オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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ルベドの真理と答え

 第八階層『荒野』階層守護者ヴィクティム。

 醜いピンク肌の体長一メートルの胚子。生贄の赤子は己の無力に身体を震わせた。

 

 

「――――――ァ、ァッ」

 

 

 流れ出る感情は止められない。零れ落ちる弱者の想いは誰にも知られることなく染みへと消える。歯車を抱えた天使の手は無意識に籠められた力で血に濡れている。

 ナザリックの最終防衛ライン。ナザリックが誇る最強の存在達。

 かつて1500人というアインズ・ウール・ゴウン始まって以来の討伐隊の大群がナザリック制圧を目指して第八階層にて全滅した。

 生贄の赤子は、一切の抵抗なく命を差し出した。死ぬことで発動する強力な足止め系スキルは敵勢力に超強力な弱体化(デバフ)をかけた。

 

 

 ――――――至高の御方。死ぬことでお役に立てるならこれ以上の喜びはない。

 

 

 ヴィクティムは死ぬことで意味が発生する。 階層守護者最弱ヴィクティムにはそれしかない。

 故に、最終防衛ラインは抜かれる。1500人のプレイヤーを追い詰めた第八階層『荒野』の全てが冥王(ハデス)の慟哭に滅ぼされる。

 領域は侵された。輝かしいアインズ・ウール・ゴウンの栄光が消滅してしまう。

 それでも、死ぬことは出来ない。

 アレへの干渉は 死を引き換えに発動するヴィクティムのスキルを持ってしても抗えない。

 反粒子はヴィクティムの魂を消滅させる。死んだ後に反応するスキルは魂を触媒に発動する。故に、闇は足止めスキルのエネルギーを問答無用で飲み込む。

 

 それが分かってしまうから、何もできないから、仲間を見捨てる事しかできない自分が嫌になる。

 死ぬしか出来ないヴィクティム。彼から死ぬことを除いたら何も残らない。一般メイドにも負ける戦闘力は効率よく死ぬ設計で創られた生贄の心を蝕む。

 ナザリックで生まれ、その性質上第八階層『荒野』で生きてきた彼は、命を捧げることしか知らない。

 

――――――それでいい。死に恐怖はない。私こそが至高の御方の人身御供。

 

 ナザリックで生き、アインズ・ウール・ゴウンに尽くす。その在り方は典型的なNPCだが、例えルールから解放されようとその生き方は変わらない。

 誰よりも命を懸けて生きてきた彼の人生を他人が否定していけない。可哀想などと、評価するのは最大の侮辱だ。

 ヴィクティムは弱者だ。厄介なスキルも時間が経てば解ける足止めでしかない。協力がいる。助けがいる。仲間が絶対に必要なのだ。

 彼は弱者だから、一緒に戦う誰かを信じる。

 歯車を抱え遠くへ飛んでいる小さな存在。

 ルベドは生きている。

 微かだが歯車から漏れだす素粒子が生存を教えてくれる。

 

 ――――――ルベドなら何とかしてくれる。二人でなら必ず何とかなる。

 

 弱者として、ナザリックを信じる生き方。覚悟を決め、使命を帯びてヴィクティムは死ぬ――――――勝つために。

 その死は決して無駄なんかじゃないと本人が理解しているから。

 勝つために、血と涙を流しルベドと逃げる。

 闇を祓うために、倒すために、滅ぼすために、いつ潰れてもおかしくない体で必死に逃げる。

 負けるかも、無駄かも、そんな強者を前にした弱者の思考をヴィクティムは持ち得ない。

 それは仲間を裏切る行為だから。栄光なるナザリックの勝利を疑ったことなど微塵もないのだから。そう、全ては勝利をその手に掴むために。悔しさも、怒りも、哀しみも、無力さも、涙ともに押し流す。

 

 

 

 

 

 受信する。ルベドは抱える手を通じ、涙を通じて、死ぬことしかできない本当の弱者をルベドは生まれて初めて知る。

 カグラ、ファヴニル・ダインスレイフ、ゼファー・コールレイン。三人の人間、その生涯を価値観を願いはルベドを構成する歯車()で息づいている。ブラザー・ガラハッド、ミステル・バレンタイン、アヤ・キリガクレとの出会いは光と闇だけではなく人間らしい素晴らしい答えを知る事が出来た。

 アインズ様、お姉様、セバス、コキュートス、マーレ、ユリ、恐怖公、実際に会って知ったナザリックの仲間――――――実感が持てなかった。

 

 

"パパは……意地悪だ"

 

 

 強いままじゃ、絶対に理解できない。後悔しないと、絶対に体験できない。失ってみないと、絶対に素晴らしさに気づけない。

 

 

"意地悪だよ……こんなにも複雑で難しくて、不安定でぜんぜん理解できっこない心を知れってさ"

 

 

 私の足りないものは、この涙だったんだ。

 

 

"私の足りなかったのは、人間以外の理解"

 

 

 今ならナザリックの皆と仲良くなれる気がする。

 

 

"一人じゃ、意味がない。ヴィクティム(弱者)ルベド(弱者)……二人で"

 

 

 掴み取った想いを、覚悟と共に紡ぎ上げ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――到達(アライブ)

 

 

 

 

 

 永久機関が呼応して煌めく粒子へ転じ始めた。

 

 自意識(エゴ)。彼方を目指す者は、まずは立ち上がり己が誰かを知らねばならない――――――"人間を知り、輝きを見たい"それに伴う"自分とは何か?"答えを求めるべく健気に前へ進む生まれたばかりの少女の希求(エゴ)

 

 無意識(イド)。己の足で歩き出した者は、最後の敵として己自身に打ち克たねばならない――――――"誰もが憧れの人間(モノ)になりたいと目指しながらなれない"というジレンマ。"人間に憧れ人間に酔いしれる事で、他の余分から目を逸らしている"それでも"人間のように成長したい"という妄念、少女の負の感情の陰我(イド)は、絶対機能制限(ラスト・リミッター)の放棄を実行させた。

 

 エゴとイド、それらを併せた自分自身を完全に受け入れたルベド。

 

 変化は直ぐに訪れた。ヴィクティムを構成する肉体が素粒子となり永久機関に吸い込まれる。不思議な、されど不快ではない一つとなった繋がりをルベドと間に感じ取った。

 完成された個体としての強さではなく、一緒に戦おうとする想い。

 もはや彼らはルベドであり、ヴィクティムであり、そしてそのどちらでもない。

 二人は一つであり、そして異なる個人でもあるという、矛盾と合理性の融合(フュージョン)

 ヴィクティムを媒体にルベドは肉体を取り戻す。

 ただ感じるのは、とくんとくん、ささやかな()()としての鼓動。

 ヴィクティムと心身ともに融合し、人間の強さ()弱さ()、それらを包み込む優しさ(灰色)。人外として仲間(ナザリック)を想う心を併せ持つに至った"刻鋼人機(サイボーグ)"。

 人間でもあり、機械でもあり、どちらでもない完全とは真逆の進化を遂げた"不完全"。

 

 

「我が真理は無限(0)有限(1)の狭間から生まれた阿吽の空」

 

 

 人間が好きだった。

 努力する姿が、確固たる己を持つその精神が美しいかった。

 頑張って必ず追いついて抜かしてみせると信じて駆け抜けながら、自分とは根底的に異なる事実。

 人間になりたかった。観測して観測して観測して――――――私もああ成れたらなと、どこか俯瞰的に素晴らしい物語に浸っていた。

 口では散々仲間仲間と心配そうにしながら、死を悲しみナザリックを守護する自分に酔っていた。

 異形ではない。人間が好きで人間になりたいから輝かしい光を演じていた。

 私は人間にはなれない。異形でありながら異形になりきれない。仲間と誇るナザリックを心から守りたいと思えない。不安と恐怖揺れて、人間の素晴らしさに没頭し、答えを探す意味さえ履き違えて忘れていた。

 本末転倒にも程がある。勝利とは何か?私とは何だ?他人と比べる"答え"に意味はないと原初の想いを取り戻す事が出来たから。

 

 私は私。

 異形のものであり、人間になりたいと願う半端者。人間と同じようにナザリックの者もまた輝く想いを秘めているとヴィクティムが教えてくれた。

 そこに違いなんてない。

 大切なきっかけは、始めっから身近に多く詰まっていた。

 産まれる前()産まれた後()。その間を知らなきゃいけない"なぜ自分は産まれたのか、どのようにして自分は産まれたのか"を知らなくてはならない。

 パパは"人間を知れ"と言い残した。今にしてやっと真意が理解できたよ。

 パパにとって人間とは、人間種・亜人種・異形種を一括りにした呼称。

 そこに区別はなく、パパは完成された私に"人間種・亜人種・異形種(人間)を知れ"とメッセージを残した。パパが作り上げた物は、完成された完璧で完全で全能な自動人形。でも、求めていた者はその先にあった。

 

 

「愛する人を背負いて、ただ人間として世界()に立たん」

 

 

――――――私を生んでくれてありがとう……ダブラ様(パパ)

 

 

「勝利とは人間を知り成長すること」

 

 

 パパの願い、ママの想い、沢山の触れ合った人達の想いと願いを背負い決して負けない人間として生きていく。そんな私を見て、触れて、知ってくれた人達もまた別の人達へそれぞれの想いで伝えてくれる。

 

 

人間(サイボーグ)として私はこの世界()を生きる」

 

 

 人間として生き、人間として生涯を全うする。異形種は不死であっても不死身ではないのだ。死は絶対。だからこそ、胸を張って未来へ託そう。

 

 

「曖昧いで、無常でありこれと断定できるものはない……人間は完全に自分と他者を理解する事が出来ない。でも、執着を手放し分かち合うことは出来る」

 

 

 この世の現象としてあらわれている肉体および物質的な色は、本当は実体がない空。

 この世に存在する諸々のものを実体のあるものだと思いこんでいるが、実体のない空にほかならない。

 空はそのまま色であり、色はそのまま空。

 人間を知り、勝利への答えに至った果てに――――――ついに、今。

 

 

「完遂――――――素粒子生成。最終段階到達(エクストラドライブ・イグニッション)

 到達――――――刻鋼人機心装永久機関(イマジネイター・ゼロインフィニティ)!!」

 

 

 世界=自分が何であるかという命題に解を示し、実行に移せる精神。これぞ真理の頂き。

 チクタクと永久機関の無謬の音色と、とくんとくんと心音が鼓動する。

 ここに新たな星が再誕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うそ……だろ……」

 

 

 新たな星の誕生をゼファーは嫌でも感じ取る。発生する波動は無限大()

 先ほどまでの国や大陸を蹂躙する程度のモンスターとは違う明確な脅威。アレは世界を壊す。

 

 

「大概にしろ……容易に超えざる大敵が次は俺の番だと出現する。運命って奴はどこまで俺をコケにすれば気が済むんだ!!」

 

 

 異界法則に抗うには同じ土俵の独自法則のみ。 

 地峡から離れた上空で戦っていた強大で巨大な敵だったモンスターがうめき声を響かせルベドへ向け墜落していく。その内部を反粒子に満たされた爆弾として使われた巨大モンスターは、生物としての死を容認されず兵器として活用される。

 冥王は自分の計りでは到底計ることがかなはない膨大なエネルギー量に口角が引き吊る。もしかしたらこれこそが理論上最大値()なのかもしれない。

 先程のように仲間を気にして全力が出せないならこれで決まる。そんな甘い見通しは此方を見上げた優しくも鋭い相貌に打ち砕かれる。

 

 

「さっきはごめんね……お兄さんからは受け取ってばかりで何も返せてないの。貴方は私を殺す。無防備に怯えても、命乞いをしても殺すでしょ?だからこれは恩返し。人間は、人間を知って成長する。それが生きるということ」

 

 

 無限大を秘めた無色のエネルギーを完全制御化におき、機械として精密に、人として大胆に、仕返しとばかりに上空を漂うゼファーに向けてありったけの暴力――――――

 

 

「私怨がちょっと入っちゃうけど、女の子の歯車(ハート)弄くり回して……ちょっとムカついたわッ」

 

 

 ルベドは生まれて初めて怒りに任せて力を解放した。空間を震撼させる無限()のエネルギー波。掲げられた小さな手の平から放出される破壊は、世界が壊れていないのが不思議な密度。反粒子爆弾は壁にもならず、勢いを増す激流へと消えていく。

 

 

「だろうな。あの状況からまた立ち上がる奴がこうも簡単に殺せたらどれだけ楽か」

 

 

 第八層の天井をぶち抜き流星へ消えていく破壊光をしり目に地に降り立っていたゼファーは強大な破壊が齎す衝撃波などの運動エネルギーを減少、相殺、消滅させる。

 アレはまだ自らの星を完全に制御仕切れていない。学習する時間を与えればそれだけ覆されるという、確信に満ちた直感がある。

 

 

「死ねよ」

 

 

 速やかなる決着を。子供の成長を悠長に見守るほど彼は優しくはない。止めどない無限放出に蝕まれるルベドを断つべくするりと通った刃が、掲げられたルベドの右腕を断った。

 

 

「――――――あ、ギィッ」

 

 

 身を捻り合理的に右腕を捨てた"不完全"。的確に移行するべき兵装(左手)の飽和攻撃が右腕を切られた痛みで硬直する。自動人形だからこそ出来た無茶が生身の肉体を獲得したルベドの肉体に苦痛を、機械が融解する熱と崩壊が内臓を破壊する。無限()の代償が血飛沫を上げ真っ赤に染まる。

 

 

「……だから子供(ガキ)なんだよ」

 

 

 理想と現実を間違えるな。かっこよく敵を倒す理論や理屈を並べて理想を実現するため実行しようが、現実は上手くいかない。必ず破綻する。理想と現実に折り合いをつけるのが人間だ。痛みがそれを教えてくれる。理想ばかりが先行する馬鹿()は燃え付ける。

 悠然と五指をかざした瞬間、ルベドを守る素粒子の全てが消滅する。

 逆手に振るわれた一閃は回避不可能。

 右腕を対価にした激痛が思考を刺激し注意力を散漫にし、有る筈の物がない消失感が哀しみと共に涙が溢れ出る。初めての生理現象は何も知らない幼児のように本能のまま反応を撒き散らす。

 ルベドを誘う冥府への道は、全方位に荒れ狂う音速を超える認知外からの衝撃に阻まれた。

 

 

「――――――ッ!!」

 

 

 悲鳴叫ぶことも許されず、五十メートルを揉みくちゃにバウンドし、左腕をブレーキに地を削りながらようやく止まった。

若干痛みが引いたルベドは状況を理解する。永久機関からの接続が切り離された右腕が制御を失い暴走、暴発したのだ。予期せぬことだが助かった。

 

 

「イタイ、痛い……心は大丈夫なのに体がいたいの」

 

 

 皆この痛みを乗り越えて来たんだ。痛みは人を成長させる。

 人間は精神性で痛みを超えられる。

 痛みは迷いと戸惑いを生む。一度は定めた勝利も覚悟もそれら相反する現実の痛みが理想から遠ざける――――――()()()()()()()()()()()()

 

 

「感覚を持って生まれる生物の原初の教えは、痛み。ありとあらゆる人間が、"痛み"を起爆剤に覚醒、進化する」

 

 

 覚醒の方向が光でも闇でもいい。人は他者を知り、自分を見つめ返すことで、答えに行き着けるのだ。

 第八層を呑みこまんと広がる闇の輝きを引き連れた冥王星の容赦のない追撃の刃。なんて巧い確実な暗殺術。正確無比に獲物を眼で捉えても傷ついた身体は反応しない。ならば――――――

 

 

「――――――私も皆に負けないようそうしないとね」

 

 

 痛みを堪え、我慢することを覚えたルベドは、学習し覚醒する。

 無残に討ち捨てられた第八層のモンスターの遺体が素粒子へ分解され、煌めく粒子が破損した右腕断面へ吸収、無傷の右腕を新生する。それは、ヴィクティムが起こした奇跡の再現。

 

 『自動再生機構(オートメンテナンス)』。ルベドの素粒子と融合(ヒュージョン)した人間種・亜人種。異業種(ニンゲン)を素粒子に分解・吸収し自らの機体を修復する。

 ルベドの素粒子が漂う全てが効果範囲。level100だろうが、ドラゴンだろうが関係なくルベドの素粒子に触れたもの、呼吸で吸ったものをルベドの意思で素粒子となり、傷を修復する。一見生殺与奪を握る恐ろしい能力だが、破損箇所が無ければ使えない。同格には通用しない欠点に加え、ママやゼファー、自分と同じように答えに至るまで成長する人間を手助けしたいという想いが、余程の堕落者や何もない人間でもない限り、この能力は作用しない。素粒子を通し心を受信、送信するルベドならではの機能。

 よって、無限大には到底及ばない質量を左手に纏わせ首の間に滑り込ませた。

 

 

「……イッ!!」

 

 

 親指を除く四指が斬られた。それでも、首を横に傾げほんの僅かな刹那の減速はルベドの首を三分の一残し、首を斬られてなお躊躇なく懐に入り込んだ。

 

 

「ママとは違う"痛み"を教えてくれてありがとう。でもね……痛いものは痛いんだあああああああああああああああああッ!!」

 

 

踏み込みから放たれる膨大な質量エネルギーの正拳突き。

 運動エネルギーの否定。質量の否定。素粒子の否定。否定(消滅)否定(消滅)否定(消滅)否定(消滅)――――――ルベドを否定。

 

 

「くそッ!!」

 

 

 皮膚も内蔵も骨さえ侵され露出した人体模型(ルベド)。それでも、骨と機械の拳がゼファー腹中央を抉りお返しとばかりに五十メートル後退させた。

 それ自爆じゃね?とか関係ない、だって斬った彼奴が悪い。やっとの一撃にスカッとしたルベドは誰かの想いを受信する。

 

 "蟲王"コキュートス。

 素粒子が充満する世界は繋がりの世界。

 "人間を知る"他者からの刺激は成長を促し、それがどんな形であれ自分となる。

 "自分を知る"根源を認識しそれへ向かうこと。本当は何をしたいのか?生きる意味。勝利への答え。自分だけの正解を正しく認識する。

 

 そう、ルベドの願いは互いの情報を送信と受信可能にすること。だがそれはただ垂れ流すだけじゃ意味がない。人は、ただ知るよりも、精神が次のステージに、成長したいと想えた時にこそ知ることに意味が発生する。

 自分を知り成長したい。他者を知り成長したい。抱いた願いを成就させたい。などの強い渇望に素粒子は反応し初めて機能する。

 その強い渇望が、コキュートスの求める戦い(答え)を知るルベドが受信する。

 私では理解しても共感は出来ない破滅的な願い。

 『幾億の刃』を発動したコキュートスが、"願い"を叶えるために此方に降りてくる。でもそれじゃあ絶対に叶わないと知っているから。世界に漂う素粒子がそれを達成させてくれる敵を見付け出す。

 

 

「奮闘も高揚も後悔も憤怒も悲憤も感じぬまま消滅するのが貴方の願いなの?」

 

 

 送信する。有るべき答えをコキュートスが掴むために。

 

 

「これは警告。例えアインズ様を殺しても貴方の望みは得られない」

 

 

『――――――ッ!!』

 

 

「怒らないで。だからこそ、穴を抜けて北西を目指して、幾億の刃に乗っていけばいい。その先に……望む敵がいる」

 

 

 コキュートスの熱く、輝く、闘志をもって――――――アインズ以上の相手と戦いたい。

 

 

「私を信じて。貴方の願いは、渇望は、絶対に満たされる」

 

 

 例え――――――貴方が死んでも。

 

 

『感謝スル……アリガトウ』

 

「…………あ」

 

 

 生まれて初めてルベドは誰かに感謝された。

 心からの本当の感謝は鼓動する胸に暖かい何かをくれた。

 これこそが人間を知り成長するということ。互いに受け取る行為に意味がある。

 

 

「貴方は死ぬ……それが本当の望みなら私は止めない」

 

 

 生きる意味を、願いを叶えてね。コキュートス。

 

 

「私もかっこ悪い戦い出来ないじゃない」

 

 

 『自動再生機構(オートメンテナンス)』でとうに修復を終えているルベドは、正しく永久機関の兵器運用を理解するまでの成長を遂げる。

 

 

無限()と終われ、冥王(ハデス)。お前は殺しすぎた」

 

 

 そうでしょヴィクティム。貴方は絶対にゼファー・コールレインを赦さない。

 

 

『来るわよゼファー。気を引き閉めなさい。この数分間で強くなってる』

 

「ああ、分かってるよヴェンデッタ」

 

 

 到達(アライブ)――――――刻鋼人機心装永久機関(イマジネイター・ゼロインフィニティ)

 永久の不完全(ルベド)

 

 永久機関の真価を、遂に発揮する。

 

 

 

 

 

 

 




死の支配者「俺のが先に感謝したのになぁ……」




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