G・Iの子 作:めーび臼
「おい!ゴン!キルア!」
俺は手を上げて人と人の間をすり抜けて来た二人に対して大声で呼ぶ。
いや~懐かしいな。ゴンとは最終試験で戦いもしたしな。
うん。ハンター試験からまだ8か月しか経っていないのか。
念を覚えたり、目の前で口をポカンと開けてなぜかゴンたちを見て惚けているジバルになぜか色々と連れまわされたりと濃い日々だったなぁ。
ん?
なんだ!?なんであいつらなんで自分の名前を呼ばれたのか分からないような表情をしているんだ?
じっと二人を見ていると、ゴンが俺の顔を見て思いついたような顔をした。
「あ!もしかしてハンゾーさん?久しぶり!」
「いやいや、あ!って、久しぶりなのにそれはないだろ」
「ウソ!本当にハンゾーかよ!?」
おいおいキルアまで、なんで分かんないんだよ。って思ってると後ろから押し殺したような笑い声が聞こえる。
振り向けばジバルの奴が腕で口を抑えて笑っている。
なんで、こいつまで笑ってんだ?
「プハっとかかかかクククおおが」
「おいジバル、何がそんなおかしいんだ?おいおい」
俺が質問する度にジバルは笑いの度合いを強めて、ついには膝を着いて地面まで叩き始める。
「モウ、モウヤメテ。死ぬクハハハハ顔ちかじゅけるな!」
「あぁあのねハンゾーさん」
「なんだゴン」
「うん。顔がヒソカみたいに真っ白だからキルアも分かんなかったんだと思うよ」
あ……。
さっきまでジバルに付きあって白塗りのピエロ姿で大道芸してたんだった……。
思わず膝を着いて四つん這いになってしまう。
俺の姿を見てジバルが文字通りに笑い転げているし、キルアまでが俺を指を指して涙目になって笑っている。
「ちょっと二人とも、ハンゾーさんに失礼だよぉ!」
あぁゴンの優しい言葉が痛い。
俺は頭を垂れて笑いの二重奏に耐える……耐える……耐える……耐える……無理だ……。
「コラ!ガキども!笑い過ぎだ!」
「おいやべぇ!ハンゾーが切れたぞ!」
「マジか!やべぇ!逃げろ!」
笑い転げていた筈のジバルとキルアが笑い過ぎて涙目になりながら、ちょこまかと逃げ始めたので捕まえる為に追う。
なぜだあいつらの尻に尻尾が頭に猫の耳が見える気がして、それが一層ムカつきやがる!
「キルアが二人に増えたみたいだ……」
ゴンの呆れた声が聞こえた気がするが俺はあの悪戯小僧二人を捕まえるのに必死だった……ピエロの恰好のまま。
「たく、ひどい目にあったぞ」
俺はジバルがあらかじめ買っていたピエロの化粧を落とすクレンジングで浮かした汚れをタオルで拭き取りながら、呟く。
その様子をゴンとキルアが雑談しながら見ていて、ジバルは行儀悪く床に座って稼いだ金を数えている。
「ふ~やっと取れたか」
「うん。ハンゾーさんちゃんと取れてるよ」
「あ。本当にハンゾーだ。なに忍者からピエロに転職したの?」
キルアの嫌味に対してキッと睨んでやるが、こいつは相変わらずニヤニヤしたまんまだ。思わず溜息が出る。
俺ってこんなに馬鹿にされるキャラだったか?
「もうキルア!きっとこれも忍者の任務の一つなんだよ!」
「いや、こんな任務ないだろ!」
「え?そうなのかな?どうなのハンゾーさん?」
いやいや、ゴン。もし任務でこの恰好してたらお前らに声掛けないし、正体も簡単にバラさないぞ。
「いや、ただの大道芸だ。そこの守銭奴の小僧に無理やり付き合わされてやってんだよ」
そう言ってジバルを見れば、二人もジバルに目を向けて首を傾げる。
まぁそうだよな。端から見ればこいつを子守りしてるように見えるだろうし。
護衛任務にしても、こいつはけっして、決して良いとこの坊ちゃんなんかには見えない。
「えっと~どう言う事?」
そうだよなゴン。普通の反応ありがとう。
最近ジバルと居ると、普通の子供がどう言うものか分かんなくなりそうだったんだ。
「どうも」
そう言ってジバルは首をちょこんと縦に振って挨拶して、立ち上がる。
「君がジンさんの息子のゴンくんでいいの?」
「うんそうだよ!?ジンってもしかしてジン=フリークスだよね……?」
突然出て来たジン=フリークスの名前にゴン、そしてキルアもびっくりしている。
確か、ゴンは自分の父親を捜しているんだったか?
それが、ジン=フリークスか。
俺もハンターになってから簡単にだが他のハンターの事を調べてたが、ジン=フリークスはとんでもない大物だったな。
「そう。実は俺が三歳くらいの時に一度だけジンさんに会ってるんだ」
「本当に!?」
「うん。ちょっと話しただけだけどね」
「そっかぁ。ジンに会ったんだね!」
ゴンとジバルが父親のジン=フリークスの事で笑顔で話し盛り上がってる所、こそっとキルアが俺に近づいてくる。
それはさっきまで俺をバカにしていた顔とは違う、不信感をバリバリ表に出した表情だった。
「なぁハンゾー。あいつ何者?」
ジバルが何物か正直分からん。だが、まぁむやみやたらに他人に危害を加える奴じゃないことは俺にも分かる。
「さぁな。俺も天空闘技場で会ってからだから正直何者かは分からんな」
「信用出来んの?」
まぁこの警戒心はこいつがゾルディック家なんて暗殺一家で育って来たんだから、当然なのかもしれんがな。ジバルに関しては邪推するだけ無駄だ。
「悪い奴じゃないぞ。それ以上は自分で見て確かめるんだな」
「ふ~ん。まぁゴンが楽しそうに話してるから、悪い奴じゃないか。あんがと」
案外あっさりしてるな。アイツのゴンに対する信頼のでかさはなんなんだ?
「あんがと」と言うと両手を頭の後ろで組んでジバルとゴンが話してる所に歩いて行ってしまう。
まぁ子供なんて話せばすぐに友達になる、そんなもんか。
三人の会話がジン=フリークスの話から念の事に話が移って盛り上がっている所を黙って見ていると、徐々に周りの様子が変わって行く。
あぁあ。囲むにしてもそんな威圧感バリバリにしちゃって、まぁそれがこいつらの商売か。
三人も気づいてるな。
見た所、囲んでいる奴らの中に念能力者はいないみたいだ。
まぁこれぐらいの手合いならなんとでもなるな。
「おう!お前らこんな所で騒ぎやがって!どういうつもりだえぇ!!」
ドスの効いたダミ声が辺りを包み、一般人が恐れをなして逃げて行く。
揃いの黒いスーツにサングラスの男たちが俺たちを囲み睨みメンチを切って凄んでいる。
その中から出て来たのは背の低い、太った腹にスキンヘッドの男だ。
低い鼻の上にはちょこんと丸い眼鏡が乗って、眉間に皺が寄っている。
「おうおう、お前らどこの前で騒いでんのか分かってんかぁ!!」
まぁこいつがボスなんだろうな。
さて、どうするか?チラリとジバルを見れば口を三日月型に歪めて笑っている。
あぁこいつ分かっててこの場所選びやがったな。ヨークシンに来て別行動したかと思えば、また悪巧みかよ……。
本当にこいつといると飽きないねぇ。
「ゴンくんたちともっと話したかったんだけど、お客さん来ちゃった。ごめんね」
「おい!ガキ聞いてんのか!」
小男が凄むと、周りも一斉に罵声を浴びせるがジバルは涼しい顔で聞いちゃいない。
「ジバルくん、大丈夫?」
「うん。問題ないよ。ゴンくんたちも分かるでしょ?」
「そりゃ……分かるけど」
ジバルの問題ない発言に周りのマフィアどもはヒートアップして殴りかかってきそうな勢いで罵詈雑言が飛ぶ。
こいつは他人を怒らせる天才なのかもしれないな。全く厄介な奴だよ。
「おいクソハゲピエロ!てめぇも何笑ってやがるんだ!!」
こめかみに青筋が浮かぶのを自覚して「あぁ」っと凄んで睨んでしまった。
すると、睨んだチンピラの顔が真っ青になって尻もちをついた。
しまった。念でオーラ飛ばして威嚇しちまったよ。
「ハンゾー落ち着きなよ。お兄さんたちが困ってるじゃん」
落ち着けと言うならニヤニヤすんなよジバル。
「さて。あんたボス?」
ジバルに指を指された鼻眼鏡の小男はジバルのあまりにも子供らしくない、堂々とした態度に面食らって「あ、あぁ」としか答えられないでいる。
「じゃあ、場所移そう。ここじゃ目立って困るでしょ」
「お、おま。自分がなに言ってんのか分かってんか??」
ボスがそう言っているが、ジバルはまるっきり無視でマフィアの輪の中け堂々と荷物を持って歩いて行く。
「ちょっとジバルくん?」
「ごめんね。用事出来た。またね。行くよハンゾー」
おいおい。誰もこの事態についてこれてないぞ。全く困ったもんだ。
俺もこいつが何をするのが見たくなってニヤニヤしながら正直に着いて行く事にする。
「まぁゴン、キルア、そういうことらしい。この街にいればまたどっかで会うだろう。またな」
「まぁハンゾーが居ればなんとかなんじゃない?」
「えぇでもキルア~」
「大丈夫ってんだから大丈夫だろ。それに見ろよ。大した奴居ないぞ」
「う~ん。そっか」
ゴンはまだ納得し切れていないみただけど、ちゃんとキルアが止めてくれてるな。
ゴンたちからジバルに目を向ければ、周りにオーラで威圧しながらたじろいだマフィアたちの間を歩いている。
ここで、俺とジバルはゴンと別れてマフィアが出て来たと思われるホテルに入って行った。