G・Iの子   作:めーび臼

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豚のトントコ焼き

 

 「豚のトントコ焼き?」

 

 楔形文字みたいな看板がかかったレストランの前に立って、俺は『トントコ焼き』がどんな料理かについて考えている。

 

 うん。全然想像つかないや。なんだろう?豚、自らがトントコと歩いて来て巨大な鍋で焼かれるのだろか?

 

 「うわ~食いたくねぇ……」

 

 日本にも踊り食いと言う文化があるが、流石に豚を踊り食いする気にはこれっぽちもならない。

 

 「おい、坊主。そんなとこに立ってたら邪魔だぞ」

 

 後ろから声を掛けられて横に一歩ずれれば、口ひげを生やした巨漢なおっさんがノシノシと店に入って行く。

 

 山賊かと思うようなおっさんが店に入って行った事でマジで豚を踊り食いしてしまうんじゃないかと心配になるが、いつまでも店の前に立って居てもしょうがない。

 

 俺は、ふ~っと息を吐いて足元の大きなビニール袋を持ち上げると『トントコ焼き』店の中へ扉を押し開けて入って行く。

 

 踏み込んだ店内は肉を焼く煙で煙ってはいたが、店内を豚が徘徊するなんて事はなく至って普通の焼肉屋って感じだった。

 

 てか、豚が闊歩するなんて常識的にありえないよな。

 

 近づいて来た店員に待ち合わせだと告げて、自分であの特徴的なハゲ頭を探す。

 

 やはり流石だ。煙って視界が悪い中でも衰えぬ輝き。これなら結婚30年の金婚式に奥さんに送っても文句は言われまい。

 

 俺は迷いなくハンゾーが居るテーブルに歩いて行けば、ハンゾーは俺が入って来た時から気が付いて居たんだろう、忍びなのに恥ずかし気もなく大きく手を振っている。

 

 思い返しても、こいつが忍んでるとこ一回も見た事ないんだけど……。

 

 ハンゾーが頼んだであろう大量の料理が並んだ席の椅子に腰を掛ければ、店員が注文を取りに来たので俺は、ソーダで割った果汁のジュースを頼んでハンゾーに向き合う。

 

 「おい。忍び」

 「なんだよいきなり!」

 「お前は町中もその浮きまくってる忍者衣装なのか?」

 

 ハンゾーは訳わからないと言った風に自分の着ている服を見ている。

 

 「それは闇に紛れるには適してるかもしれないが、真昼間の町中だと浮きまくってるだろ?」

 

 そういうと、ハンゾーは手に持った箸で豚バラを煮込んだ、今にも解れ崩れてしまいそうな柔らかそうな肉を口に放り込んで笑う。

 

 おい。食うか笑うかどっちかにせいや。家の母さんの前でそんな事したら、天井のシミが一つ増える事になるぞ!

 

 「いいかジバル、これは忍者のユニフォームなんだ。簡単に脱いでしまったら忍者失格だろ?ジバルはまだまだ世間知らずだな」

 

 この世界の忍者はそれをユニフォームと呼ぶのかってか忍者って周りに知られてもなんの問題もないのかよ!

 

 諭すように問いかけて来る声とそのどや顔が以上にムカつく。

 

 ムカつくついでにもう一つ。

 

 「あと、お前なに普通に外食してるの?他人が作った物食べれないんじゃなかったか!?」

 

 原作でもこいつはそんな事をのたまっていたような気がする。

 

 「無論だな。どこに毒が仕込まれているか分からんからな」

 「じゃあ、目の前でお前が食ってるこれはなんだよ!?あぁ!」

 「心配するなジバル。店に入る前に厨房や冷蔵庫の中までキッチリ調べて来たかな。些かの問題はありはしないぞ。さぁジバルも安心して食え。食え」

 

 こいつなんで、そんなしょうもないことをどや顔で言いうんだよ。

 

 今、俺のジュースを運んできてくれた可愛らしい店員さんが「え?嘘ですよね?冗談ですよね?」って顔で見てたぞ。

 

 俺は頭に手を置いて、思わず大きな溜息が漏れ出してしまった。

 

 「まぁそれよりも目的の物はこの街にあったみたいだな。それにしても随分時間が掛かったみたいだが?」

 「まぁね。まぁ中身は後のお楽しみな。っとあとさ。面白い話を聞いたんだ?」

 「面白い話ね……」

 

 ム。なんだハンゾーの癖にあんまり興味がなさそうだな。だけど、俺はこの後ヨークシンに行くのに必要だと考えている為にハンゾーの態度を気にすることなく話を続ける。

 

 俺は、山形に凹んだ特徴的な鍋の淵で焼かれている豚肉を箸で掴んで口に放り込む。

 

 てか、これがトントコ焼き?鍋の真ん中の凹みに野菜が入ったスープがあり、その周りで豚肉が焼かれている。

 

 豚肉の焼かれ落ちた油が鍋を伝ってスープの中に流れ込んでいく。

 

 俺にしたら豚の油が浮かんだスープは、ちょっとくどそうな印象だがハンゾーは嬉しそうに鍋から掬って飲んでいる。

 

 俺は、スープには手を付けないで、周りの焼肉だけを食べて何気ない感じを装う。

 

 「あぁ。ヨークシンに向かう幻影旅団を見たって噂があるんだそうだ」

 

 どうだこの自然な感じ!

 

 噂があったなんて真っ赤な嘘だが、俺は幻影旅団がヨークシンの闇オークションを襲うのを転生前の知識から知っている為その対策として講じたのがこれだ。

 

 漫画を流し読みした程度の知識だが、ゴンくん達が天空闘技場を出た時期を考えればヨークシンの事件はまだ起こってないだろう。

 

 新聞にもそれらしい事件はなかったし、ドリームオークションはまだ開催されていない。

 

 「ふ~ん」

 

 だが、俺の言葉を聞いたハンゾーの反応はいつものお調子者の顔ではなくハンターもしくは、忍としてのプロの鋭さを持った眼差しで俺を見て言う。

 

 「ジバルは、その情報を使って何がしたい?」

 

 怒っている訳でもない、静かな声色だがその声は確信と迫力に満ちていて、俺は口の中の豚肉が喉に詰まりそうになった。

 

 かぁやっぱり中の人が平和な日本人だけあって、こういう謀略的な事はこの世界のプロたちの方が一枚も二枚も上手だと言う事を実感させられる。

 

 だが、俺もここで嘘だと告白してしまうと俺の全てをハンゾーに話さなくてはならなくなる。だから、敢えてハンゾーの問い詰めるような声に対して無視を決め込んで目的だけ言う事にする。

 

 「これからヨークシンに向かうのに、幻影旅団にヨークシンを荒らされるのはハンゾーにとってもマイナスにしかならないだろ?」

 「まぁな」

 

 よし、取りあえずは肯定的な返事がハンゾーから聞けたぞ。

 

 「だから、この噂をもっと広めたいのさ。ハンターたちの耳にも届くくらいにね」

 

 そこで、ハンゾーも悪戯を思いついた子供みたいにニヤリと笑った。俺も同じような顔をしているだろう。まぁ俺は正真正銘の子供だけど。

 

 「だから、俺はこれを買って来たんだよ」

 

 俺は足元に置いた袋を持ち上げて中身をハンゾーに見せると、さっきまでの笑みはどこへやら物凄く嫌そうな表情を作った。

 

 

 

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