「ハヒッ、クハハハハハハハハハハハッ!!!」」
ツアーに匹敵する敵を目の前に、邪竜は更なる覚醒を遂げる。これまでとは比べものにならない巨大な竜の咢は、街一つ飲み込むほどの大きさに。喰らうべくその牙をマーレ・ベロ・フィオーレへ振り下ろした。
「え、えい!」
可愛らしい声とは裏腹に、振りかぶったスタッフが邪竜の咢を木っ端微塵に破壊する。
パワー・オブ・ガイア――――――対象の力をアップさせるスキル。これを使いパワーアップしたマーレは剛力だけで山脈を破壊したのだ。だが、スキルはスキル。そう何度も連続では使えない。持続する間にマーレはダインスレイフ目掛けてデスナイトを投擲した。
二mの巨大が豪速球で迫る。ただの人間ならばこれだけで終わるが。
「オリャ!!」
ダインスレイフは普通ではない。真の竜と一つになった彼は、正に人の形をした竜そのもの。剛腕から繰り出す暴力がデスナイトを塵芥に――――――
「何だこいつァ!?」
一撃で殺されず、目前に迫る巨体を頭突きで対処する。額が割れ、血が溢れだす。首も負荷によるダメージで軋み始める。
「……どうやらそいつは二撃くらわせねえと駄目らしいな」
次々と投擲されるデスナイトを、瞬時に二本刺しにし圧倒的な脚力でジグザグに地面を蹴飛ばしながら回避、接近する。アーグランド評議国に進行していた異形の化け物ども総数10万は、この場の最高指揮官マーレの指示のもとダインスレイフに殺到する。この場の僕が無限にポップするなら、マーレが躊躇う必要などない。確実に削り殺すためにナザリック外の敵に一切の慈悲などマーレにはない。
ダインスレイフもまた一切のブレーキを踏まずに、全速力で駆け抜けながら、木々のような巨大な剣鱗を発生させる。ダインスレイフはまさに物質世界の覇者。有象無象がこの世に溢れている限り彼の支配から逃れる術は存在しない。この世界に縛られている限り、邪竜の鱗からは決して逃げられない。よって、ダインスレイフとの戦闘は距離を取ればとるほど不利になり、近づけば圧倒的な立ち回りに翻弄される故に――――――
「……
距離を取っても近づいても不利なのはダインスレイフとて同じこと。
似たような能力ならば、後出しの方が有利。完璧に決まったカウンター。
剣鱗の木々すべてがダインスレイフに牙を向け、流れ込む。邪竜の支配から解放された世界が、彼を押し潰す。耐久性が一切変わっていないダインスレイフの身体は、どんな攻撃だろうがlevel100の攻撃は耐えられない、ならば。
「いいぞ。もっとだァ、もっと俺を追い詰めろやァ!!その先にこそ
破滅の魔剣は覚醒し、更なる後出しで対処する。
圧する土砂を巻き込み、もっと地中深くの地層ごと竜を造り出す。その巨体は50mに迫り―――――
「
崩れ去る。周りの化け物を巻き込みながら何度も繰り返す、後出しジャンケンの猛攻。故に、この攻防を変える一手を持つのは手札を多く持つマーレ。広範囲の地震を発生させ、地割れにダインスレイフを突き落とす。
「
地割れの両方の崖から植物がダインスレイフの身体を拘束し、引きずり込む。
「
裂け目の奥底から天空めがけて炎の柱が吹き上がり植物もろとも燃料とし対象を灰塵とかす。燃え上がる炎の柱と共に、大地の裂け目が勢いよく閉ざされた。
「たかがそれ如きで斃されてやると思うな、この俺を!!」
三分の一が炭素化した身体で、地を踏みしめる眼光には一切の曇り無し。何ら変わらず化け物どもを
傷口から覗くダインスレイフの内部を見て、マーレが驚愕する。
「……た、ただの人間の癖に、自動人形みたい」
生物にあるまじき金属の骨格。冷たく無機質な鋼鉄が、肉へと食い込むように男の肉体を形作っている。
「そんな身体の髄まで機械ってわけじゃあねえよ。人体改造を合計三十七回……だがまぁもっとも大小ひっくるめた数ではあるが、吹かしとしては上等だろう?」
「じ、自分の身体を改造なんて……」
マーレにとって、創造主に作られた身体を自分の意思で改造する発想すらなかった。それは禁忌だ。NPCの領分を越えている。
嫌悪感が奔る。マーレは、姉と違いナザリック以外に対し一切の容赦も慈悲もない。顔だって二~三秒後に忘れるぐらい仲間以外どうでもいいと思っている。しかしそれは、油断や慢心、ましてや隙を作るなどはマーレには当てはまらない。与えられた役目を全力で本気で全うする。態度と口調で非常に分かり辛いが、彼はいつも
戦闘が始まってから、ばれない様に伸ばされた能力の糸がマーレに到達した。マーレの足元がせり上がりダインスレイフ目掛けて吹き飛ばされる。
「はわわわ!?」
「そのなよなよした演技、本気でやってんのか?態度と瞳が全く別もんだ。やる気を出せ!もっと本気を見せろや!!」
その思いは本気なのかもしれない。嗚呼分かるとも、俺はいつも本気だ。本気の野郎なら見ただけで分かる。ならば、余計に。
「その思いが本気ならァ!!さらけ出せやァ!!うじうじうじうじうじうじうじうじやってんじゃねえぞおおおおおおおおおおおッ!!」
「え、えい!」
パワー・オブ・ガイア――――――対象の力をアップさせるスキル。マーレは、正面から暴風を一撃で薙ぎ払った。竜の爪は全て破壊されたお陰か、その破壊衝撃は半減されたが、それでもlevel100の力は、ダインスレイフの身体の芯にまで無視できないダメージを刻み込んだ。
「――――――カハッ」
身体が停止し動かない。一秒にも満たない致命的な隙。ツアークラスの化け物相手に、一秒もあれば五~六回は御釣りが来る。
「ふん!」
無論、マーレは一撃をもってナザリックに仇為す存在を粉砕する。英雄に討たれる悪竜は、物語を外れダークエルフにその首を絶たれた。
「――――――フダケルナァ!!」
想い一つ、心一つ。気合と根性、ただそれだけで限界を踏破する。三分の一炭素化した身体が、崩れていく。衝撃は、骨や重要器官を徹底的に痛めていく。残りの寿命など関係ない、今ここで本気で勝たなければどうする?
成長している、進化している、覚醒している――――――止まらない。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「――――――ッ!!」
level100にまで覚醒した身体は、物理の限界を超え、完璧にマーレの一撃を回避し、物質変形で新たに創った竜の爪でその首を切り裂いた。
「――――――あぁ?」
その腹部に開けられた穴は、残された寿命を消費し、命を射抜かれ果てるのに十分。
マーレは、アインズから地形改変を任されるなど能力は高く、その実力はシャルティアに次ぐ守護者第二位、広範囲殲滅においてはナザリック最強であるが、接近戦はずぶの素人だ。どれだけ強化しても、その単調な一撃はダインスレイフに見切られ、危うくその首を落とし掛けた。
「お、お姉ちゃん、……遅いよ~ッ」
「仕方無いじゃない、あの瞬間が一番隙だらけだったんだから」
巨大なカメレオン、クアドラシルと共に姿を現したマーレの姉、アウラ・ベラ・フィオーラは、クアドラシルの能力で周囲の風景と同化し、スキル『影縫いの矢』で対象の動きを止め、鞭でその腹部を破裂させたのだ。
「念には念を入れよってご指示で隠れてたけど……なんだったのアレ?」
「ば、僕に聞かないでよ。僕が来たときは……level70くらいだったのに。最後絶対level100くらいいってたよ~」
「ああ~そうね、あの瞬間確かに並んだわ。この一回の戦闘でlevel30以上上げるって頭おかしいにも程があるでしょ」
アウラは、この戦闘をずっと見ていた。マーレは、その脅威を体験した。
どうにも信じられないが、気合と根性――――――本気の意思だけで強くなっていく
「この状況もニグレドを通して見てると思うけど、今回の敵は常識外にも程があるわ」
息絶えた残骸に生気はなく、乾いた唇に瞳孔が開いた瞳から死んでいることは確定している。蘇生アイテムも警戒したが、その予兆もない。
「何にせよ、私はこのまま軍勢率いて攻め込むから連戦だけどサポートよろしくね」
「りょ、了解……です」
アウラはもう一度死体を見る。強欲竜の残骸は微動だにしない。ただその顔は、死の直前に浮かべていた溢れんばかりの哄笑が硬直したまま張り付いている。
「……ほんと、何だったんだろ」
まるで、勝利を確信しているかのような残骸に、アウラは不気味な気分になる。勝ったのに、そうじゃない。矛盾を抱いた胸はモヤモヤしながらも次の任務に向け足を進めた。
――――――ドクゥン――――――
二人の背後から、あり得ない音が鳴り響いた。
命を失いし亡骸が突如として動き出す。あり得べからざる奇跡、生死の理の否定。邪竜の身体は世の摂理を超え、あろうことか今――――――まさか。
「――――――ッふ!!」
アウラは全力で背後の亡骸に鞭を撓らせその首を、マーレは炎の魔法でその亡骸を灰に――――――
「天昇せよ、我が守護星――――――鋼の恒星を掲げるがため」
悪寒、殺意、そして凶兆――――――漲り荒ぶる死の気配。紡がれる
スキルもアイテムも使わず、再誕の鼓動を上げた怪物に、二人は子供ながらの直感で距離を取ってしまった。
「美しい――――――見渡す限りの財宝よ。父を殺して奪った宝石、真紅に濡れる金貨の山は、どうして此れほど艶めきながら、心を捉えて離さぬのか。
煌びやかな輝き以外、もはや瞳に映りもしない。誰にも渡さぬ、己のものだ。
毒の息吹を吹き付けて、狂える竜は悦に浸る」
理性の判断を嘲るが如く、悪意の祝詞が天に轟く。
禍々しい祈りと共に奏でられるは歪みに歪んだ英雄賛歌。己を下した輝く光を呪いながらも、竜は激しく喝采している。
「その幸福ごと乾きを穿ち、鱗を切り裂く鋼の剣。
巣穴に轟く断末魔。邪悪な魔性は露と散り、英雄譚が幕開けた」
喰らえ、喰らえ、欲するままに――――――討ち滅ぼせよ、勇者共。
「恐れを知らぬ不死身の勇者よ。認めよう、貴様は人の至宝であり、我が黄金に他ならぬと。壮麗な威光を前に溢れんばかりの欲望が朽ちた屍肉を蘇らせる。
故に必ず喰らうのみ。誰にも渡さぬ。己のものだ。
滅びと終わりを告げるべく、その背に魔剣を突き立てよう」
自然を征服せし人意の信奉者は、ついには己が命さえも人造する。
渦巻く欲望が硬化して剣と化した。
ならば彼こそ邪竜にして魔剣、魔剣にして邪竜――――――生命体を超越した新たな異界ルールの導くままに此処へ暴力を具現する。
「
そして轟く、魔星の咆哮。
人類を、この世の存在から逸脱した怪物が、喜びと共に己が全霊を解き放った。
「
刹那、世界が割れた。その広大な広範囲に及ぶ巨大な地割れは、地平線まで伸びている総数10万以上の僕と共に、アウラ、マーレ、邪竜共々落下していく。
塔のような、山のような剣鱗が、地表を埋め尽くし、幅10km高さ、長さ不明の狭間で足場の役割を果たした。
マーレは一安心と溜息を吐くが、アウラは直感で理解した。否――――――まだ、この魔法は終わっていない。
「……喰らいつくせ」
竜の口内と化した地割れが、獲物を飲み込む――――――噛み砕いた。
巨大な剣鱗の影響で三分の二しか閉じなかったが、それでも邪竜を除くすべての獲物を捕食した。それでも。
「くっ……」
間一髪。三重で魔法を発動する『
剣鱗から抜け出し、邪竜が君臨する世界に立つ。
そこはまだ地表奥深く、邪竜の領域。今の攻撃で僕もペットもやられたアウラは、怒りに鞭を強く握り締め眼前の怪物をどうすれば倒せるか考える。けど、やっぱり。
「ふざけんじゃないわよあんたッ!!私のペットどうしてくれんのよ!!?」
言わずにはいられない。何だ、こいつ。本当に、何なんだこいつ?何がどうなったらこんなことになるんだ。
戦う前はlevel60前後だったのに、死ぬ直前にはlevel100まで向上し、死んで生き返ったと思ったらlevel100を越えたよく分からない存在になったこいつをどう形容すればいいんだ。
「俺も驚いてんだよ、まさかここまで上手く行くとは思っても見なかったからな。それじゃ、二回戦目と洒落込みますかねぇ」
いざ参らん。獰猛に哄笑し本気で踏み出そうとした時。
『あぁ~も~どうしてこうなるかな』
白金の竜王ツアーは予想外な事態に頭を抱える。頭も手もないんだが。
「俺が死んだら依り代の器として使うって約束だったろ?逆に利用してやったのさ。このぐらい想定しなくてどうする?」
『イヤイヤあり得ないから。僕とパスが繋がった状態から死んで肉体的縛りを一度無くすことで、僕が完全に君の身体に入る際一つにするなんて』
「俺も九割以上は賭けだったがな。何せ出来るかどうかさえさっぱりだったんだからな」
ファブニル・ダインスレイフが死ねば、すぐさまその
『……一度繋がった魂が、僕に引き寄せられたと考えるのが妥当か。君は今、僕の力を十全に……違うな。二つの魂が完全なる同一を果たす、それは未知だ。こんな事例が存在しない以上考えても無駄か』
もはや元の身体など三割程度しか残っていない有様だが、それによって手に入れた力こそ本望。
すべてに本気、だからこそ無敵。男は今やあらゆる
「成せばなる。あるがままに事象を受け入れ利用し活用しろ、ようはそう言うことだろ?大概本気で何とかすればどうとでもなる」
『………………そんなものか?』
「ようは理屈じゃないってことだ。よう分からんが傷が勝手に直るのは便利だ」
空けられた風穴も、三分の一崩れ去った身体も、その他致命傷の数々が一瞬にして盛り上がり、蠢きながら無傷の状態へ回復する。骨も、肉も、皮膚も臓腑も、まるで人体の創造過程を見るかのように内側からものの数秒で治っていく。
恐るべき自己再生能力。予想外の作用に、邪悪な竜は哄笑しながらそれを誇った。
無視されているアウラとマーレは、攻撃を加えるがすべて回避される。単純な攻撃はもう邪竜には届かない。
「ちょっとあんたぁ!」
「わりいな、現状確認は終わったところだ。ここからちゃんと相手にしてやる」
世界が揺れる。上下左右世界が動き出す。このバトルエリアで三人は、縦横無尽に飛び跳ね戦いを繰り広げる。
ここは邪竜の口内、圧倒的格上になってしまったダインスレイフ相手に食い下がり、反撃もできている理由は姉弟であるアウラ、マーレのパートナーとしての相性が守護者の中でも随一で、お互いの長所も短所も完璧にフォローし合えるコンビネーションが規格外の攻撃にも冷静に対処する要因にもなってはいるが、何よりマーレの相性の良さだ。
同じく世界そのものに干渉する能力は、怪物となり真なる邪竜へと変貌を遂げたダインスレイフの物質変型にも未だ有効。
それでもなお。
「本気してるか?成長しているか?進化しているか?覚醒しているか?オラオラどうした!?本気なら当たり前に覚醒できるだろォ!!」
「出来るわけないでしょこのアホォ!!」
「どどどどうしよお姉ちゃん、このままじゃやられちゃうよ」
アウラとて理解している。時間は稼げても倒すことはできない。ならばこそ、少しでも時間を稼ぎニグレドを通して見てる仲間に対策を取らせる。それは何時までなのか分からない。アウラは対人戦で切り札は持っているが、マーレ一人では火力不足。でも、自分達の命に変えてもコイツだけ――――――
「マーレ!」
「うん、お姉ちゃん!」
アウラは
天上に展開していた剣鱗を消滅させ、ダインスレイフへ降り注ぐ。一つ一つ、命中すればその部位が消滅し、強力な酸で溶けてしまう。
それを、急所に当たらない最小限の動きで正面突破してきた。
「少しは常識のある戦い方しなさいよねッ」
「え、えい!」
マーレが魔法障壁を展開する。level100でさえ、防ぐ魔法障壁を、ダインスレイフは剛腕だけで破壊した。
「……あ」
「お姉ちゃんッ!!」
眼前に迫る死を、アウラは回避する手段を持ち得ない。アドレナリンが時間を永く体感させる。今まで見たこともない可愛い弟の必死そうな顔は、新しい発見で嬉しくて――――――ぶくぶく茶釜様。ユグドラシル時代の思い出が走馬灯のように流れた。
このままじゃ死んでしまう。
どうしようもなくて、悔しくて、悲しくて、憤りを感じながら、アウラは最後の抵抗に切り札を――――――
「
時間の停止した空間、万物すべてが停止した世界にたった一人。死の超越者が邪悪な竜を、失った瞳の奥で揺れる嚇怒の念で睨み付ける。
「……デミウルゴス」
対策を練り、慎重に慎重にことを進めてきた。影さえつかませない闇に消える邪悪なことも任せてきた。ナザリックの闇をアインズに悟られず、一人で背負い、あらゆる困難にもその頭脳をナザリックのために披露してくれた。
「……アインザック」
この世界に転移して初めて自分の正体を知ってなお、フレンドリーに接してくれた。夢を語り合い同じ目標を夢見る友達のような関係だった。英雄モモンとして、魔導王アインズ・ウール・ゴウンとして、鈴木悟という人間だった頃の精神の残滓、人間性を感じられる一番の相手だった。
「……ナーベラル」
人間軽視で、何処へ行こうが口調は直らなかった。アインズの迷惑にならないよう頑張って改善しようとする姿は愛おしく、創造主である弐式炎雷の天然などが反映されているのか、手のかかる娘だった。この世界で一番長く時間を共有していたお陰か、癖なども分かるようになっていた。
「……この戦いで、もっと失うかもしれない」
確実に失うだろう。どれだけ最善を尽くそうが、戦ってみないとどうなるか分からない。この戦いは、もう失わないための戦い。大切な、本当に大切な宝物を守るために――――――
「……お前のような奴が何人もいるのか?」
成程、デミウルゴスが何もできずに斃されるわけだ。ユグドラシルではあり得ない、levelアップの嵐。意識一つで、気合と根性で――――――覚醒する。
「……どれだけ非常識なんだよ。バグだろバグ、運営バンしろ」
魔法発動を遅らせる魔法を唱え、
「
ダインスレイフの心臓を握りつぶした。
「――――――カハッ!?」
即死魔法。相手の心臓の幻覚を己の手の内に作り、それを握りつぶし死に至らしめる。アインズは様々なスキルでこの魔法を強化しており、得意な魔法の一つに挙げている。仮に抵抗に成功しても朦朧状態になる追加効果がある。
「ワールドエネミーと仮定して対処する。コキュートス」
「ハッ!」
至高の四十一人コキュートスの創造主武人建御雷の
「セバス・チャン」
「御意ッ」
至高の四十一人セバス・チャンの創造主たっち・みーの
「アルベド」
「お任せ下さい」
至高の四十一人アルベドの創造主タブラ・スマラグディナの残した相性のいい
「オラァァアアアア!!」
左足を犠牲に、右足でアルベドを蹴り飛ばした。その勢いを利用し切り飛ばされた両腕を口に咥え回収し、切断面に接合する。絶え間なく肉体を再構成していく様に、アインズは呆れてしまう。ダメージ蓄積は意味はなく、一撃でその命を終わらせなければならない。
だがしかし、邪竜は今も変わらず本気だ。身に余る強さを得たことによる慢心、油断、不遜など――――――それら心理的な緩みとは総じて一切無縁である。ダインスレイフは怪物となり果ててもまるで驕らず、侮らない。未だ人間として鍛え上げた戦闘感覚を利用している。
「よく見れば魔王様じゃねえか!!ヒハハハハハハハ!!魔王がパーティー揃えて悪竜退治とは随分と洒落が上手なこって。まさかと思うが仲間を助けるために、王座の舞台からここに登場したのか?」
「王座など何の意味もない。仲間たちが、私の大切な大切な
嗚呼、ならば――――――故に。
「ここで死ね。これ以上失ってなるものか。貴様から聞きたい事など何一つとして無い。英雄を希望のようだが……悪いな、この場に光は存在しない」
絶望のオーラを全開放しスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを装備した本気スタイル。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを破棄されればナザリックは崩壊する。それでも、これを使うのは覚悟の表れだ。
もう絶対に――――――この手から零れ落とさない覚悟。
魔王として、
「なんだよ――――――ピカピカに輝いてやがる。いいぞその意気だ。やっぱ噂や情報より直接見た方が確実だ。俺好みだ。いいぞ、もっとだ。俺を心底惚れさせろォォォォオオオオオオッ!!」
コキュートスとセバスが、武器を撃ち合い火花を散らしながら疾走する。アインズはその間に、アウラとマーレにそれぞれ相性のいい
これにてすべて準備が整った。さあでは、悪竜退治に挑もう。
ここは邪竜の領域、形を失い、捻じ曲げられ、一時も留まることなく処刑具の濁流とかす世界。猛る相手に対し、剣鱗はもはやただ生えてくるだけではなかった。礫と化し、矢と化し、槍と化し目標へ射出される。嵐の様に戦場に降らしながら、ダインスレイフは四足獣が如く地を駆け抜けあらゆるものを次々と竜の体躯へ変えていく。
守護者五人と戦いながら、ダインスレイフは己が身体を理解しつつあった。
回復速度は?どれほどのダメージを受ければ動きに支障が出始める?最大効率で殺し合うにはどうするべきかと、今も学習を続けていた。
敵との殺し合いに特化した脳はそれらを刹那以下の時間で計算し、結論し、そして行動へ反映させる。こと殺し合いにおいては、ラナー、デミウルゴス、アルベド、ギルベルトを凌駕する精密さは、対英雄用戦闘機械として何があっても止まらない。
コキュートス、セバス、アルベドの三人でようやく速度に拮抗し、上機嫌に怒涛の刃を弾きながら、ダインスレイフは踊るように歌い始める、溢れる歓喜が止まらない。
「“
“
“
“
“
瞬間、速度が数段跳ね上がる。闘いの中で急激に覚醒し進化している。今もなお邪竜は脱皮をし続けている。
「お前達を斃し、お前達の代わりに俺は
「何ヲ訳ノ分カラヌコトヲ、オ前如キガアインズ様ノ代ワリナド身ノ程ヲ弁エロッ!!」
学習するのは守護者も同じ、今もなおタイミングは洗練されていく。互いの動きが噛み合っていく。刃が、拳が、斧が、鞭が、魔法が――――――速く、速く、速くなる。六人は止まらない。もはや一秒間に三十数回武器を撃ち合うほど加速して、更に更に止まらない。
アインズも五人を支援する。罠を仕掛け、支援し、五人の邪魔にならないようその雄姿を心に刻み込む。
ここに来てアインズ、アルベド、コキュートス、セバス、アウラ、マーレは何の合図も無しに完璧にコンボを決めていく。
互いを信じ、尊重し、一つの目標に駆け抜ける。
「クフッ、ククク……」
ダインスレイフは尚変わらず。
「クハッ、カヒッ、ヒハハ……」
凍らされ、死滅させられ、殴られ、焼かれ、斬られ、貫かれ――――――全身を血みどろに穢されながら、それでも心底楽しそうに。
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ――――――ッッッ!!!」
爆発する歓喜を糧としてまた一気に不条理な覚醒を果たす。
求めていたものが此処にある。互いを信じ、絆の力で邪悪な竜を討たんと立ち向かってくる宿敵。求めていた相手は違くとも、この展開を邪竜はずっと待っていたから。
瞬間、全回復する竜の肉体。
即ち覚醒――――――滅亡剣は更に強く、固く鍛えられる。
「最高だ、てめぇら!!嬉しいぜ!!」
吼えながら、またも天井知らずに力が高まっていく無限の暴竜。
馬鹿正直に数倍、十倍、足りないなら数百倍と、際限なくツアーとの融合で手に入れた異界に手を伸ばし貪り喰らう。
さあもっと、まだ足りない?まだ届かない?
ならばもっと、そうもっとだ。
まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ
――――――
「この化け物がァ!!」
アインズは心の底から叫ぶ。不条理理不尽。まだ、まだ足りないのか。
ここは地表より堕ちた穴の中。頭上には一つ一つ山脈の
「
超位魔法が解放される。アインズは後方で、いつでも放てる準備をしていたのだ。超高熱源体を発生させ範囲内のあらゆる物を燃やし尽くし、溶かし尽くす。
流星群を巻き込み邪竜に命中する。
ダインスレイフの肉体は焼かれ、爛れ、真っ黒と炭素化した身体は人の形を保っているのが奇跡。
「お返しだァ!」
ダインスレイフの口内に力が集中する。誰から見てもそれは自分達を滅ぼす絶対的熱量を誇っており、エネルギーが上昇するほど、口が崩れていく。
「
『無粋だよ』
「なあ!?」
「(口からってことは、直線的なはず!アルベドのスキルが……駄目だ、足場が動いてバラバラにされた!)」
アインズ目掛けて放たれようとする超光線に、一人だけ覚悟を決める。
「《アインズ様》」
「《
「《好きです。一人の男の人として愛してます》」
「《……アウラ?》」
何故今そんなことを。それではまるで――――――
「《……大切な弟を、マーレをよろしくお願いしますッ》」
「《ま、まて!私にはあれを防ぐ切り札が!》」
途切れる
「
ツアーの
口内で収束する必要性など皆無だが、ソコは本気のノリだ。
アインズに向けられていた超光線は、アウラのスキル、ターゲティングが自身にヘイトを集めることで、その軌道を変えた。
「アウラァアアアアアアアアアアアア!!!!」
「お姉ちゃん!!!」
その身を犠牲に、アウラはアインズを守ったのだ。光に呑まれる最後の姿は、何処までも――――――アインズが好きな太陽の笑顔だった。
「ダァインスレイフゥッ!!」
怒りに我を忘れ、感情の波が抑えられず、怒りが沸騰と冷却を繰り返す。精神抑制が邪魔で仕方がない。アインズは、ワールドアイテムを発動させようとしたその瞬間。
「……は?」
アウラは最後に切り札を切っていた。
その正体は幼い少女。漆黒の髪は腰まで伸ばされ、純白のゴシックには白薔薇の刺繍が繊細に描かれている。
「……私は、
涙を流す可憐な少女は、プラグをダインスレイフの脳に挿入する。
感情を、人生を、歩みを、意思を、志を、夢を、目的を――――――心を。
その人間の全ての情報を読み取り、諦めない本気の光の意思を理解する。
「
頭の中を弄くり廻されている感覚に、ダインスレイフの肉体は意思に関係なく跳ね回る。
『どうした!このままやられたままか!?』
「ンナワケアルカァ!!」
全体重をかけて、全存在をかけて、全身全霊をかけて。男は掴まれている肉ごと削いで脱出する。
少女もまた、その力を解放した。
「
少女は光を知った。闇を知った。生きるとは何かを知った。人間が抱える矛盾を"心"で理解した少女は、その素晴らしさに涙を流す。
ダインスレイフで二人目だけど、その心のあり方はナザリックではあり得ない矛盾の感情。
生きたいのに、死にたい。
光を求めて、滅びたい。
一人一人、産まれたときから今までの時間で代わり、揺れ動く心の波動。
少女は何処までも純粋に、空っぽの胸の中の
ならばこそ、その心からの願いに一切の邪気などなく、人間を知った自動人形は、純粋に、何処までも純粋に人間を祝福する。
「あなたの名前はファブニル・ダインスレイフ。ええ、本当の名前に意味はなくこの名前だからこそ意味がある。人間は千差万別。その生き方もまた人間」
少女は剣鱗を粉砕し、竜爪を優しく包み込む。
「あなたが終わりを望むなら、私がそれを与えて上げる。それがあなたの願いなら」
「望みだと!?んなもんとっくの昔から決まってんだよ!!光に向かって突き進みアイツの敵になることだァッ!!」
進化する、覚醒する、その力は少女の身を粉砕する破壊の竜爪。
けど。
「アウラ・ベラ・フィオーラの魔眼は一瞬で肉体を石化する。どれだけ表面は削ぎ落としても、重要な部分は固まったまま」
その動きは今まで一番遅く、無理矢理動かした代償に身体が割れる。
「私は彼女のことを知らないけど、仲間として、この状況を作り出したあなたに敬意を払うわ」
少女――――――ルベドの全力の一は、
土曜日の暇すぎて頑張りました。初の一万文字越えに疲れました。
試験勉強しないとやべーすよ(白目
今回のオーバーロードは感想でナザリック勢力補強すると言ったので、補強しました。その結果、邪竜が当初考えていた以上に頭のおかしいことに(笑)
※補強前の構図
マーレ、ダインスレイフ倒す。
↓
復活
↓
マーレ死亡
↓
ルベドが倒す(まだ普通)
※補強後
アインズ様と守護者一行とルベド(超改造)
ダインスレイフも超改造
ルベドに関しては次回説明します。