学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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洋上空港からの脱出手段ですが・・・・どうしましょうねえ・・・・

まあどうぞ。


作戦名:Towering Inferno 後編

「俺はあんまり良い考えとは思えないんだがなあ・・・・」

 

「それは承知の上だ。言っただろう、これはかなり無茶な賭けだし、下手すりゃ死ぬ。が、今現在他に効果的な手立ては考えられない。俺達は警察であり軍や自衛隊じゃない。戦闘機の機銃掃射かロケットランチャー数十発でもぶち込まない限り感染者の数は減らない。だから、それに近い事をするしか無い。勿論、強制はしない。」

 

「行くに決まってるだろう。」

 

即答した田島に

 

とりあえず持てるだけ武器を持った俺達———俺、リカ、そして田島———の三人は空港の作業車が出入りする区域に降りて行った。当然とは言え、やはりシャッターは全開になっていた。

 

「クリア・・・・な訳ねえよなあ。」

 

「田島、撃つな。感染者は聴覚以外の感覚は無い。ここで囲まれたらアウトだ。」

 

早速撃とうとした田島のハチキューの銃身を下に向けさせた。

 

「あのミニバンに乗って。」

 

静かに、だが早足でミニバンに乗り込んだ。運転席に座った田島はアクセルを吹かし、一気にスピードを上げる。その間にもスピードは上がって行き、感染者の群れを突っ切って行く。ペンキの缶をぶちまけたかの様にフロントウィンドウが内蔵やら体液やらに覆われた。

 

「何だよこれ、まるで悪い冗談だ!警察官が人を轢殺するなんて!」

 

「ああ、確かにな。悪い冗談だ。レキサスのミニバンで人を轢殺なんて。」

 

「もう人間じゃないわよ。一キロ先まで前進して右のガレージに曲がって。」

 

ガレージには給油タンクを乗せたトラックが一台止まっていた。飛行機は出航しろと言われれば直ぐに出航しなければならない為、給油も迅速に行わなければならない。その為緊急の給油車があるのだ。

 

「「「ジャンケンポン!!!」」」

 

何も言わずに俺達はパー、もしくはグーを突き出した。結果は、

 

俺:パー

 

田島:パー

 

リカ:グー

 

である。

 

「リカ、エンジンスタートさせろ。田島と俺でカバーする。」

 

「分かったわ、三分頂戴。」

 

田島と背中合わせになった俺は、次々に八十九式で感染者を葬って行く。サイトを覗き、引き金を引く、引く、引く。女だろうと、老人だろうと、男だろうと関係無い。危険は・・・・脅威は全て排除する。今この場に子供の感染者がいないのが唯一の救いだろうか。リカはどうか分からないが、田島なら恐らく迷うだろう。昔から子供が好きで、面倒見が良い奴だ。

 

「リロード!」

 

「了解。」

 

八十九式を左手に、USPを右手に持ち、両サイドに目を光らせ、近付いて来た奴らの頭を吹き飛ばす。リロードが終わった所でエンジンの唸りが聞こえた。給油車の階段を上っても感染者の数が減る様子は無い。新しいマガジンを押し込み、再び構えを取って田島が乗るまでの間カバーしてやる。

 

「早く乗れ!!」

 

俺も急ぎ足でその階段を上った。

 

「良いぞ!飛ばせ!!」

 

「了解!!」

 

それを確認すると、トラックを全速力で走らせ始めた。感染者もグチャグチャのペーストみたいになりながら轢殺されて行った。このトラックはレキサスでは無いがな。すると、ゴトン、上から音がした。田島が反応するよりも早く俺はUSPを抜いて三発撃った。若い男の感染者だった。一発はこめかみ、残りは目玉と左頬の肉を抉った。

 

「あっぶねえ・・・・・」

 

「死ぬかと思ったぜ。ありがとな。今度なんか奢ってやるよ。」

 

「出来ない約束はするな。俺が反応しなきゃ俺は今頃お前の頭を吹き飛ばさなきゃならないんだぞ?」

 

『もうそろそろターミナルの一番ヤバい所に到着するわ。燃料のバルブ開いて!』

 

彼女の言われた通りバルブを開くとホースから放射される水の様に燃料が吹き出し、放物線を描きながら地面、そして感染者に掛かって行く。こんなもんか。バルブを閉めた。

 

「さてと。」

 

紙マッチのマッチブックを開いて全て着火すると、マッチブックも燃やした。十分に燃えているのを確認すると、それを投げた。だが、投げた時の風で消えてしまう。

 

「Shit・・・・・」

 

「どうせなら、コッチの方がもっと確実だと思うぞ?」

 

田島が取り出したのはC-4爆薬だった。なるほど、考えたな。大方技術支援班からいくらか拝借して来たんだろう。

 

「お前、以外と手癖の悪い奴なんだな。見直したよ。」

 

「良いのやら悪いのやら・・・・」

 

『何してるの、早く着火して!』

 

既に降りたらしいリカが切羽詰まった声で出発を促す。起爆の準備を整えると、タンクにそれを貼り付けた。デカい洗濯バサミみたいな起爆装置を手にトラックから下車し、リカと合流した。トラックの方にスタングレネードをアンダーハンドで投げると、俺達は走り出した。凄まじい破裂音と共に後ろが明るくなり、感染者がゾロゾロと飴に群がる蟻の様にトラックの方に向かって行く。

 

「Burn in Hell.」

 

それだけ言うと、田島は起爆装置を起動した。スタングレネードとは比べ物にならない程の巨大な爆発が起こり、走り去ろうとしている俺達ですらその爆風で前のめりに倒れそうになった。

 

「振り向かないで、走るわよ!」

 

「おう。」

 

さてと、ターミナルに辿り着くまで約一キロ。全方向には幾百幾千ともつかない数の感染者。こちらの弾薬はそれ以下。四面楚歌どころの話じゃねえな、地獄道をジョギングなんてさあ。

 

「サクラ、こちらダリア。今すぐ狙撃支援班と消防を出動させて。私達だけじゃこれは切り抜けられないわ!」

 

「良いか、胴体じゃなく頭だ!頭を狙え!頭をぶち抜けば弾を無駄にしないで済む!」

 

左から来た感染者五人ををUSPで駆逐し、更に歩を進める。残りの距離は約五百メートル。これで半分・・・・・

 

「田島!お前、まだC-4持ってるか?!」

 

前方と左右をカバーする田島とリカの後ろで、殿を勤めている俺は断続的に聞こえる撃発音に負けじと大声で聞いた。

 

「あるが、あれだけの数にこれだけじゃあ焼け石に水だ!使っても意味は無い!全力で走って噛まれない事を祈るしか無いよ!!」

 

狙撃支援班が配置に付いたらしく、後ろで感染者達が一人、また一人と後ろに吹き飛ばされて行く。後ろから追って来る奴らの数が徐々に減っている。前方は出る時に使った出入り口でSAT隊員と武装した警備員何人かが俺達を援護していた。

 

「行ける・・・・これなら、行ける!!」

 

残りの体力を振り絞って、俺達は感染者達を縫う様にしては知るスピードを更に上げた。近過ぎる奴だけ撃って行き、後は前進あるのみ。そして遂に・・・・・

 

 

「こっちです!早く!」

 

ターミナル内に再び入った俺達は、深い溜め息をついた。今度ばかりは正直死ぬかと思ったぜ。誰も噛まれずに済んだ。

 

「狙撃班、どう?感染者を燃やすのは効果的?」

 

『連中の一部には有効です!ただ、効果の現れが顕著になるまでは幾らか時間が掛かります。』

 

やっぱりか。感覚が死んでいるから燃やしても完全に灰になるまでは止まらねえらしい。

 

「悪い、リカ、田島。結局無駄足だった。」

 

「ほんと、ヒヤヒヤしたぜ、副隊長殿。あんなのは二度とやりたくないね。」

 

「そう言わないの。やる価値はあったわ。効果は今一つだったけど。」

 

ポフポフと俺の頭を叩くリカの手を払い除けて葉巻を一本取り出した。

 

「コヒバ?」

 

「ああ。やるか?」

 

「勿論。」

 

先に火を点けて二、三度吹かすと、リカに渡した。

 

「圭吾、携帯貸して。」

 

「静香にはもう何十回もかけたが、出なかったぞ?」

 

まあ別に断る理由も無いので渡してやった。

 

「やっぱり繋がらないわね、警察には。」

 

静香に繋がらないのはマズいが、それもそれで結構ヤバいな。本部との連絡が途絶えたのなら、第一小隊の連中は俺達が引っ張って行くしかない。

 




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