G・Iの子   作:めーび臼

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夜が明ける前に

 夜も明け切らぬ中、俺はモゾモゾと布団の中から抜け出す。

 

 日本に居た頃は、なかなか意識も覚醒せずに布団の温かさから抜け出す事が出来なかったが、この世界の体は前日の疲労感も感じさせずにスッキリと眠気が晴れて行く。

 

 まぁ物音や人の気配がすると直ぐに意識が覚醒する前に臨戦態勢が取れるようになったのは、喜ぶべきか悲しむべきか分からなけど。

 

 なにかと高ポテンシャルになっている自分の体を実感しつつ、精孔を閉じてオーラをしまい込み絶(ぜつ)で気配を消す。

 

 慎重に物音を立てないように身支度を整える。ハンガーにかけていた上着を取って着込み、グリードアイランドから持って来た数少ない荷物であるリュックを背負う。

 

 忘れ物がないか確認すれば、ズシくんが上布団を足で蹴っ飛ばして子供らしい寝相で寝ている。

 

 俺はまだ出会った事はないが、極端に寝相が悪い念能力者って居ないのだろうか?

 

 強化系の能力者が寝ながら暴れて、家があった場所が知らぬ間に更地になって居たみたいな事があったら、それはそれで大事件だな。

 

 時間もないし、こんなくだらない事考えている場合じゃない。きっと念を習得した人たちは寝相も改善されるんだろう。そう、きっと……。

 

 俺は、ズシくんの捲れ上がった布団を掛け直て、事前に部屋に隠して持ち込んだ靴を取り出すと窓に足をかける。

 

 「じゃあ、またどっかで会いましょうっ」

 

 二階から重力に任せて落ちる。地面に落ちる前に足に少しのオーラを纏わせ、地面に着いたら屈伸して衝撃を逃がす。なるべく音を出さないような着地を決めた。

 

 「10点10点10点10点10点10点ジバル選手満点です」

 

 っと、体操競技みたいに靴を持ったまま両手を上げてポーズを取ってみる。

 

 他人がいたらこんなアホな事はやらないのだが、今は夜明け前だ。人影なんて俺の他に居ない。

 

 一度、ウイングさんたちのいる部屋を見上げる。

 

 「挨拶もなしですいません。お世話になりました!」

 

 俺は深々と頭を下げる。

 

 ウイングさんが紹介してくれる人はきっといい人なんだろうけど、今腰を据えて修行していたらゴンくんたちに追いつけなくなるんだ。

 

 ジンさんにはゴンくんの事は何も言われていないが、やっぱり心配になってしまう。

 

 グリードアイランドを出た時は積極的に会うつもりはなかったが、ヒソカに対峙してみて、考えが変わった。

 

 あいつはヤバい。いや、ヒソカと同じくらいのレベルの幻影旅団、それにキメラアントなんてマジもんの化け物まで出てくるのだ。

 

 俺という原作に居なかったイレギュラーがいるって事はどっかで結果が変わっているかもしれない、俺がいた所でなんの力になれるか分からないが、とにかくゴンくんにどっかで合流したい。

 

 俺は、街の外に向かって走りだした。

 

 ☆

 

 「行ってしまいましたか」

 「え!?なんで師匠が自分の部屋に居るんすか?」

 

 ウイングはズシの部屋の窓際に立って去って行く、ジバルの背中を見つめていた。

 

 弟子であるズシはウイングが自分の部屋に居る事に慌てて、ベッドから這い出すと、ジバルが居ないことに気づいた。

 

 ウイングは慌ててるズシを見て無言でグリグリと坊主頭を撫でる。

 

ズシもその行為で、ジバルがすでに去ってしまったのを感じたのだろう。何も言わなかった。

 

一頻りズシを撫でたウイングは、虫型の携帯電話を取り出しメモリからある人物の番号を呼び出すし、ダイヤルする。

 

 ウイングの耳に当てた携帯電話から数回のコール音がすると、電話の向こうの人物は声がする。

 

 「もしも……」

 「バカウイング!!何時だと思ってるんだわさ!!!」

 

余りの大声に携帯電話を手から離してしまい、電話でお手玉するウイングを見て、ズシは冷静にツッコンだ。

 

 「師匠、太陽も出ていない時間に電話するのは失礼っす」

 

 ☆

 

 空が白み始めた頃、俺は線路が見える位置で絶(ぜつ)を維持したまま身を潜めていた。

 

 小一時間くらいしたぐらいか、建物の間に電車のライトが見えた為に絶を解いて全力で電車の進行方向にある線路に向かって走る。

 

 壁を蹴って線路脇の建物の上に登ると左から来る電車に向かって纏っていたオーラを引っ込めて飛び降りる。

 

 「よっと」

 

 軽い掛け声と共に電車の上部のでっぱりにオーラを纏わせた右手の指を絡ませると、体が電車に引っ張られて地面と水平になった。慣性が働いた事を確認してから電車へと足をつければ、無事に無賃乗車完了である。

 

 「ふふふ。ヒソカの奴もこんなに早く俺がこの街から脱出したとは思うまい」

 

 北へ向かう電車の上から景色を見つつほくそ笑む。

 

 普通に切符を買う事も出来ただろうが、身分証明書も持たない俺は国境を超える時に何かしらのトラブルがあっても可笑しくない。

 

 それにハンターであるヒソカには切符を買った記録から辿られる可能性もある。警戒しといて悪いことは何もない筈だ。

 

 それに流星街出身の旅団のメンバーの足取りが追い難いのは人民データベースに載っていない、居ない筈の人間だった事も一つの要因になっているだろうと推測する。

 

 グリードアイランド出身の俺も多分同じ筈だ。だから敢えての無賃乗車。

 

 けっっして、天空闘技場で思ったほど稼げなかったからではない!

 

考えが込んでいると、座っている下の方から声がかかる。

 

 「よっと!はは、これはジバル!こんなとこで何してんだ!」

 「お、お前は!」

 

 そいつは電車の窓の上部をそいつは掴むと、軽やかな動きで電車の上に飛び上がって来た。

 

 恰好は光まで吸い込みそうな闇に潜む為の真っ黒な忍び装束、相反して頭は光を反射して光り輝きそうなつるぴかハゲ丸くん。

 

 そう俺が反則して負けた事を大笑いしやがった忍者のハンゾーだった。

 

 そして、最初に俺が思ったのが、

 

 「なんで忍者が電車に普通に乗ってんだ?」

 「はぁ?忍者だって電車くらい乗るだろ?この広い世界を移動するのにずっと走れって言うのか?ププ。子供は子供だな」

 

 俺のこめかみの血管がまたもやピクピクと動くのが自覚出来る。なんてこいつは会う度に俺をイラつかせてくれるんだろうか。

 

 「まぁハゲゾーは潜んでも潜み切れないだろうけどね」

 「誰がハゲゾーだ!これは何度も言ったが剃髪だ!剃ってんだよ!!」

 「剃って目立ったら意味ないけどね~」

 「くう!このガキが!大人舐めるなよ~」

 「そのハゲ頭なんか死んでも舐めるか!ハゲ忍者!」

 「なにを~!!!!」

 「っと。まぁ揶揄(からか)うのはこれくらいにして」

 

 俺の唐突な口喧嘩終了の言葉に電車の上だと言うのに器用にずっこけるハンゾー。

 

 正直このハゲを殴ってやりたい気持ちはあるが、今は我慢だ。

 

 誰にも気が付かれないように電車に乗り込んだのに、電車の上で念能力者同士で殴り合ったら大参事になってしまうだろう。

 

 俺はまだズッコケたまんまのハンゾーを無視して、先に電車に腰を下ろす。

 

 「まぁ座れよ、ハンゾー」

 「むう、いちいちイラつかせる子供だ」

 

 ハンゾーは渋々ながらも俺の前に腰を下ろした。

 

 「よく俺が電車に乗ってる事に気が付いたな」

 「まぁ忍びだからな」

 

 どや顔で「忍びだから」というハンゾーにはイラッとするが、話が進まない為に今は無視だ。

 

 「それで、ジバルはなんでこんな所にいるんだ?もしかして、念能力者の間でエロオーラを巧みに使うエロガキだと知れ渡って恥ずかしくて普通に電車も乗れなくなったとかか?」

 

 エロオーラ?エロガキ??まさか!?

 

 100階層のあの試合が念能力者の間に知れ渡るっているってのか!?

 

 「プハハ!!その顔は知らんかったみたいだな!あの試合の映像はネットの間で話題になってるぞ。ププ!」

 「い、い、い、い、今はその話題はい、い」

 

 歯がギリギリするが、今は耐えろ。耐えるんだ!!!

 

 この時の俺は知らなかった。このハンゾーが面白がって自分の修行のついでに俺についてくる事を。

ただ、今の俺はこのハゲ忍者のうっとおしい言葉に血管が切れそうになるのを耐えるので精いっぱいだった。

 

一路、俺とハンゾーを乗せた電車は線路を北へと走って行く。

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