オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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時間軸は、セバスが神の法則に綻びを生んだあたりでそれぞれ終わったものとします。


それぞれの死闘

 世界を揺るがす地震の直後、何の前触れもなく転移させられた両者。

 他の階層で誰もが混乱する状況で、武器を握ったのは同時だった。

 火花を散らしせめぎ合う両者。

 互いの四本の腕から繰り出す破壊音と、剣術とは何か?を真剣に考えさせられる広範囲攻撃。その殲滅力は軍、延いては国家を凌駕する。

 三人の気質は絶妙にマッチしている。

 方や四本の腕に別々の神器級(ゴッズ)武器を装備する超越者。武人として武器を構える敵対者に、ましてや第六層まで侵入を果たした侵略者を相手に油断、慢心などの戦闘の邪魔でしかない思考は排除されている。

 彼こそが主の刃。

 level100の超越者にして、武人建御雷に創造されし武装した際の攻撃力守護者最強。

 人間では再現不可能四刀流も、昆虫の能力を極めし虫の王、種族:蟲王(ヴァーミンロード)の純粋な技術を持って創造主たる武人建御雷にあらゆる武器を使いこなす武人として創造された。

 よって、levelにおいて劣っている二人の人間を戦士として敬意を表す。無論、己が負ける可能性がある強者との戦いだ。小細工も駆使し主の為必ず殺す。

 

 

「名ヲ名乗レ人間。此ホドマデノ強者、名ヲ知リタイ」

 

 

 武人として強者の名を知りたいのは道理。

 

 

「有りがたい申し出だが、まずは自分から名乗ったらどうだ。それこそ作法というものだろ」

 

「……ソレモソウカ。ナザリック地下大墳墓第五層『氷河』ノ階層守護者コキュートス」

 

「いいぞ、ノリがわかってるじゃないか!黄道十二星座部隊(ゾディアック)が一つ第七特務部隊・裁剣天秤(ライブラ)隊長チトセ・朧・アマツッ!!」

 

「まったく……黄道十二星座部隊(ゾディアック)第六東部征圧部隊・血染処女(バルゴ)隊長ギルベルト・ハーヴェス」

 

 

 存外ノリのいい三人は王道が大好き。

 雷鳴を轟かせ、光速の絨毯爆撃がコキュートスへ殺到する。

 回避不可能。第六層『大森林』円形劇場(アンフイテアトルム)の円形闘技場に障害物は存在しない。故に――――――

 

 

「無駄ダ。既ニ見切ッタ」

 

 

 雷撃を纏う鋭利で巨大な大太刀が、雷を引き寄せ悉く相殺。暴風など、刃に触れただけで霧散する始末。

 

 

「こいつヤバイな……はてさて、どうしたものか。おいギルベルトあの武器どうみる?」

 

「破壊は不可能だろう。鍔迫り合いなどもっての外。私達とは性能が雲泥の差だ。ヴァルゼライド閣下でもない限りどんなに強化しようとも武器ごと両断されるのが落ちだろうな」

 

 

 ヤバイとしか形容出来ない神の武装。従属神は神の恩恵により、この世界最強生物、一部では神と崇められる竜王をも凌駕する。

 そして、この昆虫は竜王級。手にした武器を含めれば火力は竜王さえ上回る化け物。

 

 紫電刀光『建御雷八式』。

 一刀両断『斬神刀皇』。 

 一撃必殺『素戔嗚(スサノオ)』。 

 世界級(ワールド)アイテム『幾億の刃』。

  

 創造主、武人建御雷様の"究極の一振り"はアインズ様の意向によりパンドラが所持しているが、自分がその一振りをと――――――嗚呼、雑念だ。

 

 

「剣ハ考エズ、タダ主人ノ意ノママニ振ラレ、斬リ裂ク物」

 

 

 紫電刀光『建御雷八式』、一刀両断『斬神刀皇』、二振りで戦闘を続行する。

 一撃必殺『素戔嗚(スサノオ)』は振るえない。世界級(ワールド)アイテム『幾億の刃』はまだその時ではない。

 

 

「強イナ。バランスガ巧イ。近距離・中距離・殲滅力・制圧力・チームワーク……コノ世界デ心ダケデハナイ。真ノ実力者ハオ前達ガ初メテダ……卑怯トハ言ワセンゾ」

 

「本当に化け物だな!!」

 

 

 吐く息が白く染まる。気温が急激に低下する。冷気が空間を支配する。

 フロスト・オーラ:冷気オーラによるダメージを与え、相手の動きを若干低下させる。

 中距離からの気象操作。得意距離を保っていたチトセと、近距離で牽制と誘導を行っていたギルベルト。至極真っ当な判断で、ギルベルトの首を獲るべく過剰なまでの殺意を内包した大太刀が放たれる。

 

 

「フンッ!!」

 

「おっと不味い。本当に規格外だな」

 

 

 事前に後ろへ回避行動をとっていたお陰か奇跡的に空振る。強制的に鈍くなっていく肉体の反応速度では17合で詰む。だからこそ、後ろへ下がる。チトセもいるのだ。状態異常軽減アイテムで凍傷の影響もすぐに治まる。幾つもの確率を計算し、次の起こり得る展開は――――――

 

 

氷柱(アイス・ピラー)

 

 

 地面から2本の氷柱が突き出し退路を断たれる。

 コキュートスもまた戦士。こと戦闘において敵の動きを予想し対策を練る事をアインズ様からリザードマン達から教わった。彼もまたこの世界で成長している。

 

 

「終ワリダ《風斬》ッ!!」

 

「いいや、此れからさ」

 

 

 絶体絶命の死を前に、男は予定調和のチェスを指す様に数多ある保険の一つを解放する。コキュートスの足元すべてが突如爆ぜた。

 

 

「ムムッ!?」

 

 

 踏み込んだ足が空を切り、飛び散った瓦礫が当たった箇所の衝撃がまるで倍となり体勢を崩した。嵐を帯びた斬神刀皇は見当ちがいなオブジェクトを破壊する。

 何処までも予定調和。よって、昆虫の外殻の隙間を縫うように連撃が叩き込まれる。

 

 

「固いな。薄い箇所でコレでは骨が折れる」

 

 

 ヤレヤレピンチだ。冷静な判断で下す戦力比。私一人では勝利は掴めない。そう、そもそも一人で勝ち取ることが間違っている。

 

 

「……面妖ナ、シカシ強イ。ダガ、カラクリハアル程度理解シタゾ。次ハナイ」

 

「優秀な同僚の助けがなければ私などとうに屍と化している。女神(アストレア)には感謝しきれない」

 

「キモイぞ。だがよくやった」

 

 

 抜刀即斬。玉散るばかりな鋼の銀光。背後をとったチトセの斬撃が爆発する。

 それは風、刃物と一体化した気流の渦が切り裂いている。

 

 

「エエイッ!!」

 

 

 殺意を乗せた刀と刀とが、超高速で激突し合う爆発的な爆音は響く。風を付属させ打ち合うことを可能としている。

 コキュートスの外殻が削られていく。四刀の手数が意味をなさない。それを上回る予定調和の先読み。不可視の衝撃。常時展開される疾風雷神。そこから繰り出す匠の技。

 

 

「――――――ッ」

 

 

 コキュートスの確かな驚懼。

 攻撃力、武器の耐久性からすべてのステータスが格上。創造主武人建御雷が装備していた武器を武装する栄誉は当然、その中でも最も最強の武器を揃えた。

 それ故に、使い慣れた武器を蔑ろにしてしまった。

 その手には創造された日から握り続けた断頭牙、ブロードソード、メイスは握られていない。

 四本の腕に別々の異なる武器を持つ事による接近全方位万能型。創造主より与えられた最善を、学習し自らの意思で動き出したコキュートスはアインズ様の許可を得て舞い上がってしまったのだ。

 そもそも残りの守護者と上位勢による第四層の第一次殲滅戦を想定していた。一人で戦う武装ではないのだ。

 武器が強すぎて不利。なんとも笑える状況。

 一撃必殺『素戔嗚(スサノオ)』は振るえない。世界級(ワールド)アイテム『幾億の刃』はまだその時ではない――――――そんなことでは倒せない。

 

 

「私ニ力ヲ……武人建御雷様。《不動明王撃(アチャラナータ)》ッ!!」

 

 

 コキュートスの背後に不動明王が出現する。不動明王が不動羂索でカルマ値がマイナスの相手の回避力を下げる。武人建御雷様が得意とするコンボ五大明王撃その一。

 人類守護者の二柱はカルマ値が極大プラス。コキュートスのスキルの大半はカルマ値がマイナスでなければ作用しない効果が多い。だが、そんな事を相手は知らない。

 明らかに仰々しいヤバイ怪物から延びる羂索(なわ)。効果を知るユグドラシルプレイヤーなら無視するゴミスキルも知らなければ真面目に迎撃回避に専念する。

 

 

「終ワリダ!!《倶利伽羅剣(くりからけん)》ッ」

 

 

 不動明王撃(アチャラナータ)の二種類の攻撃手段の一つ。敵のカルマ値がマイナスになればなるほど破壊力を増す。コキュートスは防御スキルを使用したアルベド(カルマ値-500)の腕を潰した対マイナスのスキル。カルマ値中立~善以上の人間に当然効果は薄い。皮が裂かれ血が滲むそれだけしか効果を及ぼさない木偶の剣も、不動明王撃(アチャラナータ)から振り下ろされる迫力(ハッタリ)に星を行使する。

 不動明王撃(アチャラナータ)審判者(ラダマンテュス)女神(アストレア)に『素戔嗚(スサノオ)』を投げた。この武器を全力で振るうことは叶わない。だからこそ――――――身体のスナップを効かした遠心力による振るうのではなく手放した。

 飛来する無骨の刀に、此れまでにない警戒をする。

武士が、刀を振るわずに投げた。ならば、それはそういう武器か、そうすることにより効果を発揮する武器。

 

 

(どう対処する?防ぐか……避けるか。あの武器がどう作用するか見当もつかん。ならば)

 

 

 より遠くに落ちるように気流を加速させた。コロシアムの壁に突き刺さり――――――空が裂けた。

 

 

「はぁ!?」

 

 

 空が割れたことで、この場所が外に転移させられたのではなく、敵のダンジョン内なんだと確認できた。だが、この攻撃力はあり得ない。アレはカスっただけで終わりだ。

 

 

「厄介ナチームプレイヲ阻止サセテモラウ。《羅刹》」

 

 

 複数を標的にできる斬撃スキル。牽制として二人の連携を断ちチトセに三刀による同時攻撃。

 

 

「あ、がァァッ!!」

 

「武器ヲ意識シスギダ。忘レタカ?虫トハ、肉体ガ凶器ナノダ」

 

 

 脇腹が瞬時に消し飛んでしまいそうなブローを受けながら、苦悶に歯を食い縛った。

 武器を警戒しすぎだと、最大級の警戒を持っていたにもかかわらず、先の衝撃的な事象を利用された。

 

 

穿つ氷弾(ピアーシング・アイシクル)

 

 

 人間の腕ほどの数十本の鋭い氷柱を手から打ち出す。手首を蹴り飛ばしたが二本が殴られた脇腹と左太ももを貫通しコロシアムの壁にまでめり込んだ衝撃が脊髄を痛みつける。

 まずは一人。生命活動を停止させるべくコキュートスは更なる追撃に出る。

 

 

「好きにやらせるとでも?」

 

「逆ニ問ウガ、私ハオ前達ヲ侮ッテイルトデモ?」

 

 

 ギルベルトは後回しとされた態度に後側から斬りかかるが――――――

 

 

氷柱(アイス・ピラー)氷柱(アイス・ピラー)氷柱(アイス・ピラー)氷柱(アイス・ピラー)……」

 

 

 氷柱が結界として邪魔をする。ギルベルトは間に合わない。氷如き一振り二振りで取り除ける障害物もそれだけの時間があれば女神は地に堕ちる。

 故に――――――

 

 

「終ワリダッ!!」

 

 

 不可視の衝撃は致命傷には至らない。コキュートスの外殻を突破する火力を有する女は終わった。ならば後は詰将棋。強く小賢しい者が勝つ昆虫の世界。正面から刃を振るう事しかできなかった武士が、悪意を持って敵の弱点を正々堂々と攻撃する。踵が地を踏み抜いた。食物連鎖の贄としてチトセを引き裂くそのその寸前――――――

 

 

「ああ、そうすると読んでいたよ」

 

 

 悪意のもう一手上を予測していた男は、軽快に指を鳴らして仕込んだ星を発動させた。

 刹那、発動する不可視の衝撃。

 コキュートスの身体を破壊の嵐が蹂躙し、何百発の見えない力が嬲り尽くす。

 ギルベルト・ハーヴェスの星辰。衝撃の付着と多重層化。

 攻撃着弾地点に不可視の多重衝撃を貼り付け固定する必罰の聖印(スティグマ)

 一度切れば十の斬撃が、二度殴れば二十の打撃が、というように与えた衝撃を多重層化させたうえで相手や自身の体、得物、あるいは周辺構造物に貼り付け(ペースト)させるという異能。

 先までの衝撃の起爆によって相手の体勢を崩すといった妨害ではなく、 多重層化された衝撃の備蓄(ストック)を殺す目的に開放する。

 

 

「グゥ、ゴフッ……舐メルナ!!」

 

 

 来ると分かっていれば耐えられる。回避不可能ならば全てを無視し目的を達成させる。未来予知じみた先見と相俟った死の詰将棋は出鱈目(コキュートス)に攻略されて――――――

 

 

「悪いな、あと一歩だ。詰み(チェックメイト)ではないのだよ。こちらも保険はかけている」

 

 

 仕込んだ多重奏は発動している。コキュートスのこれまでの学習を嘲笑う未来予測は、コキュートスが投げて、チトセが壁まで加速させた一撃必殺『素戔嗚(スサノオ)』をコキュートスが通過する軌道上まで壁に仕込まれた聖印(スティグマ)が弾き飛ばす。

 振るおうともしない無骨の刀。振るおうにも振るえないのではと推測した悪魔の如き頭脳は、投げてくれるだろうと信じていた。

 よって、激痛の嵐の中で突如飛来してきた凶器を完全に躱すこと叶わず。

 

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 咄嗟に世界級アイテムを盾として刃と刃を合わせた。

 

 

「ギィガッ!?」

 

 

 柄を握っていた肩ごと弾け飛ぶ。剣を振る速度が非常に遅いがボスの一撃すら遥かに凌駕する攻撃力を持つ武器『素戔嗚(スサノオ)』。チームプレイで初めて効果を発揮する超ド級の武器は、正に三人のチームプレイにより協力者(コキュートス)のHPは膨大に削られた。

 

 

「やはり私では殺しきれないか。だが、十分だろ女神(アストレア)

 

「私のこの現状まで予想済みか……決戦兵装――――――解放ッ」

 

 

 空を断つ一撃必殺を受け流した代償。コキュートスの巨体が一歩半後退する。刹那の停滞―――――――ここに致命の隙を曝す。

 眼帯を勢いよく引き剥がし、解き放った女神の魔眼。

 義眼の正体、聖王国の最先端の技術が可能とする干渉性の瞬間的な増幅(ブースト)

 大気の膨大な星、魔力を吸収する切り札。

 そこから放たれる一撃は、まさに彼女の全身全霊。

 天頂から降り注ぐ裁きの雷が炸裂する。

 

 

「風伯、雷公。天降くだりて罰と成せ――――――神威招来(かむいしょうらい)級長津祀雷命(シナツノミカヅチ)ィィィィィィィィッ!!」

 

 

 神威を顕現する通常の数百倍にも増幅された疾風迅雷。 

 超位階に匹敵する破壊力がコキュートスに直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移門(ゲート)を潜りぬけた先は、地獄だった。 

 空気がまるで赤い光を持ったかのような世界。紅蓮の輝きを灯す溶岩の川が流れている。本来は継続的に炎ダメージを与えるフィールドエフェクトが存在するが、転移後は節約のため切られているのでただひたすら熱いだけである。ただ熱いだけだが生者の生きられるような生易しい世界ではない地獄のような世界である。

 

 

「アッチいなおい!!煉獄の灼熱に焼かれ罪を清めたもう狭間の世界。天国への入り口か、はたまた地獄への穴か……魔王様の根城にぴったりだな 」

 

 

 ナザリック地下大墳墓第七階層『溶岩』。現在、絶賛稼働中である。

 ルベドとゼファーのせいで本来は繋がるはずのない裏ルートにて侵入を果たしたアスラ・ザ・デッドエンド。

 ナザリック内の空間が一時的に歪曲、歪んだ境界の狭間の影響は無差別転移を発生させた。

 アスラは知るよしもないが、通りすがりにぶち殺した雪女郎(フロスト・ヴァージン)は第五層『氷河』階層守護者コキュートスの親衛隊。level82氷系モンスターである彼女はフィールドエフェクトで大幅に弱体化しており何の苦もなく魔拳の餌食となった。

 それでも此処は敵の領域。一時も早くこの場から離脱し、別の階層へ移動したかった。蓄積されていく鬱陶しいダメージ、一呼吸する度に肺は焼かれる。

 故に彼は、遠目から発見した地下への入り口を最短距離で岩石の影を利用し疾走する。

 敵の気配を察知し、罠を見抜く魔星の洞察力。level100へと至った直感は、疑似未来視に等しい精度を誇る。

 英雄よりも先んじて敵の魔王を屠ってみせる気概。

 安全と判断した溶岩の川を飛び越えた。

 

 

「なあ!?」

 

 

 溶岩の川が触手として伸び絡み付き、なす術もなく引きずり込まれる。

 

 

「おいおいこいつァ……スライムか?」

 

 

 最後に視界に収めたのは、その身を溶岩の河へ呑み込んだ超巨大スライムの本体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチ、カチ、カチ、カチ――――――乱れることの無い、規則正しい歯車の音色。

 それは原初の音。全ての始まりにして永久機関。

星を滅ぼす者(スフィアレイザー)”のあらゆる光を滅ぼす絶対悪、逆襲劇(ヴェンデッタ)は、無限出力(ルベド)を蹂躙した。

 鉄屑となった永久機関(ルベド)。複雑怪奇な歯車と永久機関しかない肉体でも確かに魂は生きていた。

 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、なにも感じない常闇の中で、歯車の音色と異なる波動を受信する。敗亡の淵で増幅された悪意の波濤。この身体を滅奏した冥王星(ハデス)と第八層の『あれら』。

 

 負けている。

 当然だとルベドは分析する。アレは、ユグドラシルとかそんな法則に収まる力ではない。

 異界そのもの。反粒子が世界法則の宇宙。そんな力を前にユグドラシルの星屑に何ができる。前の私より強い最強の存在達程度の力では、絶対に勝てない。

 

 

"私なら、私なら―――――でも"

 

 

『――――――ァ』

 

 

別の波動を受信する。嗚呼、今まで気付かなかった。私を抱え遠くへ飛んでいる小さな存在。

第八階層『荒野』階層守護者ヴィクティム。

階層守護者最弱。時間稼ぎ最強。死ぬことで発動する足止めスキルを持つ。特定条件下での働きを想定されている守護者。

ヴィクティムは、泣いていた。

ヴィクティムは死ぬことで意味が発生する。その凶悪なスキルに抗える存在はユグドラシルに存在しない。でも例外は存在する。デバフ完全耐性のワールドモンスターなどの"うんえい"が創造したモンスター。そして――――――

 

 

"……ゼファー・コールレイン"

 

 

 冥王に死を持って逆襲劇(ヴェンデッタ)を仕掛けるヴィクティム。それは矛盾だ。彼も死は無駄なのだと分かっている。中途半端な危機的状況などそれこそ逆襲劇(ヴェンデッタ)を引き起こす。

 例えデバフが効いたとしても、ナザリックの最終防衛ライン。そのための最強の秘密兵器、足止めのヴィクティム、生命の樹(セフィロト)に桜花聖域も、等しく滅ぼされる。

 “冥王” ゼファー・コールレインに勝利するには、対等の土台に立つか、圧倒的な出力差が無ければならない。

 

 

"……無理だ"

 

 

 私はスピネルにすらなれないガラクタと化した。もう何も守れない。

 

 

『――――――』

 

 

 声が聞こえる。受信する。高密度のエネルギーがぶつかり合う領域で、死ぬことでしか意味を持たないヴィクティムは潰されそうで、こんな歯車な状態じゃ全てを知ることは出来ない。

 それでも、私を抱える手を通じ、涙を通じて、死ぬことしかできない本当の弱者をルベドは生まれて初めて知る。

 カグラ、ファヴニル・ダインスレイフ、ゼファー・コールレイン。三人の人間、その生涯を価値観を願いはルベドを構成する歯車()で息づいている。ブラザー・ガラハッド、ミステル・バレンタイン、アヤ・キリガクレとの出会いは光と闇だけではなく人間らしい素晴らしい答えを知る事が出来た。

 アインズ様、お姉様、セバス、コキュートス、マーレ、ユリ、恐怖公、実際に会って知ったナザリックの仲間――――――実感が持てなかった。

 

 

"パパは……意地悪だ"

 

 

 強いままじゃ、絶対に理解できない。後悔しないと、絶対に体験できない。失ってみないと、絶対に素晴らしさに気づけない。

 

 

"意地悪だよ……こんなにも複雑で難しくて、不安定でぜんぜん理解できっこない心を知れってさ"

 

 

 私の足りないものは、この涙だったんだ。

 

 

"私の足りなかったのは、人間以外の理解"

 

 

 今ならナザリックの皆と仲良くなれる気がする。

 

 

"一人じゃ、意味がない。ヴィクティム(弱者)ルベド(弱者)……二人で"

 

 

 永久機関が呼応して煌めく粒子へ転じ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前回言い忘れていた裏設定。

 
  神の法則の意図的に作られた穴。
原作において、ユグドラシルのキャラクターはプレイヤーも含め悪値、善値の差で起こす行動に大きな違いがあります。

     カルマ値
極悪   -500 アインズ、アルベド、デミウルゴス
邪悪~極悪-450 シャルティア
邪悪  -425 ニューロニスト
邪悪  -400 ナーベラル、ソリュシャン
凶悪  -200 ルプスレギナ

中立~悪 -100 アウラ、マーレ、エントマ
中立  -50  パンドラ
中立  -10  恐怖公

中立   +1   ヴィクティム
中立  +50  コキュートス
中立~善 +100 シズ
善  +150 ユリ
極善  +300 セバス

ここで注目してほしいのはどれだけ主に逆らっった。意見をもうしたかという所。アルベドは立場やら設定度色々おかしいのであれですが、基本的に"悪"はプレイヤーの言う事を凄く聞きます※無能な駄犬はただ無能なだけ。身の心配系は除外
命令の範囲内でそれぞれ人間で遊んでいます。
逆に"善"ですと明確に、主に意見を申して子供や人を助けようとします。

これが、プレイヤーが強大な力で人であることを忘れてしまわないための小さな処置。
また、"善"であるが故にギルド外の生物(ユグドラシルと関係のない存在)と深い絆を育みそこから崩壊させようとした。
そもそもNPCとユグドラシルと関係のない存在が結びつくことで亀裂を生じやすくし、法則に綻びを生みやすくした。
そして、現地人を守りたい神は主、創造主の言う事を"悪"でも聞き入れるルールを作った。どのNPCにも言えることだが忠誠心はスゴク高い。でも、現地人をものすっごい害する危険性のある極悪NPCは他のNPCより主を想う様ルールが課せられた。

※八欲王にその忠誠心を利用された。だから、崩壊させたい。プレイヤーの命令でNPC全てが敵になり、統率されるよりましだと考えたから。




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