学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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今回はタイトル通り、主人公がグレラン片手に大暴れしちゃいます!


The Crazy Mother F*cker

それを聞いて、田島を含む全員が唖然とした。

 

「・・・・・え?」

 

数秒遅れてやっと俺の発した言葉の意味を理解したのか、小室の口からそんな間の抜けた返事が返って来た。

 

「 グレネードの爆発で<奴ら>を出来るだけ殲滅して、音で<奴ら>をお前らから引き離すと言ったんだ。」

 

「そんな無茶な」

 

「ああ、無茶だ。だが、今になって始まった事じゃないだろうが。元々こんな大所帯で移動する事自体が結構な無茶さ。今更度合いが多少上がった所で一々怖じ気づいていたらキリが無い。寧ろ疲れる。」

 

そんな事は馬鹿でも分かる。だが今更そんな事を指摘されても俺は考えを変えるつもりは無い。

 

「トラックのエンジン音がある以上成功率はかなり低い。その上失敗すれば、死ぬか最悪『仲間入り』するかもしれない。だが、ほぼノーリスクここを脱出する為の一番確実な方法だ。策は既に練ってある。」

 

俺の言っている事はメチャクチャだ。自信たっぷりで言っている反面、コイツらは絶対納得していない。だが、唯一田島だけは小さく何度か小刻みに頷いた。また何かとんでもなく無茶な事をするつもりだな、滝沢?——あいつの目はそう訪ねている。俺は何も言わずに目配せすると、小さく笑った。田島は顔に手をやり、掌で顔を覆う。よっぽど俺の無謀過ぎる行動に呆れ果てたらしい。

 

「どんな策よ?屋根から擲弾の攻撃をするまでは良いわ。けど、どうやってあたし達に追い付くつもりなの?!それに、ワザワザそんな事しなくても癇癪玉と爆竹で<奴ら>を遠ざける事位出来る筈じゃない。」

 

高城が噛み付く。大所帯になってようやく統制が取れつつあったグループから離れて一人勝手な行動を起こそうとしている俺に我慢ならないのだろう。と言っても、スタンドプレーは俺の専売特許なんだがな。

 

「そ、そうですよ、滝沢さん!いざとなれば自分が爆竹を」

「確かにな。だがソイツは後々必要になるかもしれない。」

 

外に飛び出そうとする中岡を俺と慌てる平野がそれぞれ腕を掴んで引き戻す。

 

「今ここでそれを大量に消費してしまえばどうなるか分からない。それに屋上から降りる方法は階段だけじゃないさ。あいつらの仲間入りをするか死ぬかの二者択一を迫られたら、俺は死を選ぶね。分かったら行け。そして何があっても絶対に陣形を崩すな。グレネードランチャーはショットガンよりも長い射程とそれ以上のパワーを持っている。巻き添えを食らったら怪我では済まない。」

 

「でも」

 

「小室。」

 

俺は尚反論しようとする小室を黙らせ、非常口を指差した。

 

「良いな?今直ぐだ。行け。同じ事を何度も言わせるんじゃない。俺は今までお前らよりも長く人を殺して来たし、危機的状況も切り抜けて来た。そもそも、俺がそう簡単に死ぬ様な男に見えるのか?」

 

答えを待たずに走り出し、階段を三段飛ばしで登って行った。そしてそこに用意されている束ねられた登山用の丈夫なロープで堅く何重にも重なる結び目を作って手摺に括り付け、更にカラビナも柵に引っ掛けた。両手で思い切り引っ張ったが、結び目は解けないし、カラビナもしっかりと固定されている。

 

「作戦開始。」

 

仰角付きのサイトを覗き、引き金を二度引いた。バスバスッと勢い良くガスが抜ける様な音と共に銃口から四十ミリのグレネード弾が二発飛び出し、放物線を描きながら<奴ら>が密集している所に着弾、爆発した。

 

「よし・・・・」

 

狙い通り、<奴ら>は爆発音によって移動を始めた小室達から離れて行く。仰角を調整、もう二発グレネードを発射。再び爆発と共に<奴ら>の頭や手足、内蔵の破片が爆風で空中高く放り投げられては重力に従って落ちて来る。腐った果実が踏み躙られたかの様に、アスファルトが体液で汚れて行く。

 

「ラスト。」

 

再び<奴ら>が一番密集し始めた所に向かってグレネードを一発ずつお見舞いした。これでシリンダーは空になる。未だに硝煙の臭いを立ち上らせる薬莢を抜き取って地面に落とすと、シリンダーを半時計回りに回転させて定位置に戻し、残った手持ちのグレネード弾六発を押し込んだ。

 

スリングベルトを肩に引っ掛けると、ロープの端を腕に何度か巻き付けて掴み、一度深呼吸をした。今から俺がやる事は出来の悪いアクション映画の典型的な行動だ。傭兵時代のビル占拠の強襲オペレーションや訓練とも違う。ハーネスは疎かヘルメットや安全マットも何も無い、失敗は許されない場面(シーン)だ。アクションは全てスタント抜きでやってのけたかの有名な香港アクションスター、ジャッキー・チェンもこんな気持ちだったのだろうか?

 

そんな下らない事を考えながら、助走を付けて走り出す。アドレナリンが分泌され始め、血圧と鼓動のスピードが急上昇し始める。既に飲み込む唾の味は血の味に変わりつつあった。息も浅くなっているが、スピードは緩めない。これをやるには欄干をハードルに見立てて飛び越える位の速さが必要だ。欄干への距離はどんどん縮まって行く。五メートル。三メートル。二メートル五十。一メートル。そして、

 

俺は欄干を飛び越えた。刹那に訪れる不思議な浮遊感。そして重力に従って俺は落ちて行く。両手でしっかりとロープを握り締め、張り詰めた所で俺はブランコにでも乗っているかの様に勢い良く前後に振られ始めた。再び前方に振られた所でロープから手を離して、着地の瞬間に生まれる衝撃を殺す為に受け身を取った。リュックからキャスターボードを抜き取り、足を乗せる。

 

「おぅらぁ!こっちだ化け物共!」

 

MGLが火を吹き、立て続けに三つの爆発が起こる。地面を蹴ってキャスターボードを操舵して小室達が向かって行った方向へ急いだ。加速する為に体を捻るテンポを更に上げて、S字型の軌道を描きながら移動する。

 

そしてしばらくしてからクラクションが聞こえた。トラックだ。ボードから降りて肩に担ぐと、それをトラックに押し込む。リュックに背負ったままのスケートボードに乗り、自転車組の方へ悠々と歩いて行く。チェシャ猫の様な狂気を帯びた笑顔を貼り付けて。

 

「あ、あは、あははははは・・・・・・・」

 

俺の無謀にして自殺まっしぐらな行動の大部分を目にしていたらしく、リカと田島以外の全員は乾いた笑い声しか出せない様だ。慣れってのは、恐ろしい物だな。唯一の例外が高城と平野だ。高城はまるで俺が別世界からやって来た超人を見ている様な驚きに若干の恐れが混じった眼差しを向けている。平野の方を見ると、まるで神を崇めるかの様な熱い眼差しを向けて来る。やめろ、俺は人間だ。

 

「あ〜・・・・・言いたい事は色々あるだろうが、まあ、何とかなったな。うん。」

 

小さく何度か頷きながら俺はそう呟いた。

 

「おじさんすご〜い・・・・」

 

「ああ、まあね。ウチの副隊長は隊長と同じエキセントリックでエクストリームな物が大好きだから。流石の俺もあそこまで命知らずな荒技は・・・・・」

 

田島も苦笑いを見せながら唯一俺に拍手を送っているありすの頭を撫でる。

 

「スカイダイビングをやるのは久し振りだったから、恥ずかしながら少しビビっちまったぜ。と言う訳で、俺は寝る。」

 

宣言通り、俺は少しばかり惰眠を貪る事にした。荷物を入れたのと、田島やリカ以外に、静香やありす、そして中岡の三人を同乗させた為にトラックのスペースが結構潰されてしまっている。ぎりぎり後一人収まるか収まらないか位のスペースに滑り込み、備え付けられたラックにショットガンとMGLを押し込んで深くシートに腰掛け、目を閉じた。

 




如何でしょうか?流石にビルから飛び降りるのは使い古されているネタなんじゃないかなと最初は思ったんですけど、他に使えそうな物が無くてorzしてしまい、仕方なしにこういう風に収まりました。

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