学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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オリ主のヒロインは南リカ&静香先生になります。


セカンド・ライフ

皆は誰しも『転生』と言う言葉を一度は聞いた事がある筈だ。その人生を終えた魂が再び別の生物として生を受ける、と言う宗教や言い伝えにも頻繁に出て来る説だ。俺はそんな事を考えた事も無いし、神の存在も信じていない。

 

だが、どうやら俺はその『転生』を今経験してしまった様だ。やはりあの爆発で俺はあの時死んだのだ。俺が再び生を受けた理由は分からないが、現在地は日本らしく、『滝沢圭吾』と名付けられた。 日付は確認出来たが、前世の命日が今世の誕生日とはな。だがここで、俺はやらなければならない事があると気付いた。問題が二つあるのだ。

 

一つは、またガキの真似事をする破目になると言う事だ。 死ぬ直前まで二十六だった俺には黒歴史以外の何物でも無い。特に通学が一番の問題になった。傭兵になる前に大学を卒業した俺にとってはやる気すら起きない物だったが、日本語を覚える為にも止む無く通い続けた。二つは、肉体が幼児の物である故に、体力も膂力も総合的に傭兵としての俺の能力が比べ物にならない位低くなっていると言う事だ。この体じゃ銃を撃つ事もままならない。

 

ようやく二の足を踏んで歩く事が出来る様になると、衰えた体を元に戻す為に、俺は取り憑かれたかの様に訓練をした。俺のその姿を見て親父は冗談で俺に質問した。

 

「圭吾、何故そこまでして体を鍛える?戦争にでも行くのか?」

 

「俺達の人生その物が戦争だよ。生きる為の物資、生存の確率を高める為の担保。人間戦わずして生きて行くなんて事は出来ない。じゃなきゃ、戦争なんて始まらないし、軍なんて存在すらしなくなる。」

 

俺はそう言い返した。ジョギング、筋トレ、アイソメトリックス、ストレッチ、そしてキックボクシング。それら全てを体力が続く限り、筋肉が悲鳴を上げるまで毎日続けること十数年。俺の体は二十歳でようやく全盛期の七割位に回復した。

 

俺の親父は海外での暮らしが長く、それに影響されたのか、趣味は射撃競技だった。俺も中学に上がる頃には既に銃に触れていた。と言っても、本物に触れるのは十八になってからだったが。それまではエアライフルやエアピストルで我慢していた。だが、やはり銃弾を薬室に送り込んだ刻の感覚、撃発音と共に体中に伝わる衝撃、そして撃った後に立ち上る硝煙の臭いは今でも忘れられない。実銃に触れる事が出来た時、俺は筆舌し難い快感を覚えた。ショットガン、ライフル、ピストル、全てが懐かしい。当然ブランクはあったが、一ヶ月前後でようやく感覚を取り戻す事が出来た。お陰で『現代のビリー・ザ・キッド』や『カルロス・ハスコック二世』とまで呼ばれる様になってしまった。

 

話は変わるが、二十歳になった時、妙な事が起こった。親の留守中に、俺宛に箱が送られて来たのだ。送り主本人が送り届けて来たのか、俺宛であると言う事を示す物以外は送り主の住所も名前も何も書かれていない。

 

それを開くと、中に入っていたのは奇妙な物だった。具体的に説明するとベースは黒に銀のライン、そして赤い円があり、それを中心に金色の羽が一対広げられている様に見える、近未来的なデザインを持ったマシンピストルだ。持ってみると特に違和感は無いし、ズシリとそれなりの目方もある。装飾を除けば、単純な形状は延長マガジンを差し込んだグロック18Cに近い。ご丁寧に腰背面に固定する為のホルスターも付いている。だが普通の銃とは違うのは、スライドや撃鉄、マガジンキャッチはおろか、セーフティーすらも無いと言う事。銃にしては危なっかし過ぎる。特に使う必要も理由も無いので、今も俺の洋服箪笥の中にしまわれたままだ。

 

そんな俺も自立して、進行形で同居中の女友達が二人出来た。俺から言わせれば、心身共にどんな男も悩殺出来る様な二人だ。一人は南リカ。警察官を目指しているクールな奴で、良く飲みに行くが中々の酒豪で簡単には潰れない。それに葉巻煙草と言う風変わりな趣味を持ってる。親父が土産に持って帰って来るのを幾つか渡したら大喜びしてたな。で、もう一人が更に変わり者の鞠川静香。プロポーションはあり得るのかと思ってしまう程の物で、医者を目指しているが、あの天然な性格でなれるかどうか、リカも俺も心配している。今は大学病院から臨時の校医として藤美学園に派遣されているそうだ。

 

「リカ。」

 

「ん?」

 

「お前は死んだらどこに行くか、何て事を考えた事はあるか?」

 

深夜に近付き、下着姿のままで寄り添って寝ているリカにふとそう聞いてみた。 酔った勢いでヤってしまったのが原因でくっついた訳なんだが、特にお互い問題は無い。常識的に考えてこれを喜ばない男はいないが、こいつは、まあ・・・・・襲って来る時は女豹になる、とだけ言っておこう。

 

「ん〜〜・・・・無いわね。先の事なんて誰にも分からないんだから、来るがままに対応するしか無いと思うわ。それがたとえ死であろうと。でも、死後の世界が本当にあるなら、また圭吾とくっ付きたいわね。」

 

俺の腹の上に乗っかってるリカは胸板に顎を乗せてそう答えた。

 

「おいおい、俺より静香の方を優先してやれ。あんなゆるふわ女、何に巻き込まれるか、はたまた何を仕出かすか分かったもんじゃ無いぞ。」

 

「あの子は大丈夫よ。ああ見えてもやる時はやるから。」

机で突っ伏して涎垂らしながら寝ている様な医者を信用しろってのは難しいだろうが、と言いそうになったが、そこは大人の一人として慎んだ。

 

「だと良いが。後、お前そんなに警察寮が嫌いか?一応家賃払ってるのお前なのに俺名義でこのメゾネット借りさせるなんて。」

 

そう、一応付き合ってはいるが、独身であるリカは規則の一環として警察の寮で寝泊まりする義務があるらしいが、敢えてマンションに住んでいる。

 

「面倒なのよ、向こうに物を持ってくのが。」

 

言うだろうと思っていたが、随分と不純な理由だな、おい。まあ俺も似た様な事をやった覚えが過去+生前あるから人の事は言えないが。

 

「それに、あのロッカー。鍵がかかっているから良い様な物の、バレたら懲戒免職じゃ済まないぞ?」

 

「バレたら、の話でしょ?バレなきゃ良いの。それに、貴方の物も幾つか入ってるんだから、お互い様よ。明日は空港に行かなきゃいけないから早く寝ましょ。」

 

夜遅くまで人を起こしておく奴が言うな、と言ってやりたかったが、その時の俺の意識は疲労で既に半分近く飛んでいた。

 


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