最強最大の天体ブラックホール。この言葉に嘘偽りはない。
科学の発展した『鈴木悟』の地球科学。
ユグドラシルのワールドモンスター。
ワールド級アイテム。
世界の調律者竜王。
ブラックホールに呑まれた。この銀河に存在するあらゆる物質は、それに関する情報を破壊して経過を隠してしまい、そこから出てくるものは同じものになる。
一説には銀河の中心にあるとされるブラックホールこそが世界の始まりにして終わりを司るとされている。
事象の地平面は越えられない。
ガンマレイだろうと光だろうとブラックホールからは逃れなれない。
故に――――――もしも、もしもブラックホールの超重力から脱出でき、破壊も可能なナニかがあるとすれば、それはこの世界にはない超越した別次元の法則。そんなあるか分からない異界法則にしか可能性はない。
だからこそ、『鈴木悟』は恐怖する。
どんな経緯と理由があれ、最強は最強なのだ。この宇宙最強最大の天体が、異界法則とはいえ一睨にて重力の影響を残すことなく完璧に破壊する光景は、デタラメとしか言いようがない。
「クリストファー・ヴァルゼライド……どこまで邪魔をすれば気がすむんだ?俺が創る宇宙に不幸はなくなる。自分達が納得出来ないからって、人々の幸福を取り上げる権利はないはずだ。皆が、過去と未来を求めている。辛い現実に明るい未来を。思うように行かない現在に楽しかった過去を。たったそれだけなんだよ。俺に言わせれば、お前たちこそ死んだほうがいい。確かに憧れるよ。俺も同じようにって、あの人の役に立ちたいって突き進める。でもな……強烈な光は身を滅ぼす。物語のような英雄譚はな、物語のままで十分なんだよ」
『鈴木悟』にはたっち・みーが丁度いい。
光の奴隷の強烈な正しさもなく。
人が人として生きる上で、誰よりも正義の味方で居たいと願い続け、理想を追い求めた只の人。
『鈴木悟』は実感する。
どんなに頑張っても正しく成れない人だからこそ、その理想を体現する姿はかっこよくて、美しいて、憧れる。
清く、正しく、絶対の存在——————理想が肉体をもって現れて、正常な思考を保てる人は果たしているのか?
完成した光など、怠け者を断罪する刃でしかないのに。
「うんざりしたよ。ああ、お前たちを見ていてやっと実感できた。その絶対の正しさが俺を苦しめる。光の完成形を前に自分もそうしなくちゃって思えてくる。そうなれたらって夢想する。間違っていない。皆がそうなれたらそれは素晴らしい世界かもしれない。だがな、正しい事が出来ないのが人間だ。自己正当化し、ちょっと悪なことや、闇とか血とかドイツ語カッコいいなと思うのが『鈴木悟』だ」
寄り道もする。
挫折もする。
嫌なことから目をそらして忘れようとする。
酒や煙草……できれば女も欲しい。
休憩して、遊んで、騒いで――――――そして。
「——————俺の幸せは俺だけのもの。光なんかに奪わせはしない。来いよ
何処までも自分勝手に。幸福を欲しい欲しいとねだり続ける姿。故に、この男は一切の容赦なく断言する。
「言いたいことはそれだけか?どれだけ正論を並べ立てようと咎人の罪は永劫消えはしない。……人々の幸福?言うに事欠いて俺の幸せだと?矛盾していると何故気付かん。貴様が神になったとして、思い描く世界は言葉通りにはならない。そもそも何億人と回帰したあとどうなる?それぞれの過去を回帰した者同士で永劫潰し合う世界が誕生するだけだ。自分の都合のいい未来というのは結局のところ別の敗者が生まれるのだから。貴様の思い描く世界は一つの世界に収まらない。遠くない未来、世界は破綻する」
『三人もいてその結論なの?貴方のそれも結局はその場しのぎの極論よ。最後は誰も救われない』
「——————どうでもいい」
「……なに?」
「どうでもいいと言ったんだ。この世界がどう傾こうと、元の世界に帰る俺には関係ない。確かに罪悪感は消えない。殺した感触は今も手に残っている―――———だから、幸福を掴み取る。俺はもう諦めない。我が儘に、欲しいものは欲しいと生きてやる。他の奴も邪魔してくる?好きなだけしてみろよ!!俺は絶対に百年だろうと何千年だろうと諦めない!!俺は一人じゃない……アルベドとパンドラと一緒に過去も未来も幸福に生きてやる!!」
『
「ふざけ————――」
「フザケテイナイ!!……いいかヴァルゼライド。王道だけを歩んできたお前には絶対に理解できても共感は絶対にできない!!他人の幸福より自分の幸福が大切に決まってる。俺もそうなだけだ」
もう語る言葉は無い。
総じて英雄譚の最終戦は語り合いでは終わらない。
英雄と魔王――————相対する者が向かい合った時点で、
だから、『鈴木悟』の本音はい今すぐ逃げ出したい。
一つの宇宙そのものの凶悪な波動を垂れ流す
(あれはダメだ。死ぬ。殺される。ユグドラシルの基本戦略が意味をなさない)
基本戦略は何よりも情報収集が最優先。リスクを嫌い、事前準備にかなりの手間をかける。情報を得るためなら、相手の攻撃を一方的に受け続けることで敢えて初戦を落とし、得た情報を分析して次の戦いに活かす戦法を取る。モモンガの時は3回戦って2勝したほうが勝ちという自分ルールを選択している。モモンガのPvPの勝率は5割。
ぷにっと萌え直伝の『誰でも楽々PK術』は、相手の情報をとにかく収集して、奇襲で一気に終わらせる戦い方。これがギルド:アインズ・ウール・ゴウンの基本戦術になっていた。
『鈴木悟』にとって初見は鬼門。しかも、一度死ねばそれまでの敵にどうしても怯えてしまう。
逃げても一緒だ。世界級アイテム:『諸王の玉座』は破壊され、『英雄』は何があろうと追いかけてくる。
ならば――――――
「——————ッ!!」
超重力による強制的な短距離ワープ。無理矢理空間に穴をあけ、無理矢理体を押し込む事で成り立つ無詠唱・無MPによる理論上無限に使用可能な技。ブラックホールに身を投げ出すに等しいこの技は『鈴木悟』以外は誰も耐えられない。
化け物からひたすら距離を保ち続ける事が『鈴木悟』の勝利への必須条件。接近戦闘に持ち込まれた場合
軍靴の重心が爪先に傾くのと同時に、ヴァルゼライドの死角となる二十メートル後方へ跳ぶ。
右人差し指をかざす動作で発生する一万倍の重力と重力波。
重力波は、周りの時空(時間と空間)が歪み、波として光速で宇宙空間に伝播する現象。『時空のさざ波』とも呼ばれるそれは、あらゆる防御を無視し時空の亀裂で敵を排除する。
重力から逃れる術無し。
「……小賢しい。貴様のような小物はすぐ嘘をつき安全だと過信する背後を取りたがる」
予測通りと真後ろへ踏み込んでいたヴァルゼライドは、重力の攻撃と同時に重力の安全圏である『鈴木悟』の懐に入り込んだ。紙一重に回避する暇のないそれを、時間移動により二秒後の未来へ逃れる。
「堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ――————このご都合主義の塊がァアアアアアアアアアアアア!!」
上から下へ、第十層から八層までを巻き込んだ一万倍重力。
重力の恩恵を否定することは不可能。
加速的に落下する地層の波濤。
もはや躱せる暇はなく、いなせる隙間もありはしない。しかし――————
「———―――温いぞ」
真っ向迎撃。あろうことか超重力、超荷重の大地をただの一振りでぶち壊した。
天を貫く
刀身に付属した
「
短距離ワープを連続で繰り返しながら、自分の時だけを加速させる。
十倍速まで加速した『鈴木悟』は、十秒遅くなった世界で思考する。
自分だけが加速する世界は、酷くゆっくりで、周囲と敵を冷静に観察し、作戦をたてる猶予を与えてくれる。
(同じ領域の戦い。どんな反則的な力を身に着けた?集束性の行きつく先に何がある?)
level100のPvPと一緒だ。同じでも全く違う。強さの土台が違う。力の方向性が異なる。同じ領域同じlevelだから個性が出る。
(ブラックホールと重力をどうやって無力化した?どれだけ光を集束しても物理攻撃で消えるものじゃない)
重要なことを見落としている。時間を操るとは世界に干渉するのと同義。ヴァルゼライドが能力を行使するさい世界の悲鳴を聞いてるはずだ。
「同格に効くのか?——————
防御不可の時間概念。弱点を探るための時間停止。
凍結した世界で動けるのは、
違和感の正体を探るべく無造作に近づこうとし――――――後ろへ逃げた。
時間停止は成功した。
だが、いや――――――やはりと言うべきか。
光剣が激しい煌めきを見せた瞬間、凍結した世界が消し飛んだ。
世界が正常に動き出す間隙に放たれた不意打ちの引力も重力さえ、もはや光剣を振るうことなく触れただけで不発に終わる。
引力も重力も時間さえ破壊するやりたい放題。森羅万象を蹂躙する『英雄』。
「そんな――――――ありかよこのッ……!チートが!!」
だから一言、そう吐き捨てる。
ならばもう容赦はしない。
何処までも付き合ってやると覚悟する。
「
そして、
時間移動――――――過去と未来を何よりも求めている彼だからこそ、その力は強大。
周囲を巻き込み時が遡っていく。
「——————!!」
気付いていしまう。察してしまう。これは
「一度誕生した星を無かった事にするのは、可能か不可能か……やってみないと分からない。試してみる価値はある」
絶対に正面から馬鹿正直に戦ってはならない。搦め手でチャンスを待ち続けろ。
逆行する時間。気付いた時には手遅れ。先程至ったばかりの
ヴァルゼライドとティアの繋がりが戻ろうとする。ここまで来れば覚醒など無意味。覚醒、進化、出力を上げようと遡る時には敵わない。
人間へと戻る――————刹那に。
「——————いいや、
―—————轟く気合いの大喝破が、遡る時を木端微塵に粉砕した。
時間が砕ける。
停止した時を突破するのとは訳が違う。流れにのった時間概念を硝子のように粉砕したのだ。
遡る時を、自分が通りすぎた絶対なる過去という事象そのものを破壊した異常極まる様は、まさしく、万象の否定であり、因果の蹂躙そのものである。
そう、この男は――————精神力で過去の
「気合いと、根性……」
想い一つ、心一つ。
本当にただそれだけを原動力に
そんな頭のおかしい現実の前に、ついに『鈴木悟』は真実を知覚する。
『鈴木悟』と同じ——————否。
光剣に渦巻く凝縮されたエネルギー。文字通り刀剣に太陽を押し込めた様な空前絶後の密度を知覚。
集束、集束、集束———―――同質量のエネルギーを肉体にも宿した圧縮された嚇怒の結晶。
理屈は
集束された
「光速の、突破……因果律崩壊能力……?」
これこそが、悪の敵。
悪を根絶やしにする破壊者の極限である。
極限まで集束され、因果を砕く光速突破の殲滅光。
「——————往くぞ」
鳴り響く破壊音。空間を削るように、疾駆した軌跡から次元の位相に亀裂が走る。
光速突破を果たし、今も激しく銀河のように渦巻いている。
桁外れの大質量と大密度に、次元はもはや耐え切れない。森羅万象を掘削する。
そんな、男なら一度は妄想する最強能力。
因果律崩壊能力も因果律改変能力も全能やらは考察され尽くされている。
「森羅万象の破壊……確かに脅威だ。世界をルール事破壊する出鱈目。だが、要するに一時的な無力化みたいなものだろ?御大層に世界を壊してはいるが……それだけだ。時間からは逃げられない。壊せるものなら何度でも壊せ。俺は、何度でも繰り返す」
戻る時間が一秒でも、百回繰り返せば百秒。千回繰り返せば千秒。
睡眠も疲労とも無縁な肉体。人間へ戻るその時まで抗ってやる。
常時発動なら詰んでいた。
時間を常時破壊する存在がいたとすれば、その存在は何処にいる?
過去からも現在からも未来からも切り離されたそれはどうなる?
「時間停止は無意味。時間加速は寿命を迎える前に連続覚醒で詰む」
耐えて、耐えて、耐えて、耐えて——————耐えるしか勝機はない。
因果律崩壊能力も因果律改変能力も全能も考察され尽くされて出された対処法は、同じ力で戦うか、その力に対しメタをはれる能力しかない。
「想像がすべて現実になる能力とか欲しいな……けどそれで幸せな世界を想像しても結局は一人紙芝居。全能者って凡人が持てばただの迷惑な人じゃん。ま、そこは俺も似たようなものか」
ヴァルゼライドの時間を戻し。
時間加速と短距離ワープで逃げ続け。
ときおり引力と重力をぶつける。
この工程をひたすら繰り返す。
いつか破壊が遅れるのを願い―――――『英雄』の失敗を願って繰り返す。
これしかないから。
接近して戦う術がないから。
一撃くらえば自分は終わると確信しているから。
ゆえに――――――これで詰み。
経験値を最適化していく『英雄』に失敗を願った時点で、この結果は必然だった。
「――――――終わりだ。貴様は正しく、悪の敵だった」
「——————」
静謐に世界が静まり返る。
因果律崩壊の一閃は、ただの一撃で『鈴木悟』の
「……負け、か……くやしいなぁ……勝ちたかったなぁ……今度こそは、後悔しない様にって、俺たち三人なら………………ごめんな」
「いいえ、謝るのは此方です。私はナザリック以外では愛しか知らない女。知らないうちにサトル様を追い詰めて、けれど――――――本当の愛を知ることが出来て……ほんの僅かな時間でしたが、好きな人と本当の意味で未来へ歩めた事実に、私は満足してます」
「ありがとう……アルベド」
本当は悔しいはずだ。始まったばかりの旅路が、スタート地点で詰んでしまう。
始まりの街でlevel1の冒険者と初めて戦うのがラスボスとか酷すぎる。
だが、アルベドは優しく。最後は一緒になれただけで満足と言ってくれる。
「ンー……ここまで整えた舞台がバットエンドゥ!!王道に飽きて魔王いい奴英雄やな奴てきな物語は、一時のブームにはなりましょうが真の王道たる英雄譚には敵わないということですね!!サトル様が過去で何をするのか、どうやり直すのか、世界をつくり変えた……その先の世界を観たかった!!体験したかった!!感じたかった!!支えたかった!!ン~即興の台本はダメダメですね。まさか『英雄』が一人の女性を受け入れるなど予想だにしてませんでした。でぇすが、ここまではっちゃけて台本通り進み、最後の最後でアクターなどと~くに及ばない
「ありがとう……パンドラ」
俺がここまでやれたのはお前の台本のおかげだ。英雄は必要だった。ショック療法で強い光が俺には必要だった。おかげで俺は、失ったものを取り戻す力を手に入れることが出来た。
結果は、俺が不甲斐ないばかりにこうなったが、最後まで裏方に徹してくれたお前には感謝しかない――――――息子よ。
斬り口から光のヒビが広がり
『鈴木悟』は崩壊する
NPCは肉体も魂も神が創造した。『鈴木悟』は神が器を造り、魂のみが器に定着している異訪者に過ぎない。
瓶に入った水が、小さなヒビから決壊するのと同じで――――――器に穴が開けば、魂が零れ落ちるのは自然の道理。
身も蓋もない言い方をすれば、完膚なきまでの相性負け。
『鈴木悟』がリアルの生身の肉体だったなら、他のスフィア同様致命傷さえ防げば戦闘は継続できた。
時間移動も因果律崩壊との相性最悪の時点でお察しであるが。
(なんだよ。こうやって振り返ったら勝てる要素ないじゃん。見届けて欲しいとかカッコつけて死亡フラグ立てるとかマジ笑える)
「……そうだな。何だかスッキリした。小卒で、ブラック企業で働いて、十年以上ユグドラシルに貢いで遊んで……終わったら異世界で……ははは、笑える。こんな俺がこの世界じゃ神様?しかもガチの唯一神狙えるポジションまでくるとか予想外だろ。ギルメンも結局一人いなくて、ギルドは無くなるし――――――なぁ『英雄』」
「……なんだ?」
「俺は……お前になりたかった。カッコよくて一撃必殺持ってて全力で限界まで努力する……そのカリスマも羨ましい。俺が――――――そうだったなら」
「やめておけ。この道には貴様が求める優雅さも、解放感も、優越感も何もない。あるのはただ、血に染まった一人の屑が佇むだけだ」
「ふっ……それでもだ。だけど、ほんと……色々あったなぁ」
小卒までの子供時代。友達は一人もなく、同世代は明日を生きるのに精一杯。
小卒して一人の社外人として生きた時代。ユグドラシルがなければ、『鈴木悟』はとっくの等に自殺していた。
MMORPGユグドラシル時代。俺の生きる全てがそこにはあった。
異世界転移。この時点で、『鈴木悟』は『鈴木悟』じゃなくなった。モモンガとして、アインズとして、アンデットとして、神の器に相応しい化け物になった。
だけど―――———ああ……だけど……
「楽しかった……うん。楽しかったなぁ。全力で頑張って、戦って、やりたい事に一直線……斬られた痛みで泣きたいけど……胸がとても軽いんだ」
光刃と化した刀剣は概念破壊の性質を激烈に帯びている。放つ刃はあらゆるものを両断して存在意義ごと踏み躙る
骸骨に涙腺は存在しないが、一般人である『鈴木悟』が耐えられる痛みではない。
惨めに痛みに地べたに転げ回らないのは、アルベドとパンドラの矜持の為に。二人が信じる『鈴木悟』が凄いんだぞと『英雄』に見せ付ける為に。
「……そろそろ時間のようだ」
概念破壊のヒビが全身に広がる。
『英雄』が『鈴木悟』を最大の脅威と認め、一人では不可能な希望を二人で奇跡を起こし掴み取った。客観的に英雄譚の魔王としてその役目を全うした彼は、どこか嬉しかった。
こんな凄い人に
「ゲームしか取り柄のない俺にとって、最大に名誉なことだ」
そして――――――細めた目は遥かな空を見据える。
「……俺は、ただ……もう一度…………ほんの一度だけ……」
もう届かない居場所に手を伸ばし――――――
「——————皆と遊びたかった」
言葉を最後に――――――魔王『鈴木悟』は、世界から消失した。
神の器が破壊され、魂が解放される。
経験値になることも、消滅したギルドに囚われることなく、砕けた器から三つの魂が空へと帰っていった。
彼らが何処に旅立ったかは、神のみぞ知る。
血飛沫などかまうことなく、四本の腕で使い物になる腕一本だけ武器を握りしめ、命を削り技を繰り出す。
見た目は、カマキリとアリを融合させたような直立歩行するライトブルーの2.5mの巨大な蟲で、背中には氷柱のような鋭いスパイクが無数に飛び出しているが、どれも中途半端に圧し折られている。
昆虫が外敵から守る外骨格『肉体武装』は、元は侍の鎧のようなビジュアルだが、斬られ、焼かれ、削られた彼の姿は細長いカマキリを連想とさせる。
「——————クァアアアアアアアアッ!!」
雄叫びと同時に更に加速する。創造主ザ・サムライこと武人建御雷の技術を吸収し剣の技を高め続ける氷の化け物。
刀の柄だけが握られ、無数の刀身を指揮する者。
規格外なことに、コキュートスは一枚一枚の幾億の刃をそれぞれ操作し、手足のように使いこなしている。
近接中距離遠距離をカバーし、一振りで大地を削り荒野にすることも可能。
空が飛べない不利を、一枚の刃に乗ることで縦横無尽に空を飛び回る。
今のコキュートスでは並みのプレイヤー処か、覚醒したセバスや新星になる前のヴァルゼライドすら勝てるかどうかというlevelまで強さの領域が引き上げられている。一つの意志の下戦場を蹂躙する差し詰め一人軍隊。
それでもなお――――――
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』
「ガァァアアアアアアアアッツ!!!!」
強大なる敵は、身動ぎ一つでコキュートスの総軍を削ぎ前進する。
強大なる敵は、宿敵を目指し最短に一直線に止まらない。
強大なる敵は、コキュートスを認識すらしていない。
「ぐぼぉが――――――ガアハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
歩く動作だけで、大地や山に抑えられない破壊を振りまきながら、弱者であるコキュートスは移動するだけの強大なる敵に、追い詰められながら、嗤った。
削る削る削る削る削る削る削る削る削る削る削るけずるけずるけずるけずるけずるけずるけずるけずるけずるけずるケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズルケズル――――――けず――――――
「アァ……ルベド。感謝スル。私ノ………………夢ハ叶ッタ」
今までギリギリ直撃を避けてきた破壊の波濤。規則性などないランダムに放出するソレが、ついに直撃する。
『幾億の刃』を総動員し相殺ないし威力を削ることかなわず――――――
「敵ワナイ相手ニ、全力デ挑ミ、死ヌ——————コレ程幸セナ事ハナイ」
アインズ様。至高の御方以上の力を持った絶対者に挑み、戦略も技も武器も闘志も熱も全てをかけて最高の高揚感を実感したまま敗北する。
創造主:武人建御雷は全てをかけて挑み、たっち・みーに敗北した。一度で良かったそれを何度も求めてしまった。ならば一度で満足するよう努力すべきだ。
コキュートスは最後の塵になるまで、挑戦者として挑む喜び。全ては無力だと否定する絶対な力に魅了され――――――満足して、一度の敗北を味わい尽くした。
クリストファー・ヴァルゼライドのステータス変更
基準値: B
発動値: AAA
集束性:EX
拡散性:E
操縦性:D
付属性:AAA
維持性:C
干渉性:D
大変お待たせしました。
国家資格を取るための勉強と10月後半にあった試験をつい終わらせて、ゆっくりでありますがオーバーロードを執筆してました。
此にてアインズ・ウール・ゴウンの物語は終わりです。
書いてて思ったんですが、このトンキチどうやって攻略すればいいんですかね(半ギレ
鈴木悟のスフィアトラベラーは他のスフィアと比べても強力でしたが、パニッシャーとの相性が悪すぎる。
いま思えば、オーバーロードで英雄vs魔王をえたらずに最後までナザリック終了を書ききったのは自分だけでは?と、ボブは訝しんだ。
もう一、二話で終わりますので最後までよろしくお願いします!!
今年までには終わらせたいけど出来るか?
ずっーと夜勤で、それでいて昼からも出勤しているから正直時間がないというね(笑)
仕事が終わったら帰って寝て、起きたら仕事の無限ループ……寝る時間短くして趣味の時間作ってます(笑)
感想のほどお待ちしてます!