデスの人たちでしょ?ヘロヘロ様曰くこんせぷとの違いらしいよ」

 

「こんせぷと?」

 

「こんせぷと」

 

 

首をかしげる三人。

そんなたわいもない会話を離れた席で読書をしつつ耳を澄ませていたつんつんインクリメントが参戦する。

 

 

「いつにもまして五月蝿いわねあなた。いい?一人の失態がが私たち四十一人の失態なの。喋るなとは言わないけど少しは慎みなさい。あと、ク・ドゥ・グラース様が仰っていたわ。メイドに跪き(こうべ)を垂れ踵で踏まれるのも主の務めだと」

 

「そ……そんな暴挙が許されるのですか!?」

 

 

ご主人様である至高の御方に頭を下げさせ、あまつさえ踏ませる!

 

 

「そうお望みなら、実行するのがメイドの務めよ」

 

『おおー』

 

 

ふんっと、本を閉じそのまま食堂から退室していくインクリメントの後ろ姿を三人は見送る。

 

 

「……アインズ様に『……踏め』と命令されたら上手に踏めるかな?」

 

「ンー正直自信ないなーインクリメントは喜ぶ踏みかたとか熟思してそうかなー」

 

「それがお望みなら実行するのがメイドの務めよ」

 

今日も平和に時間は過ぎていく。

鉄壁の守りのナザリック地下大墳墓は一匹も第9階層〜第10階層の、侵入を赦した記録はない。

戦ってるのは知ってるけど、戦闘力のない一般メイドは蚊帳の外。詳しい戦局など誰一人とした分かってない。

それでも、彼女たちは信じている。ナザリックを、それを守る仲間たちを。だって信じて待つのがメイドなんだから。

 

 

「んく……御馳走様でした。さて、お仕事頑張ろ!」

 

 

シクススは今日も幸せです!

彼女たちは定められた役割に移行する。仕える主がいる。支え合う仲間がいる。そんな幸せな日常が――――――

 

 

――――――え。

 

 

一番最初に異変に気付いたのは誰だったか。そんな疑問に意味はなく、次の瞬間には皆が異常を知覚する。

 

 

『キャアアアアアアア――――――ッ!』

 

 

一つの合唱とかし悲鳴がナザリックに響き渡る。

異常も異常。強烈な揺れがナザリック(日常)を震撼させる。凄まじい揺れは至る所に亀裂を作り、崩壊させ、飾られていた数々の貴重な品が割れ、散乱する。

体感したこともない一瞬の強烈な揺れは戦闘力のない一般メイドの体感時間では数分間に感じるほどの恐怖。

 

 

「な、何いまの!?」

 

「も、しかして敵がそこまで!?」

 

「こんな時は……えっと……うーんと……!」

 

 

 はわわわわわわと混乱する彼女たちを失態したのは、メイド長ペストーニャ・S・ワンコ――――――ではなく。

 

 

「おーちーつーけええええええええええええええ!!」

 

 

 "只の人間"ツアレ。

 静止した彼女たちは誰もがツアレを凝視する。自身に視線が集まったのを確認し震える唇を開いた。

 

 

「落ち着いてください皆さん……私たちはメイドです。まずするべきことは分かっているはずです。だってそうでしょ?だって皆さんはメイドなんです。入ってまもない見習いの私と違いメイドである誇りを掲げる皆さんが一番どうするか分かってるんです!ナザリックの危機に、私たちが立ち上がらなくてどうするんですか!!」

 

 

 荒れた呼吸を整え、言いたいことを言い切ったツアレは大それたことを言ってしまった羞恥に顔を染めるが、決して下を見つめなかった。

 静謐する空間の中、最初に響いたのは喝采の拍手。

 

 

「負けちゃった、メイドとして。みんなー仕事はわかるねー!」

『はーい!』

 

「ごほん、それではメイド長……はまだとしてメイド長代理殿。合図を」

 

「シクススさん……ッ」

 

 

 一般メイドとツアレの間にあった壁は、ツアレ自身の力で払拭された。メイドとして生まれた彼女たちが敗けを認めたのだ。誰もがツアレの合図を待ち望む。

 ペストーニャにもセバスにも劣らない長としての眼光が煌めく。

 深く息を吸い――――――

 

 

「始めッ!!」

 

『はい!』

 

 

 影から支えるのがメイドの務め。主人を第一に仲間も助ける。迅速に、的確に、メイド間のホウ・レン・ソウを大切に!

 怪我人、被害状況の確認。通路の確保。掃除。取り替え。やることは山のようにある。

 

 

「この子ダメです!頭から血を流してます」

 

「メイド長が来るまで応急処置に専念して!」

 

 

 メイドの仲にも何人か負傷者が出ているが、私たちならこの危機を乗り越えることができるとシクススは断言する。

 故に、これは何かの間違いだ。

 こんな結末を、筋書きを思い付く運命とやらはよっぽど悲劇が大好物で――――――

 

 

「――――――何者だ。答えろ」

 

 

 ――――――喜劇が大好きなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツアレの呼吸が止まる。彼の光と比べ自分はなんとひ弱な蝋燭の炎だろうか。吹けば消えるとはこのこと。

 幼い頃両親を早く亡くして以降、村の一軒家で妹と二人で生活していたところ、13歳の時に貴族に妾として連れ攫われてしまう。そこで6年間"玩具"とされた挙句、貴族が飽きた後は娼館に売り飛ばされ、地獄のような日々を送った。

 この世の地獄を見た。

 女性として奪われるものすべてを凌辱され犯された。

 闇へと堕ちた少女は誰よりも逆襲する権利がある。

 闇を知り、絶望した少女に運命の気紛れが偶然を引き起こした。闇の眷属は優しい光を見た。

 故に、英雄(ソレ)は猛毒だ。

 光は敵地にて武器さえ握らず、対話を申し込んでいる。

 ツアレもシクススも皆が混乱する状況下。メイド達の困惑顔から察した"英雄"は言葉を継ぎ足す。

 

 

「……済まない。混乱しているのは俺も同じだ。確認をとりたい。此処はまだダンジョン内か?アインズ・ウール・ゴウンを殺しにきたのだが……」

 

『―――――ッ!?』

 

 

 只の人間のツアレも一般メイドたちも、主を殺すと言われて表情を変えるななど無理な注文。

 あからさまに分かりやすい反応に"英雄"は納得する。

 

 

「……そうか。地下何層か見当もつかんが、その反応を見るにさほど遠くはないらしい。――――――通らせてもらう」

 

 

 睨み付ける鋼の男の眼光が、一切挙動を赦さない。誰一人呼吸さえ喉に引っ掛かる緊張状態。意識が飛ばされないのは、メイドとしての意地かプライドか。

 

 

「……………………………………ぁッ」

 

 

 軍靴の音が鳴り響く。体が勝手に道をつくり、通路の中央を進む鋼の男を誰も止めることはできない。

 故に、男は疑問を投げ掛ける。

 

 

「なんの真似だ」

 

 

 それは四十一人の一般メイドの誰か。雄々しい足音を響かせ、主人を殺すため進む敵の前に立ちはだかる。

 怯える体は正直に震え、腰も引け、鼻水や涙でぐちゃぐちゃな顔を隠そうともせず、両の手を広げる様は滑稽に映るだろう。魔王は目前。盛り上がるべき最終局面に君臨する主役クリストファー・ヴァルゼライドの前哨戦がlevel1のか弱い少女とは興醒めものだ。

 しかし、肉の壁にもなりはしない弱者を前に男は確かに足を止めた。

 

 

「もう一度問う。何の真似だ」

 

「——————ッ!?」

 

 

 覇者の覇気が一人の少女を重圧する。酸素を満足に取り込もうと陸に打ち上げられた魚のようにパクパク口を動かし、唾液と混じり合った水が顎を伝い服の染みを広げる。

 限界を超え消失する意識を繋ぎとめたのは――――――大切な仲間だった。

 

 

「……がんばれッ!」

 

「一番最初に動いたあなたが言ってやらないでどうするの!!?」

 

「そうよそうよ!!」

 

 

 皆が少女の体を支えるため集まっている。触れる手の平の熱から小さな……ほんの少しの火が灯る。

 煌めく太陽に押し潰されながらも、その火は決して消えはしない。

 誰が笑うものか。この勇気を、覚悟を、仲間との絆を。

 だからこそ、これは最後通告。

 

 

「……最後だ。何の真似だ」

 

 

 メイドたちに罪はない。邪魔をしないのであれば全てを終えた後、法の下平等に裁こう。アインズ・ウール・ゴウンの配下とはいえ全てが悪いわけではない。

 

 

「よく考え発言しろ。敵として立ちはだかるならば一切容赦しない」

 

 

 殺すと告げる。言葉通り何ら躊躇もなく光の"英雄"は突き進む。

 だからこそ、混乱した状況下で少しでも時間は稼ぐことはできる。無謀な勇気を理性的な謀で合理的に計算する。嗚呼だけど、ナザリックに侵入したこの男が許せない。

 

 

「あ……アインズ様に、手出しさせない」

 

 

 皆の思いを背負い。

 

 

「栄光なるナザリック地下大墳墓に土足で踏み込んで……」

 

 

 一人の意思は四十一の意思。

 

 

「即刻立ち去りなさい!!人様の家で好き勝手して――――――恥を知りなさいッ!!」

 

 

 これが、一般メイドの総意。ここから先は行かせない明確な敵意。

 

 

「全くだ。ぐうの音も出ない。使用人として何処までも正しい選択と行動に、最大の敬意を」

 

 

 素晴らしい光を見た。その勇気は決して無駄ではない。

 

 

「今から俺は、対等の人間として君らに相対する」

 

 

 心からの敬意を――――――だが、殺す。

 

 

「—————"勝つ"のは俺だ」 

 

 

 

 

 抜刀さえ知覚不可能な不可視の刃は、斬られたことも、死んだことも気づかせぬまま痛みなく対象者を絶命させる。敵となった少女たちの最大の譲歩。苦しみを感じる間もなく死神の鎌は一太刀をもって終焉させる。

 握りしめた武器というにはお粗末なメイド道具。

 やっと心を開きこれから始めていくと思っていた仲間たちの命が刈り取られていく。

 数秒にも満たない虐殺は、ツアレとシクススを除いて全滅した。

 ツアレは、無力だ。

 

 

「……逃げて。ツアレは付き合う必要はないよ」

 

「シクススさん!?」

 

「見習いは先輩の言うことを聞くのです!……まだまだこれからなんだから、生きないと」

 

 

 シクススは嬉しさでにっこりと笑う。

 

 

「いいよね、この子だけでも逃がして?ツアレは私たちと違って外から来たからさ。無理やり誘拐して脅迫もして私たちが楽するためにこき使ってたの」

 

「一体何を……!?」

 

「い、いいから逃げて!!この戦いに見習いは関係ないの!!」

 

 

 茶番だ。シクススはツアレを生かそうとしている。

 子供でももう少しマシな演技をする下手糞な誤魔化し。

 虚偽、欺瞞を看破する"英雄"は、それでも……。

 

 

「いいだろう。戦う意思のないものを俺は追わん。好きにするがいい」

 

「えへへ……そういうわけだからさ、大っ嫌い(大好き)だよツアレ!!」

 

 

 止める間もなく、シクススはフォーク片手に走り出す。

 死神の鎌の内側に自ら飛び込む。

 無謀、蛮勇、村娘にすら劣る戦闘力に勝算など最初っから有りはしない。

 私たちの意思はツアレが引き継いでくれる。

 まだまだ見習いだけど……いつか……

 

 

「後片付け……よろしくね」

 

 

 正確無比、不可視の刃はシクススを斬り捨てた。

 

 

「……………………っシクスス……さんッ」

 

 

 物言わぬ骸と化したシクススを跨ぎ、鋼の男は前へ進む。

 

 

「ツアレといったな。友の願いを聞き届けるのも、同じ道を進むのも君の自由だ」

 

 

 地獄の日々からやっと手に入れた幸福な場所を、優しい人たちを、血に染めた悪魔の男。

 悲しみ、後悔、負の感情が塊となり瞳から零れ落ちる。

 悔しいのだ。この20年間で無力は罪と学んだ。何も出来ない自分を殺したくなる。

 それでも、そんな非常な現実でも……救いはある。 

 

――――――セバス様……。

 

 

「それが答えか」

 

 

 手に握りしめたのは一対のフォーク。血痕がこびり付いたこのフォークはシクススが最後まで握り締めていたもの。運命か、偶然か、足元まで転がり込んできた殺意の意思。

 少女は、両手で握り締めたフォークを突き出し、"英雄"クリストファー・ヴァルゼライドと相対する。  

 

 

「友の最後の願いを無駄にするか?」

 

「……そう、ですね。怒る、でしょうね」

 

 

 それでも――――――

 

 

「けど最後は、笑いながら許してくれるんです」

 

 

 主役相手に奇跡なんて起こらない。

 "英雄"が"冥王"が"魔王"が"化け物共"が戦う戦争にツアレの配役はない。名前さえ残らない配役は英雄譚(サーガ)に不要。

 "英雄"の足跡の一部として地に転がる骸となる運命。

 故にこれは運命でも偶然でもなく。

 

 

「——————ッ!!」

 

 

 不可視の一太刀が逸らされた。

 胸の中心に巨大なサファイヤが埋め込まれた純白の鎧を身に纏い、ツアレの絶対正義が降臨する。

 

 

「……セバス様ッ!!」

 

「もう大丈夫……後は任せなさい」

 

 

 ツアレを安心させる微笑みを一変、温厚をかなぐり捨て去った鬼となる。

 

 

「第三層まで侵入した貴方が何故第九層にいるのか……第四層で待ち構えていた私が何故第九層にいるのか……()()()()()()()()()()()

 

 

 端的に言って、彼は凄く怒っている。

 

 

「このセバスチャン、怒りと憎しみの感情で貴様を殺す」 

 

 

"只の人間"ツアレは奇跡を呼び寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 




メイド三原則~。
  一つ、メイドはご主人様の命令に絶対服従。
  一つ、メイドはご主人様を全力で守護。
  一つ、メイドはご主人様にぞっこんLOVE☆


ヴァルゼライド閣下は本当に少女にお優しいかた(いやまじで

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