G・Iの子 作:めーび臼
壁に着いている背中を離して、部屋の中央でボルタスと対峙する。
目の当たりにしたボルタスのオーラはさっきまで座っていた時とは段違いに澄みわたって滾っているように見える。
「ククク。い~ね。いぃね~。プロの目だねぇ。プロの人殺しの目だ」
人殺しか。望んで殺したことはないんだけどな……ジバルみたいな子供には見せられんな。
「言葉を交わす為に立ったのか?だったら、ジバルと話していた方がいいな」
「連れないなぁ。まぁでもそうだな。今はさぁどっちが上か決めようや」
今にも涎を垂らしそうな男の好戦的な笑み対して、俺は対峙する前の高揚感は何だったのかと思うくらいに頭の芯が冷えて行く。
あぁいつもそうだ。どっかで歯車がカチリと噛み合って自分が一個の機械になるようなそんな底冷えた感覚が溢れて行く。
「はぁ。ハンゾー、今の力を試すのは良いけど殺し合いなんてやめてよ。俺はこの年でマフィアに狙われるかと考えるとゾッとしちゃうよ」
だが、なんとも呑気なその声色に動き出そうとした指がピクリと止まる。
ふぅ。強張った体の力を抜く為に息を吐き出し。改めてボルタスを見る。
俺とした事が、相手の殺気に中(あ)てられてたわ。
それにしても念能力者二人が殺気を滾らせる空間で、あいつはなに言ってやがんだか。それも、俺たちはそこの鼻眼鏡の足折ってんだから、もう手遅れだよ。
「殺し合いじゃないかぁ。俺は殺す気で行かせてもらう」
「カカカカカ!勝手にしときな!まぁ俺に勝とうなんて100万年早いって俺が教えてやんぜ!」
「あぁ勝手にするさぁ!いいね~。たのしぃねぇ」
この戦いは試合じゃない、合図なんて必要なかった。
会話しながらも、お互いに一挙手一投足に注意し隙を探り合っていた。
ボルタスはオーラで強化した身体能力で腰の後ろに手を回すと拳銃を引き抜き発砲する。
奴の銃口の角度はちゃんと見えてる。
俺は重力に体を引かせて、射線上から体をどかす。
俺の頬の横を通る銃弾にはさっきまでの鉛玉とは違い、一発、一発にオーラが込められて威力を上げている。
簡単に当たってやる訳にはいかんなぁ。
上半身を揺らしボルタスに標準を定めさせないようにしながら、銃弾を避けて行く。
だが、放つ銃弾が避けられているのにボルタスは兎に角楽しそうに銃弾をぶっ放している。
「こいつはデヴィットって銃でよぉ。俺がサツから奪って初めて撃った拳銃だぁぜ!今でもあん時の感触は忘れらんねぇぜ!」
こいつも頭のネジがやっぱり吹っ飛んでやがった!!
今までに撃った弾数が五……これで六発か。
七発目の銃弾が頭の上を通って行った時には、俺は思いっきり踏み込める態勢になるように態勢を整えていた。
その銃は知ってるぜ。なんせ一般の治安維持部隊に普及してる銃だからな。
里で嫌ってほど銃についても勉強させられたから、弾数も把握している。
弾切れの隙を突いて、ボルタスに向かって駆けるが、数歩進んだ所で背筋に悪寒が走り横に飛ぶ!
俺の頭があった位置を銃弾が通る。
なぜだ!?
側転の要領でホテルの床に手を着き回って、テーブルの影に身を潜ませれば。
そのソファーに銃弾が貫通して俺の足元に着弾する。
やっぱ念を込めた銃弾にソファーなんて盾にもなりゃしないか!?
「止めろ!こっちに来るなぁ!!」
部屋の中央に位置するボルタスを回るように避けていた為に、足の折れたゼンジを介抱していた黒服たちの近くまで来ていたようだ。
急に銃弾の嵐が向かって来た黒服たちの間を黒服を盾にしながら通り抜けて、奴の手元を確認すれば、銃身が長い全く別の銃に変わっている。
黒服の悲鳴の中をボルタスは楽しそうに嗤う。
「ハンゾー気が付いたかぁ!?二番手はハングドマンだぜぇ!こいつの打った反動だけでイっちまいそうになるぜ!!」
「うっせぇバカ!てめぇ仲間ごと撃ってんじゃねぇよ!」
俺の優しい忠告も全くあいつは聞いていない、それどころかテンション上がり続け笑い声させ聞こえている。
あいつどっからあんなでかい銃取り出しやがった!最初の銃は腰に付けていたのは歩き方から気が付いていたが、それ以外持ってる様子はなかったぞ。
辺りを見れば、倒れてうめく黒服に足の痛みよりも恐怖が打ち勝っただろう、ゼンジが頭を抑えてガタガタ震えている。
全くひでぇありさまだ。
ホテルの室内にあった家具は俺の通り道を示すみたいに穴が開いたり壊れていたりしている。
俺は足元にあったクリスタル製の灰皿を蹴っ飛ばして、壁にブチ当てる。
「なんだ!?」
ハハ!これであいつの気が一瞬でも引けたな!
俺は壁を走って壁にぶつかり、跳ね返った灰皿をむんずと掴むと手裏剣のようにボルタスに向かって放る。
やつの銃弾以上のオーラを纏わせた灰皿は銃弾を一発、ニ発弾いてボルタスに向かう。
「チっ!だがな!!」
丁度、弾を撃ち終えたハングドマンじゃ避けるしか手段はあるまい。
この隙に近距離戦に持ってく!
駆け近づきながらボルタスを見れば、弾切れの銃にオーラを纏わせて灰皿を殴って弾いていた。
灰皿を弾いたその姿は、隙だらけだ!
グッと腰を落としてすり足で近づき腹パンをくれてやろうとしたが、奴の顔はニヤけている。
嵌められたのはこっちか!?
「来な!『ブン・ブン・バン!!(ぶっ放せハッピー野郎!)』」
奴の左手が銃の柄ばっかりの服の肩口を掴んだ瞬間をおぼろげに見た時にはもう俺は、足にオーラを掻き集めてきりもみしながら飛んでいた。
肩から手を振ったあいつの左手には新しい銃が握られて、空中で身を躍らせる俺に向かって銃弾を放つ。
俺のスーツを切り裂きながら飛ぶ弾をやりすごして、ボルタスの頭の上を超えて床に着地してガラス窓に背を向ける。
「おい!ハンゾーこっちくんなよ!俺まで巻き込めれるじゃねーか!」
まぁ無事だとは思っていたが、ジバルの元気な声が聞こえる。
あいつは脚を折ったガラスのテーブルにオーラを纏わせて盾にしている。
また視界の確保もちゃんとした盾を用意している辺り、ちゃっかりしてやがる。
「おい!ジバルあいつの能力なんだよ!」
「さぁな!取りあえずお前はあっちへ行け!」
おいおい。仲間なんじゃないのかよ!全く冷たいお子ちゃまだ。
「まだまだ行くぜ!!もっとぶっ飛んで踊りな!」
ボルタスは俺の眉間に構える銃の持っている袖を右手で触るとそこには新たな銃が握られる。
またか!具現化系の能力者!?だが、あんなにもポンポンと次から次へと違う型の銃を生み出すってなんだ?
いちいち新しい銃を出す、その意味もまだ分からん。
ボルタスの両手から撃ち出される銃弾を俺は左にジバルは右手に走って避ける。
ジバルの持っている机に一発の弾が当たっていたが机にめり込んだだけなのは、あいつのオーラの操作技術の賜物か。
ボルタスはジバルはあくまで無視して、俺だけを執拗に狙ってい来る。
まずは念の正体を見破る事に専念しなければな。