学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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一心会との遭遇です。

明日はAmerican College Testing Program 通称ACTのテストがあります。言ってしまえば大学の入学試験です。あ〜、どうしよ・・・・


Reunion#1: Lily Lady

隣家の方もどうやら大部分は高城家の私有地らしい。トラックやらスモークガラスを張った車等が脇に寄せられて止めてある。大型のテントも再び張られているが、屋敷で見た時よりは断然少ない。恐らく感染者の襲撃で大半が殺されたみたいだな。

 

現在俺達は武装を取り上げられて前方を歩かされていた。この人生ではまたと無い屈辱だ。アフリカの密林で猟師のトラップに引っ掛かった時以来かな?足首から縄で逆さ吊りにされたのは無様の一言に尽きる。

 

「良く戻ったな、吉岡。ん・・・・・?そやつらは何者だ?」

 

銃口で背中を小突かれた。膝をついて、両手を背中に回す。こいつが、己の判断で全てを決めて来た男・・・・右翼団体憂国一心会の総帥。高城壮一郎。下手に相手にしたら刃の如き鋭い目は、合わせただけでゾワゾワと鳥肌が立って、鼓動もバクバクと加速し始めた。声も、覇気がある。いや、有り過ぎる。喋る度にこんなに威圧感バリバリだったら聞く方も大変だな。

 

着衣の上からでも鍛え抜かれた筋肉が盛り上がっているのが見えた。目立つ外傷も無い。腰には刀が吊り帯で下げてあり、いつでも抜ける様に左手を添えていた。こいつ、まさか屋敷からこれ一本だけで感染者の群れを突破して来たんじゃねえだろうな?どこの剣豪?

 

「警察の特殊部隊SATの隊員だと。何でも、奥様の古い知り合いだとか。総帥と奥様しか知らない様な事まで知っていたので、事実確認の為に。」

 

「そうか。百合子を呼んで来い。」

 

「はっ。」

 

同行していた吉岡と呼ばれた男が百合子さんを捜しに行った。いなくなったのを確認すると、刀片手に俺達に近付いて来た。

 

「諸君の名を聞こう。」

 

下手に動いたら首か、少なくとも腕の一本は落とされるな。

 

「南リカ、県警特殊部隊SAT第一小隊隊長。」

 

「同じく副隊長、滝沢圭吾。」

 

「同じく狙撃支援班所属。田島博之。」

 

俺達三人の顔をゆっくりと順番に見て行く。まるで俺達の目の中に俺達の真意が見えるかの様に、目玉を射抜かんばかりの視線を真っ向から浴びせて来た。

 

「どうやってここまで辿り着いた?」

 

「話せば長くなります。」

 

俺よりも先にリカが口を開いて答えた。

 

「只言えるのは、我々の——正確には私と圭吾の、ですが——目的は友人を救う事です。その為に洋上空港から脱出してここまで辿り着きました。」

 

「ほう、洋上空港から。ここまで辿り着くのは容易ではあるまいな。覚悟も生半可な物ではやり通せまい。」

 

え?笑った。笑いやがった。鉄面皮と思ってたこいつが笑った!!ありえねーーー。

 

「貴方、お呼びですか?」

 

ワーオ。昔のまんまの百合子さんが現れた。裂かれた赤いドレスのスカートから覗く陶磁の様な肌は今でも見惚れてしまう。やっぱ百合子さんは幾つになっても百合子さんだ。英語で言うなら、正しく『Cool Beauty』だ。美脚に装着されたホルスターには小型のハンドガン、肩にはVz61スコーピオンが掛かってる。

 

「うむ。話は吉岡から聞いている筈だ。この男に見覚えはあるのか?」

 

「ええ。あります。独身時代にお互い仕事でお世話になりました。お久し振りね、滝沢君。」

 

何時もと変わらぬ聖母の様な神々しいスマイルを向けてくれる。田島も何か魅了されてるが。とりあえず頭を下げて挨拶する。

 

「はい。お元気そうで良かった。屋敷がカルテルにでも襲われたみたいだったんで心配しましたよ。」

 

「私はご覧の通り無事。」

 

でも、と彼女の表情が曇る。

 

「部下の大半を失ってしまったわ。住民の何人かが噛まれてそのまま・・・・予想よりもここを襲撃した感染者の数も多かったの・・・・」

 

「そうですか。あ、総帥。あんたが考えてるかどうかは分からないが、『そういう』関係は当然無い。こっちは女二人がいるんで手一杯だからな。」

 

痛い痛い。リカが踵で俺の爪先を踏み潰してます。地味に痛い。

 

「フッフッフ・・・・・フッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

 

いきなりの高笑いにリカも思わず踏み躙る作業を一時的に中断した。その隙にまた足を踏まれない距離へ避難しておく。

 

「中々肝の据わった男ではないか。百合子が気に入るのも頷ける。その友人とは?」

 

「生徒を何人か引き連れていた筈です。長い金髪で、少しポワポワしている・・・・」

 

「成る程。小室君達と一緒にいた養護教諭の事か。」

 

「ここに来たの?!」

 

それを聞いてリカが立ち上がり、自分が捕虜と変わらない立場にある事も忘れて彼に詰め寄った。立ち上がって一歩踏み出した瞬間、一心会のメンバーが何人か彼女に銃を向けた。それを見た俺も反射的に彼女の前に立つ。田島も一歩遅れて彼女の楯になった。

 

「やめよ。事の真偽は確かめる事が出来た。我々の敵ではない。解放しろ。武器も返してやれ。全てだ。」

 

が、総帥がそれを止め、俺達に全ての武器を返却させた。やっぱり銃を持ってると安心するってのは生前の病気みたいなもんだな。

 

これで改めて静香が生きていると言う確信を持つ事が出来たのだ。俺も肩の荷がまた一つ降りた気がする。

 

「脱出させる為に我々が僅かばかりの時間を稼いだ。」

 

「どこに行ったかは?」

 

「この近辺に済んでいる仲間の両親を捜しに行った。私の娘と一緒にな。」

 

「そいつらの特徴と名前、住所とか、後は向かった大まかな方角を教えてくれ。」

 

俺達が広げた地図に吉岡のおっさんや他の会員が地図にマジックやらで住所を書き出し、全員の写真を差し出した。

 

「ほー。男二人、静香を加えて女四人、後は子供が一人・・・・・」

 

どんなハーレムだ、全く。

 

「一番近いのが、この宮本麗とか言う女の家か。」

 

重ねて礼をすると、停車したトラックに向かって駆け———

 

「待ちなさい。」

 

だそうとした所で百合子さんに止められた。

 

「貴方達、ここに来る前に屋敷に行ったの?」

 

「はい。火事場泥棒やってる奴らがいたんで、ちょこっと。」

 

左手でトリガーを絞る仕草を見せる。

 

「部下を何人かあそこに寄越したんだけど、見なかったかしら?」

 

「いえ。いませんでした。桜庭会の奴らが中を物色してましたから。で、撃って来たんで返り討ちにしました。」

 

暫くの間、百合子さんは俺の顔をじっと見つめた。総帥とはまた違う、心の底まで見透かそうとする様な透き通った目だ。

 

「そう。じゃあ、良いわ。」

 

トラックの荷台からスモークグレネード、手榴弾、スタングレネード各種を収納した大型のベルトを取り、俺に差し出した。こいつは使えるな。

 

「お使いなさい。トラックも給油しておいたわ。」

 

「何時もすいません。」

 

「娘に会えたら、伝えて頂戴。壮一郎さんみたいに良い男を見つけなさいと。」

 

「はい。」

 

もう一度頭を下げると、トラックに乗って隣家を後にした。これで行くべき場所はハッキリとした。寄り道した所為で大分距離が離れてしまっているが、今からそれらを全て挽回する。恐らく床主で二つしか無い稼働する車の一つを加速させ、地図が示す場所へ向かって行く。

 




後もう一、二話ぐらいで再会させようかと思っています。これからも応援よろしくお願いします。

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