G・Iの子 作:めーび臼
プロローグと特訓
自分の心臓が破壊される音ってのを案外と素っ気ない物だと俺はどこか他人ごとみたいに考えていた。
右手から一枚の紙がすり落ちて行く。
すぐに足に力がなくなって、膝かっくんされたみたいに折れて床に衝突して膝立ちになる。
あぁ心臓潰されても感覚はあるんだなぁ。
、膝からの衝撃に体が揺れるのを感じながら、無意識に右手は心臓があったスーツの左胸部分を掴んでいた。
見上げれば、クルタ族特有の感情が昂った時に変わる瞳が燃えるように紅く染まって俺を見下ろしている。
どうしてこうなっちゃったかな?
後悔はないか?
自分に問いかけてみる。
多分、ないな。多分って言っちゃう所が俺らしいだろ?って誰に話掛けてんだよ。
ハンゾー五月蠅いって。
ありがとう。
もう一回会える事を期待してます。
『アンブレイカブル・コネクト(絶対尊守の契約)』の契約の証である契約書はまだ効力を失っていない。
だって、契約書は確かに条件を満たし、オーラの光を纏っているんだから……。
-半月前-
街外れの崖に囲まれた山の一角で二人の気合いの入った声が交わる。
ハンゾーの右拳が迫って来る。
その拳を左に交わすが、蛇が獲物に絡みつくみたいに拳は軌道を変えてハンゾーの拳の甲が逃げた俺の頬を打つ。
咄嗟にオーラを頬に集めて防御したものの、衝撃は受け流せずに首が捥げる……かと思って無様に自分から衝撃を受け流しす為に足に気合いを入れて地面を蹴る。
「いっっってぇぇ!!!ハンゾー首ある?!首!!」
「馬鹿か、ジバル!!一回攻撃食らったくらいでピーピー騒ぐな!!それにそんだけ騒々しい口があるんだから首だってあるだろ!」
「うっせぇ!10歳児の幼気なお子様に向かってマジで殴ってんじゃない!この可愛らしい顔が腫れたらどうすんだ!」
「じゃっかしい!都合のいい時だけ子供のフリすんな!戦闘技術教えて欲しいって言ったのはジバル、お前だろ!」
「え~ん。え~ん。ハゲ忍者がいじめるよ~。毛根と一緒に人としての良心もなくなったんだ~!」
俺がわざとらしく目の下で両手を左右に動かして泣きまねをしながら、チラっとハンゾーを見ればあの五月蠅いハンゾーが頭を押さえて呆れ果てている。
俺とハンゾーは今何をしているかというと、一言で言えば特訓である。
天空闘技場の町から無賃電車で逃げ出して一週間、こうして無賃乗車と特訓を繰り返しながらヨークシンシティまであともう少しという所まで接近して来ていた。
なぜ、俺たちがヨークシンを目指したかと言うと一年に一回の『ヨークシンドリームオークション』が目的だ。
俺のゴンくんと合流すると言う目標は、よく考えたらそこまでする必要ないかなって思い直し、取りあえず原作との乖離があるかどうかの近況確認程度に下方修正されている。
ハンゾーも何か探し物があるらしい。
「はぁ止めだ、止め!!」
呆れているハンゾーは俺がうるさいって思ったのか体術の模擬戦を取りやめて、地面に転がった俺に向かって歩いてくる。
俺は模擬戦の終わりの合図に泣きマネを止めてパッと笑顔で顔を上げる。
「そっかぁ。体術の特訓は終わりかぁ。ハンゾーが言うなら仕方ない。仕方ないったら仕方ない」
俺は言い訳がましい事を言いながら立ち上がる際に拳大の石を二・三個掴んでおく。
「じゃあ、今度は俺が先生役って事で念の訓練だな!」
俺が無邪気な顔でそういうと、歩いていたハンゾーは明らかに嫌そうな顔で前進を止めて後ずさる。
HAHAHA。散々俺の事をいたぶってくれたんだ。お前なんぞに手加減なんて生ぬるい事はしにゃしない!
「ちょ、ちょっと待てジバル!まず石を下ろせ。まさかまたあれをやるつもりか!?」
そうだよ。そうだよ~。念でオーラの移動を素早くする流(りゅう)はとても大事なんだよ~。
だから、
「ハンゾー!そこ動くなよ!動かしていいのはオーラだけだからな!」
「待て!まだ心の準備がってギャー!!」
「避けるな!!俺の投げる石に纏ったオーラの量を素早く判断して、相殺出来るだけのオーラを当たる箇所に動かさないと意味ないだろ!」
ふふふ。これがウイングさん直伝の人間的当て訓練だ!
「お前それが、十歳児のする顔か。待て!まってぇ!ギャー!!!」
喜々としながら、拾った石にオーラを纏わせてハンゾーに向かって投げながら、俺は思う。
「父さん。母さん。今日もジバルは元気です!!」
荒野に今日もハンゾーが響き渡った。
うん。いい天気だ。