学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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お待たせしました。やっぱり高校最後の年となると忙しくなります。更新スピードも週一回かそれ以下に落ちる可能性もありますが、完結まで持って行きたいので何卒よろしくお願いします。


連合結成

どうやら学生組のお仲間達が戻って来たらしいな。一人は写真の通り黒縁の眼鏡をかけている平野コータ。俗に言うオタクの典型的な見た目をしていた。まあ、学生服の上に着込んでいるタクティカルベストと銃剣付きM1A1を無視すればの話だが。それに持ち方や動きからして、コイツは恐らく銃の知識に於いてグループ一番の玄人だ。

 

俺やリカ、田島には劣るかもしれないが、それでも海外留学生でもない限り、銃火器に精通する奴はそうはいない。隣にいる奴もライオットショットガンを肩に担いでいる。小室孝。リーダーは恐らくコイツだろうな。その後ろを歩いているのは女の制服警官・・・・なのか?頼り無さ過ぎるオーラがだだ漏れだぞ?下手したら警官のコスプレしてる学生に見える。

 

「孝!良かっ・・・・!・・・・ごめん・・・・」

 

宮本が何かに気付いたらしく喜色満面が一変して真っ青になる。

 

「・・・・あのお婆さんに早く輸血してやってくれ。後、これも例の『隠し場所』に。」

 

暗い表情を変えずに素っ気無く言うと、バッグの中から血液パックや輸血に必要な医療器具を取り出し、ライオットのスリングベルトを外して宮本に押し付けると、カフェのテーブル席にどっかりと腰を下ろした。苛立ち、怒り、不甲斐無さ。そんな感情が綯い交ぜになった顔をしている。

 

「隣、良いか?」

 

「どう、ぞ・・・・?え?」

 

「ああ、そういやお前とは初対面だったな。警視庁特殊急襲部隊SATの第一小隊副隊長、名前は滝沢圭吾だ。以後よろしく。」

 

「SAT・・・・?って事は、鞠川先生の・・・?」

 

「ああ。まあ、正確にはその一人、だがな。友達ってのは、今現在あそこで静香と話してるリカだ。ちなみに、お前らがメゾネットからかっぱらった銃は、全部あいつの私物。壊したらぶっ殺されるからそのつもりで。で、彼女は俺の上司。白いキャップ被ってあの子供と犬の、ジーク、だったか?そいつと遊んでるのが、観測手兼相棒の田島博之。」

 

指で示しながら紹介して行き、そこで一旦俺は言葉を切った。とりあえず今の情報を反芻させるべきだ。一度に全部話したら無効も混乱するし、情報が効率良く伝わらない。

 

「ここまでで何か質問は?」

 

「何で、僕達の名前を・・・・?」

 

「ああ。一心会とちょっとな。百合子さんとは知り合いなんだ。彼女のお陰で猜疑心剥き出しの高城に俺達の素性の事を納得してもらえたからな。他には?」

 

「無い、です。沙耶が信用するなら、僕も信用します。」

 

理解が早くて助かる。これなら提案も簡単に受け入れてくれそうだ。

 

「なら良い。確か、小室孝、だったか?さっきのお前の表情・・・・・誰か死なせたな。」

 

一瞬背けられる視線。当たりだな。半信半疑で発破をかけてみたんだが、小室は見事に掛かった。ワザとそう言ったのだ。『死んだな』ではなく、『死なせたな』と。その言葉に過剰な反応を示した。当たりだ。これで俺の直感に確証が加わった。彼の反応は、こいつが外に出た時にそのグループの指揮を執っていた事を意味する。

 

「やっぱりか。さっき輸血がどうとか言ってたから、それを取りに行く途中で一人やられたんだな。まあ、グループ内で誰も死者を出さずにここまで生きて来たのは見事としか言い様が無い。日本人の大半は一部を除いてどこか平和ボケしてる所があるからな。」

 

「どうも・・・・・」

 

「俺達三人は洋上空港をほっぽり出して静香を探し、安全を確保すると言う当初の目的はこれで達成された。そこで、だ。お前達と行動を共にしたい。」

 

「え?」

 

「そりゃそうだろう?」

 

最初は静香を連れてグループから離れようかと思ったが、彼女がそれに納得する筈も無い。生徒を助ける養護教諭としての意地だろうな。それにまあ、確かに年端も行かないガキを静香と言う立場上唯一の衛生兵である存在を失うのはデメリットが大き過ぎる。

 

コイツらは手持ちの武器の扱い方を熟知とまでは行かないが、ド素人でもない。言うなれば中の上、もしくは上の下ぐらいだ。俺やリカ、そして田島の適切な訓練を受ければ、傭兵時代の俺の全盛期の数割程度の戦力に昇華させられる。大人数になって少しは動き難くなるが、トラックとハンヴィーがあるし、どちらかを別働隊として行動させる事も容易い。

 

「まあ、静香をここまで守ってくれた謝礼と思ってくれ。元々そのつもりだったんだ。こっちは探してた目当ての人間を守ってもらったんだ。お前らが探している人間の捜索を手伝ってやるよ。捜索は人数が多ければ多い程良い。カバー出来る範囲が広くなる。」

 

「そうしなよ、小室!」

 

「平野・・・・・・」

 

いつの間に来たのか、平野コータが小室の後ろからひょっこりと顔を覗かせる。

 

「SATは立て篭り事件とかジャック事件の非常事態が発生した時、本当に事がヤバくなった時に出動する。前線にいる小隊の隊長格が三人も加わったら、戦力は大幅に上がる。別行動もやり易くなるし、弾も使える銃もこれで更に増える。損は無いと思うよ。」

 

小室は目を閉じ、一度息をついた。メリットやデメリット、今後の動きについて色々と情報を整理、及び反芻しているのだろう。しばらく待って目を開けると、立ち上がって右手を差し出して来た。

 

「じゃあ、よろしくお願いします。」

 

「ああ。こちらこそ。」

 

連合結成、完了だ。さてと。俺は立ち上がり、踵を返した。

 

「あ、あの、どこに行くんですか、滝沢さん?」

 

「ん?即席の爆発物を作りに行くんだが。ここら辺なら安酒の瓶とかスプレー缶はゴロゴロあるだろうからな。モロトブ・カクテルやらFPSのゲームにある撃てば爆発するドラム缶の縮小版みたいな物も作れる。<奴ら>は頭さえ吹っ飛ばせば倒せるんだろ?全身を木っ端微塵にしてもそれは変わらない。動く為の両手足が完全に消えてしまえば、動きは芋虫以下のスピードに落ちるし、弾も消費を抑えられる。一石二鳥が三鳥、四鳥だ。」

 

「あ、じゃあ、僕が案内します!小室、後で中岡さんと話があるから。」

 

平野を先頭に立たせて俺はショッピングモールの探索に行った。

 

「で、具体的に何を作るつもりなんですか?」

 

「あー、そうだな。ホームセンターはあるか?肥料とか化学薬品を混ぜれば着火次第爆破出来る物を作れるんだが・・・・」

 

だが、俺にはその制作する為の知識は無い。本当なら銃弾の火薬を使って何かを作りたいが、弾が勿体無い上に上手く行くかどうかも分からない作業だ。もし失敗したらそれこそ何をやっているのか分からない。

 

「そうだな・・・・・HMEを作るには・・・・そうだ。良い事を思い付いたぜ。平野、でかいショッピングカート用意しろ。良いか、必要な物を言うぞ。リチウム電池、肥料、それが無ければ硝酸カリウムを多く含む歯磨き粉、酒、タオル、後は・・・・・」

 

そこで止まる。ああ、糞っ!思い出せない!リチウム、硝酸カリウムと、え〜、共有結合がああなって・・・・

 

「後は?他に何がいるんですか?これで何をするんですか?」

 

もどかしそうにうずうずし始める平野。あ”ー、もう!後、必要なのは・・・・火薬・・・火薬が入っている物・・・・火薬・・・・・

 

そして俺は思い出した。ここに入る途中で玩具売り場の入り口付近に掛かっていた物を・・・・そうだ!あれだ!あれがあった!

 

「花火、花火だ!花火、爆竹、そして癇癪玉を全部。」

 

ショッピングカート四つに『商品』を全て詰めると、それを皆が待っている所に持って行った。静香は未だにリカの側から離れようとしない。田島はジークと暫定的な飼い主であるありすと遊んでいる。やはりどこか父性を感じる何かを持っているのだろうか。

 

「あ、圭吾!急に行っちゃうから心配したの・・・・よ?」

 

文句を言い始めた静香。だがそれもすぐに尻窄みになった。俺と平野のショッピングカートに堆く積まれた物を見て目を丸くしているのだ。まあ、端から見れば何の変哲も無い物ばかりに見えるが、これはいずれ強力な武器になる可能性があるのを彼女は知らない。

 

「なあに、それ?」

 

「爆弾の材料だ。まあ、当然爆弾に使う分と本来の用途で使用する分に分けるが。割合として・・・・3:7、いや、4:6 か。」

 

「癇癪玉と爆竹なら撹乱に使えるわね。」

 

沙耶は籠の中身を見ながら満足げに頷いた。

 

「弾と同様、数に限りがあるがな。爆弾作りは後にしよう。ここ最近まともに眠れてないから、俺は寝る。<奴ら>が入って来ない限りは極力起こさないでくれ。」

 

静香と再開出来てグループが更に強力な物に昇華したのを確認してから張り詰めた神経が多少は解れたのか、どっと疲労と睡魔が押し寄せて来た。それに抗おうともせず、家具売り場の寝具コーナーにある手近なベッドに体を投げ出すと、意識と目を閉ざした。

 




後二、三話でショッピングモールから脱出させようと思います。

感想、誤字脱字の報告、質問、色々とお待ちしています。

それでは。

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