G・Iの子   作:めーび臼

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地下競売前日の主人公たち

 

 ノストラードが止まっているホテルとは別のホテル。

 

 一般の観光客たちが止めるホテルよりも一つグレードの高いそのホテルに原作であるハンター×ハンターの主人公であるゴンとキルア、そして、その仲間であるレオリオがいた。

 

 苦労人と言う言葉が当てはまるような少しよれたスーツを身に着けたレオリオはまだ十代後半とは思えない老け顔の青年である。

 

 キルアはベッドの上に腰かけて胡坐を掻いて、組んだ膝に肘をついて頬杖を突き、ゴンとレオリオはソファーに座って三人で話をしている。

 

 「だからさぁ?俺たちの目的のグリードアイランドは89億ジェニーなの」

 「89億ジェニー!?」

 

 89億という大金にレオリオは顔を驚きに歪めて思わず大声で唸る。

 

 ジバルの出身地であるグリードアイランドの中に入る為のソフトは、一般的には伝説と言われて言えどもただのゲーム。

 

 ただのゲームであるグリードアイランドに小市民感覚のレオリオが驚き呆れてしまうのも無理からぬ反応だろう。

 

 「うん。資金稼ぎに失敗しちゃって、俺とキルアの所持金は500万。全然足らないんだ」

 「おいおい。いいか君たち競売元のサザンピースはオークションハウスの最高峰だぞ。お前らの予算じゃ入場料にも足らねぇぜ~」

 

 レオリオからの情報を聞いた、ゴンとキルアは一度顔を見合わせて苦笑する。

 

 ただ、その二人の顔に諦めの色は全くない。ゴンはレオリオに向き直ると言う。

 

 「ハンターサイトでのお宝入手難易度はE。入手に必要なのは金だけだからだって」

 「やっぱり、世の中金だよ!金さえありゃ大抵の物は手に入るんだぜ!」

 

 レオリオは大げさに手を振って金の偉大さを主張しながらソファーの背にもたれ掛かる。

 

 「そ。だからさ。金だけで手に入るものは俺たちハンターにとっちゃ真のお宝って言えない訳よ。これくらい簡単に入手しないとプロのハンターとは言えないんじゃないのお二人さん」

 

 今度はキルアの言葉にレオリオとゴンが顔を見合わせる番だった。

 

 やっぱり、二人の顔には苦笑が浮かぶ。今度ははっきりと何言ってんだって顔だけど。

 

 ハンターとしての感覚ならキルアの方が近いのかもしれないが、ゴンとレオリオはその価値感覚にまだ着いて行くことが出来ないでいた。

 

 「あぁそれはそれとしてだな。お前らと合流する前に妙な噂を聞いたぜ」

 「え?何?」

 「ここのオークションを幻影旅団が狙ってるらしい」

 「「幻影旅団!?」」

 

 ゴンとキルア、そして、レオリオにとって旅団と言えば女性のような顔だちの青年をすぐさま連想させる。

 

 勿論、クラピカの事だ。

 

 噂をゴンたちに伝えたレオリオの顔にもはっきりと苦悶の表情が見て取れる。

 

 それは、ゴンとキルアも同じ事でさっきまでの笑顔混じりの顔ではなかった。

 

 「それ本当なの?」

 「いや、噂程度だな。この街に来てる一部の人間の間で飛び交ってるって感じだ。だが、街にはどうみてもオークション目的とは思えない念能力者を何人か見たぜ」

 「俺!兎に角クラピカに電話してみるよ!」

 

 ゴンは慌てた様子で真新しいカブトムシ型の携帯電話を取り出すと、キルアに教えて貰い登録したクラピカの電話番号を呼び出して、プッシュする。

 

 ゴンが電話を耳に当てて、クラピカに繋がるのをキルアとレオリオは無言で見つめ待つ。

 

 数回のコールの後に、クラピカの「もしもし」の声が聞こえて、一安心したのかゴンの顔はぱっと明るくなる。

 

 「もしもしクラピカ!俺、ゴン!分かる?」

 (あぁゴンか。勿論分かるとも。ゴンも携帯電話を買ったんだな)

 

 ゴンが話始めると、キルアとレオリオの二人に顔を向けて笑顔を作る。

 

 その無邪気な笑みにほっとした二人も、クラピカの電話越しの声を聞こうと、ゴンの傍によって来る。

 

 「うん!レオリオに値切ってもらって買ったんだ!今はもうレオリオと一緒に三人でホテルに居るよ!」

 (よかった。レオリオとも合流出来たんだな。すまないな。まだ仕事が忙しくて抜けられそうにない)

 「うん。いいんだ!お仕事頑張って!あ!そうだ。今、レオリオからもしかしたら蜘蛛がこの街を襲うかもって噂を聞いたんだ。クラピカ大丈夫?」

 

 ゴンは躊躇することなく、幻影旅団の話を切り出した。

 

 それに対するクラピカの反応は沈黙だった。

 

 クラピカとしては、ジバルとハンゾーが流した噂とは別に、この街に幻影旅団が来ることを別経由の情報源から聞き及んでいた。

 

 それをゴンたちに黙っていたのは、偏に幻影旅団に事柄に対してゴンたち友達を関わらせたくなかったからに他ならないだろう。

 

 クラピカは内心でこの噂を流した者を呪いたい気分だった。

 

 (……あぁ、大丈夫だ。あくまで噂だからな。こちらのオークション会場の外も一際厳重な警備になっているよ。マフィア側も何人か念能力者を増員したようだ)

 「そうなんだ!」

 

 ゴンはクラピカの言葉を素直に受け取ったようだが、キルア、それとレオリオはクラピカの長い沈黙の末の答えに納得しきれない難しい表情を作っていた。

 

 ゴンの耳元の携帯電話をパッと抜き取ったキルアが電話越しのクラピカに話しかける。

 

 「クラピカ、本当に大丈夫なのか?クラピカは幻影旅団の事になるとゴンみたいに無茶するからさ」

 「ちょっとキルア!俺みたいってどういう事だよ!」

 「いや、お前は無茶ばっかだ!天空闘技場でだって念能力者相手に絶(ぜつ)使ったり、ヒソカと対戦したり!」

 「だってあれは……」

 

 ゴンとキルアがじゃれあって言い争いをしていると、電話越しにクラピカがクククと手で口を抑えて笑っている声が聞こえる。

 

 その笑い声に三人はキョトンとして、一瞬黙って携帯電話を見つめる。

 

 電話の向うでも、声が聞こえなくなった様子にクラピカは気が付いたのだろうクラピカは笑うのを止めて話始める。

 

 (すまない。少し時間が経っただけなのになんか懐かしいなって思ってな)

 

 その言葉を聞いて、三人も笑顔が戻る。

 

 キルアから電話を受け取ったレオリオがクラピカの電話を替わる。

 

 「お前の事だから、意気込んでまた怖い顔してると思ったよ。でも、少し安心したぜ」

 (あぁレオリオか。こちらは大丈夫だよ。私は実際には競売には参加しない。まぁ会場の外でファミリーの人間と警戒はするがな)

 「クラピカ!もしも、俺たちの力が必要になったらすぐ言ってよ!俺もキルアもレオリオもすぐに飛んで行くからさ!」

 

 レオリオの耳元の電話に向かって、ゴンは思いを力いっぱい声に乗せてクラピカに届ける。

 

 そん純粋な言葉はクラピカにとって何よりの支えになるだろう。たとえ力がなくとも、思いは人を裏切らない。

 

 そこにはなんの契約もないが、確かに繋がっている気持ちがあった。

 

 「あ。そうだ。蜘蛛の噂の所為か念能力者が街で見かけたんだが、そっちでなんか掴んでないのか?」

 

 レオリオが情報の確認をする為にクラピカに問いかける。

 

 (あぁこちらでも街で情報収集している仲間がいるからな、何人かブラックリストハンターを確認している)

 「やっぱりそうなのか」

 「そういえば、街でハンゾー見たよ!ねぇキルア?」

 

 ゴンはクラピカの言葉をキッカケに思い出して元気に言う。

 

 ゴンに顔を向けられたキルアはハンゾーのピエロ姿を思い出して、ブッと吹き飛ばして唾がレオリオに飛ぶ。

 

 「おま!キルアてめぇなにやってんだ!?」

 「あぁごめん!ごめん!ついハンゾーのあの姿を思い出しちまって」

 

 レオリオにハンゾーのあの姿と言われても、いつもの忍装束の姿しか思い出せずにどこに笑う要素があるのかちんぷんかんぷんでピンと来ない。

 

 (あぁそういえば、ゴンたちもハンゾーと会って居たのだったな)

 「え?クラピカもハンゾーに会ったの?」

 (そうだ。ジバルと言った子供と一緒になぜかマフィアの一人に雇われているようだった)

 

 さっきまでの仲間と話す暖かな声色ではなく、一段声を低くした声でクラピカは話す。

 

 必死にキルアの飛んで来た唾を袖で拭うレオリオから再度携帯電話を受け取ったゴンは驚く。

 

 「え!?なんでジバルくんがマフィアなんかと!?」

 (こっちもよく分からないが、彼の念能力で契約屋という仕事をしているらしい)

 

 ゴンの記憶は大道芸をしていた二人が脅しに来たマフィアと一緒にホテルに入って行くまでしか知らない。

 

 それが、なぜマフィアに雇われる事になったのか?契約屋ってなんなのか?もう訳が分からな過ぎて頭がショート寸前だった。

 

 その頭が真っ白になったゴンの後ろでキルアにレオリオがそっとジバルって誰だと質問している。

 

 「あぁ、なんかすっげぇ念が上手い俺たちよりちっさい子供だよ」

 「はぁ!?念?何者なんだよそのガキは?」

 

 レオリオに何者か聞かれてもキルアも答えようがなかった。会った時間も大道芸が終わってからマフィアが来るまでのごくわずかな時間。話した言葉数も多くない。

 

 キルアは肩を竦めて言う。

 

 「さぁ?そこまで聞く時間なかったし。でも、俺もゴンも普通に戦っても勝てる気がしなかった」

 「ウソだろ!?お前とゴンに勝てる子供なんているのかよ!?」

 「俺だって信じらんねぇよ。俺もゴンも念を維持する為にまだどっかで意識しなきゃいけなくて、オーラの動きがたまに不自然になったりするんだけど、そのジバルは本当に呼吸するくらい自然にオーラを操作するんだぜ」

 

 レオリオはボスっとソファーに腰を下ろすと頭をガシガシと掻く。

 

 レオリオはまだ念の入り口を知ったばかりだが、この念と言う技術が一朝一夕で身に付くものじゃないのは身に染みて分かったつもりだった。

 

 「なんだその規格外のガキは?お前ら以上なんて俺には想像すら出来んわ」

 

 ジバルの出自や生い立ちを聞けば納得出来たのかもしれないが、今のレオリオにはあまりにも情報が不足していてジバルを推し量ることなんて出来やしなかった。

 

 それはキルアも同じことで、目の前でジバルを見て居なければキルアも作り話だと笑い飛ばして終わっていた可能性がある。

 

 キルアとゴンは密かに、ジバルから聞きかじったオーラの使い方も練習していたが思った以上に難しかった事を思い出して、レオリオの困った顔を見ても苦笑する事しか出来ないでいた。

 

 「オーラで絵を描くって、本当にどうやってやってんだよあいつ……」

 

 そのキルアの呟きは誰にも聞かれることはなかったが、キルアは一つの目標として明確にジバルを意識していた。

 

 「キルア!レオリオ!クラピカがもう時間がないって!」

 

 ゴンの言葉にキルアたち二人はジバルショックから意識を覚醒させて、またゴンの近くに集まる。

 

 (ゴン、キルア、レオリオ三人とも約束したのに会えなくてすまないな)

 「ううん、いいんだよ!俺はクラピカの元気な声聞けただけでも良かったよ!」

 「そうだな。それにオークションがひと段落着いたら、時間取れるんだろ?」

 (あぁ……無事に競売が終わったら必ず会える時間を取ろう)

 「うっし。そうか。クラピカ、会えるの楽しみにしてるぜ!」

 (ああ、私もだ)

 「じゃあ、クラピカ、ちょっと名残惜しいけどまたね!」

 

 ゴンの別れの言葉に続いて、キルア、レオリオも電話ごしにクラピカに挨拶して電話を切る。

 

 電話を切った後には、温かいようななんともいえない静寂がゴンたちの居るホテルを包む。

 

 「うっし!それじゃあ、俺たちもクラピカに負けないようにグリードアイランドを競り落とす為に金稼がないとな!」

 「そうだね!よっし頑張ろう!」

 

 勇んでパソコンに向かって、競売方法を調べに行った二人の背中を見てキルアはふ~っと溜息をつく。

 

 その顔はまだクラピカの事で引っかかることがあるみたいだったが、今は何も出来ないと諦めてキルアもゴンとレオリオが調べているパソコンの傍に歩いて行った。

 

 

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