オーバーロードVS鋼の英雄人 『完結』   作:namaZ

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未完成

 タブラ・スマラグディナは、至高の四十一人随一の厨二病である。

 聖書やら神話やら伝説上の生物やら死やら生やら――――――日本語や共通語の英語と関係ないドイツ語やらロシア語やら古代エジプト語やら、格好いい理由だけで多様するもう手遅れな厨二病患者末期なのだ。それもいいおっさんが。

 そんな彼が手掛けたNPCは三体。

 ニグレド、アルベド、ルベドの三姉妹。

 名前の由来は、大いなる業は卑金属を金へ完全に変換する錬金術が元ネタだ。賢者の石にも深く関わっているため、その手の病にかかった人間ならそれぞれなんの意味を持つのか説明しなくとも理解できるかもしれない。

 錬金術において物質の変容は、黒化(ニグレド)、腐敗、分解、死。白化(アルベド)、月、銀、復活。赤化(ルベド)、太陽、金、完成。の順序にやってくるのだ。

 賢者の石を精製するにあたり現れる変化は、黒化(ニグレド)、死、腐敗、腐食の段階。象徴はカラス、髑髏。白化(アルベド)、復活、再生、結晶化の段階。象徴は白鳥。この段階の石は銀の精製に用いられる。赤化(ルベド)、賢者の石完成の段階。象徴は薔薇。

 三色練成の場合、最初は黒化の死を経て、白化による再生して、赤化の完成に至る事になる。

 これら三段階をまとめると。

 ニグレド(黒化)"腐敗"、個性化、浄化、不純物の燃焼。

 アルベド(白化)"復活"、精神的浄化、啓発。

 ルベド(赤化)"完成"、神人合一、有限と無限の合一。

 以上をもって大いなる業とする。

 

 長女ニグレドは、ホラーチックな顔の皮が無い外見と演出を除けば子供好きというギャップがある。子供のためにアインズに逆らったこともあるほど。子供とは正に不純物の無い浄化の象徴。

 次女アルベドは、アインズによって設定を歪められてしまったが、守護者統括としてアインズの精神的浄化(?)、明細な頭脳による啓発。そして、翠化が"復活"の粋を負えば白化は"復活"ではなく"乱れ"となり、筋が通るかもしれない説もある。これを踏まえれば、アルベドのギャップ萌えの最後の一文、実はビッチであるは、タブラ・スマラグディナが一生懸命知識から捻り出した設定だったのかもしれない。

 そして、三女ルベドは完全な存在だ。

 完成された完璧で完全で全能な自動人形。

 一人だけ機械として創造された存在。

 そもそも生物自体が不完全、未完成なのだ。生きるとは、それだけで完成されない。様々な欲や感情の揺れ動き、外からの刺激など、心を持った存在は自分から完成から遠ざかる。

 完成とは、不純物がなく白く透明で一つの方向性に特化していること。故に、機械として精密な正確な絶対的合理性、性能と機能。容姿も幼いながら万人に好かれる可愛らしさと美しさ。彼女は、眠るビーカーの中で完結している。

 無限のエネルギーを生み出し続けるワールドアイテム"熱素石(カロリックストーン)"を自動人形を起動させる核、永久機関として心臓に搭載されているルべドは存在そのものが一つの小宇宙(コスモ)

 そう、ルべドはビーカーの中で完結している。

 瞼は深く閉ざされ、外部から干渉されるその時まで完結している。

 黄金の輝きとは穢れてはならない。不純物一切交わらずただそこに在るだけで完結している。

 故に――――――ルべドが目を覚ますとき、それは完全ではなくなる。

 完成とは、完結とは、完全とは、それ以上先がない事。完成(ルベド)は、外部情報で学習を始めれば、それは学習途中となり完成ではなくなる。

 だからこそ、タブラ・スマラグディナの提唱するギャップ萌えが機能する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルベドが封印されている八階層荒野はナザリックの最終防衛ラインであり、ここを突破されることは事実上、ギルドの崩壊を意味する。故に、第八階層荒野の守護者ヴィクティム、ナザリック最大戦力、ギルドメンバー共同で編み出したトラップの数々が配置されている。

 そして、ルべドこそナザリック最強のNPCであり、ナザリック最大戦力の一つである。

 プレイヤー1500人からなる討伐隊を全滅させた時は、他の最大戦力で事足りたが、今回は外からも防ぐ必要がある。故に、実証されている戦力を残しルベドのみ外で戦わせる。標的はスレイン法国、送り込んでいる戦力が次々と斃されている原因の敵のlevelが100であるとニグレドからの報告を吟味し、ルベドを送る事を決定した。

 その部屋は誰にも見つからないよう深く、深く隠されている。まるでその中にあるものを穢れさせまいとするように。ニグレドの部屋は超ホラーチックに対してここは何処までも静謐としている。

 まるで彼女の眠りを妨げることが悪と感じてしまう完成した空間。

 アインズ一人、眠り姫の眠るビーカーをそっと撫でた。

 

 

「……タブラさん、割るな、絶対に割るなはふりですよね?」

 

 

 ギルメンであるタブラは、哄笑しながらこの部屋を紹介し先の台詞を声高らかに言っていた。

 

 

「これ割るともう眠らないんだっけかな?」

 

 

 ビーカーを割るのが起動コマンド。一度起動させるともうビーカーは直らないおまけ付き。

 完成したものは、壊れたら決して直らない。直るとは、未完成だということ。タブラ・スマラグディナは、完成したモノに拘った。この部屋は、その集大成。

 

 

「ルベドを使うとは、即ち……完成(ルベド)ではなくなると言うこと。そうですよねタブラさん」

 

 

 神人合一、有限と無限の合一。

 

 

「神とは全能ではない。神とは、人よりも人らしい人の欲望と策略、大罪の塊である。それが――――――タブラさんの目指す人間(ルベド)

 

(無限に関しては、カッコいいからだとか言うんだろうなー)

 

 

 アインズはビーカーを――――――拳でカチ割った。

 壊すときは盛大に、それがタブラ(厨二病)の流儀。

 割れたビーカーの破片は、眠り姫を決して傷つけない。この部屋は、決してルベドを傷つけさせない。

 起動スイッチの入ったルベドの心臓がゆっくりと稼働し始める。日本人形と西洋人形を掛け合わせたような美しさ。クリっとしたお目目が開かれ、非常にゆっくりとした動作でビーカーの外に出る。

 

 

「初めましてだなルベド。私が分かるか?」

 

 

 ルベドはアインズを爪先から頭の天辺まで観察する。鉄仮面が張り付いた顔の表情からは感情を読み取ることはできない。ふと可愛らしいプリっとした小さな唇が動き出した。

 

 

「認証/モモンガ様/ギルド名アインズ・ウール・ゴウンのギルド長」

 

 

 プレアデスのシズよりも機械らしい喋り方にこれぞロボット娘のよくある初期設定と深く感心する。

 

 

「よしルベドよ。早速だがやってもらいたいことが……どうした?」

 

 

 辺りをキョロキョロと首を振り、何かを一生懸命に探しているようだ。

 

 

「どうしたのだルベド。何を探している?」

 

 

 アインズの疑問に、ルベドはアインズに顔を向け身長差からくる俗にいう上目遣いの体勢から首をちょこんと傾げ。

 

 

「……パパはどこ?」

 

「グハッ!!」

 

 

 ロボット娘のまさかの甘いパパ発言に、アインズはイケない方向に踏み出そうとしてしまった。

 

 

(お、落ち着け……俺はペロロンチーノさんのような特殊な性癖はない。断じてない!)

 

 

 アインズの心の中の葛藤に勝利した。何かの間違いだ。それだけは絶対に無いと。そして、居ないはずのタブラさんの声が聞こえる気がする。

 

 

 ――――――いつからロボット娘の父に対する呼び方が創造主、マスター、お父様と決まっている?パパ呼びこそ至高、異論は認めん。

 

 

 これぞギャップ萌え。鋼鉄の仮面を被る無表情無反応な自動人形が、創造主だけを甘えた声でパパ呼び。何かこう――――――グッと来るものがあるとアインズも認める。決してペロロンチーノとは違う。

 

 

「ルベド、よく聞くのだ。いいか?タブラさ……パパは此処には居ない。正確にはこの世界に居ないのかもしれない」

 

 

 そこからはこれまでの経緯を話す。簡潔に正確に分かりやすく説明する。

 

 

「――――――よって、今ナザリックは危機的状況に置かれている。助けてくれないか?」

 

「認証/モモンガ様をアインズ・ウール・ゴウンと呼称/以降アインズ様とお呼びします/命令/転移門(ゲート)巻物(スクロール)を使用し移動/スレイン法国推定level100の敵を撃破次第、転移門(ゲート)巻物(スクロール)を再度使用しアインズ様の元へ転移/敵戦力と交戦中の場合直ちにそれを無力化」

 

「そうだ。頼めるか?」

 

「私は一つの願いを込められてパパに創造されました/パパは命令しました/宿命だと」

 

「……それは私の命令よりも最優先されるものか?」

 

「はい/パパは/人間を知れ/と/私にプログラムしました/如何なる命令も人間を知る妨げになるなら破壊も容認します」

 

(これは予想以上に面倒なことになったな……今戦ってるの人間なんだよな。いや待てよ……もしかしたら行けるか?)

 

「ルベド、お前は人間を知るには何をどう実行していくつもりなんだ?」

 

「分からない/データ不足/情報不足/経験不足/不足/不足/不足/不足/全て不足している」

 

「なら人間と戦えばいい」

 

「人間/戦う/?」

 

「人間は複雑だ。一つの方面でも完全に理解するには難しいかもしれない。でも、戦うことでしか理解できないこともある。それを知るんだ」

 

「……/了解(ポジティブ)/命令を受理/これより行動を開始します」

 

 

  ルベドの回路にどのような回答が出されたかは定かではないが、戦場に向かうための転移門(ゲート)巻物(スクロール)を使用しこの場から消えた。

 

 

「さて、私も行くとしよう。皆が待っている」

 

 

 アインズもまた戦場へ降り立つ。マーレとアウラが戦っている規格外な敵を倒すために。この時もし、ルベドを連れて行ったなら、その先の悲劇は回避されていたのかもしれない。だか、その行動はもしかしたら最善で、アウラの命に釣り合う選択になったのかもしれない。それを決めるのは、アインズの心次第――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スレイン法国の六色聖典の一つ漆黒聖典の番外席次であり、通称"絶死絶命"――――――カグラは、一人で異形の軍勢を足止めしていた。

 手数が足りない、数が多すぎる。一度に倒せる敵に限界がある。それら承知で尚、駆ける、駆ける、駆ける、駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。

 愛しいあの人に追い付くために、その足は決して止まらない。両手に握る戦鎌(デスサイズ)は、線が走る度に命が刈り取られる。

 level100の彼女にとって有象無象の雑魚でしかないが、それでもこの数は鬱陶しいものがある。だが無視するにはその脅威は見過ごせない。スレイン法国にはもう此れほどの脅威に対抗できる手札が残されていない。

 アインズ・ウール・ゴウンに半分以上の戦力を減らされ、最高戦力がいなくなったタイミングで国が滅びたでは彼女も目覚めが悪い。何より、これは使命だ。スレイン法国の民として、こいつらは絶対に見過ごせない。

 

 

「……敗北を知りたい」

 

 

 使命に燃え、一度決めたことは何があろうと突き進むと決意したなら。カグラの無意識から溢れ落ちた言葉は全てを否定する矛盾の言霊。その真意を知りたい永劫の機械人形が、カグラに向けNPC最強の全機能を解放する。

 

 

「うわー……ヤバいの来ちゃったかなぁ」

 

「人間を知りたい/貴女は/何/?」

 

「――――――フッ!!」

 

 

 完全なる不意討ちからカグラは全ての力をのせた戦鎌で首を刈り取りにいった。その一撃は、他のNPCなら致命傷と命すら危うくなる絶死絶命の一太刀。複数の武技によるブースト、マジックアイテムによる補助を受け、肉体の限界まで酷使した攻撃を――――――

 

 

「?/……/何/?」

 

「嘘でしょッ」

 

 

 無防備なその首に命中したにも関わらず、その首は刈るどころか皮膚さえ傷ついていない。嗚呼、全てを悟る。今の自分では何をどう足掻こうが、この子供に勝つことはできない。

 

 

「教えて/人間を知りたい」

 

「……上等、教えるわ。人間の意思の強さを!」

 

 

 ナザリック最強NPCルベドvs人類最高戦力絶死絶命カグラの戦いが開幕された。

ルベドが登場した瞬間から異形の軍勢はカグラに見向きもせずスレイン法国に進行する。

 

 

「……こんなのはじめて。私をもう敵として認識していないアイツらも。どうしようもなく何をすれば勝てるのか分からない相手なんてほんっと初めて」

 

 

 実態のある残像を正面から突撃させ、死角である背後から斬りかかっても。

 

 

「……/私には/通じない」

 

 

 カグラと対して変わらない身体がピクリとも動かせない。見た目に惑わされ信じられない重量と質量を内包している化け物と戦っている気がしてきた。

 否、強ちその評価は間違ってはいない。その身は一つの小宇宙(コスモ)。無限のエネルギーを攻撃を受ける箇所に本人の意思と関係なく自動的に展開する防衛機能。一点に収束されたエネルギーはそれだけであらゆる攻撃を遮断する絶対防御。

 ルベドに傷をつけたいなら、全身に同時展開できない特性を利用しての広範囲魔法などが有効。無論、そんな手札は持ち合わせていない。ならばこそ――――――

 

 

「速く――――――どこまでも速く駆け抜けるの」

 

 

 現状では勝てない?限界まで力を引き出しても太刀打ちできない?

 ならば簡単だ。限界を越えればいい。

 

 

「想い一つで、意思一つで、私は――――――私を越えて見せるッ!!」

 

「それが人間なら/知りたい」

 

「知りたいって……人間はそう簡単じゃないの!!」

 

 

 ルベドの武器は身体その物。ナザリックNPC『接近』最強の彼女の拳は、たっち・みーの鎧さえ破壊する。

 武術も何もない素人丸出しのただ振るわれるだけの手足は、level100を越える規格外なパワーとスピードで破壊の化身とかす。

 

 

「――――――ハッ!!」

 

 

 迫る死の暴風を、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃、回避迎撃――――――回避と迎撃を同時に繰り出す。それでも、ルベドは揺るがない。自動防御機能が存在する限り、彼女は回避などする必要がない。

 

 

「人間を知りたい/観察/実験/経験/アルゴリズム/行動原理/不足している/不足している/不足している/……/解析」

 

 

 目覚めたばかりのルベドにとって観測する全てが観察対象。情報として知っているのと、実際に知っているでは鮮度が違う。世界は未知で満ちている。知りたい、知りたい、知りたいと。子供のように、白く透明で無垢に創造主(パパ)の言い付けを守っている。それが絶対で、それしか知らないから。

 姉もアインズもナザリックも観察対象にすぎない。

 パパが絶対で、そう命令されプログラムされているからパパ以外の対象を情報として欲しいまで。

 

 

――――――ルベド。私の娘よ、自ら完成させるのだ。私が作り完成した人形から……人へ。

 

 

 思考する。人間になるとはどういうこと?パパの言うことを聞く良い子にいるにはどうすればいい?先程から戦っている存在は人間ではないが、人間に近い存在だ。人間に近いなら、それは人間ではないか。

 人間の定義が確立していないルベドは、血肉があり、生きている人の形をした存在を人間と定義している。

 ユグドラシルでは、エルフもダークエルフも人間種。だが、この存在は混ざりすぎている。それでもそれは誤差の範囲。

 

 

「あなたのことを教えて/知りたい」

 

「さっきから自分だけ知りたい知りたいって、そんな一方的な一本道じゃ何も響かない。自分のことも分からない奴に他人を知りたいだなんて……まずは自分について語りなさいッ」

 

 

 カグラの回避行動は目の見張るものがあるが、無限のエネルギーの余波は掠りもせずその身体はダメージを刻んでいく。ルベドは手を緩めない。どこまでも他人には機械的に、そうすれば教えてくれるなら自分のことを教えるまで。

 

 

「私は/ナザリックNPC接近最強ルベド/心を持たない自動人形/姉は/ニグレド/アルベドの二人/完成するために私は生まれた/パパの言うことは絶対/パパは命令した/人間を知れと/だから/私は此処にいる」

 

「……私も人のこと言えないけど、あなたって生まれて何歳なの?えぬぴーしーは見た目と年齢が一致しないこともあるから」

 

「私が製造されたのは/65,741時間/57分/03秒/前/意識が起動した/37分/19秒/前」

 

「つまり……心はまだまだ生まれたての赤ちゃんってことなのねッ!!」

 

 

 カグラはルベドの顔面を蹴り飛ばしその衝撃で自分を飛ばし距離をとる。

 

 

「……」

 

 

 顔面への蹴りは過去最高のスピードを誇っており、ルベドの鼻先に触れた瞬間、防衛機能に阻まれたが、確かにその爪先はルベドの絶対防御の反応速度を上回った。

 

 

「……ハァ……ハァ……ハァ……ッ」

 

 

 静かに息を整えるのをルベドは邪魔をしない。殺しに来たのではない。人間を知りに来たのだ。言うことは言った。質問にも答えた。ならばこそ、答えてくれ。人間を教えてくれ。

 

 

「なる……ほどね。ハァッハァ……最強で心を持たない生まれて生後一時間もたっていない右も左も分からずパパに甘えん坊のからくり人形」

 

 

 生まれながらにして最強。カグラもにたような過去がある。この子は、本当にただ知りたいだけなのだ。

 

 

「最強か……そう勘違いしていた時期も確かにあった。誰も私と同じ土俵には立てない。強い相手に勇気を振り絞って戦うってどんな気持ちなんだろって羨ましいと思った」

 

 

 強者故の悩み。物語の英雄は自身より強い敵に策を、仲間を、心の強さで打倒する。

 カグラには強さ以外何もなかった。

 

 

「心の強さなんて、私の前では何の意味もない。能力値が高ければ心の強さや意思の強さなんて、簡単に踏みにじれる」

 

 

 自分より弱い者しかいない世界。あるのは期待と願望、使命と責任の重責。

 強者として弱者から奪ってきた。

 強者として自由を奪われてきた。

 

 

「――――――あの人に出会うまでは」

 

 

 光が、太陽がそこにいた。カグラと比べれば獅子と子犬のような埋めようのない差があり、能力値全て上回っているはずなのに――――――この人には勝てないんだなと、ストンと不思議とその言葉が胸に落ちた。

 特別にお話もした。人の事をズバズバと遠慮もなくに指摘してきた時は……なんだか嬉しかった。

 模擬戦をした時も全然弱かった。技を教えて貰ったけど、総合的な強さは第一席次隊長ロトの方が強いと思う。けど、命のやり取りになったらどうなるか――――――楽しそうと思った。

 彼との出会いは刺激的で、短かったけどあの時間は忘れられない日々だった。

 あの日から、今日のこの瞬間までずっと考えるようになった。

 自分の本当の願いは、自分とは何なのか、何をしたいのか、何を想い、何を愛おしく想えるのか――――――今も考えて考えて考えて考えて――――――

 

 

「続きは/?/あの人とは誰/?」

 

 

 私では勝てない相手、恐らく敵と認識すらしていない絶対強者。けど、このまま一方的なのは悔しいかな。

 

 

「……ここから先は有料だよ。ただじゃ教えてやんないんだから」

 

 

 自分のことを一生懸命に考えた。私のこれまでの人生で互いに想いをぶつけることなんてあったかしら?相手は自分を語った。私も自分を語った。まだまだ言葉に出来ない不安定な答えしか用意してないけど、ぶつかり合えば答えを導き出せるかな?

 

 

「だからお話ししようよ。私もあなたも、まだまだ全然本音を隠している。自分でも自分を理解しきれていない」

 

「私は私を理解している/ナザリックNPC接近最強ルベド/心を持たない自動人形/姉は/ニグレド/アルベドの二人/完成するために私は生まれた/パパの言うことは絶対/パパは命令した/人間を知れと/だから/私は此処にいる」

 

「そうじゃないの」

 

 

 そんな模範解答なんて聞きたくない。うわべだけ教えてくれても一つも嬉しくなんてない。

 

 

「ん~そうだ!パパとの思い出はないの?」

 

「思い出/?/私は/データ上でしかパパを知らない」

 

「ふーんつまりだいたい私と一緒なわけだ。私はパパもママも知らないから羨ましいなッ」

 

 

 カグラの戦鎌が大振りに振るわれる。威力はある。速度もある。だが、ルベドの目で追える程度の速度では、防衛機能は突破されない。目前に迫る首を狙った戦鎌が、三つに分裂した。

 

 

「ッ/!!」

 

 

 ルベドは生まれて初めて回避行動をとった。

 ルベドは生まれて初めて意表を突かれた。

 そして、ルベドは生まれて初めて――――――

 

 

「どお?少しは私個人に興味持ってくれた?」

 

 

 人間としての種としてではなく、カグラ個人をしっかりと認識した。

 

 

「認証/カグラ/脅威認定/五段階中レベルⅠからレベルⅢ/正常から警戒レベルまで更新」

 

 

 思考する。いまいち目の前の対象が何をしたいのかが分からない。攻撃させ、無駄だと悟らせようとすると、反発したり、言うことを聞いたり、別の提案を出したりしてくる。

 一貫性のない行動。ぶれぶれの思考回路。人間は複雑であり、多面性が当然存在する。

 パパはそんな人間を知れといった。

 そして、人間に成れといった。

 

 

「……/理解不能/もう不意討ちは成功しない/話すだけなのに何故戦う必要がある/?」

 

「譲れないものがあるからかな?」

 

「理解不能/ッ」

 

 

 カグラが四方八方から襲い掛かる。実態のある残像。否、これは忍者が得意とする分身に酷使している。だが、どれも儚く崩れ去る夢のように霞かかっているのに、どれも本物だとルベドの察知機能がアラームをならす。先の戦鎌も分裂したのではなく、本物が増えたと表現した方が適切。

 警戒すべき敵と認識したルベドの全センサーがカグラの能力の正体を丸裸にする。

 

 

「解析中/解析中/解析中/解析中/解析中/――――――」

 

 

 潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。

 儚く崩れ去る夢のように霞かかっているのに、どれもこれも生々しく死んでいく。

 

 

「……私が死んでいく。あったかもしれない私が消えていく」

 

 

 そう言葉を発したカグラも潰される。

 

 

「霧に消える夢のような事象/かすかに香る効能/――――――/阿片」

 

「へ~そこまで分かっちゃうんだ。でも阿片(こっち)の効き目は薄いかな。だけど……」

 

 

 手足が重なる。二重三重と手足だけが異なる軌道からルベドに襲い掛かる。だが、そんな小細工は無限のエネルギーの前では無意味。

 

 

「これも違う/どういうこと/?/本体が一人もいない/?/いいえ/どれも本物/一人さえ無事ならそこから新しく発生する/?」

 

 

 思考する。摩訶不思議な事象を可能とする魔法、スキル、アイテム――――――その中で最も可能性の高いのは。

 

 

「ワールドアイテム/ナザリックには存在しない/情報が存在しない未知のワールドアイテムの確率が大」

 

「うんそうだよ」

 

「……/普通は隠すものなのでは/?」

 

「言ったでしょ、話し合いをしよおって。だらだら長引いても面倒でしょ?」

 

 

 最大五体まで出現させるカグラの実態のある残像が、四体潰されても残りの一体がまた五体に分裂する。

 

 

「六大神の残した至宝は三つある。一つは傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)、二つは神殺しの真槍(ロオン・ギ・ヌウス)、そして三つ目は……」

 

 

 自らの胸を張り、トンっと叩く。

 

 

「私がその一つよ」

 

「?/?/?」

 

「あ、何言ってんだこいつーって顔してる」

 

「そんな顔してない」

 

「嘘。分かりにくいだけでちゃんと表情は感情と連動している。困惑、疑念、心がない?それこそ嘘。感情は、心から発生するものだよ」

 

「情報不足/その仮説には疑問点が尽きない/感情=心の定義を乞いたい」

 

「ていぎぃ?ん~私そんなに頭良くないし全部自分の感性になっちゃうけどいい?」

 

「構わない/が/戦う=話し合いも接点がない/その定義も乞いたい」

 

「口下手だからうまくできるかなぁ……だけどねこれだけは言える。考えるの、悩んで苦しんで考えて考えて自分の中に確かな自分を形作るの」

 

「……/確かな/自分」

 

「うん。ねえ教えて?あなたはなあに?」

 

 

 カグラの身体は人を堕落させる桃源郷。一体化したワールドアイテムの影響か、一体化してしまった影響か、吐息は脳を蕩けさせる媚薬に、体液は濃縮した阿片に、爪も肌も彼女の肉体は猛毒の塊であり、ただの人間が何の対策も耐性もなく彼女と同じ空間いるだけで、堕落し桃源郷へ誘われる。

 名も分からない至宝の一つ。三つしかない神々の伝説のアイテム。

 世界でも10本の指に入る生まれながらの異能(タレント)――――――融合(フュージョン)

 

 

「パパに甘えたくないの?抱きしめられ、頭を優しく撫でてくれるそんな優しい時間。合理的じゃなくて感情的に、心のままに、本当に欲しいものを思い浮かべるの」

 

 

 悩んでいるのも自分も同じ、だけど――――――自分より小さな子供の手助けになりたい。

 ルベドは倒すべき敵。

 ルベドは初めての勝てない強敵。

 ルベドは共に心を成長させる友。

 ルベドは幼く導かなくてはならない子供。

 ルベドは――――――

 ああそうか、見えてきた。何をしたいのか、何をすべきなのか。

 

 

「私の答えは――――――」

 

 

 回れ、回れ、万仙陣。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





何だか方向性がおかしなことになっている気がしてきたついこのころ。
細かい原作設定のないキャラは好き勝手に作れてつい楽しくなってしまう。原作設定拾いつつ自分で設定作っているのが永かった(遠い目
この二人に関しては前編後編に分ける予定です。
今は初の夜勤勤務で身体の調整に五日間くらいかかってしまいました。
生活習慣の劇的な変化って難しいですね(白目

とくに本編と何の関係もありませんが、最近なろうを久しぶりに読んだ感想なのですが、神様異世界転生って読んでて矛盾点が、感情や心を置き去りにしている気がする。
神の玩具として、自分より強い者がいない低次元で、元の人間としての感性をまるで無視する。
人とはそう簡単には本質は変わらない。元々努力する生物の人間が、人間以外に生まれ変わって最強になって……ケルちゃん風に言えばすぐ飽きそう。
そんな事を考えてしまった(お目目汚し失礼します

あれ?もしかして多方面に喧嘩売ってる?やべーな(汗





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