学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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総合評価が僅か一日ちょいで三千以上とは・・・・・・ヒャッッッッッハアアアアアアーーーーーー!!!失礼いたしました、マジで読者の皆様に感謝です。これからも出来る限り執筆作業を続けて行きたいです。よろしくお願いします。


本領発揮

バイクのエンジンを吹かし、車道を疾走した。流し目で周りの状況を確認して行く。車は横転し、明らかにゾンビとしか呼べない様な姿に変わり果てた哀れな元人間、その元人間に食われて行く人間。まんま映画のワンシーンだ。中には内蔵がはみ出ている奴、首が正位置から百八十度回転したグロテスクな奴もいる。

 

「まるでハウス・オブ・ザ・デッドみたいな光景だな。笑えないぜ。」

 

ヨロヨロと動きは遅いが、力だけならかなりあるらしい。園児が暴れて泣き叫ぶ母親の両腕を押さえ付け、別の園児がふくらはぎの肉をまだ発達していない歯で大きく裂くのを見て確信した。どうやら一度死んでから蘇る様だ。そして今現在、大多数の奴らが俺の後を追って来る。五感が全て働いているかどうかは分からないが、少なくとも音には反応している。効率のいい移動手段が限られて来るな。

 

何度か回り道をしてようやく藤見学園にたどり着いた。行く途中で死んでいる警官が持っている銃やら銃弾を荷台のバッグに放り込んで時間を少し食ったが。これから先、使える銃と使う為の弾薬は必要になる。多ければ多い程良い。特に、規制が厳しい日本じゃ銃火器は尚更手に入り難い為、持てるだけ持つべきだ。

 

「全く、アメリカならもっと簡単に武器を調達出来たんだがな・・・・・」

 

バイクに付いたバッグから双眼鏡を引っ張りだして敷地内を確認すると、学生がそれぞれ武器を手に互いをカバーしながら駐車場を目指していた。即席の連携とは言え、中々統制が取れているな。その中で、俺は金髪の女を見た。黒いスカート、赤い紐ネクタイ、そして溢れんばかりのバストを押し込んだ白のカッターシャツ。見間違える筈が無い、静香だ。彼らはマイクロバスに乗り込むと、エンジンをスタートさせた。俺はそれを見て双眼鏡をしまうと、学園の駐車場に向かった。

 

途中死人共が襲って来たが、そこはあのマシンピストルで弾幕を張って道を切り開いた。反動が無いのはありがたいな。狙いがブレない。それに、これ一発で二、三匹は片付けられる事に気付いた。貫通力も並じゃないって事か。

 

「静香、無事か?」

 

「え・・・・・?」

 

あ、そう言えばヘルメットは被ったままだったな。声もくぐもってるし、これじゃ分かる物も分からないか。チンガードとバイザーを上げて顔を晒した。

 

「圭吾?!」

 

「生きてる様で何よりだ。これで俺もリカに殺されずに済む。さっさとここから脱出しろ、詳しい話はそれからだ。」

 

「ちょ、待っ」

 

何故俺がここにいるのか、何が起こっているのか、そんな質問を一々聞いていたらキリが無い。静香の言葉には耳も貸さず、俺はマイクロバスのドアを乱暴に閉めた。バイクに飛び乗って死人を避けながら脱出し、程無くしてマイクロバスも屍を蹴散らしながら車道に飛び出た。一先ずマイクロバスの先導に従って後ろに付いて行く。ハンドルにマウントしたGPSで確認すると、このルートは御別橋辺りに向かっている事が分かった。

 

「ここからが問題になるな。」

 

今の所は快走しているが、いつまでもこれが続くとは考え難かった。この街からの脱出ルートは限られてる。床主の人口密度はそれになりに高い。数少ないルートを住民全員が挙って集まれば、鮨詰め状態になってしまう。移動スピードは格段に落ちるだろう。

 

すると突然バスがタイヤを軋らせて急ブレーキを掛けた。今なら情報伝達が出来る。二、三度軽くノックすると、金属バットを持った男子生徒がドアを開けた。

 

「よう。鞠川静香は乗ってるか?」

 

「え、あの」

 

「圭吾ーーーーーーー!!」

 

ソイツを押しのけて静香が俺に抱きついて来た。危うく倒れそうになったが、どうにかバイクごと倒れずに踏ん張った。落ち着かせる為に頭を撫でてやる。

 

「良くここまで生き延びたな。無事で良かった、心配したぞ。後、声押さえろ。」

 

「ごめん・・・・でも、何で・・・・?」

 

「リカから連絡があってな。直ぐに飛び出して来たんだ。俺が強いのは知ってるだろ?」

 

「そうだけどぉ〜、でも心配だったよぉ〜。リカは?」

 

「洋上空港にいる。ひとまずは無事だ。俺の女だぞ?あいつの事だ、しぶとく生きてるだろうさ。」

 

「あの〜・・・・」

 

押しのけられた奴が復活して声をかけてきた。あ、そう言えばいたなコイツ。

 

「ああ、悪い。俺はこの天然ゆるふわドクターの同居人、滝沢圭吾だ。よろしく。」

 

「乗って行く?バイクじゃ危ないわよ?」

 

「そうした方が良いのは分かってるが、如何せん愛着が湧いてる物でな。」

 

これは事実だ。ツーリングもリカや静香を乗せて行った事があるし、結構楽しめた。だがまあ、確かにこれは危ないな。

 

「分かった。乗ってくよ。しかしお前が運転してるとは思わなかったぞ。あのショッボいコペンに乗ってたお前が逃走車をねえ・・・・」

 

「うっ・・・・」

 

冗談もそこそこに、俺はバイクに積んだバッグを取ると、マイクロバスに乗り込んだ。

 

「さてと・・・・静香、状況を説明してくれないか?」

 

「えーとねー」

 

「この先どうするかって事で議論してたのよ。幸い宮本がこの馬鹿を押さえてくれたから良いけど。」

 

ピンク色のツインテールの生徒が真っ先に答えた。お、なんか床で腹押さえて悶えている哀れなヤンキーが一人いる。馬鹿ってのはコイツだろうな。まあ、放って置こう。

 

「そうです。ですが、こう言った事の再発防止の為にもやはり我々にはリーダーが必要になりますね。全てを担うリーダーが・・・・」

 

ピンストライプスーツの上下を着た黒縁眼鏡が進み出て言い放った。確かに、統制を取ればグループの犠牲は抑えられる。

 

「で、候補者は一人って訳、紫藤先生?」

 

ピンク頭が紫藤とか言う奴を見据える。不満だと言うのがありありと表情に出ている。

 

「私は教師ですよ、高城さん。貴方達は生徒です。それだけでも資格の有無はハッキリしています。どうです、皆さん?私なら、問題が無い様に手を打てます!」

 

大仰な手振りで生徒達に語りかける。コイツの洗脳めいた喋り方は、まるでヒトラーだ。問題が無い様に手を打つだと?阿呆だな。

 

「だったら俺も立候補しよう。生まれてこのかた喧嘩すらした事も無い、前線では役立たずのアマチュアがリーダーなんて、棺桶に片足どころか、両手両足突っ込んでる様なもんだ。お前らはどうか知らないが、俺はゴメンだぜ。」

 

これを聞いた一部の生徒達にはかなりウケたらしく、笑うのを必死に堪えている。勿論、静香もだ。

 

「それに、教師なんて肩書きはもう無意味だ。そもそも一教師がどうこう出来る様な問題か?俺はと言うと、教師ではないが、一時期SATで働いていた。戦闘経験は当然あるし、この街の道筋なら大抵知ってる。」

 

「では、多数決で決めましょうか?公平に。」

 

来た。学園関係者と言う共通点を持たない部外者の俺を不愉快に思ったのか、さっさと懐柔を済ませようとしている。自信満々に紫藤が俺の誘いに乗って来た。SATにいたと言うのも、床主全体のルートを把握していると言うのも、全て事実だ。勝率は充分ある。この車内の空気が物語っている。後部はあの教師に付いて行きたい、前部は別行動を取りたいと、そう言っている。

 

「良いぜ。じゃあ、俺について来る方がマシだと言う奴、手を挙げろ。」

 

狙い通り、静香と一緒に先にマイクロバスに乗って脱出を計ろうとしたグループ六名が手を挙げた。

 

「票は俺の立候補を加えて七。対するアンタも立候補を加えて手を挙げてない奴が六人。真っ二つに割れたなぁ、紫藤先生?」

 

「ホントだ・・・・票が割れてる。」

 

車内の人数を確認したピンク頭に小さくサムズアップをしてみせた。おお、紫藤の奴、こめかみがピクピクなってるな。初めて見たぜ。

 

「ま、まあ良いでしょう。考えが変わる、と言う事も充分ありますから、もう少し時間をおいて再票決と言う事で。」

 

勝った・・・・・・多数決は、こう言ったコミュニティーではシンプルにして最早絶対の正義。膠着状態になれば自ずと不満は重なる。

 

だが、勝利も束の間、俺の思考を中断したのは、突如鳴ったクラクションの音だ。右の方から車道を逆走して来る市バスが見える。それが乗用車に衝突し、ひっくり返るとそのまま勢いが衰えずに猛スピードで転がり始めた。それも、俺達が乗ってるマイクロバス目掛けて。

 

「静香!さっさとトンネルを通れ!バスに塞がれちまう!」

 

静香はアクセルを踏んで、マイクロバスはトンネルを猛スピードで走り抜けた。幸いバスは横向きに倒れた為、トンネルにつっかえたまま止まったが、数秒後にバスは爆発した。

 

「ふう・・・・」

 

「あ、危なかったわ・・・・・」

 

「別のルートを通ってたら、かなり遅れてたぜ。ギリギリ通れたから良かった。」

 




紫藤のリーダー決定を覆しました。あの小物先生は主人公にムッコロさせようかどうかはまだ決めていませんが、まあ痛い目にはあってもらいます。

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