G・Iの子 作:めーび臼
いつものように足を屈伸させて地面に着地すると、周りからは喧騒が聞こえてくる。
「って、これかなり目立ったんじゃないの?マジで勘弁して下さいよエレナさん」
俺は思わず一人ごちてしまう。だって、そうだろ?グリードアイランドでは見慣れた流星のような光の玉になってほぼ一瞬で移動する光景は、外の世界では奇天烈以外の何物でもない。
現にいま、目の前のカウンター越しに立って居る赤い髪を二つのおさげにして、パンチがさく裂した様なマークが入った受付のお姉さんも口をあんぐりと開けて呆然と俺の方を見ている。
「あ、あ、あ、あ、あのど、どどどこから……」
驚き、どもってしまっている受付嬢さんに俺は頬を掻く事しかできない。いくら日本よりも摩訶不思議な光景が当たり前の世界だからと言って、いきなり人がワープするなんて一般的には見慣れていないだろう。
「あ。えっと。取りあえず試合って出来ますか?」
「は?」
「は?」
取りあえず上手く説明出来るとは思えないの誤魔化してみることにした。最初から状況についていけない受付嬢さんは混乱の度合いを強めて、固まってしまった。
これはまいったな。
周りを見れば筋骨隆々な男たちやたまに女性が俺の周りに集まって、何やらこちらを見ながらヒソヒソと話している。
その中から、
「おうおうおう!俺の可愛いミカネちゃんをこまらせてるガキってのはお前か?!」
俺と受付嬢さんのやり取りを聞いていたんだろう。ざわざわとしていた人の輪の中から頭一つ飛びぬけた身長の男がノシノシと歩いてくる。
歩いて来た男は山賊かなにかと見間違うぐらいのもさい男で、一見身に付いた筋肉と雰囲気は強そうに見えるが、オーラを瞳に集める凝を行えばただオーラを垂れ流しているだけの非念能力者だと分かる。
「おう。ミカネちゃん。この生意気なガキは俺が躾けてやるからこいつと試合組んでくれよ」
なんというかテンプレ?山賊男はカウンターに近づいて、俺を無視して試合を要求する。
「えっと……無理です」
ミカネさんの一言で、山賊さんは固まり、辺りにはなんとも言えない空気が流れている。
さっきまであんなに騒がしかった周囲がシーンと静まり帰ったあとでクスクスとした笑い声が聞こえて来た。
「お前ら笑ってんじゃねぇ!!な、なんでだよミカネちゃん!」
そりゃそうだろ。かっこつけて出て来て、助けようとした本人に断られるなんて。もう同情しか感じない。
「ここ天空闘技場の試合はランダムで対戦相手が決まりますので。どうしても意中の相手と戦いたい場合は、お二人が200階まで上がって貰わないと……」
あ~。そういえば、そんなシステムだった気がする。
「ミカネちゃん、俺は君の為に!」
「無理です」
さっきまでの慌てていた彼女はどこにいったのだろうか?まるで区役所で申請した時に証明書がないと断る時の役人さんのように、断固とした態度を彼女は頑ななまでに貫いている。
「ミカ……」
「ルールですので」
意中の相手にすげなくされた山賊男は、その髭とボサボサの髪から僅かに覗いた肌を真っ赤に染めて逃げるように受付から去って行った。
なんだろう。絡まれた被害者である俺が可哀想に思えてしまうくらい、奴の後ろ姿は何とも言えぬ哀愁があった。
「それで君は本当に天空闘技場に出場するつもりなんですか?」
山賊男の件で逆に受付嬢のミカネさんは落ち着いたんだろう、ミカネさんは俺の体を心配そうに見下ろして訪ねて来る。
まぁ心配されるのも当然だろう。10歳と言うのもあるが来ている服ごしにも見ても、あまり鍛えているような見かけに見えないと思う。
前世であんまり小さい時から筋肉をつけるトレーニングをすると、身長が伸びないと聞いて過剰な筋力トレーニングはしてこなかった。
その分、柔軟や念のトレーニングはみっちりこなしたけど、幸いグリードアイランドの中では念を修行する場所と環境に不足する処なんてなかった。
「はい。お願いします」
「そうですか……。出場は出来ますが、無理はしないで下さいね。無理だと思ったらすぐに降参して下さい」
「はい。200階まで行ってフロアマスターとかになる気は全然ないので!」
「はぁ。そうですか……」
ミカネさんの呆れた雰囲気に俺は思わず小首を傾げてしまう。