学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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番外編パート1です。


番外編#1:SATにいた頃

『本事案は、権限が我々に委譲された。失敗は許されない。空港に向かいそこにいる極門会の構成員、幹部、並びに会長を拘束せよ。時限装置を解除させるんだ。』

 

耳に付けたインカムに宮本係長の声が飛び込んで来た。現在俺は、空港に向かっている。今度の事件は中々に規模がデカい。

 

「圭吾・・・・」

 

「分かってる。今回は何時もより更に慎重に、だな。」

 

今の俺は、最高に気分が悪かった。と言うのも、休日でしかも非番だった時に事件だからとリカと一緒に本部への呼び出しを食らったのだ。リカには俺がイライラしている事が目に見えている。戻って任務内容をおさらいしてサイドアームだけを装備すると、覆面パトカーに乗って空港に向かわされた。

 

「まさか極道がここまで大それた事をするとはねぇ。」

 

「だな。それも空港でなんて・・・・随分と馬鹿な事をしてくれる物だ。」

 

リカと軽口を叩き合いながらアクセルを踏む力を強めた。

 

『班長、真面目にやって下さい!』

 

無線から後ろの覆面パトに乗った俺の部下の一人が叱責を飛ばす。コイツはSATに入り立ての頃もこんな感じで堅さが中々消えない頑固者の一人だ。もっとフランクになれって何度も言ってるのに。

 

「おお、岩下か、悪い悪い。けど、こっちの身にもなってくれよ、有給休暇で非番の時に呼び出しだぞ?俺以外にも優秀な人材はいるってのに。」

 

欠伸を噛み殺しながら愚痴を零す。それを聞いたリカもダッシュボードを何度もトントンと指で叩き始めた。コイツはイライラしだすと何時もこう言う事をする。考える事は同じって事だな。

 

「確かにね。それは言えてる。」

 

助手席に座っているリカは、ベレッタにマガジンを差し込んでショルダーホルスターに突っ込んだ。予備のマガジン三本も、防弾ベストの上に着ている薄手のブルゾンの内側に収納されている。

 

「先輩達、随分落ち着いてますね・・・・」

 

「何か、馴れてるっていうか・・・・?」

 

「落ち着かなきゃ弾は当たらないし、当たらなければ私達が死ぬかもしれないのよ?落ち着かないでどうするの。それに、SATに入った以上、貴方達は常に誰かを殺さなければならない状況にいると言う事を自覚して。」

 

リカが冷めた声で後ろの席に座っている狙撃班の部下二人を黙らせた。流石県警ベスト5の射撃の名手、言う事が違う。言い忘れたが、現在俺はリカと一緒に部下をそれぞれ二人、合計六人で空港に向かっている。床主中心部上空に浮かんでいる気球に爆弾が設置され、時限装置に繋がれていると言う事が分かった。爆破時刻は午前十時半から一時間三十分後。目的は当然、政府からの多額の金だ。

 

「随分と無茶な任務を任されたもんだよ。空港なんて何時も人が出入りしてるし、混んでいない日なんて殆ど無い。」

 

「見つけられなくはないだろうけど、時間は掛かるでしょうね。それに、無謀無茶は貴方の専売特許でしょ?」

 

そう言われてしまっては言い返せないな。空港に到着すると車を適当な所に停めた。

 

「二人一組で行動しろと言いたい所だが、捜索範囲がクソ広い上に時間も一時間弱。今回は単独行動を許す。ただし、見つけたら一人で全員を相手にしようとするな。位置を皆に知らせろ。良いな?」

 

『了解!』

 

「よし、散れ。」

 

俺は手始めにチェックインカウンターがある階から始めた。足早に歩きながら周りの人間を眺める。頭の中に探している人物の顔は入っている。

 

『圭吾、こっちにはいないわ。』

 

「みたいだな。別のターミナルは?」

 

『岩下と田島がいる筈よ。』

 

『岩下です。あいつら、第二ターミナルからターミナル間を移動するモノレールに乗りました。田島さんと尾行中です。』

 

噂をすれば何とやら。通信中に岩下が回線に割り込んで来た。何故息切れしてるかが不思議だが、まあ今はほっとこう。

 

「どっちに向かってる?」

 

『班長達がいる所です。第一ターミナルコンコースを横切っています。』

 

「聞いたか?」

 

『ええ、しっかりと。』

 

「リカ、どうするよ?」

 

『相手の人数が確認出来ない以上、私達だけで行くのは得策じゃない。何より、誰が時限装置を解除出来るかも知らない。』

 

殺すとすれば、無力化して尚且つあいつらが抵抗した時位か。

 

『何考えてるか知らないけど、発砲許可が降りないと撃てないわよ?』

 

俺の考えを見透かしたかの様にリカが若干棘のある声で俺を窘める。

 

「どうせならマイアミの刑事にでもなりたかったぜ、あそこなら脅威だと感じたら普通にぶっ放せるからな。武器も、ベレッタより精度も威力も高い物が手に入る。・・・・お、言ってる間に到着だ。本部、こちら班長の滝沢だ。構成員及び幹部、会長を確認。」

 

『了解。直ちに確保しろ。時限装置を解除させなければならない。』

 

「発砲許可を出してくれ。あいつらは過激派だ、大人しく投降する筈も無い。恐らく武器も持ってる。俺とリカなら殺さずにやれる。頼む、このままじゃ爆発する。」

 

『・・・・・良いだろう。ただし、滝沢。何があっても絶対に殺すな。』

 

「それは向こうの出方次第だな。こっちだって銃突き付けられて棒立ちになる程の間抜けじゃない。まあ、もし死んだら懲戒免職なり何なり好きにするが良いさ。各員に通達、既に聞いているかもしれないが、発砲許可は降りた。残り時間は十分。狙うのは足や膝、腕だ。それでも尚手向かおうとする奴がいればやむを得ない、撃ち殺せ。」

 

リカと合流すると、ベレッタを引き抜いた。スライドを引いて薬室に弾を装填する。極門会の奴らが俺達を通過するまで五秒。俺はリカにも見える様に指を折りながら数え、飛び出すと、引き金を引いた。発射された九ミリ弾は構成員の足を撃ち抜く。悲鳴や怒号が飛び交い、空港内は大パニックになった。一般人は全員蜘蛛の子を散らす様に離れて行き、我先にと出入り口を目指して走り始める。

 

「全員配置に付いたな。リカ、やれ!」

 

「オッケー。」

 

リカも片膝をついたまま全員の足や膝を狙ってベレッタの引き金を引く。極門会の奴らもやはりと言うべきか、武装していた銃で応戦した。だが、いくらやくざとは言え所詮は素人、銃の狙いも構え方もなっちゃいない。上階からは田島や岩下、別方向からリカのお気に入りの熊野と吉永の援護で、あっと言う間に全員を無力化した。リカと俺はソイツらの銃を拾い上げ、頭に突き付ける。

 

「時限装置を今すぐ解除しろ、でなきゃてめえらの頭を今すぐこの場でザクロみたいに弾けさせてやる。」

 

視界の端で未だ銃に手を伸ばそうとする奴がいたので、ソイツの肘に一発打ち込んだ。

 

「もう一度言う、解除しろ。次は助からんぞ。」

 

会長の目に銃口を突き付けた。銃身の奥に見える装填された銃弾を目にして冷や汗が一筋流れるのを目にした。

 

「早くしろ。俺は気が長い方じゃない。」

 

もっと抵抗すると思ったら、持っていた鞄から取り出したPDAを操作し、すんなりと時限装置を解除した。

 

「本部、増員だ。被疑者及び共犯者の無力化に成功した。」

 

やっとこれで家に帰って眠れるぜ。

 




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