オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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英雄モモン

 アインズは、一人冒険者として宿に待機させといたナーベラルから冒険者ギルドから至急来て欲しいとの連絡を受けた。

 アインズ・ウール・ゴウンに敵対行動がとられた今、冒険者としての個人活動は危険かもしれないが、アインズ・ウール・ゴウン魔導国のアインズ・ウール・ゴウンに敵対してきたのだ。その対極に位置する冒険者モモンに接触してくるかもしれない。此方に繋がる情報の隠蔽も完璧だ。ナザリックに繋がる情報といったものも流出させるミスもしていない。

 アインズ・ウール・ゴウンと互角の英雄漆黒のモモンに接触しない理由はない。敵はナザリックの巻物(スクロール)の補給線を襲撃した。アインズは一切関与してないが、デミウルゴスがそう簡単に見つかるヘマはしていないはず、それを前提に考えると敵はそもそもどういう施設か知りもせずに襲撃したのでは?

 計画的にデミウルゴスをターゲットに襲撃した?いや、デミウルゴスが何をしていたのか報告書を読んだが、まさか羊がアレだとは夢にも思わなかった。そう考えれば仲間、親しい誰かを助けるために襲撃した?そもそもどうやって見つけ出した?対策に怠りはないはず、ナザリックと比べて劣るのは仕方ないが、それでも何かしらの干渉をしてくればデミウルゴスが気づかないはずがない。外から干渉されたのではなく、内から送信された?何かしらの未知の能力、生まれながらの異能(タレント)特殊技術(スキル)かもしれない。ユグドラシルにはなかったこの世界特有のマジックアイテムも考慮すると絞り込むのは難しい。

 今はなんとしても少しでも情報を手に入れるためにアインズ自ら危険を冒す必要がある。アルベドとパンドラは自分たちの業務とデミウルゴスと魔将の抜けた穴を埋めるのに手一杯、暫らくはこの状況が続くのに、自分だけ忙しい部下の手を割いてまで護衛を付けて引き籠るのは心苦しい。何より、こんな状況で自分だけ何もしないのは我慢ができない。そう、必ず――――――

 

 

「――――――必ず、この手で……」

 

 

 右拳を胸まで掲げ握りしめる。もう離さない、もう奪わせない、仲間たちと築き上げた大切なアインズ・ウール・ゴウンを守るんだと誓う。

 

 

 バンッ!!

 

 

 ビクッっと通りかかった目の前の酒屋から飛び出てきた男に何事かと、深みにはまった思考が現実に引き戻される。

 

 

「手持ちがねぇ癖にうちの酒場に何しにきやがったァ!!てめぇはもう出禁ってつったろッ!!?昼間っから酒たかりに来やがって、いいか!!てめぇに飲ませる酒も吸わす空気もうちにはねーんだよ!!酒なんて飲んでないで少しは働け!!この極潰しがァ!!」

 

 

 ア――――――コレハ、アレカ……こうなりたくないから仕事を頑張っていたとリアルの自分に言える底辺の底辺が其処にいた。

 

 

「そんなにいわなくてもいいだろ~……ヒィック……いいかおっさん、俺はな、道を踏み外そうとしている漢を親切心からただそうとしてんのよ」

 

「ほほ~、そいつはありがてぇ……くだんねぇ理由ならぶっ飛ばす」

 

「その振り下ろす寸前の拳下げてくれませんかね?今回は俺が正しい、ただ常識を失いかけているおっさんに物事の真理を教えるだけだ」

 

「……なんだよ?」

 

「飲み屋に飲みに来て何が悪い!!」

 

「金を払えってんだよ!!」

 

「いっっったぁ!?」

 

「アチャー」

 

 

 アインズはつい、その男の駄目っぷりに声が漏れてしまう。

 

 

「どうしましたモモンさ―――ん」

 

「なに何でもない、先をいそ」

 

「うぷ――――――あ、いかん。吐きそう吐きそう。殴られてマジきつい。つわけで、うぉーいそこの黒髪の姉ちゃんちょっと介抱してくんね?出来れば気兼ねなくエロいことさせてくれるとなお最高、ただなら君こそ僕の女神。オーイェーイ!!ひゃーっ、ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ――――――おえっぷ」

 

「黙れ、下等生物(ナメクジ)。身のほどをわきまえてから声をかけなさい。舌を引き抜きますよ?」

 

「うわー、ないわー。今どきツンデレとかないですわー。需要なさすぎマゾくんにしてろマゾくんに、あいつゼッテー喜ぶわ……ごめんお姉さん、ありすぎてアイツの守備範囲外だわ。だから俺におなしゃーす!!」

 

「なんなのですかこの下等生物(ウジムシ)は!?」

 

(これでさらに絡み酒とか、マジで駄人間じゃん!?)

 

「ンンッ……君、こんなご時世だからこそ強く生きなきゃならない。酒がいけないんじゃない、酔って苦しみを忘れようとするのもいいだろう。だが、希望を失ってはいけない」

 

「希望もなにも小煩いアイツがいない今がちゃんすなんですー、ほっといてー」

 

(こいつ……落ち着け、相手は酔っぱらいだ。一々気にするだけ無駄だ。けど、自分で言うのもアレだけど、英雄モモンを前にこの態度ってどうなの?酒の力って怖いな。よし、このまま引き下がるのはなんか癪だ)

 

「大切な人はいないのか?例えば彼女……いるはずないか、家族はいないのか?」

 

「あ、僕妻子いるんで」

 

 

 ――――――こいつううううううううううううううぅぅぅぅぅ!!!!??

 

 

「……そ、そうか。なら余計に頑張らないとな、おっと急ぎの用事があるんだったな。君の人生は君だけのものだ。後悔しないよう考えて行動するといい」

 

 

 ナーベラルを連れて冒険者ギルドに向かうアインズは、先ほどの衝撃に震えていた。

 

 

(うそぉ……アレでたっちさんと同じ妻子持ちの勝ち組だと?にわかに信じられん。顔なのか?それともああいうのが母性を擽るのか?……ペロロンチーノさん、母性ってなんですかね)

 

 

 尋ねる相手を根本的に間違っているアインズは、酔っ払いの存在を忘れ、そもそも母性ってなに?と悩むのであった。

 

 

(ええいらちが明かない、そうだよあんな酔っ払いどうでもいいじゃん。ん?ギルドが騒がしいな、緊急って何があったんだ)

 

 

冒険者ギルドに訪れた英雄モモンに、いつもの受付嬢が駆け寄ってくる。その様は、混乱してどうすればよいのか分からず体は震え、怯えている。

 

 

「も、モモン様。来ていただきあ、有難うございます。その、あの……」

 

「一旦落ち着いてください。何があったんです?」

 

 

呼吸も落ち着けずオロオロする彼女の肩に手をのせ冷静になるように促す。英雄モモンに触れられ恐怖が少し引っ込んだのか、深呼吸をし、起きた事実を述べるべく口を開いた。

 

 

「エ・ランテル冒険者組合長プルトン・アインザック様が……アインズ・ウール・ゴウンの手の者に殺されました」

 

 

――――――え?

 

 

「な、何かの間違いではないのか?この私がいるのだ、そう思わせる偽者かもしれない」

 

「詳しい話は実際に見て貰った方がいいかもしれません、此方です」

 

 

 いつもの階段を上り、モモンとして対面する応接室を越え、組合長室に踏み込む。

 

「……」

 

 

 アインザックは、アインズ・ウール・ゴウンとの約束である全く新しい冒険者や組合としての在り方に共感し協力を誓ってくれた。共に同じ夢を共有し実現するため今日も頑張っていたのだろう。羽ペンを握りしめたまま座席に深く座っている風格は今にも忙しく動き出しそうで――――――首が書類を汚しテーブルの上に転がっている。

 死ぬ瞬間まで気が付かなかったのか、その顔に苦悶の表情はなく、意識が気付く余地もなく死んだ事を物語っている。

 

 

「……アインザック」

 

 

 アインザックを殺した後に描いたのであろうか、死体の血で書かれた文字が天井に刻まれていた。

 

 

 "彼は私の気分を害した。我が名に恐怖を刻め、これが愚か者の姿だ

 

                    アインズ・ウール・ゴウン"

 

 

「人の仕業とは思えません……紅茶を酌みに少し離れている間に……こ、こうなってて……」

 

「分かった、もういい。少し身体を休めると良い、だが、その前に一つ訊ねたい」

 

「……はい、なんでしょうか?」

 

「このことを知る者はどれくらいいる?」

 

「それでしたら、もう遺体を調べた魔法組合と冒険者組合全員と話を盗み聞きしていた冒険者も含めますと、詳しい人数までは……」

 

「そうか、すまない。私はこの部屋を調べさせて貰う、暫らく誰も入れないでくれないか?」

 

「そのくらいでしたらお安い御用ですモモン様」

 

 

 扉を閉ざし、部屋から遠ざかるのを確認する。モモンはもう一度首が無残に斬られたアインザックの遺体を眺める。哀しみはない、ガセフを失ったときと同じく勿体無いと感じもする。だが、それ以上に――――――

 

 

(なんだ――――――この喪失感は。ああそうか、楽しかったんだ。ナザリックと違って俺の言葉に否定もするし突っ込みもしてくれる。この世界に来て、一番ギルメンみたいな関係が築けていたんだ)

 

 

 その関係は損得も種族も超え、夢へ目掛けて駆けていく対等な協力関係だったんだ。

 アインザックでは、蘇生をしても灰になってしまう。

 彼の死は、アインズ・ウール・ゴウンの盲点を突いた。

 

 

(デミウルゴスを失い、俺はナザリック以外見えてなかったんだ。アルベドもパンドラも基本ギルメンとナザリック以外どうでもいいと思っている。仲間を失ってそれ以外の注意が疎かになりすぎた。これは――――――まずいかもしれない)

 

 

 この殺人は、一晩でエ・ランテル全住民に爆弾を埋め込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダメ男、穀潰し、無職、底辺のマダオと罵られた酔っ払いの男は、完璧に酔っ払いながらの千鳥足でふらふらと、でも確実に合流地点に向かっていた。

誰もが思うまい、アインザックを殺した無音殺人術(サイレントキリング)を実行した実力者が、こんな屑とは本当に誰もが思うまい。

限界が来たのか、道の端で虹を咲かせながら暗殺者ゼファー・コールレインはその場に座り込んだ。

 

 

「もう駄目死ぬ……きもちわるぅ。あたまが死ねる、のみすぎた」

 

 

 安っぽいラベルの空瓶を抱きかかえ、何の違和感もなく堕ちに落ちたスラム街の住人の仲間入りを果たしていた。そのままほって置くと寝なれたように路上で寝てしまう男の近くを、偶然通りかかった行きつけの店の店主が声をかけた。

 

 

「おいおい何してんだおまえは、治安が良くなったって言ってもマジでのたれ死んじまうぞ」

 

「あああぁああ~?おっちゃんじゃんどったの?」

 

「どったのじゃねーよ。はぁまあいい、店の一室貸してやるからそこで寝てろ」

 

「マジすかおっちゃ~んちょー助かるわ。借りは何倍にもして返しますとも!」

 

「調子いいことこきやがって、期待せずまっててやらあな」

 

 

 常連客でもあるツケを貯めまくっている男に、店主は肩を貸してやり背中を擦ってやる。よちよちと店に連れてこられた男は、移動中にさらに三度虹を咲かせたため楽にはなったが頭に響く頭痛が苦しめる。

 

 

「ほらよ水だ、これで少しはマシになったろ」

 

「いや助かったわ、いやマジこう見えて()()()()()()()()()()()()心身諸共疲れ切ってたわけよ」

 

「なるほどな、()りゃ()()()()()()。つうかそれなら日頃のツケを払え。払うよな。酒を馬鹿飲みできるなら払え」

 

「任せとけ、今回はたんまり貰ったから余裕でいける」

 

「その言葉、俺は信じていいんだよな、な?」

 

「そんな真顔で聞かんでも……」

 

 

 この店の良心で溜まりに溜まった約二ヶ月の無銭飲食が祟ってか、店主――――――アルバートのおっちゃんは肩を掴みながら財布具合をこれでもかと疑っていた。

 

 

「安心するがいい、明日の財力は滾っておるわッ!ふ、ちゃんとマネー払い(情報伝え)に来るから」

 

 

 本日は閉店。この街に潜むスパイと暗殺者は見事なほど、ナザリックの情報網には引っかからない。向こうも思うまい、こんな負の人間と負け犬ばかりの溜まり場が敵の重要拠点など。アルバートは店の一室である地下室にゼファーをつれていく。

 

 

「……もう猿芝居はいいぞゼファー、ここの安全は保証してやる」

 

「今一信じらんない、だって英雄閣下より化け物の大魔王の支配する都市っしょ?俺らの知らない手段で盗聴されてたら終わりだ」

 

「そうかもしれんが、これが深謀双児(うち)の限界だ。多少は信用してくれ」

 

「天下の隊長殿がそこまで言うんなら俺としては安心だけども」

 

 

第三諜報部隊・深謀双児(ジェミニ)の隊長。諜報機関を束ねる長。それが――――――アルバート・ロデオンの裏の顔。

 

 

「で、実際どうなのよ。何かつかんだわけ?」

 

「それがさっぱりでよ、ここまで用心深いとお手上げだ。敵の大将アインズ・ウール・ゴウン、女幹部もしく伴侶の可能性があるアルベド、伝説のドラゴンを従えるダークエルフの双子、同じく幹部クラスと思われる漆黒のモモンが討伐したほにょぺにょこ、そして、うちの大将がやっつけちまったヤルダバオト。敵の本拠地と思われる大墳墓を帝国の記録から発見できたが、あんなのがゴロゴロいるとなるとうちの大将がどれだけ強くても進軍を止めるよう進言した、てか忠告してやった。てめぇが無事でも周りが死ぬぞってな」

 

「そりゃいい、さいこーんな化け物どもなんてほっといてのんびり酒と女」

 

「おい聞こえてんだよたくよお、隊長と娘にチクるぞ」

 

「それだけは勘弁してくださいお願いします。何でもしますから」

 

 

どんだけ嫌なんだこいつはと、頭部を右手でかきため息が溢れる。

 

 

「そうそう、こっちの英雄に会ったぜ、なんつったか……も、モモン?」

 

「おうマジでか、近々接触してみる計画が上がってるからな、どうだった?お前の目から見てうちの大将と比べてよお」

 

「いやそれがさ……普通だった」

 

「普通だっただあ?」

 

「ああ普通、一般常識も感性も性格も真面目って部分以外普通だったんだよ。俺はいつから英雄相手にあんな舐めた態度とれるようになったんだろうな」

 

「一般市民に近い英雄ってことか?クリスが、酒や女を嗜む超社交性があるって考えればいいのか?」

 

「うわ何それ、いつから英雄はそんな当たり前になったんだよ。正論を正論で実行し、自分も正論で固め続けて歪んでんのが英雄だろ?」

 

「それ偏見が過ぎないか?」

 

「英雄様の評価なんてこんなものだろ、まともな精神でやれる簡単な役職じゃねーよ。ほんとなんだありゃ?英雄?最初気付かなくて普通に絡んじまったよ。どうなりゃああなるんだ?総統閣下と同じくらい強いらしいじゃんそっちの調べによれば、あんなのは、努力もせずに生まれもった瞬間から幸せな普通の世界で育って、俺らとは天と地ほども離れた才能と性能で瞬間的に今が出来上がった、今もある意味歪んでるよ。そんな力があってどうしてあんなにも普通なんだよ、おかしいだろ」

 

「おまえ家族と自分以外にとことん厳しいな」

 

「そんなもんだろ、おっちゃんだって総統閣下がばんざーいばんざーいの人っしょ?反対するヤツは頭がおかしいって」

 

「俺はそこまで贔屓はしてないつもりだ。俺はいつまでも、アイツとは対等で在りたいんだ」

 

 

英雄の親友は大変だ。それだけに、仰ぎ見るんじゃく対等でありたいと願っている。同じ土俵じゃ英雄はその力で突き進む、決して追い付けない。なら、別のジャンルなら対等であれると信じてここまで来た。

そう、アルバート・ロデオンは今も昔もただの友達としてクリスを慕っている。もはや誰も知らない英雄の人間としての素顔を知るのはもう彼しかいないのだ。だから当然クリスの悪口を言われれば怒るし、共感できる部分は納得し頷く。

英雄(あれ)は確かに頭がおかしいのだ。

 

 

「それと、漆黒に接触するのは控えた方が良さそうだ。俺の感覚だから爺さんほど正確じゃないけどな」

 

「なんでまた、人柄は問題ないんだろ?」

 

「鎧を軽く叩いたとき違和感があったんだよ、軽い音?金属反響なんて専門じゃないからあれだけど響いたんだよ。おかしくねえか?てか、今日の僕おかしいって言い過ぎて顎疲れてきたわマジで」

 

「顎なんてどうでもいいがそりゃ本当かあ?」

 

「マジマジ、まるで空洞ってくらい響いてた」

 

 

それなら別の視点が見えてくる。アインズ・ウール・ゴウンの行動も漆黒のモモンの行いも、全く別の視点で見方と考察が逆転する。

 

 

「ああいやだねーこんな最悪な情報、俺あの四人の前で報告するんだぜ?胃袋足りないっての、マジめんどう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――総員、整列」

 

 

 ギルベルト・ハーヴェス、ローブル聖王国の亜人侵攻の最前線を支える二大巨頭が内の一。先の悪魔討伐では二つある結界装置の守護を務めていた。その聡明な予見は未来予知に等しく彼の予測を超えた存在はヴァルゼライド閣下以外いないとされている。そして、聖王国を束ねる隊長が肩を並べ非公式の会議を開いていた。

 

 

「最低でも一ヶ月は様子見をすべきぃ?あたしは別に文句はないけど、なんでまた」

 

 

 ヴァネッサ・ヴィクトリアは気だるげに咥え煙草をふかし眉を顰める。

 

 

 

「当然な結論だ。我々は怪物組織の幹部の一人を奇襲とはいえ倒してしまったんだ、むこうは当然警戒する。此方も敵の全貌を未だに掴めずにいるが、彼方は此方の情報を一つも掴めてはいないのだ。そのアドバンテージを活かさずしてどうする。それにあの場は様々な実験や材料を調理、または育て加工するために必要不可欠な飼育場だったのではと私は予想する」

 

「要は暫く鳴りを潜めて大人しくしていろと言いたいのだろ?その案には賛成だが、情報収集は色々やらせてもらうぞ」

 

「ああ構わないとも。君の働きが閣下のプラスになるものだと私は信じている」

 

「んーでも勢いは此方にあるんだ、敵の生産地?を、破壊したならこのノリで攻めこむのもまあ一つの手だな」

 

「そうしても閣下なら必ず勝つだろうが、私たちと部下の命の保証は絶望的だな。それに、被害が広がるのは閣下の意思に反する」

 

「ならこの一ヶ月は情報収集に集中するのか?」

 

「ふむ、だが一ヶ月はあくまで予定だ、ここは臨機応変に裏工作の結果にて最適な時に闘うに限る。何をしているか知らないが女神(アストレア)の采配でことが早く動き出しそうだ」

 

「まるで私が何をしているか知っている口ぶりだな審判者(ラダマンテュス)

 

「知らないとも、閣下の期待を裏切らない君を信じているのだ」

 

「閣下閣下ときもいぞおまえ、少しは自重したらどうなんだ?」

 

「これはこれは私など、君の恋路に比べればまだまだだよ。私は所詮未熟者、二流の凡俗だ。閣下に到底及ばない 、故に誰もが胸を張り正しく道を歩めるよう精進するのだ」

 

 

 こいつ、重傷過ぎてもう駄目だと女性陣(?)の視線が交差する。

 こんな時にも牽制し、己の我欲で動く彼らのそれは人の本質、宿業(カルマ)とも呼ぶべきものが深く絡んでいる問題である。

 組織とはそういうものだし、それがない集まりなど存在しない。

 逆にそれを捨てた者は、もはや人間という分類から外れていると言えるだろう。

 聖者とは既に、人類種から逸脱している。

 そうだから――――――

 

 

 断じよう、彼だけはそれがないと。

 何事にも例外は存在する。

 正義の具現とは現象であり、平均値を大きく超えた存在はその時点で光輝く英雄(化け物)となるのだ。

 我欲、獣欲、含有率は等しく零。

 身に秘めるは武装した鋼の心、その一点。

 己は民の盾であり、己は人類の剣であり、己は運命を裁く者だと――――――不屈に煌めくその魂が宣している。

 鋭い眼光は太陽より熱く、鋼鉄よりなお重めかしい。

 

 ローブル聖王国第三十七代総統、クリストファー・ヴァルゼライド。人類を守護する鉄の摩天楼を統べる王が、深く、静かに、言霊を発した。

 

 

「――――――意見は纏まったか。案ずることはない。おまえたちの願い、正当ならば無下にはさせん」

 

 

 瞬間、音が消えた。

 三隊長は口を閉ざし、静かに次の言葉を待つ。

 

 

「専門外なことに口を挟むことなどはしない。俺もまだまだ未熟者、専門家の意見を仰ぐのは当然だ。当面は貴官等の優秀さに世話になる。それ故に、計画に完璧などまたないのだ。故奴らが無差別に、計画的に人を殺しだしたとき――――――否、させんよ」

 

 

 否と、つぶやかれた小さな声に宿るは灼熱。

 

 

「奴らはすべて、一人残らずこの手で斃す――――――奴らの犠牲者はすべて、俺の不徳の致すところ。すべてを守れぬ時点で負けているのだ」

 

 

 英雄の心の内は誰にも分からない、だが、チトセは直感した。

 

 

「故俺はもはやお前たち一人一人と向き合う覚悟を決めている――――――"勝つ"のは俺だ」

 

 

 英雄は――――――英雄を超える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







キャラクター口調が心配だが、多分大丈夫な筈。
戦闘シーンの方が書きやすい……会話フェイズむずいです。

話は変わりますが、活動報告で『シルヴァリオシリーズで登場してきてほしいキャラ』を募集しています。詳しい内容は各自でご確認ください。
締め切りは、今月一杯としときます。研修で忙しくなりますので、意見を纏めつつ書いていきたいと思います。

それと、作者の持論ですが、三話を超える小説は短編ではない。変更します。
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