学園黙示録〜転生者はプロの傭兵   作:i-pod男

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そろそろこのIF編も完結させた方が良いですかね・・・?原作未完の小説なんてずるずると長引かせたらつまらなくなって来るだろうし。そんな事を考えながら書き上げました。ありすちゃんの生死もどうした物か・・・・?


治せる傷と残る傷

「あぅ、ぐ・・・・!」

 

床に転がした小室は痛みに堪えて歯を食い縛っている。平野は携帯コンロの上に乗った鍋で湯を沸かし、中にナイフやラジオペンチ、そしてマイナスドライバーを入れて消毒していた。中岡は心配そうに小室の顔を覗き込み、流れ落ちる汗をしきりにタオルで拭き取っていた。

 

「さてと。平野。小室にこれ飲ませろ。コイツなら四分の一位で足りると思うから。」

 

魔法瓶に付属しているプラカップにウィスキーを注ぎ込むと、それを平野に渡した。

 

「ゆっくりと飲ませるんだ。慌てて飲ませたら詰まって咳が出る。咳の所為で腹筋が収縮する。それによって息むし、腹の痛みがさらに酷くなるからな。」

 

「はい。小室、ほら。」

 

平野はゆっくりと小室の頭を起こし、震える手で慎重にウィスキーを小室の口の中に流し込んだ。残念ながら麻酔は見つからなかったので酒で感覚を鈍らせる位しかない。

 

「何だ、これ・・・・・まず・・・・」

 

当たり前だろ。コンビニで売ってる様なパチモンなんざ安酒に決まってる。全部飲み干したのを確認すると、再びプラカップにウィスキーを注ぎこみ、それを傷口とその周りに万遍無くかけた。小室は痛みに悲鳴を上げ、背筋を弓なりに反らして身を捩った。

 

「平野、中岡、全力で抑えろ。暴れられたら弾を抜く時に余計に傷口を広げる破目になる。」

 

平野は痛みにのたうち回ろうとする小室の胸を押し下げる。中岡は両足を押さえ込んだ。その間にガーゼで酒と生乾きの血を拭き取り、傷の周りを清潔にした。よしと。これで準備は整った。舌を間違って噛み切らない様に手ぬぐいを小室に噛ませると、マイナスドライバーとペンチを手に取った。

 

「行くぞ?」

 

マイナスドライバーを傷口の中にゆっくりと差し込み、肉の中に埋まった銃弾を穿り返し始めた。だが案の定、小室はバタバタと暴れ回る。中岡も思わず尻餅をついた。クソッタレが。一旦ドライバーを引き抜くと、足をばたつかせない様に太腿の上に座り、再びドライバーを傷口に挿入した。堅い物に当たるのを感じると、何度かテコで弾を押し上げた。そしてペンチでしっかりと弾を掴むと、中から一気に引き抜く。

 

「出来た・・・・・あ〜〜・・・・」

 

平野は肩で息をしながら尻餅をついた。

 

「いや、まだだ。弾を抜いたとは言え、コイツの腹にはまだ風穴が開いたまんまだぞ。それに、ここからまだ血は出るんだ。化膿を防ぐにはこれを塞がなきゃならない。」

 

「焼灼、ですか・・・・?」

 

平野の表情が少し青ざめた。そりゃまあ、間近で野戦病院の治療を見た事はねえだろうからな。

 

「しょうしゃくって、何ですか?」

 

中岡が聞き慣れない単語に首を傾げた。

 

「傷口を焼きごてで塞ぐ、原始的な方法だ。本来なら電気メスかレーザーの方が良いんだが生憎とそんな都合の良い物は転がってない・・・・それ以外に残ってる手段は、まあ、縫合位だ。だが、生憎と針仕事は下手糞でな。焼くしかねえわ。」

 

小室に再びウィスキーを飲ませた。コンロのつまみを捻って再び火を出すと、上に随分前に買った安物のフォールディングナイフを乗せた。刃が赤くなる程の熱を持ち始めると、それを一気に傷口に押し当てた。ジュッと肉が焼ける匂いがして、心の中で三数えてからナイフを離す。

 

「これで良い。傷口に水をかけてやれ。で、包帯を巻いたら、暫く寝かせておけ。二人共、こいつ見ててくれるか?」

 

「はい。それよりありすちゃんの方を・・・・」

 

「ああ。」

 

銃弾が脇や肩、足を掠った宮本や高城、そして防弾ベストのお陰であばらはいくつか罅が入った位で事無きを得た田島は一つの部屋で休息を取り、毒島は三人の世話をしていた。そして、あのガキ・・・・・ありすは二階の別室でリカと静香の手厚い看護を受けていた。ベッドやシーツは血だらけになっている。直接圧迫で止血をしている所を見ると、恐らく弾はもう摘出する事は出来たんだろう。俺が使ったのと同じ様な血まみれの道具がテーブルに置かれていた。

 

「静香、そいつの調子はどうだ?」

 

「脈は弱いけど、まだちゃんとあるわ。後は回復を待つしか無い。でも、出血が酷くて、止血に時間が掛かっちゃったの・・・・輸血したいけど、血液型知らないし・・・・どうしよう・・・・ねえ、圭吾、どうしよう!?」

 

「落ち着け!」

 

涙と鼻水と血で顔がぐしゃぐしゃになった静香の両肩を掴んで抱き寄せた。

 

「今この場にいる本当の医者はお前だけだ。お前がパニクってどうする?落ち着いて、自分の腕を信じろ。な?血液型がO型の奴なら誰にでも輸血出来る。俺らのグループの中にも一人はいる筈だ。」

 

持っていたタオルで静香の顔を拭いてやる。目は赤く泣き腫らしたままだが、目付きは変わった。

 

「それより、お前らと撃ち合ったあいつら。何物なんだ?」

 

「分からないわ。」

 

ゴム手袋を外したリカは、灰皿に乗せたままの葉巻を口に銜えた。

 

「まあ、見た所まともな人種じゃ無さそうだったけど。でも、その内の一人は見覚えがあったわ。広域指定犯罪グループ8803(ハヤブサ)のダニエル・松田。」

 

「何だ、その売れないピン芸人みたいな名前は?けど、ハヤブサか・・・・面倒な相手だなぁ、おい。」

 

この犯罪グループは恐喝、詐欺、銃器、臓器、麻薬、人身の密売、マネーロンダリング、何でもござれの組織だ。外道の風上にも置けない様な屑の集まりだが、頭が回る屑の集まりでもある。下の下から中の下クラスの奴らしか今まで逮捕出来ていない。

 

「あいつらなら海外まで取引先を広げてる筈だ。装備が充実しているのは当然と言えば当然だろうな。屋上から狙撃した時に、横流しされたであろう軍で支給される武器を幾つか持っているのが見えた。M4A1やM16とかを。後は恐らく東南アジア辺りで出回ってる本物の複製品だろうな。最近は銃の値段は馬鹿にならないし。」

 

「うぅ・・・・・」

 

明るい笑顔は見る影もない、血の気が失せた土気色の顔をしたありすが呻き、目を開けた。とりあえずは大丈夫みたいだな。さてと。これでやる事が出来た。

 

「リカ。」

 

「ん?」

 

「少しここを出る。それまでの間、ここ頼めるか?」

 

「・・・・何しに行くか大凡見当はついてるけど、敢えて聞くわ。良いけど、何で?」

 

「なに、ちょっとおいたが過ぎた鳥を撃ち落として羽と翼を毟ろうと思ってな。」

 

「一人で行くつもり?」

 

「現在、万全の状態で動ける残存兵力は俺を加えて五人だ。予備兵は三人。」

 

まあ、中岡はどうか分からないが・・・・あいつには悪いが、いざ戦闘になればあまり役に立つとは思えない。それは兎も角、完全に回復するまで、かなりの時間が掛かる事は間違い無い。それまでの間ここに篭城して物資を集められるだけ集める事こそが急務。明日の命より今日の命ってな。

 

「また一人で勝手に動くつもり?」

 

「正直言うと、お前にも来て欲しいってのが本音だよ。けど、静香を一人放って置く訳にも行かない。だから、頼むわ。」

 

「駄目。今回ばっかりは反対よ。物資を取りに行くなら私でも行けるわ。でも、ハヤブサのメンバーが何人いるか、装備がどんな物か、どこにいるかすらも分からない。そんな不確定要素だらけの状況で闇雲に外に飛び出すなんて馬鹿な真似、アンタの女としても上司としても黙認出来ない。」

 

久々に見た。リカの目に不安の色が過るのを。俺はリカの顔を両手で包むと、額を軽く突き合わせた。

 

「・・・・・分かった。それもそうだな、悪い。田島の様子、見てくるわ。」

 

唇を合わせるだけの軽いキスを交わすと、俺は部屋を出た。確かに、悔しいがその通りだ。俺の闘争本能もホント考え物だな。田島達が休んでいる部屋の扉をノックして足を踏み入れた。

 

「お〜い、田島〜、生きてっかコラー。」

 

「うるせ・・・・いつつつ・・・・」

 

「見立てではどんな感じだ?」

 

「あばらが二、三本折れてて、他に四本幾つか罅が入ってるとさ。暫くは動けないらしい。」

 

「まあ、足や腕じゃなくて良かったな。銃もまともに撃てなくなったら、お前どうするよ?」

 

「・・・・・隊長に守ってもらうさ。」

 

冗談がまた予想の斜め上を行く返事が返って来た。こいつめ。

 

「お前らも大丈夫か?」

 

「私達は平気です。肩と二の腕を銃弾が掠っただけですから。数日で治ります。」

 

「私は左足掠ったから走ったりするのはまだもう少し先だけど、日常生活に支障は無いわ。」

 

まあ、大した怪我じゃなくて良かったぜ。けど・・・・・やっぱ殺しといた方が良いんじゃないかな?

 




恐らくまた主人公が暴れますね。そんなフラグを図らずも立ててしまいましたよ。

感想、質問、評価、報告、色々とお待ちしております。ここまで読んで下さってありがとうございます。ここまで来たからには完結まで絶対に引っ張って行きますので、よろしくお願いします。

m (_ _) m

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