2nd ランサー&M
愉快だ、愉快だ、全く持って愉快だ。
かの時計塔のお偉いさん方が、俺の行動如きで大騒ぎしている。
それだけの事で混乱し、時計塔内の情報操作すら出来ないとは…笑いしか出てこない。
所詮時計塔の人間も「人間」ということか。
人の底知れない欲がはっきりと見える。
どうせかの時計塔のロードたちも自分がマスターになろうと画策しているに違いない。
それもそうだ。
聖杯戦争で勝利できれば、その家の権威をかなり大きくすることも出来るし、自分の持つ全ての欲を叶えられる。
「根源への到達」などという大義名分だけではない。
世界を我が物とすることも可能であるし、使いきれない程の財を手にすることだってできる。この世の全ての悦を極めることすらも。
自分の醜い欲望を、綺麗な言葉で着飾って、皆が賛同してくれる。
これほど居心地のいいことはない。
途轍もなく不味く、暗い物が、「聖杯」という調味料を加えるだけで甘く、明るくなる。
魔術師だって人間だ。
こんなものが、目の前に晒されていて、自我を抑制できるはずがない。
だが、残念。
今回の聖杯戦争に参加できるのは”14人”だ。
それにこの14人は、もう決まっている。
聖杯など、俺にとっては最終目的の1ピースでしかない。
だからこそ、あまりにも滑稽で、愚かに見えるのだ。
自分達が、ただ見ている事しか出来ない「観客」だとも気づかず、手も届かない物をまるで出演者でもあるかのように探し回る。
これほどにまで滑稽な争いは類を見ないだろう。
だからこそ、彼等にしっかりと見せつけなくてはならない。
「君達は、観客なのだよ」
では聖杯戦争で最も重要だと言える、サーヴァントを呼び出すか。
繰り返すが俺にとって聖杯戦争は人生の1ピースでしかないのだから。
この程度で失敗するわけにはいかない。
だが、バーサーカーなど呼び出したら何があるのか予想できない。
ステータスは7機の中で最も高いが、理性がない。
それに、狂化の方向性がどのベクトルに向かっているのか分からない。
あるバーサーカーは、生前に支配者に叛逆した逸話があるからか、マスターの事はあくまで叛逆の戦友だと思っている。
つまり、彼にとってマスターの命令は強制されるものでもないのだ。
それなら令呪を使えばいいだけの話だが、もし令呪の使用を含む、マスターらしい行動をとれば圧制者だと思われ、マスターを殺しにかかる。
こんなサーヴァント、使えない。
だったら、別の英霊の方が余程良い。
だからこそ、今回の召喚に触媒は使わない。
触媒を使わなければ、マスターに近い英霊が召喚されるらしいが、それで十分だ。
さすがに俺に近い英霊が狂化スキルをえるわけがないだろう。
それに、自分に近い英霊が使えないわけ無いだろう。
さて、始めるか。
目を閉じ、魔力を込める。
「礎に銀と鉄ーーーーー」
呪文の完成と共に、部屋に魔力が溢れる。
俺が目を見開くと、そこには規格外の魔力を纏う存在が居た。
「サーヴァント、ランサー。召喚に応じ参上致しました。貴方が私のマスターでよろしいでしょうか」
やけに丁寧な口調で話す、英雄。
この英霊がどんな逸話を持つ英雄かは知らないが、ランサーのサーヴァントであることは分かった。
それに、こんな口調なのだし、マスターの命令を聞かないサーヴァントではないだろう。まず、そのことに安堵した。
それほどまでにあのバーサーカーのようなサーヴァントが嫌だった、ということか。
まあいい、使えるサーヴァントも手に入ったことだし、契約を済ませるとする。
「そうだ。俺がお前のマスターだ」
そう言い、右手にある令呪を彼に見せる。
「承知致しました。マスター」
ここでようやく、俺はランサーの姿を見た。
顔は西洋に多く見られるような顔。髪は黒で、口元を黒い布で隠している。服は紙のようなコートを着込み、彼をランサーとしている彼の特物は…何故か見えない。
おかしい。もしランサーなら、槍を持っているはずなのに、何も持っているようには見えない。
これは聞いておくべきだろう。
「ランサー」
「はい、何でしょうか、マスター」
「確認しておくが、お前はランサーなんだよな」
「ええ、先ほどもそう申しましたが、どうかしましたか?」
「ランサーなら、槍を持っているはずだ。なのに、何故お前は槍を持っていない?」
「ああ、その事でしたか。私のスキルで隠しているのですが、お見せ致しましょうか?」
俺は、ランサーの声に若干、戸惑いがあるのを感じた。
槍が宝具だとするならば、宝具がばれる事で即英霊の真名に繋がる程、繋がりがある宝具だということか。
だが、知っておかなくてはならない。
マスターなのに、自分のサーヴァントの事を知っていなくては、マスター失格だ。
ここは俺の工房でもあるし、魔術的に監視されてもいない。
「ここは俺の工房だ。他の魔術師やマスターの監視は無いだろう。見せてくれ」
「承知致しました」
そう言うと彼は、右手にかかっている魔力を弱めた。
彼の右手から現れたのは、一本の槍が途中から二本に分かれた、二股の槍。
「これが私の武器であり宝具です。銘はありませんが」
そう、彼の槍は彼の名を冠した槍であり、かの聖人を突き刺した槍。
「私の真名はロンギヌス、この槍は聖槍の中の一つであるロンギヌスの槍」
世界中の数多の聖槍の内の一つ、英雄本人より武器が有名になった一例。
「改めてよろしくお願いします、マスター」
ここに、後悔しかない槍兵と、聖杯戦争を階段の一つとしか思っていないマスターの物語が始まる。
ここでランサーのスペックを。
[サーヴァント] ロンギヌス
[真名] ロンギヌス
[身長・体重] 168cm・65kg
[属性] 中立・中庸
[ステータス] 筋力 C 耐久 D
敏捷 A 魔力 B
幸運 E 宝具 B
[クラス別スキル]
対魔力 D
[個別スキル]
洗礼詠唱 D
無幸の怪物(偽) C
心眼(真)C
作った?スキルの”無喜の怪物(偽)”というのは、現代において英霊本人より武器や逸話の方が有名になってしまった場合に付与されるスキル。
ロンギヌスの場合は明らかにエヴァンゲリオンのせいです